或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

社労士勉強進捗[1月度]

2007-01-31 06:32:03 | 150 社会保険労務士
年頭に気合をいれるため合格宣言をしましたが、その甲斐があってか勉強は順調。どうやら独学が馴染んできたみたい。その陰には、ネットの発達の影響が大きいですね。今回も「とめ塾」「とれとれE社労士」という二つのサイトと契約。これが良かった。簡単に紹介します。

まずは昨年から継続している「とめ塾」。言わば過去問のWEB版。H11~H18までの過去8年分の本試験問題を網羅。これを年度、カテゴリー別に分類できるから、書籍よりも効率的な学習ができる。もちろん解説付き。それと法改正のまとめもあるので、学習のベースとしては最適。無料メルマガも1回1問毎日配信。これで年間4千円だから信じられないぐらい安い。

次に今年から始めた「とれとれE社労士」。これはテキストのWEB版。各法律毎に、重要なポイントを解説してくれる。昨年お試し通学講座に通ってみて思ったのが、やはり先生が欲しいということ。その代わりになるのが、ここが毎日配布してくれる有料メルマガ。ベーシック、超重要過去問解説、一般常識対策、横断・縦断と4つのカテゴリー毎。この解説が実に分かり易い。受験生が戸惑う急所をよく知っている。全部で2万円かかったけど、まあ通学と比べると格安なので納得しています。

それで毎日両方のサイトから配信されてくるメルマガをペースメーカーとして学習を進めていく上で、欲しいなと思ったのが”学習進捗表”。ネットベースだと、進捗が見えにくいのが難点。そこでエクセルを使って"過去問進捗表”を作成。上の写真がその一部。問題を解答し、チェックボタンを押すと日付と正誤が自動的にマーキングされるしくみ。今回初めてVBAのマクロに挑戦。なんとか使えるツールが完成。これがけっこうスグレモノ。

勉強していて思うのは、理系出身の自分でも、さすがに2年目は理解が早い。業界用語にも慣れてきたし。後は年々退化している記憶力との勝負。これがねえ、やっかい。まあ、だましだましやっていくしかありませんね。

ブラバン

2007-01-29 06:49:39 | 010 書籍
ブラバンっていっても、ブラジャーのバンドじゃないですよ、ブラスバンド、吹奏楽のこと。なんて最初からオヤジしちゃったかなあ。これも図書館に予約して3ヶ月、ようやく読了した小説。津原泰水の「ブラバン」(2006年)。実は彼は自分と同じ高校の出身。世に言う後輩ってやつ。吹奏楽部でコントラバスを弾いていたらしい。自分の頃は、確かそんなに大編成じゃなかったと思うけど。

読んでいくと、さすがに懐かしかった。1964年生まれだから、自分の高校時代を振り返りながら書いたのでしょうね。広島にある県立典則高校というのが小説の舞台、だけどどうみても出身校の話。途中で旧制二中なんて出てくるし。時代の設定は1980年で、ちょうど上の写真の頃。部員が増え、女子の比率が増えたことが小説の中に書いてあったけど、これを見て納得。

懐かしいといえば、小説の中では出てこなかったけど、制服が変わったことを最近知って。昔は男子が学生服、女子がツーピースで色は黒だったけど、最近はブレザーにネクタイで色も黒からブルーへ。だからなんだ、街で気づかなかったのは。

それで肝心の中味だけど、どうもフランクに読めなかった。リアルすぎて恥ずかしい。使われている言葉が全て“広島弁”だし、流川、平和公園、宮島と身近な場所が目白押し。加えて、お好み焼き、路面電車とくれば、もう完全な“広島ワールド”。

実は同窓会がどうも苦手。別に老けた女性を見て幻滅するからじゃないですよ。どうもあのくすぐったい雰囲気が肌に合わない。それとだいぶ前に友人に誘われて行った時、女の子から言われた一言が。「××君て、こんな所へ来るタイプじゃないよね」。自分でも、うすうすそう思っていたから、なおさら効いたような。ズシーンと。酔った帰り道で妙にヘコんでたなあ。

