或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

バート・バカラック

2008-02-29 06:35:28 | 220 POPS
このところエロティシズムがらみで哲学関係の書籍ばかり読んでいたら頭が疲れてきて、気分転換にと読んだのが村上春樹の初期の短編集「カンガルー日和」(1983年)。だいぶ癒されたかな。小説というのはヘンな理屈がないからいい。なかでも彼らしい淡いロマンが感じられ印象に残ったのが”バート・バカラックはお好き?”。なんたってパクったタイトルが洒落ている。

ペン習字の添削指導のバイトをしている独身の男と、その生徒で夫婦間が冷め切っている女が、男が都合でバイトをやめるにあたり、最後に女の家で初めて会って彼女の作ったハンバーグを食べるという何気ない話なのだけど、なんかフツーにありそうだし、あったらいいなと思わせる。この時二人で聴くのがバート・バカラックのレコード。そうか、バカラックかと懐かしくて。

というのも最近何度か新聞で彼の来日コンサートの広告を目にしていたから。その時の正直な気持ちは行きたいような行きたくないようなビミョウな感じ。もちろん彼の曲で”Alfie"や”Look of love”等等、記事でも紹介したし今も変わらず好きなのがたくさんあるのだけど、どうも老いた姿を見ると、なんか昔書いたラブレターを今になって子供に見られる?ような、かゆいというか恥ずかしいというか、そんな感じがしてきて。広島ならまだしも大阪までわざわざ観に行く程の気合いが入らなかった。

でも彼が20世紀を代表する作曲家の一人なのは間違いないところ。ビートルズ程じゃないにしても絶えずカバーが出ているし。彼の作る曲の特徴は、変拍子や変則小節を採り入れた自由な構成とモダンな転調。それとメジャーセブンスやマイナーナインス等のジャズコードの使い方。ポップスにしてはとても新鮮だった。そしてこれらの曲の底辺に共通して流れているのが粋で軽めなアメリカンテイスト。1970年代というのはそういう時代だったかなあと。久しぶりにCDを聴いてそう思った。

今回11年ぶりで4度目の来日という彼は今年80歳。いや素晴らしい。この歳になっても世界を渡り歩いてコンサートを開けるなんて。さすがに昔のオリジナルは音源として古くてつらいけど、DVDでも出たら買って家族の留守を見計らって昔の想い出に浸ろうかな。

カンガルー日和カンガルー日和 The Best of Burt BacharachThe Best of Burt Bacharach

社労士勉強進捗[2月度]

2008-02-27 06:35:03 | 150 社会保険労務士
先月に引き続き、まだまだ盛り上がっている年金問題の話。社会保険庁も通知書の発行とか今までやっていなかった情報サービスを慌ててやり始めている。こうなると国民の心に溜まっていた疑問や不満がどんどん噴出してくる。でもまあ人口トレンドが増加から減少へ変化した歴史的なターニングポイントである時代であることを考えれば当たり前のような気もする。

というのも国民年金はいわゆる”世代間扶養方式”を採用していて、原則的にはその時代その時代で働く現役世代の保険料で老いた引退世代への年金給付を賄うというしくみ。だから少子高齢化が進めば進むほど財政は苦しくなり保険料は高くなる。ただしそれだとその上昇に歯止めがかからなくなるから、平成16年の法改正で”保険料水準固定方式”を導入した次第。

でもそうなると将来問題になるのが出生世代毎の給付倍率。給付倍率とは払った保険料の総額に対し給付される年金の総額の比率。1935~45年生まれの現在60~70歳の世代だと倍率が3~6倍に対し、1985年生まれの現在20歳世代だと2倍前後にガクンと下がる。この計算の前提には何やら眉唾的な数字が使われているという噂もあるし、ひょっとして1倍を切るかも。

だから会社勤めをしている娘は強制的に保険料を天引きされるからしようがないとしても、学生の息子は学生納付特例を申請して保険料を免除してもらっている。法律に違反しない範囲でなるべく払わないようにしておかないと、後でバカを見るのは自分じゃなくて子供だから。といっても浮いた保険料を貯金してやっている訳でもないから親として大きなことは言えないか。

いやはや娘や息子は大変な時代に生まれたもんだ。記事を書きながら脳裏をよぎるのが”諸行無常”という言葉。時代は移り変わるなあと。上の写真は叔父の法事が行われた田舎のお寺の境内で見たナンテンの実。くぐもった景色の中にその深紅が鮮やかだった。子供達もこれくらい元気であって欲しい。そうそう肝心の勉強の方だけど、まずまず順調に進んでいます。

