或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

ゆく年くる年

2012-12-31 08:53:01 | 900 その他
今年も今日で最後。正月休みが29日からということで、あっという間に大晦日って感じ。というか、正月を迎えるという気持ちになっていない。年賀状は書いていないし、正月飾りも準備していないし。というのも5月に実母が他界したから。あれから半年強。忙しかったなあ。役所への届出や貯金の解約、四十九日の法要、墓の建立と3ヶ月ぐらいは土日のほとんどを費やした。

90歳を越えた大往生だったし、亡くなる前の半年ぐらいは足腰も立たず寝たきり生活をしていたので、どうして死んでしまったのかという悲壮感より、長生きできて良かったね、ようやく楽になれるねという安堵感の方が、正直なところ強かった。改めて振り返ってみてもその気持ちは変わらない。一昨日に墓の掃除のために家族で出かけたけど、皆もそんな風に見えた。

今年の出来事と言えば、印象的だったのが歌舞伎の中村勘三郎の死。老いを感じさせず、あんなに元気だったのに、あっという間に亡くなってしまって。たまたまTVで、癌が発覚した後に、その後の生活をドキュメントとして放映していたのを観て、よけいにショックを感じたのかもしれない。それからかなあ、20年後に自分もこの世にいないかもしれないと思い始めたのが。

思い出すのが5年前のこのブログの記事。村上春樹の短編小説集「神の子どもたちはみな踊る」(2000年)の中の”タイランド”。初老の女性医師がバケーションでタイのバンコクへ。現地の案内人が彼女へ贈った言葉。「これからあなたはゆるやかに死に向かう準備をなさらなくてはなりません。これから先、生きることだけに多くの力を割いてしまうと、うまく死ぬることができなくなります。少しずつシフトを変えていかなければなりません。生きることと死ぬることは、ある意味では等価なのです。」

写真は”タイランド”つながりで、今年の6月にタイへ出張した時にホテルで撮影したバンコク市内。自分の心の中に、”死ぬるための準備をしておかなくては”という気持ちが宿るようになったのが分かる。その端的な例がサンフレッチェ広島の優勝パレード。一生のうちに優勝パレードというものをもう見られないかもしれないと思うと、どうしても行きたくなってしまって。

ブログを初めて、今月でちょうど丸8年。これからもよろしく。皆様、よいお年を。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

La buche

2012-12-24 05:50:47 | 350 映画
今日はクリスマス・イブ。天皇誕生日の振替休日なので絶好のデート日和だろうな。自分の場合は、祝祭日などはほとんど関係がなく、かたくなに土日休みを貫いている会社なので関係なし。まあこの年になってクリスマスなんて、休みであろうが出勤日であろうが、そんなことはまるで関係ないのだけど。とは言え今日の記事は、この日のためにとっておいたもの。

秋風が吹く頃になると、フランスの作曲家ミシェル・ルグランの曲を自然と聴きたくなる。彼は良い曲をたくさん書いていて、このブログでもいろいろと紹介しているけど、近年の作品となると自分もよく知らなかったりする。そこで半年ぐらい前に調べてみた。するとフランス映画の「La buche」(1999年)、日本語題「ブッシュ・ド・ノエル」の音楽を担当していることが分かって。

DVDが発売されているのを知って、早速TSTAYAでレンタルしようとしたのだけど、マイナー過ぎて置いてなかった。そうなるとムショウに観たくなるというもの。それでヤフオクで落札したのが今年の9月末。実際に観たのは、たしか11月の東京からの出張帰りの新幹線の中だった。エスプリが効いていて、哲学的でもあり、久しぶりにオトナの映画に出会った気がしたなあ。

クリスマスを目前に控えたある家族の物語。監督はダニエル・トンプソン。三姉妹を中心とした人間模様が描かれているのだけど、皆が淋しさを抱えていて。全編を通して共通しているテーマは愛と孤独。シチュエーションとしては、浮気、不倫、別居、離婚といったどろどろしたものばかり。これでもかというぐらいのオンパレードなのだけど不思議に嫌味を感じさせなかった。

そんな映画のバックにさりげなく流れるのがミシェル・ルグランのメインテーマ”La Chanson De Louba”[YouTube]。渋い編曲がちりばめられていて楽しませてくれる。クライマックスはラスト近くで、イブの夜に不倫相手の禿げたおっさんが、身籠っているダンサーの長女に会いにくるシーン。映像的には全く盛り上がらないのだけど、美しすぎる音楽と男と女のやりとりとのギャップがやけに渋くて感動してしまった。

