或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

大晦日

2011-12-31 05:59:21 | 900 その他
今年もついに今日で最後。いや、なんか疲れたような。昨年の暮れはどんな記事を書いたかなとチェックしてみると、なんと仕事が忙しくて投稿をパスしていた。年末は自宅で出張のための資料作成をしていたことを思い出して。そういえば今年は出張がやけに多かった。思えば今年を象徴するような兆候が、既に昨年暮れから起き始めていたのかなと。まさにプロローグ。

出張は、日帰りもだけど、特に4日以上1週間以下ぐらいのものが多かった。平均すれば月2回程度だけど、準備に1週間ぐらいかかるから、出張を中心に自分の生活が構成されていた感じ。転職前とは大違い。だけどそんな状況に振り回される訳にはいかないから、自分なりに出張を楽しめるようにいろいろな工夫をしたのも確か。実際に十二分に楽しめるようになった。

具体的には、旅行用のスーツケース。海外用にハード、国内用にソフトを各々大きさで2種類揃えて。さらには出張先で自分の好きなブランドが飲めるように、ウィスキー、焼酎、お茶の専用ペットボトル、それに味付け海苔、梅干、柿の種等を自宅で事前に準備。これは浪費を防ぐという意味でも有効だった。さらには乗物対策として耳栓、スリッパ、歯磨きセットも常備。

お次は家電。会社のノートを持ち歩くのが嫌で、それとは別にネットブックを自宅と会社に各々1台設置。最近ではスマホをPC替わりに使ってやろうと、クレードル、折り畳み式キーボード、小型ワイヤレスマウスをBluetooth環境でシステム化。アプリの整備も完了。もちろん音楽はPCやスマホの全てに愛聴CDをダウンロードし、現地では携帯USBスピーカーを活用。映画は外付けHDに数十本をストック。マニアックなのが電源タップと3mの電源コード。これが空港や駅で大活躍。

なんてモノ視点でずらずら並べたけど、そのお陰で随分楽に。だけど最も大事だと思うのがスケジューリング。”忙中閑あり”じゃないけど、仕事の合間に私生活を楽しめるように工夫したかな。写真は11月末に訪れた京都の東山にある永観堂。ちょうど出張が紅葉シーズンに重なったので、これはチャンスと前日の休日に出発。ライトアップが綺麗だったなあ。ということで、閑話休題。皆様、よいお年を。


USBスピーカー

2011-12-26 05:23:06 | 530 オーディオ
少し前の出張時に、愛用していたオンキョー製のPC用携帯スピーカーが突然鳴らなくなって。帰宅して調べると、何のことはなく、PCとスピーカーを接続するステレオミニジャックのコードの端子部分の接触不良だった。てっきり内部回路の故障だと思いこんでいて、代替用のスピーカーをサーチしてしまったのが運のつき。様々な新製品がリリースされていることを知って。

中でも興味をそそられたのがUSBスピーカー。従来はPCのアナログ出力を拾ってアナログアンプで再生する方式なのだけど、これはデジタル出力を直接転送してスピーカー側でアナログ変換して増幅するもの。これだとスピーカー用の独立電源が必要なく、PCからの接続ケーブルが1本だけで済む。出張先であれこれ100V電源につなぐことがなくなりセットアップが簡単。

となると後はどの製品にするかだけの問題。売れ筋商品がいくつかあったのだけど、出張用としては大きすぎるものがほとんど。狙いを定めたのがiBUFFALOのBSSP25UBK。値段は約1,500円。サイズ的にもまずまずだし、形状が完全なキューブなので、パッキングも楽そうだなと。大手電機店に置いておらず実物でチェックしないままに注文したのがやや不安だったけど。

実際に使ってみた感想だけど、想像以上に良かった。まずはクリアな音像。アナログ接続と比べるとその差は歴然。お次は大きな音量。USB電源なのでパワー的にどうかと思ったけど、2Wというカタログ出力は嘘ではなく、ホテルでバックグラウンドとして聴くには十分すぎるレベル。欠点を挙げるとすれば低音の不足。まあ、これはしょうがない。だけど全体のバランスも良い。