あれから全くご無沙汰です。行く気もなし。案内もそのままシュレッダー。

ブラバンブラバン

シューベルト ピアノソナタ

2007-01-26 06:11:01 | 210 クラシック
今日は村上春樹の音楽評論エッセイ「意味がなければスイングはない」(2005年)にまつわる話の第2弾。前回がジャズ、今回はクラシックでシューベルトのピアノソナタ。シューベルトのピアノ曲と聞いてすぐに思い浮かぶのは即興曲。ピアノソナタはモ-ツァルトやベートーヴェンのように有名じゃない。村上のお気に入りは、その中でも地味?な第17番ニ長調(D850)。

本の中の言葉を引用すると、その理由は「心の自由な“ばらけ”のようなもの・・・、融通無碍な世界が、そこにはあるのだ・・・。そしてその根源には、”ソフトな混沌”を求める傾向にあるようだ・・・、あらゆる芸術の領域において、より”ゆるく、シンプルな意味で難解なテキスト”を求める傾向にあるかもしれない」。その気になって今回初めて聴いてみたけど、極めてフツー。

面白かったのが、本の中に出てくる内田光子と吉田秀和の対談。彼女曰く、「ニ長調は冗漫で苦手・・・、16番イ短調(D845)の方が見事にひきしまっている・・・、ある日思い切って(17番を)聞いてみると、心の中からほとばしり出る”精神的な力”がそのまま音楽になったような曲・・・」、つまり彼女は17番をある日見直したのか。自分としては16番の方が断然好きなんだけど。

驚いたのは、村上がこの曲について15人ものピアニストのCDを聴いていたこと。これはハマってる。そして彼はアーティキュレーションがいささか作為的に聴こえるという理由で、内田光子は凄いけど好みじゃないとか。まあ人それぞれだから。

最後にシャレたことも言っている。「いろんなピアニストの個人的体験は、それなりに貴重な暖かい記憶となって心の中に残っている・・・、それを燃料として、(僕は)世界を生きている・・・、だからこそおそらく僕らは恋をするのだし、ときとして、まるで恋をするように音楽を聴くのだ・・・」。出ました村上節。まあこういうセリフを言えなければ作家にはなれないんでしょうね。

第16番イ短調 D.845第16番イ短調 D.845  第17番ニ長調 D.850第17番ニ長調 D.850

コンツマ

2007-01-23 06:28:51 | 370 テレビ
この記事のタイトル、どういう意味だか分かります?今月から始まった新しい連続TVドラマ、「今週、妻が浮気します」の略称、つまり「今妻」。最初そのまま使おうかと思ったけど、あまりに露骨すぎて自分のブログの品格に合わない?ってことは全くなくて、スパムTBの嵐がミエミエなので、あえて略称を。”妻”とか”浮気”なんていう言葉があるとホント凄いんだから。

昨年の後半は珍しく連続ドラマを見なかった。今年もいろいろ始まったけど興味をそそるのがなくて。カミさんと娘は「華麗なる一族」に夢中。キムタクにはあの役は似合わないよね?と言ったら、えらく怒られたなあ。なんでそんなにムキになるんだろう。

そんな中、本命中の本命と密かに期待していたのがこのドラマ。結果はマル。夫婦揃ってハマリ役。特に奥さん役の石田ゆり子がいい感じ。年を取ったからでしょうね、清純派を踏み外しそうな危うい雰囲気が漂っている。演技もなかなか上手い。

だけど一番受けたのが原作と関係ない脚本。国際的な指揮者の独占インタビューを取るために奔走するという話の流れなんだけど、これって小澤征爾じゃないかと。だって若い頃にオケのメンバーと喧嘩して日本を飛び出すというのが、有名な1962年の”N響事件”にそっくり。ドラマの中ではジャパン・フィルという設定だったけど、小澤がその後就任したのが日フィル。さらに画面に映った凱旋帰国コンサートのポスターに載っていた曲目がマーラーの交響曲第2番「復活」。やってくれるなあ。

なんて感心しているとエンディングで待っていたのがどえらい真打。クレイジーケンバンドの主題歌”てんやわんやですよ”(サイトで視聴可)。このドラマのための書き下ろし。EW&Fを彷彿とさせる1970年代のノリノリファンク。詞もチャラけていて最高。いやあ、ぶっ飛びました。

マーラー:交響曲第2番「復活」マーラー:交響曲第2番「復活」

てんやわんやですよてんやわんやですよ

小出楢重(4)

