或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

さしみこんにゃく

2007-06-29 06:29:19 | 600 グルメ
前回、社労士の中間模試を受けた話をしましたが、会場のTACがあるのは広島市の中心部。休日にわざわざここまで出てきてそのまま帰るのはもったいないということで、たいがい立ち寄るのがすぐ傍にある広島そごう。お目当ては写真の生芋こんにゃく。一袋160円。最初に見つけたのは数年前。地下1Fの食品売り場の専門店コーナーでたまたまだけどラッキーだった。

実はけっこう探していました、刺身用のこんにゃくを。田舎に住んでいる親戚から昔もらって食べた味が忘れられなくて。というのも近所のスーパーにもけっこう置いてあって試してはみたけど、なかなかピンとくるのがなくて。売っているのは、たいてい色が白で黄色い辛子酢味噌がついている奴、中には青海苔が入っているのも。何回か試してみたけど食感がまるで違うから。

だから見つけた時は嬉しかった。家に帰って薄造りにして食べると昔食べたのと同じ味。なめらかな中に絶妙なザラザラ感があって、やわらかく弾力がありながらサクサクしている。精粉を使わず着色もしていないため、色も芋本来の薄灰色。なんとも言えない気品がある。これですよ、これ。袋をみると広島県北東部にある比婆郡東城町産の生芋こんにゃく。調べると生産量では群馬、栃木、茨城についで広島が全国第4位で、西日本ではダントツ1位。なるほどね、けっこう有名なんだ。

ホント美味しくて、まるでフグを食べているみたいだとかねがね思っていたら、刺身こんにゃくのことを”山フグ”と呼ぶらしくて、なるほどと納得。それでこんな繊細な味を楽しむ時に大事なのが醤油とわさび。もちろんこだわりがある。いつも愛用しているのが地元広島の川中醤油製の”むらさきさしみ”と名古屋の金印製の”おろし本わさび”。別に特別高価なしろものじゃないけど、けっこういろいろ試してたどりついたのがココ。冷酒と共にいただけば、さながら一流料亭の雰囲気が味わえます。

たかがこんにゃく、されどこんにゃく。どうも食の好みが完全にジジイの域に達しています。

社労士勉強進捗[6月度]

2007-06-27 06:27:28 | 150 社会保険労務士
先週の土曜日にTACで社労士の中間模擬試験を受けてきました。全3回シリーズの第2回目。今月上旬の第1回は選択問題だけだったので、言わば今期初めての完全版受験。ちょっと緊張しましたね、いくら模擬とは言え。前日は酒量も控えめにして節制。というのも年をとってどうも酒が残りやすくなっている。つまり酒量が落ちてきているということ、情けない話だけど。

開始15分前に試験会場に着くと、ほぼ満席。人数は約50名で男女ほぼ半々で30~40代が中心。みんな勉強してるぞという雰囲気が顔に出ていて。中にはえらく目立ったキレイ系の女の子もいて、ちょっと進む道間違ってない?と思ったりして。

今回は正直なところ時間が足りなかった。昨年は模試でも本番でも時間に迫られるということはなかったけど、それだけ問題が難しかったのかなあ。そうなるとそれでなくてもあいまいな記憶が焦りでよけいあいまいに。あれーっ、憶えていたはずなのにといった語句や数字が記憶の外へ。うーん、久しぶりの焦燥感。こりゃやっちまったなと冷たい感触が背筋を走って。

加えて困ったのがトイレ。択一式の試験時間は3時間30分ぶっ通し。普通は途中に休憩がてらトイレに行くのだけど、今回はそんな余裕はまるでなし。さすがに残り1時間ぐらいでもよおしてきて。だけど1分でも惜しい状況だっただけにひたすら我慢。かなりつらかった。それでもなんとか全問解答を埋めたのが残り2分。こんなに頭に血が上ったのはいつ以来だろう。