賀茂鶴

2008-02-25 06:40:30 | 650 酒
年を取るにつれて冬場に増えてくるのが鍋料理。湯豆腐、しゃぶしゃぶ、水炊き等々。これらのお伴と言えば、やはり日本酒。寒ければ寒いほどその旨さが身体に浸み入る感じ。とは言え最近は酒量が落ちているからせいぜい銚子2本ぐらいだけど。このところその銚子や猪口もいろいろと買い集めていて。上の写真は京都の嵐山で買ったお気に入り。値が張ったなあ。

今年よく飲んでいるのは地元広島の酒で賀茂鶴。若い頃は辛口の定番である灘の剣菱にハマっていたけど、このところ県内の銘柄を渡り歩いている。中でも酔心、千福を加えた3銘柄。それぞれに個性はあるけど、共通しているのは口当たりがソフトで、味は幾分辛め。飲んだ後にほのかに甘い残り香が漂う。全体としては後味がすっきりしていて女性的な上品な味わい。

調べると酒の味は使う水でかなり決まるのだとか。まあ成分の80%が水だから水質が影響しているのは理解できる。それで神戸の灘がミネラル分の多い硬水に対し、京都の伏見や広島は軟水。別名”男酒”と”女酒”と呼ばれている。なるほどね、でもウィスキーは男性的なアイラ島のシングルモルトが好きなのだけど、日本酒は”女酒”。両刀使い?だけど、まあいいか。

それでこだわっているのが熱燗の温度。もっぱら電子レンジで55度に設定してチーンしていたけど、レンジの能力の問題なのか銚子の形状や土の成分によってずいぶん出来上がりの温度に差がでる。ひどい時なんか沸騰してしまっているから。それでついに銚子の種類によって700Wで個別の時間を設定するようになっている今日この頃。たかが燗、されど燗って感じ。

賀茂鶴     酔心     千福

安井曾太郎(2)

2008-02-22 06:29:40 | 300 絵画
安井を記事にするにあたり、勉強のためにヤフオクでいろいろと過去の企画展の図録等を購入していて、その中で特に嬉しかったのが彼自身唯一の著書「画家の眼」(1956年)を入手したこと。絵に対する考え方がダイレクトに伝わってきて、彼の人となりが見えてくるから。この本にはサプライズがあって、それはまた別の機会に。

この本の表題のすぐ後ろに載っているのが上の写真の「自画像」(1905年)。明治38年で当時まだ弱冠17才。かなり上を向いた顔の表情からは、落ち着きと共に強い意志が感じられる。これを最初に載せるというのは、本人も気に入っていたと勝手に想像している。というのもスーツ姿とかこの後に描いた自画像が何枚かあるのだけど、この作品に一番雰囲気を感じるから。

彼は京都の生まれで、後に良きライバルとなる梅原龍三郎と同年同郷。生家は大きな木綿問屋だった反面、暮らし振りは地味だったらしい。明治36年(1903)に画家を目指すため京都市立商業学校を中退。その後個人指導を受けながら勉強していた時に、たまたま知り合った学生を通して聖護院洋画研究所へ入所。ここで最初の恩師である浅井忠の指導を受けることに。

とにかく真面目な性格で、絵を描くことと飯を食べること以外にしたいことがなかったと友人にからかわれることも。でもさぞかし毎日が楽しかっただろうなあ、好きなことに一日中没頭できて。持ち前の才能もあって技量はメキメキと上達したらしく、すぐに展覧会に出品するようになって。関西美術院へと発展した研究所の生徒の中でも際立って目立った存在だったらしい。

下の写真は研究所に入る前の少年時代に描かれたデッサン。なるほどね、やはり名だたる一流の画家ともなると、まだ子供でもこのレベルに到達しているか。まあ”デッサンの安井”として有名な彼の画業の原点と思えば、それも納得がいくけど。


Calabria Foti

2008-02-19 06:15:44 | 200 ジャズ
いつも図書館で借りているのが往年のジャズ雑誌「スイング・ジャーナル」。最新号は無理だけど、数ヶ月遅れだとほとんど置いてある。せっかく市民税を払っているのだから利用しないと。でも良かった、ジャズというのはマイナーで。これが流行りの月刊誌だと、いつ行っても誰かが借りていてエンドレスで待ち続けるなんてざらだから。