コストパフォーマンス的には大満足で、久々の大当たりだったのだけど、サプライズは別の商品。その大手電機店でひょっとして使えるかもと購入しておいたPC電源収納用のポーチにややきつめではあるもののサイズはピッタリ。これに左右のスピーカーの正面を合わせて収納すれば、コーンが破損する心配もなくなって。それにしても、技術を進化をつくづく感じたかなあ。

iBUFFALO BSSP25UBKiBUFFALO BSSP25UBK  サンワ アダプタポーチサンワ アダプタポーチ


The very thought of you

2011-12-23 06:23:41 | 200 ジャズ
ずっと暖かかった広島でも、いよいよ寒さが本格化。いつも思うのだけど、そんな冬が身近に感じられるようになると、決まってクリスマスが近づいていたりして。気がつけば、このところ色気がまるでない記事が続いているような気が。そこで今日は愛し合うカップルの二人だけの時間にお勧めのジャズアルバムの紹介。いいですね、久しぶりになんか自分も楽しい。

黒人女性ジャズヴォーカリストであるニコル・ヘンリー(Nicole Henry)の「The very thought of you」(2008年)。なかなか良いアルバムに出会うことができたと、CDがHMVから届いてからちょっぴり幸せな日々が続いている。2時間ぐらいかけて、過去5年間ぐらいの女性ジャズヴォーカルの新譜のサンプルを総なめしてチェックした甲斐があったというもの。

こういうアルバムに出会った時には、とりあえず飽きるまで聴き倒すのが常。まずは朝起きて会社での昼食用弁当を作る時のバックグラウンドミュージックに。記事でも紹介したサンスイのヴィンテージアンプにスイッチを入れ、寝ている家族の迷惑にならない程度の小さな音で。お次は通勤の途中。最近ではスマホをウォークマン代わりに。というのもひょんなことから写真の”PowerAMP”というアプリを見つけてダウンロードしてみたら、これが使い勝手が良かったから。特に画面のデザインが渋くて、いかにも米国産って感じで洗練されている。最後は帰宅して夕食を取る前のくつろぎの時間。朝よりは少し大きめの音量で。

それで聴いているのが実は2曲だけ。タイトルチューンの”The very thought of you”と、続くラストの”Make it last”。共にしっとりとしたバラード。気合が入っているなと。前者は言わずとしれたジャズのスタンダード。かつてドリス・デイが歌ってヒットした名曲。これも秀逸なのだけど、ノックアウトされたのは後者。バックのピアノの後ろでかすかに色づけされたシンセが渋い。この音色とこの音量。センスがなければできないアレンジとミキシングの妙。こういう人達がまだまだいるんだなと。

ということで、クリスマスに向けて音楽環境面だけでいえば、気分は最高に盛り上がっています。

Very Thought of YouVery Thought of You

The liaison capitol hill

2011-12-20 05:46:12 | 870 米国紀行
米国旅行の現地3日目は、早朝にホテルを出て、フィラデルフィアを後にアムトラックで次の目的地であるワシントンDCへ。いや、それにしても、前の晩のジョアンナ・パスカルとの出会いと素晴らしいライブが脳裏をかすめて、車中でもずっと夢心地が続いてなあ。だけど興奮しっぱなしだったためか、酒はたくさん飲んだのに食事をろくにしておらず少々二日酔い気味だった。

ワシントンDCで宿泊したのが、「The liaison capitol hill」というワシントン・ユニオン駅に程近いホテル。立地が良く、1泊135ドル(日本円で約1万円)という料金で、あまり期待はしていなかったのだけど、受付のホテルマンの態度がまるで違っていた。トム・ハンクスに少し似ていた彼の説明の礼儀正しいこと。日本でもなかなかお目にかかれないくらい教育が行き届いていて。