会場を出たら頭はクラクラ体はフラフラ。広島の名物、写真の路面電車の停留所までとぼとぼ歩く途中に広島市民球場から出てきた客に遭うわ遭うわ。そうか楽天VSカープのデーゲームかと、赤いユニホームをまとい久しぶりの勝利に酔ったファンの笑顔が羨ましかった。

それで結果はどうだったかって?配られた解答と解説を元に自己採点してみると、選択27点択一36点合計63点。予想した程は悪くなかった。昨年のちょうどこの時期の結果が合計41点だから確実に進歩はしている。ただしおそらく合格基準は75点あたりだろうからレベルとしはまだまだ。その意味では良い励みに。泣いても笑っても残り2ヶ月。気合を入れて頑張りますよ。

枯葉の中の青い炎

2007-06-25 05:54:25 | 010 書籍
なんかカッコイイ題名でしょう?2005年に発売された辻原登の短編小説集のタイトル。読みたい気持ちにさせてくれる。前に記事にした恩田陸の「朝日のようにさわやかに」のあとがきで、彼女が短編を書くのに参考にしたと紹介されていたもの。この人も読むのは初めて。芥川賞作家だったんだ。知らなかった。まあ自分は文学にうといから。こういうつながりでもないとね。

全部で5編あって、気に入ったのが最初の「ちょっと歪んだわたしのブローチ」と次の「水いらず」。前者は夫に愛人ができて1ヶ月の期間限定で夫を若い女にレンタルする妻の話。あり得ないシチュエーション。言い出す夫も夫なら、許す妻も妻。なんて思って読んでいたら、最後にはしっかりつじつまが合って。女の性ってホント怖い。ヒドイ目に遭う。光っていた描写が、その妻を誘惑する中年の不動産屋。舞台となる愛人宅が何故か世田谷線の松蔭神社前だったこともあって妙なリアリティ。

後者は山小屋という特別な舞台で、亡き妻の妹と予期せぬ再会をした男が、彼女の匂いに本能を再燃させる話。こちらもかなりシチュエーションに無理がある。でも脳で匂いを感じ取り動物的な性衝動にかられる、その倒錯に男の性を強く感じたなあ。

これら2つの話に共通して出てくるのがラピスラズリ。幸福をもたらす石らしいけど、ここでは強烈なアンチテーゼ。前者では南青山の骨董通りで夫婦が見つけるという設定。いいですね、このシチュエーションはありそうで。ここまで読んだら、ひょっとして全てラピスつながりの連作?なんて思って期待したけど。「日付のある物語」、「ザーサイの甕」、「野球王」、そして表題作。別人かと思える文体と雰囲気。まったく楽しめない。巷では、最後の2つが野球モノとして人気が高いみたいだけど。

まあ読者もいろいろいるわけで。結局読み終えて脳裏に残ったのは勝手に想像したラピスラズリの抜けるようなブルー。街でこれを身につけたドキっとするような女の子にでも出会わないかな、なんてお得意の”つながり”妄想はやめておきましょうね。

ラピスラズリ  枯葉の中の青い炎枯葉の中の青い炎

Ivan Lins

2007-06-22 06:19:39 | 220 POPS
季節が季節だし、そろそろと思っていたMPBの大御所イヴァン・リンス。余談だけどHPは最新盤が聴けるからオススメ。それでまず紹介するのは「Juntos」(1984年)。メジャーの世界に足を踏み入れたという意味で記念碑的なアルバム。これを聴くと彼の音楽の全体像がだいたい掴める。

内容は、それまでのネイティブなローカル系ではなくセルフカバー中心ではあるもののインターナショナル系。ゲストがさながら万華鏡。ジョージ・ベンソン、パティ・オースチンといったクインシー・ジョーンズの仲間やシモーネ、エリス・レジーナ等等との競演。そういえば彼の名前を知ったのも"Velas"とか"Love dance"とかクインシーがプロデュースしたアルバムに入っていた曲だった。

