ANIMAX・東映アニメ王より「ミクロイドS」感想

 かなり今更の話になって恐縮なのだが、8月19・20日にANIMAXで放映された「ぶっちぎり36時間!きみも東映アニメ王」で観たアニメについて、書いておきたい。
 と言っても、この二日間は藤子ファン懇親会のため実家に帰省しており、レコーダーのHDD残り容量も少なかったので、録画するタイトルをかなり絞ってしまった。本来、この手の企画はテレビを付けっぱなしでダラダラして観るのに適しているので、一部しか観られなかったのは、ちょっと残念だ。まあ、各作品からセレクトされた1話のみの放送なので、大げさに悔しがるほどでもないが。


 さて、今回は「ミクロイドS」を取り上げたい。
 本作に関しては、手塚治虫の原作漫画は読んでいたが、これまでアニメ版は未見だったため、気になっていた。東海地区では、前番組の「デビルマン」と後番組の「キューティーハニー」は何度も再放送したのに「ミクロイドS」は無視され続けていたのだ。CSでは東映チャンネルで放映されたようだが、普段契約していなかったため観逃してしまった。
 なお、本作は元々アニメ企画先行作品なので、厳密には漫画の方は「原作」ではなく「漫画版」と言うべきかも知れないが、OPに「原作 手塚治虫」とクレジットされているし、手塚治虫漫画全集の「あとがき」では、手塚先生自身が「ぼくの原作ではあるにせよ、漫画としてはかきにくい」と書いているので、「原作」と呼んで差し支えないだろう。

 今回放映された第15話「思い出求めるヤンマの旅」は、ヤンマが失われた自分の記憶から手がかりをつかみ、母と弟の住む家までたどり着くが、虫のようになった自分の姿を見せる事は出来ないと、家族には会わずに去って行くという話だった。
 この1本を観ただけで、原作とアニメで丸っきり設定が異なる事が分かって、実に興味深い。原作のミクロイドは、500年前にギドロンにさらわれて小さくさせられた人間の末裔で、ヤンマは産まれながらのミクロイドなのだが、アニメでは元々普通の人間で、ギドロンによってミクロイドに改造されてしまった設定となっている。

 さらに、原作とアニメの一番大きな違いは、アニメではヤンマが、ちゃんとヒーローしている点だろう。アニメの主人公らしく、しっかり必殺技で敵を倒している。当たり前と言えば当たり前なのだが、これまで原作で地味に戦う姿しか知らなかった私にとっては、非常に新鮮だった。

 原作も、序盤のうちはヤンマ・アゲハ・マメゾウのミクロイド三人組を主人公として描こうとように見えるのだが、「第6章 大襲来の夜」あたりから、虫に襲われた人間のパニック描写に比重が移ってしまい、全集版の第3巻になると、ヤンマ達の出番は極端に減り、どう見ても美土路博士親子が主人公だ。
 一つの漫画作品として見ると、構成が破綻していると言わざるを得ないが、二度にわたって描かれた虫の大襲来のインパクトが非常に強くて、今でも後半は時々読み返している。個人的には、手塚作品としては好きな部類に入る。
 なお、ヤンマ達は最終章でようやく登場したが、いきなりアゲハが瀕死の重傷になっていたり、ヤンマの兄・ジガー(アニメには出ていなかったようだ)が、わざとやられて死んだりと、非常に打ち切り感の漂うとってつけたような展開となっている。実際、アニメの終了に合わせて漫画連載も終わらざるを得なかったのではないだろうか。

 原作について長々と書いてしまったが、アニメ版に話を戻す。前述のように、原作とはメインキャラクターと世界観が共通する程度の別物と言える内容だが、今回放送された第15話では、母親や弟に会いたくても叶わず苦悩するヤンマの姿が印象的で、なかなか見応えがあった。また、きちんとミクロイド達のサポート役としてのポジションにいた美土路博士は、外見は同じなのに原作とは別人のようだ。原作の人間味あふれる博士も好きだが、アニメ版の渋いキャラクターも、なかなかいい。
 考えてみれば、マンガとアニメが別物という点では、前番組の「デビルマン」も同様だったし、共通するスタッフも多い。「デビルマン」と同じく三沢郷が作曲した主題歌も、名曲だ。原作も、最初から開き直って昆虫パニック漫画で通していたら、もっと完成度の高い名作になったのではないだろうか。
 今回、ようやく1本だけアニメ版を観る事ができたが、原作とは異なるもう一つの「ミクロイドS」として、なかなか魅力的な作品だと思った。機会があれば、ぜひ全話通して観たい。


 それにしても、今回、同じく東映動画作品で手塚治虫が関わった「ジェッターマルス」が放送されなかったのは残念だ。こちらは未だに、OP・EDアニメしか観た事がない。こちらも、どこかCSのチャンネルで放送してくれないだろうか。
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コメント
 
 
 
東映アニメ王 (火焔太鼓)
2006-09-09 18:23:18
僕も全部と言うわけにはいきませんでしたが、

一部は見ました。

二作目の鬼太郎で「地相眼」がやっていて、

ビデオで見ていたのに、また見てしまい、

何度見てもいいよなあと思いました。

ただ、社長の息子が地相眼になるシーンの台詞で、「きちがい」だけは消去されていました。

(「集団発狂」はそのままでした)
 
 
 
Unknown (おおはた)
2006-09-26 23:26:01
>二作目の鬼太郎で「地相眼」がやっていて、

>ビデオで見ていたのに、また見てしまい、

>何度見てもいいよなあと思いました。



 「鬼太郎」は、1作目と2作目で何が放送されるか気になったのですが、本文にも書いたとおり録画する余裕があまり無く、またいずれにしても12月にはDVDで観られるので、今回は録画しませんでした。



>ただ、社長の息子が地相眼になるシーンの台詞で、「きちがい」だけは消去されていました。

>(「集団発狂」はそのままでした)



 最近の地上波やフジテレビ721では「いつから日本人は集団発狂して、エコノミックきちがいになってしまったんだろう」の部分が丸々カットされていましたから、放送素材が異なるようですね。それはそれで、ちょっと観てみたかったです。

 
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