部屋に入るとこの料金でこの雰囲気かよと驚くばかりの広さと雰囲気の良さ。ベッド、テーブル、洗面所と、どれをとっても洗練されたモダンなセンスが感じられる。1泊だけなのが残念だと後ろ髪を引かれるくらい。ニューヨークの「Clarion Hotel」は、悪い意味での別格として、フィラデルフィアの「Club Quarters in Philadelphia」と比べても、とても同じ料金と思えなかったなあ。まあ外国人が東京へ来たらホテルの狭さに驚くだろうから、ニューヨークのホテルを悪く言うのは筋違いかもしれないけど。とにかく今回の旅行で利用したホテルの中でベストだったのは間違いない。

今回の旅行においてホテルの予約では、フランス旅行や英国旅行の時にも利用した"booking.com"と、新たに"Hotels.com"とを併用したけど、料金的にはほぼ両者は同じで、全社が現地払いに対して後者は予約時払い。後々で面倒なことになるのが嫌だったら後者の方が使い易いかもしれない。今思えば、キャンセルが効かない格安プランを選んでも良かったとは思った。

しかし毎日の移動はさすがに疲れた。結局連泊したのは最初と最後のニューヨークだけで、フィラデルフィア、ワシントンDC、タングルウッド、ボストンと、アムトラックやレンタカーによる連日の移動と観光は、ジジイになった自分にはずいぶんきつかったような。


SANSUI AU-D907X DECADE

2011-12-15 05:40:56 | 530 オーディオ
完全にハマってしまったのがヴィンテージ・オーディオの世界。今年のGWに1985年に発売されたSUNSUIのAU-α707を購入してからというもの、ほとんどビョーキ状態。その後が1981年のAU-D907F EXTRAで、今回同様にヤフオクで2万円で落札したのが1984年のAU-D907X DECADE。なんかねえ、どこまでいけば終わりなのか自分自身でも分からない状態なのが怖い。

しかしこの半年でサンスイのプリメインアンプの歴史を相当勉強したなあ。とても楽しかった。お陰でこの30年の間に、どんな回路を使ってどんな音質に変遷してきたのか、ほぼ把握できた。だから3台目としてどのモデルを選択するかは、自分的には自信を持って選んだってところ。つい先日届いてすぐにセッティングして聴いてみたけど、自分の想像通りだったから。

D907F EXTRAは、前に記事にもしたけど、端的に言えばアナログ。音の鮮度は低いし奥行きも浅いのだけど、音像がハッキリしていて聴き易い。ソースを選ばないところも落ち着ける。それと対照的に、α707はデジタル。鮮度が高いし奥行きもある。ただし音像が定まらず、特に低音にその傾向が顕著。αシリーズの特徴とも言えるきらびやかさが個人的には好きだけど。

それで今回のD907X DECADE。ちょうど両者の中間的な位置づけ。マイルス・デイビスの作品で言えば、αシリーズが1970
年の「Bitches Brew」以降だとすれば、このアンプは1969年の「In a silent way」とでも言うべきかも。最も気に入っているのが低音。D907F EXTRAでは得られない解像度とαシリーズでは得られない締まりと定位を併せ持っている。これは嬉しかった。

今後だけど、おそらく国産アンプはこれで打ち止め。というのも愛用しているスピーカーのJBL4429との相性の問題があるから。低音の馬車馬加減がハンパじゃなくて、通常のプラスマイナス5dB程度の低音のトーンコントロールじゃ調整しきれない。ということで本命は5バンドイコライザー付きのマッキントッシュのMA6900。禁煙ワンオーナー品の中古をヤフオクで気長に待とうと。

東京モーターショー 2011

2011-12-12 05:50:48 | 900 その他
先々週の金曜日は仕事で東京モーターショウへ。前回がいつだったか思い出せないぐらい久しぶり。なにせ場所が幕張メッセから東京ビックサイトへ移っていたのを当日知ったぐらいだから。会場に着いたのが昼過ぎだったのだけど、特別招待日なのに客が大勢並んでいた。当日は関東に寒気が入っていて寒いのなんの。ダウンジャケットを持っていたのが幸いしたけど。

会場に入ると、まずは腹ごしらえ。食事券を持っていたので、とりあえず豚骨ラーメンをすすって。プラスチックの容器だし、小さいし、なんか昔はレストランも豪華だったような気がする。リーマンショック以降は、こんな感じなのかなと思ったりして。ビールを飲みたかったけど、一応仕事なのでぐっと我慢。会場全体の地図をチェックした後は、とりあえず西ホールから見学開始。