聴くと懐かしいのがそのサウンド。使っているのがYAMAHAのCP-70とDX-7。後者はデジタルシンセの草分け。アナログに代わってデジタルが台頭してきた時代。豪華な競演に目がいく中で、”Bilhete(Message)”での弾き語りは鳥肌が立つぐらい美しい。ピュアなMPBファンには敬遠されそうだけど、彼の先進性とデジタルシンセとの相性がバッチリ。エレピと中域に薄くかぶるソフトなブラスの音色が特徴的。この頃のコンセプトが今の音楽の底辺を流れている気がします。

サウンド以上に際立っているのが彼の作曲家としての才能。このアルバムの”Comecar de Novo”をはじめ名曲が目白押し。その予期できない複雑な小節単位の転調とコード進行は独特。ジャズ系のミュージシャンが好んで取り上げる理由もそこにある。平たく言えば、伴奏なしで鼻歌として歌うにはあまりにも難しいってこと。でもね、これがMPB独特のやるせなさ、せつなさと絡むとたまらない。彼の歌はちょっと、と言う人が多いのでお気に入りの曲とそのカバーを別のシリーズにしますね。

それでもう一枚紹介しておくのは、最近一番のお気に入りで、今年生誕80年を迎える故アントニオ・カルロス・ジョビンへのトリビュート「Jobiniando」(2001年)。同じリオ・デ・ジャネイロ生まれ。二人の曲がだいたい半分ずつ。いつもの濃厚さにジョビン譲りの爽やかさもブレンドされている。海辺の木陰で彼女と二人カクテルを飲む、なんてシチュエーションで聴いたなら最高だろうなあ。

JuntosJuntos    JobiniandoJobiniando

ハナミズキ

2007-06-20 05:53:45 | 900 その他
広島は先週の木曜日から梅雨入りしています。今年は全国的に遅いみたい。幸い深刻な水不足になったことがないので、長いよりは短い方が個人的には嬉しいけど。この時期ならではの紫陽花を見ながらふと気がついたのが、家のメインツリーであるハナミズキの花が今年は咲いていないこと。まだかなとたまに思ったこともあったけど、さすがに心配になって過去の写真を見てみてみると、だいたい5月上旬には咲いている。ということはもう咲かないのか、でもなんで?という素朴な疑問が。

上の写真は最近撮ったもの。葉は健康そうな色をしているけど。ネットで調べると、日当たりが悪かったり栄養が不足している場合によくあるらしい。そう言えば買ってから堆肥とかメンテをやった記憶がない。初代のハナミズキは、何にもしなくても毎年キッチリ白い花が咲いたから。それで近所の園芸店に行っていろいろ聞いたけど、今年はもう手遅れらしい。ちょっとがっくり。

下の写真は少し前に咲いたミニバラ。今年はアブラムシがつき始めた頃にクスリでしっかり除虫したからか、その後は目立った虫食いはなし。何もしなくても何回も花をつけてくれるから助かるし、その深紅の花びらは美しくてホント惚れ惚れする。

深紅といえばカーネーション。いつも母の日はシクラメンとか鉢物を贈っていたけど、今年は切花でいいかと花屋にいくと、これがけっこう高価。20本ぐらいの花束にしようとイージーに考えていたのが大間違いで、結局10本足らず。節約しすぎたか。それを考えると、よく映画やTVのラブストーリー物で大きな花束を見るけど、あれって金銭的にも勝負をかけているんだなあ。

つらつら考えると、ここ数年は資格の勉強ばかりしていて、知らないうちに気持ちに余裕がなくなっている。花とかに目がいかないもの。昔は春には色とりどりのサフィニアを鉢に植えて毎日水や肥料をやって楽しんでいたのに。いけませんね。なんて言いながら、この休みにヘンケルスの園芸ばさみをバーゲンで思いだしたように買ったりして。早く試験が終わらないかなあ。


