或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

アヒルと鴨のコインロッカー

2006-07-14 06:03:27 | 010 書籍
昨日芥川賞と直木賞の発表がありましたね。また伊坂幸太郎はダメだったけど。もうそろそろ良かったのに。ちょっと可哀想。まあそれとは関係ないんだけど、今日は最近読んだ彼の小説、「アヒルと鴨のコインロッカー」(2003年)の紹介。これって初期の作品かな?と読了した時に思いました。何かしら若さと固さを感じたのかなあ。第25回吉川英治文学新人賞の受賞作。

時間軸の違う2つの話が並行して進行。彼の小説によくあるパターン。一つは、大学進学のために仙台のアパートに引っ越してきた椎名と隣人の河崎、もう一つは、ペットショップに勤める琴美とブータン人のドルジ、そして河崎が登場人物。

伊坂らしいスピードと切れのあるクールな展開。いつになくウンチクとギャグが少ない。ロマンティシズムも控え目。雰囲気としては「オーデュボンの祈り」。そこまで難解じゃないけど。二つの話と絡みちりばめられたトリックの関連性が面白くて、久しぶりの正統派?ミステリー小説。

登場人物では、河崎のキャラが良かった。人並み外れたルックス。天性の遊び人。次ぎから次ぎへと女性を誘い、隙さえあればホテルへ誘う。彼の言葉を借りると、それは“女性に愛を教える”行為。うーん、いいですね、この自己中感覚。言動が一致しているから素晴らしい。

でもその彼がHIVに感染してしまう。やっぱり手当たり次第っていうのは良くないのかなあ、と思っていたら、まったく関係ないけど、最後の方で“プラスマイナスゼロ“って言葉も出てきて。人間の人生って、長い目で見ると、誰でも、良いこと(good times)と悪いこと(bad times)が同じぐらいなのかも、という持論につながりました。

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