2007-01-22 06:25:11 | 300 絵画
今日は画家、小出楢重のシリーズ第4回。雌伏の生活を送っていた彼が「Nの家族」(1919年)で二科展の樗牛賞を受賞したことは前回お話しましたが、翌年の大正9年(1920年)には、「少女お梅の像」で二科賞を受賞。ようやく頭角を現し始めます。

そして脂が乗ってきた1921年8月に念願の渡欧。神戸からマルセイユを経てパリへ。上の写真は三重県立美術館にある「パリ・ソンムラールの宿」(1922年)。パリで滞在していたホテルの窓からの景色を、現地で撮った写真を元に、日本に帰ってから描いたものらしい。なんかそれまでのイメージからすると、やけにハイカラ。やはり被写体の違いというのは大きいんだなあ。もっと言えば、彼の生涯の作品群の中で最も彼と分かりににくい作品とでも言っておきましょう。けっこうお気に入りではあるけど。

その後冬の寒さから逃れるために写生旅行をした南フランスで描いたのが、芦屋市立美術博物館にある「カーニュ風景」(1922年)。さすがに南欧。日本での作品と比べ、より色彩がカラフルで全体も明るくなっている。カーニュにはルノアールのアトリエがあって、当時渡欧した洋画家は必ずこの地を訪ねたとか。有名な楢重の裸婦の出発点も彼だしなあ。

ところが翌年4月にはもう帰国。半年足らずの欧州生活。しかもパリで暮らしたのは、わずか2ヶ月。サロン・ドートンヌを見にいきながらすぐに逃げ出し、「巴里の美術は実にだめだよ・・・、巴里で絵を習っている奴の気が知れないよ・・・」、なんて友人に愚痴ったとか。普通はどっぷり浸かるところが、あまのじゃくというか偏屈というか、飲み込まれるのがいやだったのか。

でもこれから後の作品を見ると、この渡欧が一つの転機になったのは確か。つまり否定をしながら影響はしっかり受けている。結果的には良かったんじゃないでしょうか。楢重独特の新たな自己のスタイルを確立するきっかけになったという意味で。


湯豆腐

2007-01-20 07:19:15 | 600 グルメ
寒くなると食卓を賑わす頻度が増えるのが鍋物。そんな中でもよく食べているのが湯豆腐。これって準備が簡単でお手軽。カミさんや娘がいない時なんかにピッタリ。最近凝っているのは豆腐。木綿一辺倒なんだけどブランドをいろいろ試していて。お気に入りは島根県の石見産。歯ごたえと食感がだいぶ違う。それでも1丁2~3百円だから、かなりささやかな贅沢ですね。

湯豆腐を食べる度に思い出すのが、TVの釣り番組でのワンシーン。冬だから魚の活性が低く、プロでもなかなか釣るのが難しい。かといって取材だからやめられない。だから移動が激しくなる。その時は暗くなって車中で仮眠。そんなツライ状況の中で皆を和ませていたのが湯豆腐。なんと薬味なし。インスタントの昆布だしとポン酢だけ。それが飛び切り美味しそうだった。

写真は昨年の秋に京都へ遊びに行った時に撮ったもの。有名な「奥丹」清水店。以前南禅寺店へ行ったことがあって。味もだけど、店の雰囲気が良かったので本店へも是非寄りたいとかねがね思っていて。店の中に入って狭くて暗い廊下を抜けると、広い庭が見える広間へ。想像以上に広い敷地。生い茂った樹木に歴史を感じさせる風情があったなあ。

平日だったせいか客もまばら。落ち着いた雰囲気の中で湯豆腐を堪能しました。味は極めて素朴。器がまたわび、さびを感じさせる。まさに京都って感じ。しかしねえ、清水寺にお参りした後で、参道の両側にある土産物屋を見物しながら産寧坂に入り、石畳の古い町並みを楽しみながら歩いて降りていくと、もうすぐ二年坂という頃に、ひっそりと玄関が見える。これはねえ、二人のためのシチュエーションとしては最高じゃないでしょうか。某若手代議士と某女子アナじゃないけれど。


talk to her

2007-01-18 06:57:31 | 350 映画
久々に琴線に触れる映画に巡り合いました。スペイン人のペドロ・アルモドバル監督の作品「talk to her」(2002年)。この映画を知ったのは、Amazonでブラジルの歌手カエターノ・ヴェローゾのCDを探していた時。たまたまサントラ盤のジャケットが目に入って。赤と青のコントラストと、女優レオノール・ワトリングの横顔が印象的で。題名も変な日本語訳がついていない。