健康バイク

2007-06-18 05:50:13 | 540 モノ
1ヶ月ぐらい前から健康バイクを再開しています。狙いは話題のメタボリック症候群の予防。毎年受けている定期健康診断でいつも引っかかっているのがγ-GTPと中性脂肪。それならばと運動不足解消にもなるしと数年前に購入。わざわざ店舗まで行って実際に物をチェックして。あまり安いのはすぐに壊れそうだったので自転車と同じ作りのものにしたけど、これは正解だった。

最初の1年間ぐらいはまめに使ったけど、ちょっと改善がみられた後は意欲が減退。そのうちによくある健康器具のほったらかし状態に陥って。再開したきっかけは、カミさんが手に入れたDVD。中味は「Billy’s Boot Camp」というエアロビクス系のダイエットプログラム。けっこうブレイクしていて有名らしいけど、1週間でウエストを絞れるのがウリだとか。なんだか触発されちゃって。でも自分がこれをやる訳にいかないから、その代わりにと目をつけたのが粗大ゴミ化していた健康バイク。

いちおう軌道に乗っています。脈拍を120から140の範囲に固定した状態で約45分エネルギー消費が約150キロカロリー。これを週2~3回。居間でTVの録画を見ながら。有酸素運動としては最低限のレベルだと思うけど、まあこれが精一杯ってところ。

それでメタボリック症候群について正確に知らなかったので改めてチェックすると、必須条件であるウエストはクリアしているし、選択条件も脂質はNGだけど他はOK。ちょっと安心はしたけれど、これで気を抜くことなくできるだけ長く続けたいですね。

<メタボリック症候群診断基準>
メタボリック症候群→必須条件×選択条件(3つのうち2つ以上に該当)
 
<必須条件>内臓脂肪の蓄積量
ウエスト男性:85cm以上 →76cmでOK。
<選択条件>
①脂質 中性脂肪(TG:高トリグリセライド血症):150mg/dl以上 →190mg/dlでNG
      低HDLコレステロール血症:40mg/dl未満 →120mg/dlでNG
②高血圧 最高(収縮期)血圧:130mmHg以上 →116mmHGでOK
       最低(拡張期)血圧:85mmHg以上 →72mmHGでOK
③空腹時血糖 早朝空腹時血糖:110mg/dl以上 →103mg/dlでOK

Billy's boot camp EliteBilly's boot camp Elite

どんど晴れ

2007-06-15 05:52:26 | 370 テレビ
前回藤原紀香の結婚式の話をしたけど、今日はそのつながりで女性に関する話。よく見ている月曜日の夜の人気TV番組「SMAP×SMAP」の人気コーナー”ビストロスマップ”。これに女性雑誌JJのモデルが3人出演していて。正直言って、彼女達が?とビックリ。自分の中のJJモデルと言えば、お嬢さんでありながらセンスがあって遊びも知っているセレブのイメージだから。

そのうちテロップに同じ女性雑誌CanCanのモデルの写真が写って。さしてキレイとは思わなかったエビちゃんやモエちゃんが、この時は美しく見えた。無意識に比較したかなあ。それでその次の日だったか、ミス・ユニバースで日本人がグランプリに輝いた記事がネットニュースで流れて。画像を見て、ええーっ彼女が?と再びビックリ。マジで?おいおい、なんか違うだろ。

その後が藤原紀香の結婚披露宴のTV放映。さすがに老いは隠せないと思いつつもその一方で、やっぱりこのレベルだよなモデルとかミスコンは、と思ったのも事実。腐っても鯛じゃないけど、やはり国家だけではなく品格というものがねえ。

なんてことがあった週末の土曜日、居間のTVに写っていたのがNHKの朝の連ドラ「どんど晴れ」の再放送。ドキっとするぐらいのキレイ系の女の子が大写しになっている。ヒロインは比嘉愛未(ひが まなみ)。初めて聞く名前。2千人以上が参加したオーディションで選ばれたとか。しかもなんと元JJモデル。これですよ、これ。別に自分のタイプじゃないけど。なんかようやくもやもやが吹っ切れて。

