或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

Joanna Pascale

2016-03-20 11:35:40 | 200 ジャズ
あれは今年の1月のこと、米国の女性ジャズヴォーカリストであるジョアンナ・パスカルから突然のメールをもらったのは。内容は、3月に日本ツアーをやるから、良かったら聴きに来ないかというもの。飛び上がるぐらい嬉しかったなあ。というもの、彼女が僕のことを憶えていてくれたのは勿論、それ以上にプレゼントした黒い扇子を大事に使っていると書いてあったから。

自分のブログを確認すると、東海岸を一人で旅行したのが2011年8月だから、およそ4年半前。暑い中をNYからフィラデルフィアまでアムトラックで移動し、夜に彼女がハコで入っていたホテルへ出向いた。ファーストステージの後に近寄っていき、ファンであることを伝え扇子を渡すと、なんとセカンドステージの後に、わざわざ僕の席まで来て話をしてくれた。いや、懐かしい。

困ったのが日程調整。3月11日の静岡「Lifetime」を皮切りに、3月20日の町田ホールまで、2週間の間に8ヶ所でのライブが予定されていたけど、ちょうどこの時期に台湾と新潟への出張が重なっていて。ひょっとして無理かもしれないと諦めかけた時に、台湾から日本への観光客が殺到していて、帰国するのに広島や福岡の空港への直行便の席が取れないことが分かって。

ひらめいたのが、どうせ翌日は新潟だし、中部国際空港を使えば、その晩に予定されている名古屋「STAR EYES」でのライブに間に合うかもというアイデア。台北発が昼12時で、名古屋着が15時過ぎのフライトを見つけた時は嬉しかった。それで名古屋駅近くのホテルを予約し、その晩の夜19時にそこから地下鉄覚王山駅へ。店へ入り少し待っていると彼女が現れて。

すぐにステージが始まったけど、音楽スタイルは昔と全く変らず、いわゆるコアなメインストリーム。ピアノのジム・リドルとのデュオだったけど、NYの匂いがダイレクトに感じられ素晴らしかった。サプライズはその後。2列目の席だったけど、終わるとすぐに僕の所へ来てくれて。自分のスマホを横にいたエージェントへ渡し、肩を抱いてツーショットまで撮らせて。勿論僕のスマホでも撮ってもらったけど。準備していた萩焼きの湯呑みをプレゼントすると大喜び。かけがいのない最高の夜になった。


追悼 菊池雅章

2016-01-30 18:28:46 | 200 ジャズ
昨日のこと、疲れて帰宅した後でネットをチェックしていて、ひょんなきっかけで知ったのがジャズピアニストの菊池雅章の死。享年75歳。昨年7月7日にNYで療養中に病死したとのこと。知らなかった。つい、ぐっときてしまった。彼は自分が高校生の頃、ジャズに夢中になっていた時に最もあこがれていたミュージシャン。新主流派として、当時の日本のジャズ界を牽引していた。

自分のブログを確認すると、2005年に彼に関連して記事を4回ほど投稿している。それくらい思い入れがあった。今日ネットで探していると、ECMレーベルのFacebookに彼の記事が掲載されていることを知った。上の写真はそこに掲載されていたもの。おそらく死の少し前のものかなあ。背景がNYだから。自分の想い出として、その記事をそのままここへ掲載しておこう。

Masabumi Kikuchi (1939-2015)

Pianist Masabumi Kikuchi, one of jazz’s most original musicians, has died in New York, aged 75. Born in Tokyo, Masabumi Kikuchi, known to musicians everywhere by his nickname Poo, played with Lionel Hampton and Sonny Rollins while still a teenager, and made his recording debut in the early 1960s with Toshiko Akiyoshi and Charlie Mariano. In the 1970s he collaborated with Gil Evans and Elvin Jones and led his own groups, drawing influence from Miles Davis, Duke Ellington and Thelonious Monk, as well as from Stockhausen, Ligeti and Takemitsu. Although he recorded only one studio album for ECM - “Sunrise” released in 2012 - he was an inspiration for musicians associated with the label, including Gary Peacock, Paul Motian and Thomas Morgan, admired for his rigorous individuality and his determined distance from all trends. In his last years Poo began to play a more inner-directed music, pursuing what he termed “floating sound and harmony”, and which he documented on many private recordings. “I’m more free now”, he announced at 70, “because I started believing in myself. When I sit down at the piano I do not prepare what I will play nor do I think about how to play, and I believe I found the way of putting out something new, and I guess I could call it my own”.