時間が十分にある訳ではないので、自分の興味があるクルマや部位に的を絞って淡々と会場内を歩き周ったかな。年を取ったと思うのは、若い頃はモーターショウの会場に入ると、どうしてもコンパニオンの方に先に眼がいってしまって、後で写真を確認すると、クルマを観に来たのか女の子を観にきたのか、どちらか分からないようなこともしばしばあったような。

それがこの年になると、普段お目にかかれないようなプロポーション抜群の美人が目の前に立っていても、イマイチ胸がときめかない。もともと関係ないのだから当たり前といえば当たり前だけど、なんか寂しいなと。年の差がありすぎるからなのだろうけど、自分の中のオトコの部分が退化しているのを如実に実感できるのがつらいような。まあどうでも良い話なんだけど。

帰宅して数日経って娘と会話していると、モーターショウのことが話題になって。なんでもTVで特集があったとか。自分が知らない新技術に触れられても、「いや、見てないよ」と返事をすると、「何しに行ったの?」とダメ出しされたりして。思うに、会場ではそういうコーナーは黒山の人だかりで近づけないのがほとんど。情報収集だったらTVの方がよほどましだなと思ったりして。


紫葉漬け

2011-12-09 05:51:53 | 600 グルメ
またまた京都の大原の話の続き。せっかく京都へ行くのだからと事前にネットでサーチをしてみると、必ず出てくるのが漬物。だからお土産は漬物にしようと決めていた。なかでも大原と言えば”しば漬け”。これは茄子を刻んだ赤紫蘇の葉で塩漬けにしたもの。だから正式には”紫葉漬け”らしいけど。これが寂光院ゆかりの建礼門院徳子とつながっているとは知らなかった。

逸話としては、建礼門院を慰めようと、しそ(紫蘇)と一緒に漬け込んだ夏野菜を里人が差し入れしたそうで、里人のやさしさと、その美味しさにたいへん感動した建礼門院が、しそ独特の色合いと香りから、これを「紫葉漬け(むらさきはづけ)」と名付け、それが現在の"しば漬"になったのだとか。なんか話が上手すぎるような気がするけど、確かに品がある色かもしれない。

それで昼食は漬物づくしにしたいなと事前に調べると、大原には土井志ば漬本舗の本店があり、その中で営業している食事処「漬物茶屋」に、漬物をメインにしたメニューがあることを突きとめて、こりゃ行くしかないなと。だけど寂光院から三千院にまわり、お寺参りを済ませた頃には昼の1時を過ぎていた。お腹も空いて何度近場の別の店で済まそうとしたことか。

というのもバスで来る時に、この店が大原の3つ手前のバス亭の傍にあり、とても歩いて行ける距離ではないことが分かっていたから。自分でもよく我慢したなと。観光を終え、この店に行くためだけにバスでわざわざ大原から花尻橋まで移動。しかも店には客が順番待ちをしていて、結局席についたのが2時頃。ビールを飲んでいると運ばれてきたのが写真の”季節膳”。

こだわった甲斐があり、まさに漬物三昧。ビールの後で熱燗もいただいたりして、昼間から完全に”ひとり宴会”状態。いや堪能したかな。帰りにはお土産としてこの店の紫葉漬けをしこたま買い込んだけど。帰宅して食べたけど、まさにその時の味だったのが懐かしかった。やや残念だったのは、同じ商品を京都駅の売店でいくらでも売っていたこと。まあ仕方ないか。

土井志ば漬本舗 京漬物詰合せ ...