それで正月明けに数冊借りていつものようにダラーっと斜め読みしていたら、眼に飛び込んできたのがなんとも悩ましげなジャケット。男というのは不思議なもので、パラパラめくっていても瞬間的に本能で察知するのか、こういうのは見逃さない。いやあ久しぶりに胸がときめいた。見るとカラブリア・フォーティーというNY生まれの知らない白人ジャズヴォーカリスト。

自分が尊敬している作・編曲家のジョニー・マンデルも絶賛していたので、それならばとHPを探して数曲試聴したら、声質も唄い方も好みのタイプ。こりゃ買うしかないよなと、早速アマゾンで「A lovely way to spend a evening」(2007年)の輸入盤を注文。ところが通常は2週間ぐらいで届くのに今回は1ヶ月以上もかかった。おそらく売り切れで在庫がなかったのか。それだけ人気があるということ。

届いてからじっくり聴いたけど、とにかく素晴らしい。なにしろ音程やディクションやアーティキュレーションがバッチリだし、シャウトしない押さえた唄い方が妙に色っぽい。完全に悩殺されたなあ。音楽的にはダイアナ・クラール系のソフト路線で、シンガーとしてはクリス・コナー系の粋な雰囲気。日本で言えば、若い頃の阿川泰子の音域を下げて大人っぽさを出した感じ。

こう書くと良いことずくめだけど、やや心配なのが実物はどうなのかなと、唄じゃなくてルックスが。というのもこのアルバムの前にリリースしたデビュー作のジャケがどうもイマイチ。HPに掲載されている写真をみてもバラつきがあるし。いつかは来日するだろうけど、ジャケットや上の写真のイメージのままで登場してもらいたい。そうすれば人気爆発は間違いないだろうから。

A Lovely Way To Spend An EveningA Lovely Way To Spend An Evening

ピエール・エルメ

2008-02-16 04:56:17 | 600 グルメ
一昨日は毎年恒例のバレンタインデー。冬というのは、若い頃は仲間と毎週のようにスキーをしたり、子供が小さい間は雪遊びに連れて行ったりと、それなりに楽しかったけど、最近はイベントがまるでなくて、ただひたすら過ぎるのを待つだけ。そういう意味ではバレンタインデーとかホワイトデーは、何かしらの刺激という意味でこの時期のイベントとしてアリかもしれない。

とは言え家族以外からもらうことがほとんどないし期待もしていないので、新たな刺激はなく健全で平穏であるのは確か。そんな中で一番の楽しみといえば娘からもらうチョコレート。ブランド好きの自分の性格をよく知っていて、毎年こだわりのチョコを選んでくれる。今年はピエール・エルメ(Pierre herme)のボンボンショコラ9個セット。もちろん知らないし食べたこともなかったけど。

HPを見ると有名なパティシエのお店らしい。若い時から注目され1998年には自己のブランド、ピエール・エルメ・パリを出店しスイーツ界のピカソと称されているのだとか。うーん、ピカソねえ。革新的でモダンという意味なのだろうか。それにしてはパッケージの外観もチョコのテイストもいたって地味。入れてあった紙袋もごくフツーで目立たなかった。

バレンタインで思い出すのはリチャード・ロジャースの名曲“My funny Valentine”。チェット・ベイカー等のヴォーカルも良いけど、今日紹介するのはキース・ジャレットのピアノ。この曲の演奏が入った3枚のアルバムを通して1983年にスタートしたスタンダーズトリオの歴史を辿ることができる。最初の「Still live」(1986年)はミュンヘン、次の「Tokyo ‘96」(1996年)は東京のライブで、何故か共にソロピアノ。この頃は使う和声にもこだわりがあり、ドビュシーやラベルの影響も感じられて、ある意味で格調高い雰囲気が漂っている。ちなみに東京のこの日のライブを皇太子ご夫妻も鑑賞されたとか。皇室とジャズなんてひと昔前は想像もつかない組み合わせだよなあ。

最後のアルバム「Up for it」(2002年)は南仏のアンティーブでのライブでこちらはピアノトリオ。ほとんど”素”で演奏していてジャズ本流のど真ん中。リラックスした中にトリオの完成度は極めて高い。アンティーブといえばピカソがアトリエを構え、女流画家フランソワーズ・ジローと一緒に生活をしていた町。そうか、今日はピカソつながりか、なんてちょっと強引だったかも。