今でもはっきり憶えているのが、たしか高校3年の時に広島市で彼のバンドのコンサートがあって、それを仲間と聴きに行ったこと。終演後にずけずけと楽屋を訪ねていき、英語の参考書の裏表紙にサインをもらった記憶がある。そんな宝物をずいぶん前に無くしちゃったけど。振り返れば、あの頃は熱かったなあ。寝ても覚めてもジャズ漬けの毎日だったから。

なんだか悲しい。有為転変、諸行無常。改めて聴いた愛聴盤「EASTWARD」の中の”Little Abi"がこの上なく美しかった。

イーストワード(期間生産限定盤)イーストワード(期間生産限定盤)

Blue Live 広島

2015-11-12 17:15:18 | 200 ジャズ
少し前の話だけど、知り合いの先輩から「息子のライブがあるから来てもらえないかな」との誘いが。実は昨年12月にも同様の誘いがあって聴きに行っていた。今回も同じメンバーらしく、自分が好きなオルガントリオだし、これは行かなきゃと。思い出せば、前回はちょうどクリスマスシーズンで、最後の方のヴォーカルバージョンだった”The Christmas Song”をよく憶えている。

前回と違ったのがライブハウス。前回は都会の雰囲気が漂う広島市街にある高層ビルの中にあるお店。そんなに広くなく、客を詰め込むためにテーブルが除去されイスがびっしり並べられていた。今回は郊外で、広島港沿い。初めての場所だったけど、駐車場に車を止めて入口へ向かうと、すぐ前が海だったのでビックリ。いわゆるウォーターフロント。洒落てるなと。

サプライズはその後。受付を済ませてホールに入ると、何処かで見たような光景が。これって六本木のミッドタウンにある“ビルボード東京」”に似た造りじゃないのかと。天井が高く、さすがに2階席はないものの、テーブルの並べ方や照明の当て具合、内装の色使い等も、ほとんどそっくり。広島にこんな素敵なライブハウスができたなんて知らなかったなあ。

連れの友人と最後列の長いテーブル席の端に並んで座ってドリンクを飲んでいると、しばらくしてステージが始まって。ほぼ満席で、知り合いや息子さんの親戚筋や同窓生が沢山いらっしゃっていたようで、掛け声も和気あいあいでアットホームな感じ。微笑ましかったなあ。音楽的には、ジャズをベースとしながらもR&Bよりのファンキーな調子の曲が多かった気がする。

2ステージがあっという間に終わり帰路についたけど、同伴者は前回と同じで、彼女と付き合い始めてもう1年。この手の音楽は若い子にはつらいだろうなあと思いながら、嫌な顔ひとつせずつきあってくれて。そうそう、初めて聴いて気に入った曲”One”が入った、このバンドのオルガニストである金子雄太がメンバーとして参加しているバンド”Aquapit”の3rdアルバム[YouTube]「Orange」を後で購入。これも素晴らしかった。

Orange オランジュOrange オランジュ

同窓会

2015-09-19 09:36:20 | 200 ジャズ
少し前に娘からLINEで、「シルバーウィークに名古屋へ行くよ」との連絡があって。初孫がもう9ヶ月目に入ったということで、亡くなったカミさんの妹の家に旦那と一緒に遊びにいくとのこと。ちょうど自分は出張していて、金曜日の午後に東京から広島へ帰るだけの予定だった。これは名古屋で途中下車して、翌日娘達に合流すればちょうどいいじゃん、なんて考え始めて。

となると金曜日の夜に、久しぶりに大学時代の悪友達と飲む良い機会だなと、自分のFBをいつもチェックしてくれている友人へ打診を。するとOKとの快い返事が。しかも他にもう2人の参加を調整してくれていて。東京で15時過ぎの新幹線に乗り、名古屋へ着いたのが17時。ホテルへチェックインし、シャワーを浴びて、いざ待ち合わせの居酒屋「座座 本店」へ。

18時ぴったりに店へ入ると、友人が出迎えてくれた。とりあえず2人で飲み始めて。自分は、せっかくなので名古屋名物をと、味噌のどて煮、味噌カツ、手羽先、さらには三河湾の大アサリと、かつて食べ親しんだメニューがずらり。いや、美味しかった。そのうち残りの2人も参加して、大学時代の思い出話や、他の悪友達の最近の状況等の話に花が咲いて。

かなり酔いがまわった頃に、自分から「ジャズを聴きに行こう」と誘い、タクシーに乗って東桜へ。実は事前に、新幹線の中でその日の夜のライブの予定をネットで調べていると、前にこのメンバーで行ったことがある「Caballelo Club」でピアノトリオが予定されていることを見つけて。しかもそのベーシストが、かつて大学時代に仲良しで一緒に演奏していた仲間だった。