ブッシュ・ド・ノエル [DVD]ブッシュ・ド・ノエル [DVD]

Paul Smith

2012-12-23 07:57:31 | 500 ファッション
年を取るとファッションにも昔ほど執着心がなくなってきている。オスとしての本能の低下をひしひしと感じる今日この頃。かつてはお気に入りの店のバーゲンともなると、会社を半休してまでして開始に合わせて出かけたっけ。いや、懐かしい。とは言っても興味が全くなくなった訳でもなく、機会やタイミングによってはフラっと衝動買いをすることもあったりして。

それがこの間の休日。昔は正月からが冬のバーゲンシーズンだったけど、最近じゃ12月から始まっている。なんてこともよく知らなかったのだけど、近所のブランド専門店のバーゲンを新聞のチラシで知って。たまたまサンフレッチェ広島の優勝パレードがあったので、その帰りに立ち寄ってみた。さすがに店内はごった返していて、まだまだブランド強しって感じだったなあ。

とりあえず財布が古くなっているのでざっとチェック。中ではドルガバが気に入ったけど、なんとお値段が6万円。バブル全盛期ならともかく、ちょっと高いよなと。1Fには他に気を引くものがなかったので2Fへ。スーツや上着のコーナーをひと通り。だけど最近はセミオーダーの心地よさを知ってしまったので、何を見てもぐっとこなくて。セーターとかもシンプルなものがなかった。

そのうち眼に止まったのがグローブのコーナー。そういえば長年使い込んでいるお気に入りの手袋がかなりくたびれてきているなと。その中に黒い本革製でシンプルなデザインのものを発見。手にとって眺めていると、絶妙のタイミングで店員が傍に来て、「サイズが2種類ありますよ」とサポートをしてくれて。他もチェックしたけどブランドロゴとか飾りとか、何かしら施されていたのでパス。結局最初のやつのSサイズを購入。これが写真のポールスミスのAGXA/294A/G20で、値段は1万4千円。

この日買ったのはこの1点だけ。とにかくデザインがシンプル。自分は手が小さくて、ゴルフで言えば21cmか22cmなのでSサイズがピッタリ。それから毎日通勤で使っているけど、イタリア製の革がなかなかしっくりくるし、色合いも良く気に入っている。

J1優勝パレード

2012-12-22 07:32:06 | 450 スポーツ
先週の日曜日の話だけど、サンフレッチェ広島の優勝パレードがあったのでカミさんと一緒におでかけ。前日には独りで釣りへでも行こうかと考えていたのだけど、朝方は天気が悪そうだし、どうしようかなと考えていたら、娘が「明日はサンフレの優勝パレードだよ」と教えてくれて。娘が友人の結婚式へ、カミさんが美容院へとアッシー君としての用事も多かったし。

Jリーグ発足以来20年振りの初優勝ということで、これは逆に今後20年ぐらい優勝がないかもしれないとネガティブ想像が脳裏をよぎったのがきっかけ。その頃は死んでいても不思議はないし。なんてことをあれこれ考えていると、これは優勝パレードを絶対に見ておくべきだなと強いモチベーションが湧いてきて。たまたま当日が快晴だったという状況も影響したかな。

その日はとりあえず自分の会社の駐車場へ車を止めて、歩くこと約10分。パレードがスタートする地点へ到着。既にかなりの人混みになっていた。写真を撮りたかったので広島市の名物である100M道路の南側に陣取って待機。すると14時ちょっと前に選手を乗せたバスが到着。Jリーガーを生で見たのは10年振りぐらいだったかもしれない。いや、久しぶり。

そうこうするうちに、皆がオープンデッキの赤バスへ移動。森崎兄弟や水本の顔が見える。なかでも目立っていたのが今年から加入したDFの千葉ちゃん。他がまだ気持ちの準備ができておらずイマイチ気持ちが乗っていない時に彼だけは全開。顔が大きいだけに目立っていたなあ。さすがにこの頃になると、上空のヘリの音がうるさくなり、四方八方から黄色い声援が飛び始めて、まさにイベントっぽい雰囲気に包まれて。1975年のカープの初優勝パレードに参加できなかった良いリベンジになった。

サプライズは帰宅してから。娘が結婚式の後に友人達とパレードを見に行っていて、なんとTV局にインタビューを受けたと聞いて。数日経ってから、「お父さん、TVに出たよ、DVDにも録画したよ」と興奮気味に話しかけてきて。その録画を見たのが一昨日。コメントはかなりカットされていたけど、親戚を含めてTV出演は初めて。なんか、自分のことのように興奮したなあ。