土井志ば漬本舗 京漬物詰合せ ...
価格:1,995円(税込、送料込)



黒楽

2011-12-07 05:50:20 | 650 酒
京都の大原の話の続きだけど、寂光院の紅葉を堪能した後にのんびり山道を下っていると、焼物屋がぽつぽつと軒をつらねていて。その中に小奇麗な店があったので、冷やかし半分で入ってみると、店の奥でカップルが足湯を楽しんでいた。食べものも出していて、なんだか何屋なのか志向がよく分からない店だなあと思ったけど。それから焼物が並べられた棚を眺めて。

こういう店での自分の狙いは決まってぐい呑み。知らない間にけっこうな数が揃ってきていて、季節やその日の気分によってどれを使うか選ぶのもまたおつなもの。その店には10種類ぐらい置いてあったかな。眼に止まったのが写真の黒楽。すぐに買物モードに入ったかな。値札をみると2千円もしなかったので即決。コートのポケットに無理矢理突っ込んで帰ったけど。

あれから1週間。自宅に戻ってしげしげと眺めているのだけど、実に自分好み。手とヘラだけによる「手捏ね(てづくね)」の雰囲気がとても良い。温もりと黒色が見事に調和している。その適度ないびつさがまた渋くて。江戸時代に瓦職人だった長次郎が、千利休の指導により聚楽第を建造する際に使用された土を使って焼いたのが楽焼の始まりとか。

しかし、つくづく黒好きだなあと。色による性格診断というのがあって、抜粋すると”黒が好きな人は、色彩や音、言葉に対する感覚が鋭いアーティストタイプな人が多い”、”黒が好きな人は一人で、好きなことをするのがいちばん向いている”、”みな同じように「右」といわれても右を向くことは本意ではないということが多い”、なんて感じ。けっこう当たっている気がする。

そういえば最近アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズが話題になっているけど、彼がメディアに登場する時に必ず着ていたのが黒いタートルネックのセーター。それには気づいていたのだけど、三宅一生に特注して作らせたもので、しかもその数がなんと500着というのは最近知った。なるほどね、こだわる人はこだわるんだ。しかし上には上がいると思ったっけ。

寂光院

2011-12-03 09:07:57 | 800 観光
先週の日曜日に京都の大原へ。目的はもちろん紅葉狩り。ちょうど月曜日の朝から滋賀で仕事があったので、京都に前泊しなければならなくなって。それなら時期的に絶好のチャンスだなと。当日の朝、暗いうちに支度を済ませ、娘に駅まで車で送ってもらい、京都駅に着いたのが8時半頃。いや、眠かった。ホテルに荷物を預かってもらって地下鉄で国際会館へ。

駅からすぐ傍のバス停には、既に多くの観光客が列を作って並んでいた。やはり京都駅からだとこのルートが最も便利だということを皆知っているんだなと。立ったまま約30分で目的地の大原へ到着。実はこれまで京都での紅葉狩りは、東山、嵐山の2ヶ所は経験していたので、いつか是非大原へ行ってみたいと思っていたので、ある意味でついに、ようやくという感じ。

最初の目的地は寂光院。もう名前からして胸がキュンとなりそう。ここは建礼門院徳子が出家し、晩年住んでいたことでつとに有名。彼女は平清盛の娘で、高倉天皇の妻であり、皇后にあたる。壇ノ浦の戦いで平家が滅亡した際に、自分の母や子と一緒に海中へ身を投げたけど、彼女だけが源氏の兵士に助けられてしまった。その後で幽閉されたのが山奥にあるこの寺。

かつて平清盛が建立した厳島神社のすぐ近くに住んでいることや、来年のNHKの大河ドラマが松山ケンイチ演じる平清盛だということもあって、自分の中ではプチ清盛ブーム。なにやら特別な期待感に包まれながら細い山道を登ったけど。バス亭から歩くこと約20分で寂光院へ到着。そこはこじんまりとした想像通りの寺だった。紅葉としても、まずまずの見頃だったし。

この寺は、平家物語の最後にあたる灌頂巻に出てくる大原御幸(おおはらごこう)でも有名。「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。」という有名な出だしで始まるこの物語が、建礼門院に会うために、この寺を後白河法皇が秘かに訪問する。まさにこの物語の最後のクライマックス。時代の大きな渦に巻き込まれた二人の人間が、静かに言葉を交わす。なんか、渋すぎるなあ、この設定は。当時に思いを馳せるという意味では、この上なく素晴らしい場所だった。