店へ入ると、ちょうど1stステージが終わる頃。ウン十年振りに出会ったせいか、なんか妙に感激したなあ。彼も自分のことを憶えていてくれて。2ndステージでは知っている曲のオンパレード。皆が上手くて、ほぼ満席の客も大いに盛り上がった。サプライズは帰り際。店の方が同窓会というと記念撮影をしてくれて。それが上の写真。改めて眺めると、皆ジジイになったなあ。



松居慶子

2015-06-27 08:00:00 | 200 ジャズ
あれは先週の火曜日のこと、”夢番地”というコンサートのチケット販売のサイトからメールが来て。このサイトへ登録した記憶がないけどと思いながら読むと、コンサートモニター招待の案内で、そのアーチストというのが松居慶子だった。翌日が電話の受付日で、昼過ぎに忘れていたことに気づき、すぐに電話してみると、まだ間に合ったみたいだったので2名分を予約。

彼女は日本ではあまり馴染みがないかもしれないけど、全米ビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ部門において日本人初の第1位を獲得したこともある、世界的に有名なコンテンポラリーピアニスト。彼女のルーツはクラシックであり、ジャズマインドは良くも悪くもほとんど感じられず、自分の好みではないのだけど、活躍は昔から知っていてずっと気になっていた。

本番の木曜日に友人を誘って会場である広島ゲバントホールへ。あいにくの雨模様だったけど、客席はほぼ満員。楽員構成がちょっと変わっていて、彼女のピアノとベース、ドラム、そしてチェロという組み合わせ。でもプログラムが進むにつれてその意図が理解できたかな。アメリカンな曲調であっても、やはり彼女のルールであるクラシックの風味が感じられたから。

実は彼女との出会いは古くて。20代に、今のAKBのような”COSMOS"というキーボードトリオの一員だった頃、ヤマハの仕事で知り合った。当時は旧姓の土居慶子だったけど。メンバーの中では一番オトナっぽくて色気があったのをよく憶えている。それから数十年後、まさか2000年に、全米スムースジャズ賞最優秀女性アーティスト賞を取るなんて。サプライズは、それから15年後に、まさか広島で実物の彼女と会えるなんて。1961年生まれだから今は53歳ってことか。出会ってから30年以上。

それでコンサートのアンコールで最後に弾いてくれたのが「Deep Blue」という曲。とても女らしく叙情的でピュアな作風で、そのしっかりしたタッチに、彼女の長年の音楽生活が強く感じられ素晴らしかった。しみじみした気持ちで会場を後にしたけど、なんていうか、学生時代の恋人に再会したような、そんな切ない気持ちに包まれたかな。後で買ったCDは自分の宝物になりそう。

水の妖精/「Deep Blue」ソロピアノ・バージョン水の妖精/「Deep Blue」ソロピアノ・バージョン

The Christmas Song

2014-12-30 07:24:40 | 200 ジャズ
少し前のジャズネタ。普段から自宅や車の中で聴いているにもかかわらず、新たにCDを購入するでもなく、刺激が少なくなっている。そんな時に会社の関係で誘ってもらったのがジャズオルガントリオのライブ。というのも、知り合いの息子さんがこのトリオのドラマーだったから。4年前にも同じような広島凱旋ライブがあり聴きに行ったのをよく憶えている。

東京で音楽活動をされていて、たまに出張でライブを探していると彼の名前を見かけることもあり、かつてプロミュージシャンを目指していた自分としては、ジャズで飯を食うなんて立派だなと思ってしまう。チケットをもらった時に確認すると、場所は広島クリスタルプラザという有名な高層ビル。そこの19階にあるのがライブハウス「Live Juke」。知らなかったけど。

当日仕事が終わると速攻で友人と合流して店へ。既に大勢の客が来ていたけど、なんとか席を確保。HPではテーブルが置いてあったけど、この日はイスがところ狭しと並べられていた。後で聞くと、客数が多い時はイスだけのセッティングになるのだとか。最近はどうも贅沢になっていて、例え良い音楽でもゆったり楽しみたかったりするから、ちょっと残念だった。

肝心のライブだけど、想像以上に素晴らしくて。ていうか、ハモンドオルガン、ギターそしてドラムというオーソドックスなトリオを生で聴くのは初めて。特にハモンドオルガンがウォームでとてもリッチなサウンドを奏でていた。サプライズはインスツルメンタルだけかと思いきや、オルガニストとドラマーが各々歌ってくれたこと。しかもご愛嬌でハモってくれたりもして。