J-WESTカード

2012-12-12 05:41:59 | 900 その他
ひと月ぐらい前に申し込んでおいたJR西日本のカードがようやく3枚揃った。J-WESTカード、EX-ICカード、それにスマートICOCA。きっかけは会社の事務所の移転。それまではJTBが近くにあって、頼むとすぐに届けてくれていたから。だけど移転後はその恩恵を受けられなくなってしまって。どうしようかと思案していた時に見つけたのがJR西日本の”e5489”。

これはいわば新幹線のネット予約システム。無料で登録できるし、使ってみると座席指定もできるしとても便利。JR東日本やJR東海のエリアまでカバーしているので助かるし。JRというと、かつての国鉄のイメージが強くて、ゆうちょ銀行と同様に、ネット等の先進インフラの整備には前向きに取り組まないだろうと勝手に思い込んでいたのだけど、想定以上に使い易かった。

”e5489”に慣れた頃、広島駅で配られていたのがJ-WESTカードの勧誘パンフレット。何気にもらって読むと、”EX予約によるチケットレス乗車”という文句が目に飛び込んできて。これでモチベーションが上がり、年会費の千円が回収できるかどうかの検証をしないままに申し込んでしまった。それでパスワード等の設定を含めてシステムの全貌を把握できたのがこの土曜日。

判ったことがいくつかあって。まずはEX予約が往復乗車券を扱えない片道専用システムだということ。だから東京出張ではメリットが出ない。別に”e特急券”というのがあって、これと通常の往復乗車券を組み合わせば割引が可能。だけどその場合はチケットレス乗車ができない。これじゃ割引を除けば今までと変わらない。逆に乗車券を駅で別途買う手間が増えてしまう。

おいおい、トータル運賃を考慮すると大阪か名古屋への出張の時しかチケットレス乗車が使えないのかよと。でもまあ名古屋までだと約千円の割引は嬉しいし、ネットで座席指定ができるだけマシか、なんて無理に自分を納得させてみたりして。出張のほとんどが東京以東だけに、改札口をスマートに通過するという優越感はたまにしか味わえそうもないなと。

George Duke

2012-12-10 05:45:30 | 200 ジャズ
先週はずっと出張で、火曜日は東京泊まり。久しぶりにライブを聴きたいなと、スケジュールをチェックしていて目に留まったのがブルーノート東京におけるジョージ・デュークの公演。一度は生を聴いておきたいとかねがね思っていたピアニストのひとり。ただし今回はベースのスタンリー・クラークとのコラボレーションで、他にキーボードとドラムスの4人編成だった。

ジョージ・デュークというのはハービー・ハンコックに優るとも劣らない多彩な演奏スタイルをこなす器用なミュージシャンで、それこそシンセビンビンのフュージョンからコテコテのアコースティックなスタンダードまでなんでもござれ。そんな彼がスタンリーとコラボをしていたのが1980年代の前半。いわばフュージョンの全盛期。かくいう自分もその手の演奏ばかりしていたなあ。

だけど正直なところ、当時彼には興味を持っていなくて。というのも音楽がR&B寄りで、ジャズマインドが感じられなかったから。その彼がジャズに回帰し始めたのは1990年後半に入って。このブログでも紹介したけど、「After hours」(1998年)や「In a mellow tone」(2006年)なんかは、R&Bとジャズのブレンド度合いが最高で、ここ数年における自分の愛聴盤になっていた。

それで今回のライブ。いやな予感がしていたけど、それが当たってしまった。つまり彼は1980年代の古き良き時代の音楽を再現したということ。これは自分が悪い。というのも他の客はそれを期待していたから。もうこれでもかといった感じのゴスペル調の臭いフレーズのオンパレード。逆にスタンリーのベースはフィラデルフィア出身の黒人とは思えない程前ノリがひどくて。

当時のヒットチャートにも顔を出した1981年の名曲”Sweet baby”で大いに会場は盛り上がったのだけど、自分は逆に醒めてしまって。救いはこのステージの唯一のジャズで名曲”On green dolphin street"。スタンリーのアコースティックベースとのデュオ。彼の知的でクールなヴォイシングにホッとしたかな。消化不良のまま終演後すぐに店を後にしたけど、CDを注文しておいた最近のアルバム「Dukey Treats」(2008年)と「Deja Vu」(2010年)が好みのサウンドだったので良い口直しになったかも。