これはと思いDVDをレンタルして観たらこれがマル。素晴らしかった。芸術と哲学の香りがして。派手なシーンはほとんどなし。物語は淡々と進んでいく。音楽と映像が美しくそこはかとなく心に染みる。愛する相手が事故で植物人間になり同じ病院に入院したことから知り合った二人の男の友情の物語。共通するのは女性に対する愛。問われているのはその形。傑作でしたね。

道徳と非道徳、自然と超自然。ある新聞が”天国と地獄の中間地帯”という表現を使っていて、なかなかうまいなあと。そこに自然に引きずり込まれている自分に気づく。下賤なシモネタ話や滑稽なサイレント映画をわざと挿入することにより、看護士ベニグノの倒錯的な愛が逆にピュアなものに見えてくる。その仕掛けが上手い。さすがアカデミー賞の脚本賞の受賞作。

そんな中で印象的だったのが、主人公のジャーナリスト、マルコが病院で寝ている時に夢を見るシーン。なんとカエターノ・ヴェローゾ本人が登場。横でチェロを弾いているのは、坂本龍一のアルバムでも紹介したジャキス・モレレンバウム。曲は”ククルククパロマ”。歌も良かったけど、それ以上だったのが集まった観客の幸せそうな表情。おそらくそこは天国だったのでしょう。

面白かったのはカミさんのコメント。えらく感動している自分を見て、「モラルがない人の好みかもね」だって。うーん、鋭い。確かにラストでのマルコの微笑みには、この世のものとは思えない色気を感じたなあ。いけないことへの予感のような。

talk to hertalk to her

/追悼/ Michael Brecker

2007-01-16 06:31:17 | 200 ジャズ
テナーサックス奏者のマイケル・ブレッカーが骨髄異形成症候群のため1月13日に死去。1949年3月29日生まれで享年57歳。病気だっていうのは聞いていたけど、回復方向にあるという情報もあって、あまり心配していなかった。うーん、かなりショック。彼は紛れもなく時代と共にずっとジャズの先端を駆け抜けてきた人。それだけになんというか。かなりきてるなあ、これはまずい。

記事を書きながら最初に聴いたのは、1970年代に一世を風靡したシンガーソングライター、ジェームス・テイラーが作詞作曲した“Don't Let Me Be Lonely Tonight”。日本語題が“寂しい夜”。この曲のオリジナルが入っているのは、ジェームスのヒットアルバム「One Man Dog」(1972年)。これが彼との最初の出会い。実は間奏のソロが彼だと知ったのはずいぶん後になってからだったけど。

そして今聴いているのは、30年の時を経た同じ曲の二人の共演。マイケルのリーダー作「Nearness of You」(2000年)の2曲目。サブタイトルがバラードブック。彼のアルバムの中で一番のお気に入り。最高のメンバーによる最高の演奏に、ジェームスが数曲歌って花を添えている。フレーズを聴いていると、しみじみと歳月を感じる。なんだかよけい悲しくなってきた。

本田竹廣の時もそうだったけど、だいぶ年上なんだけど同世代って感じがしますね。彼らが若いときからずっと聴き続けているからかなあ。ブレッカーブラザーズ、ステップスとフュージョン時代を経て、ちょっと前はマッコイ・タイナーのバンドへ参加。TVで見たけど、憧れのマッコイと一緒でホント嬉しそうだったなあ。彼も根っからのコルトレーン信者だから。

今は安らかに眠ってください。素晴らしい音楽をありがとう。

One Man DogOne Man Dog

Smokin' in the PitSmokin' in the Pit   InfinityInfinity

Nearness of You: The Ballad BookNearness of You: The Ballad Book

Cedar Walton

2007-01-13 07:42:54 | 200 ジャズ
今日は玄人好みの黒人ジャズピアニスト、シダー・ウォルトン(Cedar Walton)の話。彼のアルバムを探そうとググっていたら、えらく検索に引っ掛かったのが、村上春樹の音楽評論&エッセイ「意味がなければスイングはない」(2005年)。どうもこの本の中に登場するみたい。早速図書館で借りて読んでみると、様々なジャンルの曲やアーチスト、CDを紹介している中のトップバッターが彼。