Still LiveStill Live Tokyo '96Tokyo '96 Up for ItUp for It

LAST LOVE

2008-02-14 06:23:08 | 350 映画
観たらダメだろうな、幻滅するだろうなと悪い予感がしながら結局レンタルDVDを借りてしまったのが、田村正和主演の映画「ラストラブ」(2007年)。ジャズのサックスプレイヤーという設定だからどうしても。彼にとっては14年ぶりの映画出演らしい。TVの古畑任三郎役で馴染みがあるからか、喋り方といい黒のロングコートといい、どうしても古畑のイメージとかぶったのは確か。

NYで活躍していた主人公が妻の急死をきっかけにジャズをやめ帰国。旅行代理店のサラリーマンとして生活する中で偶然ヒロイン役の伊東美咲と知り合う。そして人生最後の恋に落ちるというラブストーリー。正直言って田村のファンならストーリーや相手役なんて関係ないとは思うけど。それに舞台がNYという設定もあってそれなりに楽しめるだろうなあ、カミさんみたく。

自分はどうもダメだった。いくつかどうしても妥協できない点があって。まずは田村の年齢。もう還暦を過ぎているのに相手役が伊東。愛人関係ならまだしもストレートな恋愛関係とは。これはかなり辛い。つくづく感じたのは、若い子とそれなりにどうのこうのを目指すのなら、やはり50歳半ばぐらいまでが限界だなあと。この映画も10年前に撮っておけば良かったのに。

次が音楽。主人公のテーマ曲が"Begin the begin”はないだろうと。老人相手のダンスパーティーじゃないんだから。もう少し粋なスタンダードナンバーとかがあるんじゃないの。それとピアノトリオに彼のテナーサックスという設定ならまだしも、なんでトランペットやサックスが他に何本もあるような大規模編成にしたんだろう。もろバイショウ的な雰囲気がムンムン。

驚いたのが田村にテナーサックスの指導をしたのが稲垣次郎だったということ。いや懐かしい。記憶にあるのは1970年代に彼がリーダーを務めていた「ソウルメディア」というファンクバンド。ピアノの今田勝とかギターの川崎燎といった”手練れ”を擁してブイブイと。ドラムスの猪俣猛が率いる「サウンドリミテッド」と双璧だったような。もう二人共かなりのご老人。月日は流れます。

LAST LOVE 単行本LAST LOVE 単行本  LAST LOVE DVDLAST LOVE DVD

メバル

2008-02-12 06:19:46 | 400 釣り
いや寒い、1年で最も寒いかな。といっても広島は全国的にみれば暖かいのだろうけど。瀬戸内地域では最低気温が0~5度で最高気温が5~10度ぐらい。先週の土曜日はそんな中を友人2人と一緒に久しぶりの釣りへ。天気が良くないことは最初から分かっていたけど、中止にならなかっただけ有難かった。対象魚はメバルとタチウオ。魚場は愛媛県の津和地島周辺。

船に乗ったら雨が降ってきたので、冷たいし嫌だよなとテンションが下がっていたら、魚場の近くでは止んでいたのでホッとした。この日に備えて新調したのが電動リール用の新型リチウム電池。リールへ直に取り付ける小型タイプ。釣具の進化の中でも特に画期的な製品だと思うけど。リールそのものも小型化しているし、電動の重さが邪魔にならなくなっている。

最初に狙ったのがメバル。まさに今が旬の魚。でもこの日はあまり食いが良くなかった。それでも2時間ぐらいで15cmから25cmの標準サイズを10匹ゲット。家族で食べるには十分。そのうち小ぶりのアジが突然釣れ始めて。あっという間に8匹。しかし船長にはプライドがあったようで、場所を間違えて狙っていない魚種が釣れたのが嫌だったのか、すぐに船を移動。

それでそろそろ本命のタチウオへ切り替えたいなと友人が船長に確認すると、なんと今日はたぶん無理との返事。ガーンと皆に衝撃が。理由を聞くと、風が強いしこれからもっと厳しくなるからとのこと。ちょっとだけでもいいからと粘ったけど結局ダメ。そのうち天気は良くなってきたけど予想通り風が強くなってきてしまい、11時を回ったぐらいで釣りを中止し早々と納竿。

いやあ、参った。だってこの日のためにわざわざジギング用の竿と下の写真のような専用ジグを買って準備していたから。せっかくいろんな色を揃えたのに。行く前の晩なんか、どの色から使おうかなと全部並べていろいろと思いを巡らしていたぐらい。まあ釣りは行く前が一番楽しいというから、いたしかたなしといったところ。次回は是非ともリベンジしなくては。