  After HoursAfter Hours In a Mellow ToneIn a Mellow Tone

Dukey TreatsDukey Treats     Deja VuDeja Vu

bar&cafe 志

2012-12-04 05:08:24 | 650 酒
少し前の話だけど、会社の若手を誘って2人で食事と飲みへ。サラリーマンとしては失格なのだろうけど、会社の仲間と食事したり飲みに行ったりするのはあまり得意じゃなくて。その意味ではジジイには珍しく、オンとオフを明確に区別するタイプ。特に最近では、どうせ飲むなら家でという感じで、もっぱら自宅に好みの酒を揃える傾向にある。これはまさにジジイ。

先日ヤフーの記事でみたけど、アンケートで会社の上司と飲みに行きたくない若者が70%以上もいることを知って、なんかホッとしたというか、誘わなくてもいいのかと嬉しかったっけ。それでその若手の話だけど、かなりのシングルモルト好きらしく、「一緒に飲みに行きましょうよ」と以前から誘われていた。それから約半年。いつかはと気にはしていたけど、ようやくその機会が。

きっかけは、「広島駅の近くにシングルモルトが置いているバーを知ってる?」と自分が彼にした質問。「ええ、1軒ですけど」と返事が返ってきて。それじゃそこに行ってみようということに。とりあえず会社の近くの安い居酒屋でおでんやラーメンを食べた後で、いざバーへ。連れて行かれたのが、南口から程近いガード下。この辺りは寂れていて足を踏み入れたことがなかった。

暗い入口のドアを開けると、店の中もやけに暗い。そこが"bar&cafe 志(こころ)"。カウンターの奥に若いマスターが座っていて。それからマスターのオススメのモルトを楽しみながら、しばし自分にとっては久しぶりのモルト談義に花が咲いた。しかしマスターがやけにモルトに詳しいし置いてあるボトルもレア物揃いだし。逆につまみは、おそらくナッツとかの乾き物だけ。

店を出る時に、ライティングされていない看板を発見。あえて照らさないようにしているのだとか。これは相当コアな店だなと。東京とか都会ならまだしも、広島にこんな店があろうとは。これがきっかけで購入したのが自分にとっては初めてのモルト2種類。”グレンドロナック(Glendronach)15年(rivival)”と”ベンリアック(Benriach)12年(sherry wood)”。シェリー香を楽しむ入門酒としては絶好だったかな。


ベンリアック 12年 シェリーウッド 700ml

ベンリアック 12年 シェリーウッド 700ml価格:3,864円(税込、送料別)



牡蠣づくし

2012-12-02 08:40:14 | 600 グルメ
先週の土曜日は、毎年恒例となっているカミさんとの安芸の宮島への紅葉狩り。なんて言っても、実は今年はもう2週間ぐらい前に見頃の時期は終わっていることを知っていた。それでもあまりモチベーションが落ちないのは、実は牡蠣を食べるのがもうひとつの目的だから。広島で牡蠣の出荷が始まるのは例年10月に入ってから。12月までは小粒だけど味的にはベスト。

フェリーはいつものように観光客でごった返していて。人ごみを掻き分けるように商店街の入口へ。道の左右に店が軒をつらねているのだけど、とても活気がある。揚げもみじや焼きちくわ、それに屋台で売っているイカやとうもろこし等、食べながら歩いている人が多いのが特徴。そんな通りをぶらぶら歩くこと約10分。お目当ての”牡蠣屋”へ到着したのは午後2時半ぐらい。

驚いたのは店の前の行列。20人ぐらいはいたかな。店は2階建てで席数も多いし、さすがにこの時間だと空いていると勝手に思い込んだのが甘かった。他の店に行く気がなかったので行列の後ろについて待つことに。すると店員のオバさんが注文を聞き歩いていて。「裏メニューの”牡蠣屋定食”がオススメですよ」とフツーに宣伝していたので、おいおいそりゃないだろと。

というのも昨年この店に来た時に、隣の客が食べていたのがこの定食。牡蠣のいろんな料理が少しずつちりばめられていて、まさに牡蠣づくし。今年はこれを注文してやろうと内心決めていた。それがこの有様。「なんか全然裏メニューじゃなくなってるよ」と愚痴をこぼしながら、4人席で2人ずつの合席へ。しばらくして持ってきてくれたのが写真の”牡蠣屋定食”。

オイル漬け1個、焼き牡蠣2個、牡蠣フライ3個、牡蠣飯の中に3個、赤出汁の中に1個と合計10個。どれもがとても美味しかった。これで2千円とは確かにお得。カミさんもその味に納得したみたい。帰りに宮島口にある有名な「うえの」で名物の穴子飯をお土産に買って帰ったので、なんか広島の秋の味覚を満喫したって感じ。1時間近くも待ったのだけはよけいだったけど。