シダーは1934年生まれだから、今年73歳。もうすっかりおじいちゃんになってますね。村上曰く、彼は“強靭な文体を持ったマイナー・ポエト”。これは作家の吉行淳之介がよく言う言葉、“僕は本質的にマイナー・ポエトなんだよ”に引っかけたらしい。

なんでも現役の中では彼の一番のお気に入り。本の中で出てくるのは、かつて新宿にあったジャズ喫茶でのライブ盤で、アルバムタイトルも、店の名前そのまんまの「Pit in」(1974年)。村上はこの時の演奏をライブで聴いたらしい。期待していなかったけど、ビックリする程良かったとか。彼は近年のジャズに興味を持っていなかったはずじゃなかったかと、ちょい不思議。

それとこの日の演奏の出来は、そんなに良くなかったんじゃないかと。というのもこのアルバムはこの店での3日連続レコーディングの2日目。初日に録音されたヴォーカルの笠井紀美子のライブ盤「Kimiko is here」でのプレイの方が断然イカしている。聴けばすぐに分かる。彼女の歌を盛り上げる奔放なバッキングがもう最高。3日目の渡辺貞夫との「Sadao Watanabe at “PIT INN”」は、リードの調子が悪いのか、ナベサダのアルトがまるで鳴っておらずイマイチなので余計に目立つ。

思うに、村上も言っているけど、彼ってリーダーじゃなくてサイドメンタイプなんでしょうね。だからメンバーとしての伴奏の方がしっくりくる。人の音を聴いて自分のフレーズを出すタイプ。その意味ではハービー・ハンコックと似ているかな。なんて言いながら、もうお分かりですよね。実は自分の中では、シダーがかなりのお気に入りなんです。

Cedar Walton:PIT INNCedar Walton:PIT INN

笠井紀美子:Kimiko is here笠井紀美子:Kimiko is here    渡辺貞夫:at PIT INN渡辺貞夫:at PIT INN

ミーナの行進

2007-01-10 06:30:48 | 010 書籍
図書館に予約して待つこと3ヶ月。ようやく読了した小川洋子の「ミーナの行進」(2006年)。彼女の小説はけっこう読んでいます。芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」(1991年)をはじめとして、初期のものを中心に。女性らしい品のある文体の中に、人間の根源に潜む”邪悪”がうまくブレンドされていて、独特の世界がある。そこに彼女なりの美学が感じられて。TVで見た時も、少女のような屈託のない顔立ちと喋り方が、”邪悪”とのギャップを感じさせ印象的だった。

ところが「ブラフマンの埋葬」(2004年)を読んだ時に、それまでと全く違う雰囲気にビックリ。いつ”邪悪”な話が出てくるのか期待していたけど、これが全く出てこずじまい。端的に言えば現代のメルヘン。ツッコミのいないボケ二人のオチのない漫才みたいな感じ。違うか。今回の「ミーナの行進」も、完全にその延長線。彼女の外見のまんま。うーん、期待していた路線と違う。

内容は、主人公である中学生の朋子が、家庭の事情で1年間、裕福な伯母の家で暮らす日常を描いたもの。”ミーナ”とは、その家に住んでいる一つ年下の従妹の名前。”行進”とは、この家で飼われているコビトカバのポチ子の背中に乗って彼女が通学する姿。1970年代の雰囲気を、ミュンヘンオリンピックとか、当時の世相を織り交ぜながら、ほのぼのと描いている。

印象に残ったのはマッチの話。最近は見ないですね、ライターばかりで。ミーナの趣味がマッチの収集。自分がマッチを使っていたのは、煙草を吸う時か花火をする時ぐらい、大昔の話だけど。今の時代にマッチをみると懐かしい。写真は、六本木にあるジャズクラブ「サテンドール」に行った時に持ち帰ったもの。煙草はとっくの昔にやめているのに、妙に懐かしくて。

まあ新しいキャラということで理解するしかないか。でもこれだけの直球は自分にはちょっとツライ。「博士の愛した数式」(2003年)をまだ読んでいないし、DVDも見ていないけど、それで正解かも。

ミーナの行進ミーナの行進