蓼喰う虫

2008-02-08 06:28:24 | 010 書籍
ことわざに”蓼喰う虫も好きずき”というのがあります。”好みは人それぞれ”という意味は知っていたけど、”蓼”が何かは知らなかった。調べるとヤナギタデという草花の名前で、葉や茎に苦味があるけどこれを一日中食べている虫がいるところに由来しているらしい。タデの仲間で身近なものと言えば何気に食べている刺身のツマ。赤紫色の小さい葉がかたまっているやつ。

どうしてこんな話をしているのかと言うと、最近読んだのが谷崎潤一郎の小説「蓼食う虫」(1951年)。きっかけは画家の小出楢重がこの小説の挿絵を担当していたから。ただし何故か新潮にはなく岩波だけだけど。二人は芦屋時代に近所に住んでいて仲が良かったらしい。小出が亡くなった後の谷崎の言葉が残っている。”人と人とが長い人生の行路に於いて偶然に行き遭い、相接触し、互いに感化を及ぼし、やがて再び別れ別れになって行く因縁を思うと、奇妙な感じがしないでもない。・・・”

一昨年芦屋に遊びに行った時、小出の作品を多数保有していて彼のアトリエも保存されている芦屋市立美術博物館のすぐ隣りにあったのが谷崎潤一郎記念館、時間がなくて中には入らなかったけど。今でもご近所同志とはね。ずーっと仲良しなんだなと。

それで小説の話だけど、愛を失い離婚に向けて秒読み状態にある中年夫婦の物語。互いに人間としては認めているが、セックスレスが続いていて既に男と女の関係ではなく、しかも互いが公認で愛人を持っている。円満離婚前夜のこのストーりーは谷崎自身の有名な「小田原事件」を投影していて、いわばセミドキュメンタリー。当時のいきさつや心情を垣間見ることができる。

面白かったのが、主人公と仲が良く若い妾と自由奔放に暮らしている妻の父親の言葉。「若い時分に女遊びをした人間ほど老人になるときまって骨董好きになる。書画だの茶器だのをいじくるのはつまり性慾の変形だ」、なんてね。ギクっときたなあ。音楽や絵画に時計等のアンティーク。これって自分もそうだよなと妙に納得。時代は変わっても男の性は変わらないなあ。

谷崎と言えば”エロティシズム”。このつながりをきっかけに読み直してみようと思っています。

蓼喰う虫 (岩波文庫)蓼喰う虫 (岩波文庫)

パビリオン山椒魚

2008-02-06 06:46:39 | 350 映画
レンタル屋でやっと借りたDVDが、オダギリ・ジョーが天才?レントゲン技師役で主演している映画「パビリオン山椒魚」(2006年)。彼と相手役の香椎由宇が結婚するきっかけになった作品という話題性からえらく空きが出なくて。何の下調べもせずに観たけど、だいぶ毛色が変わっている。異次元系というか何と言うか、最初から最後まで摩訶不思議なシーンが続いて。

中身は伝説の動物国宝であるオオサンショウウオの"キンジロー"をめぐるコメディタッチのサスペンス。監督は冨永昌敬という知らない人。異次元系のお話なのでなんでもアリ。その場その場の映像、演技をアドリブ感覚で楽しむという感覚。デタラメだけどたまにシュールというのがウリかなあ、例えばレントゲン車の撮り方とか。ひとつだけ不満を言わせてもらえば、香椎の父親役である高田純次の演技がマジメすぎ。他の役者がオチャラケ満載でやり放題だっただけによけいに目立った。

コメディと言えば息子が絶賛していたダウンタウンの松本人志の初監督作品「大日本人」(2007年)。期待して観たけど、関西のオタク系芸人センスが前面に出すぎ。なんだかC級のTV番組を見ているようで楽しめなかった。わざわざ映画じゃなくてもいいだろうって感じ。カンヌ映画祭でどうのこうのがあったらしいけど、何が言いたいのか外国人には分からないだろうなあ。

目立ったのが音楽。なんと担当が菊池成孔。やるなと思わせたのが音楽を使わない場面がけっこうあること。逆に使う時は楽器の選択とかとても多彩。印象に残ったのが何度も出てくるエレピ風のキーボード。音数が少なくてクールだけど暖かい。うーん、いろんな引き出しをたくさん持っているなと感心していると、エンドロールが菊池本人と万波麻希のデュエットによる“KEEP IT A SECRET”。これがノスタルジックなオールドジャズ風で、ハッピーエンドの映画のエンディングに渋く馴染んでいた。

観終わって思ったけど、香椎由宇ってなかなか気品のある女優さんですね。

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