自分にとって最高のプレゼントだったのが、アンコールでオルガニストが歌ってくれた”The Christmas Song"[YouTube]。実はこの曲をそれまで知らなくて。ぐっときたので帰宅して調べるとメル・トーメ作の名曲で、1946年にナット・キング・コールが唄いミリオンセラーになっていた。なんか、ライブに行って良かったなと。クリスマスの前に、こんな素敵な曲にめぐり逢えたなんて。

Merry ChristmasMerry Christmas

AVENUE

2014-03-11 05:58:08 | 200 ジャズ
倉敷に行って良かった話の第2弾。美観地区のそれらしい細い路地を歩いているとライブらしき音が漏れ聴こえてきて。長年音楽をやっていると、CD等を再生しているのかライブなのか、空気の振動というか、そういうものからなんとなく分かるから不思議。店の前に来ると、さすがにライブをやっていることを確信。そこで壁に「AVENUE」という名前の看板を見つけて。

店の外からちょいと聴いただけど、それなりの腕を持ったバンドの演奏で、つい中に入りそうになったけど、ライブの開始が昼間の2時に対し、もう夕方5時ぐらいだったので、また今度最初からちゃんと聴きたいと思い、とりあえずパス。帰宅してネットで調べると店のHPを発見。ライブスケジュール等が掲載されていた。

次の訪問は2週間後の土曜日。ライブは夜8時からでピアノトリオというのを知っていたので、とりあえず近くの店で夕食を済ませ開始の少し前に入店。想像以上に広くて、ちゃんとグランドピアノが置いてあった。さすがに大都会の洒落た雰囲気ではなかったけど、それはご愛嬌。年配の方が3人程、カウンターにどっかり腰を据えて待っている姿が、なんか微笑ましかった。

フォアローゼズのボトルをキープして水割りを作って飲み始めた頃にライブがスタート。PAも良くて、これはけっこう本格的なライブハウスだなと感心したけど。演奏のレベルもまずまず。特にピアニストの若い男の子のフレーズが初々しくて好感が持てた。曲の合間に彼がMCをやるのだけど、これがまた雰囲気を和ませてくれて。「美観地区でジャズかよ」と嬉しくなってきて。

極めつけは、途中で自分が大好きな"Emily"(YouTube)が流れ始めた時。「おいおい、どんだけ趣味がいいんだよ」と、あまりの感激に涙が出そうになった。こんな若い子がジャズをやってくれていて、ありがとうという気持ちがしみじみ湧いてくると同時に、自分の若い頃とダブらせたかなあ。そんなこんなで、すっかり酔いが回り、とてもハイな気分で帰路についたけど。


Re: Person I KnewRe: Person I Knew

スタインウェイ

2013-11-25 05:11:06 | 200 ジャズ
先週の日曜日は、自身のソロコンサート。場所は広島では最もメジャーな、旧厚生年金会館[現広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)]。2千人も収容できるこんな広い場所でジャズのソロピアノを企画するなんて、プロモーターもどうかしてると思いながら、熱望されたのでやむなく引き受けた。キース・ジャレット以来ということなので、その方が緊張したけど。」

なんてコメントを一度で良いからしてみたいなと思いつつ、全て妄想の話。だけど写真は合成じゃありません、ホンモノ、それと場所も。種あかしをすれば、半月ぐらい前、朝起きて新聞を読んでいると、ある記事に目が止まって。この会館の自主事業で”コンサートホールでピアノを弾こう”という企画が紹介されていた。一般市民にホールとピアノを時間貸しするというもの。

なんかピンと体に衝動が走り、その日のうちに事務局へ電話して即予約。広島市民だと1時間2千円で、それ以外だと2千5百円。これは安い。ただしひとり1時間まで。それからあれこれ考えて決めたのが、せっかくのチャンスだから撮影会も兼ねてやろうと。ということで娘夫婦に頼み込み、娘にはデジカメで、娘婿にはビデオレコーダーを渡してカメラマンになってもらって。

当日会場へ行きロビーで待っていると、前の人の演奏が壁越しに聴こえてきて。おそらく音大生か何かで何曲かクラシックの独奏曲を通しで練習していた。それが終わりいよいよ自分の番。ステージには2台のピアノが置かれていて、スタインウェイのD-274とヤマハのCFX。まずはD-274で、おもむろに自分のオハコのバラードである”Meaning of the blues"を。

驚いたのは音量。よく響くこと。フツーに弾くだけでホールの隅々まで伝わっていくって感じ。D-274はスタインウェイのフルコンサートグランドとしては最高峰の楽器で、価格は約2千万円。上品でおとなしいCFXと比較すると、とにかくよく鳴り、同時にタッチによる音の表情の変化が付けやすい。いや素晴らしかった。久しぶりにミュージシャン魂が昂ぶったなあ。