調べてみると、このドラマからはそうそうたる女優さんが育っている。うっすら自分の記憶にあるのは、「繭子ひとり」(1971年)の山口果林、「藍より青く」(1972年)の真木洋子、「北の家族」(1973年)の高橋洋子ぐらい。知らなかったけど、他に沢口靖子、鈴木京香、安田成美、松島奈々子、竹内結子、等等すごい面子。有名女優の登竜門なんですね。すっかり見直したなあ。

どんど晴れ―連続テレビ小説どんど晴れ―連続テレビ小説

バカラ マッセナ

2007-06-13 06:04:01 | 520 アンティーク
ちょっと前にあった国民的行事?らしい藤原紀香の結婚式。帰宅したらTVで放映していたので一応見ました。別に興味はなかったけど、まあ話のネタということで。場所が神戸にあるホテルオークラということで、やっぱりねと納得。ポートタワーとのツーショットはやはり絵になる。それにしてもこのホテルは、やたら中国・香港系の小金持ちの団体が多くてうるさいのがたまにキズ。

TVを見ていてビックリしたのは、新郎の陣内がピアノを弾いたこと。その時間帯で視聴率が最も高かったとか。何ヶ月か猛特訓したらしいけど。練習風景の運指を見たら空恐ろしくなって。こんな状態で、あれだけ人が集まって、しかもTVで全国放送される中で、こりゃ絶対に途中で止まるだろうなと。でも意外になんとか弾いてたなあ。何かちょっと仕掛けを感じたけど。

なんて世間話は置いといて、何日か後の朝の出勤前。その結婚式の引き出物がTVで紹介されていて。有名な和歌山の梅とか、地味だけどなかなかの品揃えと感心していたら、目玉として紹介されたのがバカラのグラス。ペアで記念のネーミング入り。たぶん花柄のセビーヌオールドファッション。好みじゃないけど。でも引き出物としてはアリ。将来お宝になるだろうし。

前置きがどうしようもなく長くなったけど、派手な結婚式の影響なのか?その夜になんとなく使ったグラスが、バカラつながりのマッセナ。ナポレオンに“勝利の女神の申し子”と呼ばれた陸軍元帥マッセナの名を冠したこのシリーズ。発表が1980年だから割と新しいモデル。デザインは典型的なモダンで、おそらく高級ホテルのバーなんかでは、一番よく使われているでしょうね。

それで思ったのが、自分にはこのグラスは似合わないってこと。元バンドマンだもの、あまりに対照的で。デビ婦人とか叶姉妹が持って高笑いでもしながら持ってりゃちょうどいい感じ。ということで、どうも冴えないオチになってしまってすいません。

セビーヌ     マッセナ

神の子どもたちはみな踊る

2007-06-11 06:47:09 | 010 書籍
最近だんだん村上春樹に波長が合ってきている自分に気づきます。でも変わったのは自分というより彼の作風。端的に言えば、若い頃に見られたひけらかし系自己顕示がおさまり、語り口が自然体になり枯れてきた。先に紹介した「東京奇譚集」(2005年)や「アフターダーク」(2004年)でそう感じ、今回紹介する「神の子どもたちはみな踊る」(2000年)でそれが確信に。

初の連作短編集で、共通するテーマが1995年1月に起きた阪神大震災。同じような連作で田口ランディの「被爆のマリア」(2006年)を連想させたけど。かなり距離を置いて間接的にテーマを扱っているという点でよく似ている。「UFOが釧路に降りる」、「アイロンのある風景」、「神の子どもたちはみな踊る」、「タイランド」、「かえるくん、東京を救う」、「蜂蜜パイ」の6編。テイストがうまくバラけていて、懐の広さと卓越した技量を感じる。現実と非現実、過去と未来、各々のコントラストが素晴らしい。

