『愛…しりそめし頃に…』完結

 昨日発売のビッグコミックオリジナル増刊号にて、藤子不二雄A先生の連載『愛…しりそめし頃に…』が、ついに完結を迎えた。
 実は、名古屋では11日にはすでにオリジナル増刊号が出回っていたのだが、全国的にはどうなのかは知らないし、少なくとも公式では発売日は「4月12日ごろ発売」となっていたので、一応昨日は自重していた。だが、12日を過ぎたので、ここでは遠慮なくネタバレ全開の感想を書かせていただく。


 『まんが道』の第1章である「あすなろ編」が少年チャンピオンに連載されたのが1970年なので、それから数えるともう43年にもなる。私が「あすなろ編」を読んだのは小学五年生の頃で、友人から秋田書店版のハードカバー単行本を借りたのだった。この「あすなろ編」が非常に気に入って、一時期は毎日のように読んでいたほどだった。
 そして、すぐ次の「立志編」に手を出した…と言うことはなく、それどころかしばらくは「立志編」以降の展開があることすら知らなかった。当時から藤子作品を愛読していたとは言え、しょせんは小学生で、藤子作品について持っている知識や情報は微々たるものだった。非常に恥ずかしいことに、書店に並ぶ藤子不二雄ランド版『まんが道』を見て、「『まんが道』は全1巻のはずなのに、なぜこんなに多くの巻が出ているのだろう?」と思ったほどだった。そこに「続編がある」という考えは浮かばなかった。
 「立志編」「青雲編」の存在を知ったのは中学生になってからで、図書館で中公愛蔵版の単行本を見つけての事だった。その後、この中公愛蔵版をむさぼり読んだのは言うまでもないし、藤子不二雄ランド版を集めるきっかけにもなった。FFランド版は巻数が多くてかさばるのだが、中学生だった私にとって一番集めやすい版だったのだ。結局、未だに私が揃えている『まんが道』単行本は、FFランド版全23巻+FFランドスペシャル(春雷編)全2巻で、中公愛蔵版は一冊も持っていないし、最近出たGAMANGA BOOKS版も1・2巻しか持っていない。これは、表紙を開けばセル画が付いている藤子不二雄ランドにこだわっているわけではなく、『まんが道』クラスのボリュームのある作品を、複数の版で所有する場所的余裕がないだけのことだ。
 とにかく、『まんが道』は、私にとって特別な作品だ。中学生は、世間一般では藤子作品を「卒業」する時期と見られているようだが、私が藤子作品を好きなままでいられたのは、F作品では『モジャ公』、A作品では『まんが道』(「立志編」以降)との出会いがあったからだ。


 さて、肝心の『愛…しりそめし頃に…』最終回の感想だが、あのラストシーンは予想できなかった。A先生に、完全にやられたと言わざるを得ない。ラストシーンをカラーでと言う趣向は、A先生にとっては少年画報版『怪物くん』以来だろうか。滅多にみられない手法なのは間違いない。そして、物語の締めくくりは手塚先生の言葉だった。「あすなろ編」から『愛…しりそめし頃に…』に至るまで、ずっと偉大な存在として描かれてきた手塚先生からライバルと認められたことは、この長い物語の着地点としてはふさわしいが、その締め方はいささか唐突にも思えるものだった。
 しかし、考えてみれば『まんが道』「青雲編」のラストも、空飛ぶ円盤(あえて、こう書かせていただく)の唐突な出現によるものだし、今回もA作品としてはさほど突出して変な終わり方でもないような気もする。
 気になったのは『オバケのQ太郎』の扱いで、今回の描かれ方だと、いつからアイディアを温めていたのかがいまいちわからず、完全にぽっと出のように見えてしまう。この部分を本格的に描いていくと「スタジオ・ボロ物語」とネタがかぶってしまうからまずいのかもしれないが。それはともかく、最終回で『海の王子』『オバケのQ太郎』と、満賀と才野(=安孫子先生と藤本先生)の合作作品が登場して、二人で描いている場面が出てきたのは、うれしかった。『愛…しりそめし頃に…』になってから、二人が別々に作品を描いていることが多かっただけに、最終話で「二人で一人の満才茂道(=藤子不二雄)」をはっきり示す場面が入れられたのはよかった。
 後半、脈略なく東京タワーにいくあたりは、いかにもA作品らしい展開だ。「あの人物」まで出てくるのは、いささか悪のりかなと思ったが。
 今回、増刊号の発売まで2ヶ月間、一体どんな最終回だろうと考えを巡らせてきたが、そんな予想など軽く飛び越える、予想できない締め方だったのには感動した。さすが、A先生だと言わずにはいられない。


 雑誌の表紙に書かれているように、『愛…しりそめし頃に…』だけでも連載期間は24年。軽く24年と言うが、これだけの期間で年5回刊行というペースを守って描き続けられたのは、凄いことだと思う。きっちり休まずに描いて完結させたA先生も凄いし、「増刊号」と言う不安定そうな雑誌を24年間出し続けた小学館も偉い。
 もうこれで『まんが道』全編の完結かと思うと非常に寂しい気持ちが強いが、A先生のご年齢を考えると、お元気なうちに完結させて正解だったと思う。A先生、これまで本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
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