音食

2013-10-15 05:30:58 | 200 ジャズ
いやあ、秋になった。というか、ようやく秋らしくなったというか。この夏がいやになるくらい暑かっただけに、つい最近までそれが続いていただけに、なんか安堵したというか。この土曜日にまだまだ暑い東京から広島に帰ってきて、駅に降りた時の爽やかな空気にその雰囲気をハッキリ肌で感じたのだけど、そうなると聴く音楽も徐々にラテンからジャズへシフトかなと。

実はそのきっかけが既にあって、2週間ぐらい前だったか、いつものように会社から広島駅方面へ歩いて帰っていく時の話。橋を渡り、エスカレータで地下街へ入っていくと、広大なCD売場が設置されていて。4店舗ぐらいが共同で開催しているイベントみたいだったけど、暇だったのでちょっと寄ってみようかと。想定以上にジャズ系のアルバムが置いてあったのには驚いた。

それで食指が動くものがあったので、4枚をチョイスして購入。その中の一番のお気に入りがピアニスト、ビル・チャーラップのビレッジ・ヴァンガードでのライブ盤。2007年の録音なので割りと新しい。レギュラートリオの息がピッタリで、スタジオ録音よりリラックス、かつ大胆に演奏しているのがよく分かる。”Autumn in New York"なんて、まさに今の季節にピッタリだし。

個人的に気に入ったのがラストチューンの”Last night when we were young"。しみじみとしたバラードで、音数がとにかく少なくて、しかも魂が込められている。ライブなので、客の話声が良い意味で音と音の間を絶妙に埋めてくれている。琴線に触れるとはこういうこと。この人って日本人に馴染みのない地味で渋いスタンダードを好んで取り上げる傾向にあるなと。

アルバムに触発された訳ではないのだろうけど、これをきっかけにやたらピアノが恋しくなったのか、出張でよく行く新潟県長岡市にあるJazz Cafe「音食(ねじき)」に行く度に弾かせてもらうようになって。マスターがテナーサックスを吹くのでデュオで楽しんでいる。最近ではお互いのクセも分かってきて、まさにインタープレイ。再びジャズづいてきた今日この頃って感じかな。

Live at the Village VanguardLive at the Village Vanguard

Time Alone

2013-09-10 05:24:51 | 200 ジャズ
今年の夏は嫌になるくらい異常に暑い日が続いたのだけど、それを乗り越えるためには音楽しかないなということで、けっこうCDも買っていて。そのほとんどがラテン系でボサノバが中心。しかも全部が女性ヴォーカル物。通勤時、家からJRの駅まで、さらには駅から会社まで、それぞれ約15分の徒歩は、汗が滝のように噴き出るつらい時間だけど、少しは紛れたかな。

そのCDの中で、最もヘビロテになっていたのが、イリアーヌ(Eliane Elias)の「Dreamer」(2004年)。ストリングスをバックに、自己のヴォーカルとピアノソロがフィーチャーされた、イージーリスニング系ボサノバ。実は買う前にこのアルバムは知らなくて、以前に記事にした「Eliane sings Jobin」(1998年)のようなアルバムが他にはないかなと探していてたまたま見つけた。

出だしの"Call me"のアコースティック・ギターとの絡みからがすでにツボ。彼女の作品は、初期はジャズピアニストとしてのインスツルメント物が多く、その後けだるい声質が受けてヴォーカルが入り始め、近年では、その美貌もあってダイアナ・クラールと同じ売れ筋路線を歩んでいるように見えることも。だけどブラジル出身だけに、ラテンの匂いが強いのが彼女の特徴。

この作品も、全体的には売れ筋狙いと言える造りだけど、彼女の音楽性が品格を維持していて素晴らしい。それだけなら、「Bossa Nova Storyes」(2008年)とか他のアルバムでも言えるのだけど、違うのは全体を通して伝わってくる雰囲気。リラクゼーションというか、肩の力の抜け具合が全く違う。ジャケも良いですね。作品の雰囲気とマッチしていて。

それで、どの曲も秀逸なのだけど完全にノックアウトされたのが彼女のオリジナルである”Time alone”[YouTube]。 ”とろける”という言葉があるけど、まさにこの曲ためにあるって感じ。このゆったりと落ち着いた雰囲気にマッチする写真はないかなと考えて、すぐに脳裏に浮かんだがハワイ。ダイヤモンドヘッドを照らしながら海へ沈んでいく紅の夕陽は最高だったなあ。

Dreamer
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