特に気に入ったのが「タイランド」。小説を読んで体が熱くなったのは久しぶり。50歳前後と思われるバツイチ女医師さつきが学会へ出席するためにタイへ。世話をする現地人がガイド兼運転手のニミット。さつきは原色の花が咲き乱れる山中の高級リゾートホテルに滞在する。プライベートプールでの一人きりの完璧な休息。そんな時ニミットが引き合わせたのが謎の老婆。美輪明宏みたいなスピリチュアル系?彼女の話の中に出てくる石と蛇。浮き彫りになる、さつきの心の中の深い憎しみ。

印象に残ったのがニミットの言葉。「生きることだけに多くの力を割いてしまうと、うまく死ぬることができなくなります。少しずつシフトを変えていかなくてはなりません。生きることと死ぬることは、ある意味では等価なのです。」 さつきが帰国の機内で思い出すプールで見上げた空と、エロル・ガーナーが演奏する“四月の思い出”のメロディー。洗練されたクールな感性だなあ。

これはどうも遅まきながら、村上ファンの仲間入りをしたかもしれませんね。


Concert by the seaConcert by the sea  神の子どもたちはみな踊る神の子どもたちはみな踊る

Sergio Mendes

2007-06-08 06:07:23 | 220 POPS
夏が近づけばラテン、ということで今日紹介するのは最近購入してよく聴いているセルジオ・メンデスのアルバム。「Live at EXPO'70」(1970年)、「Oceano」(1996年)、「Timeless」(2006年)の3枚。最初と最後では録音時期に40年近い時の隔たりが。なにせ自分が中学生の時に小遣いで買ったLPが、大ヒット曲“マシュ・ケ・ナダ”が入った「Sergio Mendes & Brasil '66」(1966年)だから。

友人の家で彼自作のオーディオで初めて聴いた時の感動は今でも忘れない。思うに、テンションを含んだジャズのコードワークと、パーカッションを中心としたクリアな音質が、当時ビートルズとかポップスを聴いていた耳にはとても新鮮で、これがおそらくジャズの道に入るキッカケ。だからか強い思い入れがある。なんていいながら、ここ数年はご無沙汰していたけど。

懐かしかったのは最初のライブ盤。EXPO'70というより大阪万博といった方がピンとくるけど、実は自分もいちおう出演しました、野外ホールに。出番は夜だったなあ。都道府県対抗大規模演芸会という雰囲気の催し物。並んで待って終わればハイ次って感じで。だから数曲演奏してあっけなく終了。ライトがまぶしくて客席がよく見えなかったのを子供心によく憶えている。

話がそれたけど、セルメンもこの頃はラテン色がまだ強かった。ダブルヴォーカルにピアノトリオとパーカッションが加わっただけというシンプルな構成。演奏は荒いけど、その分ホット。ライブ盤が少ないから貴重ですね。この後ぐらいからかな、歌を忘れたカナリアじゃないけどメジャーなヒット曲をカバーする小洒落たポップ路線に傾倒していったのは。まあ時代の流れだから。

特に気に入ったのが「Oceano」。シンセを多用し音色はカラフルだけどマインドはラテン。捨て曲も多いけど、ジョビンの”Anos Dourados”と自己の”Puzzle Of Hearts(Un Oceano di Silenzi)”の各々2バージョン計4曲、そしてイヴァン・リンスの”Anjo De Mim”が素晴らしい。最新作の「Timeless」も意外に楽しめた。クラブ色が強いから、若い子とのドライブ用には使えるかも。

でもね、これだけ長い間現役で活動している彼はスゴイと思います。
Sergio Mendes & Brasil '66Sergio Mendes & Brasil '66 Live at EXPO’70Live at EXPO’70

OceanoOceano   TimelessTimeless