「STAND BY ME ドラえもん 2」感想

 先日、映画「STAND BY ME ドラえもん 2」が、公開された。
 今年公開されたドラえもん映画としては、8月の「のび太の新恐竜」に続いての2作目だ。さっそく観てきたので、感想を書いておく。例によって、結末を含めて映画の内容に思いっきり触れているので、未見の方はご注意いただきたい。


 さて、本作の感想を一言で言うと、「思ったよりよかった」。
 いや、本当にこうとしか言いようがないのだ。前作「STAND BY ME ドラえもん」は、個人的にはかなり低評価を付けざるを得ない作品だった。短編ドラえもんの、いわゆる「感動作」と呼ばれるエピソードを、映画オリジナル要素の「成し遂げプログラム」で無理につなげて一本の映画にした作品という印象があった。キャッチコピーに使われた「ドラ泣き」も、なんだか押しつけがましくて、好きにはなれなかった。
 だから、その続編である本作も、正直言ってあまり期待していなかった。キャッチコピーも、やはり「ドラ泣き、再び。」だし、一作目と同じ路線の作品なら私にとってはダメなんだろうなと思っていたのだ。

 しかし、実際に観てみると、予想はいい意味で裏切られた。
 本作も、確かにドラえもんの「感動作」短編を元にした映画ではあるが、前作のように「無理に話をつなげた」感じはなく、オリジナル要素が一本芯の通った形になっていて、短編を元にしつつ新しい話を作り上げることに成功しているのだ。
 そのオリジナル要素とは、ズバリ「のび太・しずかの結婚式」。原作では結婚前夜のみで、実際の結婚式は描かれていない(「宇宙完全大百科」で写真のみ登場)のに、映画であえて描いてしまうのはどうかと思う向きもあるだろう。だが、本作の結婚式は、「この二人の結婚式なら、きっとこんな感じなんだろうな」というファンの空想を、見事に形にしている。きっと、ジャイアンは余興に歌を歌うだろうし、ジャイ子はお祝いに絵を描くだろう。それに、作中でクライマックスとなっているのび太からの挨拶は、たしかにこんな感じだろうとしっくりくるものだった。
 さらに、本作は結婚式を描いているだけではなく、「現代」の子供のび太と「未来」の大人のび太が複雑に交錯するタイムパラドックスSFとしての面も持っている。大人には観ていて楽しいが、子どもが観るとちょっとわかりづらかったかもしれない。そういう点で、やはりこの映画は「大人向け」の面がある。

 本作は、「おばあちゃんのおもいで」「ぼくの生まれた日」「45年後……」の、3本の短編をベースにストーリーが作られているが、前の2本はまだ原形をとどめているのに対して、「45年後……」については子供と大人ののび太が入れ替わるという基本設定だけが使われて、話はほぼ別物になっている。だから、「45年後……」の映像化を期待して観ると、裏切られた気持ちになるかもしれないので、要注意だ。
 ただ、話はほぼ別物ではあるが、「45年後……」の設定を使った「のび太の入れ替わり」は、作中で最も重要な要素と言ってもいい。なにしろ、映画オリジナル設定で、「入れかえロープ」を使って1時間が経つと、入れ替わった両者の記憶が消えてしまうと言う非常に重大な欠陥があることになり、その結果としてのび太がダメになってしまいそうになるのだから。
 「ワスレンボー」のせいで、大人のび太も事件の顛末を知らないため、非常に展開はスリリングだ。ある意味、「ワスレンボー」が物語の鍵を握る道具になっていた。そう、今回は「わすれろ草」や「ワスレバット」ではなく「ワスレンボー」なのだ。
 それにしても、クライマックスの「のび太のおばあちゃんをタイムマシンで連れてきて、結婚式を見せる」という展開は、思い切ったことをしたなあと思う。やるならここまでやらないと、と言うことなのだろうが、おばあちゃんがタイムマシンに乗っている図を想像すると、シュールですらある。

 本作は、本筋のストーリーも見応えがあったが、色々な小ネタも効いていた。
 私がいちばんツボにはまったのは、「未来の2000円札が手塚治虫先生」というところだ。肖像ではなく手塚先生の漫画に出てくる自画像が使われているというのも笑えるし、よりによって2000円札というのも笑いどころなんだろう。もちろん、手塚プロダクションの許諾は取られており、エンディング・クレジットではスペシャルサンクスとして手塚プロがクレジットされている。
 さらに、カムカムキャットフードでおなじみの「ラーメン富士」も登場しており、店員がなぜか勉三さんと言うところも注目ポイントの一つだった。他にも、ちらっと映る店の看板などに藤子ネタが満載で、コマ送りで確認したくなった場面も多くあった。

 と、いった感じで、本作は観る前の期待値の低さに反して、十分に「ドラえもん映画」として楽しめる作品だった。
 どちらかと言うと、原作短編ネタよりもオリジナル要素の割合が大きいので、「F先生があえて描いていない結婚式を勝手に描いてしまうとはけしからん!」というような考えの人にはお勧めできないが、「オリジナルでも出来がよければいいよ」と言う人には、ぜひご覧いただきたい。
 本作に関しては、前作を観たことによって「このシリーズは期待できない」と思っている人もいるかもしれないが、一本の映画として前作より遥かにまともな出来になっているので、前作のことは忘れたほうがいいと思う。そんな作品だった。
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