はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

追悼・肝付兼太さん

2016-11-02 20:10:52 | マンガ・アニメ
 10月20日に、肝付兼太さんが亡くなった。80歳だった。

 そのニュースを聞いてから10日ほど経ってしまったが、気持ちも落ち着いたので、ここで肝付さんの思い出について、まとめておきたい。


 私が、肝付さんの声を初めて聴いたキャラは誰だったかとなると、やはり『ドラえもん』(シンエイ動画版・第1期)のスネ夫と言うことになると思う。時期的には『ジャングル黒べえ』の黒べえ、『新 オバケのQ太郎』のゴジラ(いずれも、再放送)あたりの可能性もあるが、幼少時に観た藤子アニメで一番インパクトが強いのは、やはり『ドラえもん』なのだ。

 そして、最初に「声優・肝付兼太」を意識したのは、『怪物くん』(シンエイ動画版)のドラキュラだと思う。
 まだ私が幼稚園児の頃に放映されていたのだが、「この声はあのアニメのあのキャラと同じ人だな」と、声優について意識した初めての作品だったのだ。今考えてみると、早熟な幼稚園児だな。
 肝付さんの声は、もちろん『ドラえもん』のスネ夫ですでに知っていたので、スネ夫とはまた違うキザっぽい演技が面白くて、こんな声も出せるのかと思ったことを覚えている。

 それから、いや、それ以前も含めての、肝付さんの藤子アニメにおける活躍は、もはや私がここに記すまでもないが、念のためテレビアニメにおける肝付さんの出演作を、わかる範囲で挙げておこう。



◆レギュラーキャラ

・『オバケのQ太郎』(東京ムービー版)ゴジラ
・『パーマン』(東京ムービー版)カバ夫
・『怪物くん』(東京ムービー版)番野
・『新 オバケのQ太郎』ゴジラ
・『ドラえもん』(日本テレビ動画版)ジャイアン
・『ジャングル黒べえ』黒べえ
・『ドラえもん』(シンエイ動画版・第1期)スネ夫
・『怪物くん』(シンエイ動画版)ドラキュラ
・『忍者ハットリくん』ケムマキ
・『パーマン』(シンエイ動画版)パーやん
・『オバケのQ太郎』(シンエイ動画版)ハカセ
・『ウルトラB』パパ
・『キテレツ大百科』刈野勉三
・『ビリ犬』鳥野博士
・『21エモン』オナベ


◆ゲストキャラ

・『ウメ星デンカ』
・『プロゴルファー猿』
・『エスパー魔美』
・『藤子不二雄のキテレツ大百科』
・『SFアドベンチャー T・Pぼん』
・『パラソルヘンべえ』
・『笑ゥせぇるすまん』



 こんなところか。鳥野博士あたりは、レギュラーと言えるかどうか微妙かな。それなりに出番はあったと思うが。他に、『ポコニャン!』のおじいちゃん役と言うのもあるが、この作品をまともに観ていないので、レギュラーキャラなのかゲスト扱いか、どちらなのかよくわからない。テレビアニメ以外では劇場版の「21エモン 宇宙へいらっしゃい!」「ドラミちゃん ミニドラSOS!!!」でのゴンスケ役もある。
 逆に、肝付さんの出ていない藤子アニメ(テレビシリーズ)を挙げると、『チンプイ』『モジャ公』『ドラえもん』(シンエイ動画版・第2期)『忍者ハットリくん』(インド制作版)といったところになるのかな。他はともかく、『チンプイ』に出演されていないというのは、時期的に少々意外だ。


 このように、藤子アニメに欠かせない存在と言われた肝付さんだが、もちろん藤子アニメ以外にも多くの作品に出演されている。
 そんな中でも特に印象的なキャラクターを挙げると、『タイムボカンシリーズ 逆転イッパツマン』のコン・コルドー会長は、スネ夫声の老婆と言うのが面白かった。おなじみの三悪であるのび太・ジャイアンの上にスネ夫がいるという構図も面白い。
 初期『ドラえもん』でも、肝付さんは老人のゲストキャラを多く演じていたし、コルドー会長のルーツとも言うべき『男一匹ガキ大将』の水戸のババアなどは、30代の頃の役なのだから、よっぽど昔から老人役が向いている声だったのだろう。

 他には、ややマイナーな作品であるが、『緊急発進セイバーキッズ』のDr.バグ役もユニークだった。コルドー会長と同様に純粋な悪役だが、コミカルな面もシリアスな面もこなせる貴重なキャラだったと思う。
 最終回(正確に言うと、その後に総集編が3本あったが)「さらばセイバーキッズ」でのすごみのある演技は、ちょっと忘れられないものだった。特に、おまえは何者だと問われた時に答えた「夢を食べるバグだよ」というセリフが、よかった。

 さらに、肝付さんの印象的な役はまだまだあるが、書いていくときりがないので、これくらいにしておこう。


 藤子アニメに話を戻すと、肝付さんの日本製アニメでの唯一の主演作品『ジャングル黒べえ』の話題は、外せないところだ。

 黒人差別問題で、長い間事実上の封印状態に置かれてきたが、2010年になって藤子・F・不二雄大全集で原作単行本が復活し、さらには2015年にアニメ版がDVD-BOX化、今年にはアニメ版のサウンドトラックCDも出るなど、肝付さんがお元気だったうちに作品を取り巻く状況が改善されて、作品が陽の目を見たのは本当によかった。
 私自身、諸般の都合でDVD-BOXは購入を先送りしていたのだが、肝付さんの訃報を聞いて、ほぼ勢いで購入してしまった。藤子アニメの中でも名作と言われる作品だし、購入したことに後悔はない。付属のブックレットでは肝付さんと杉山佳寿子さんの対談も掲載されており、DVD化で肝付さんが本当に喜んでいるのが、今となっては「間に合ってよかった」という気持ちにさせられる。

 なんにせよ、原作もアニメも完全な形でパッケージ化されており、今や『ジャングル黒べえ』は、藤子作品の中でも恵まれた立場と言えるのではないだろうか。


 あとは、個人的な話になるが、実は一度だけ肝付さんからメールをいただいたことがある。
 私のサイト「ドラちゃんのおへや」の中の「アニメ・旧『ドラえもん』大研究」をご覧になった肝付さんから、自分がジャイアンであったことは忘れていたという旨のメールが来たのだ。

 最初は、署名もなかったので、まさか本物の肝付さんとは思わなかったのだが、後から肝付さんご自身がインターネット上で旧ジャイアンのことを見たと語っており、それを聞いて調べたところ「suneo」で始まるメールアドレスは紛れもなく肝付さんご自身のものだったのだ。
 残念ながら、私は肝付さんと直接お話ししたことはないが、唯一肝付さんと関わりがあったとすれば、このメールなのだ。当然、今でも大事に保存してある。


 以上、肝付兼太さんについて、思うところをまとめて書かせていただいた。スネ夫をはじめとして、数多くのキャラで藤子アニメを彩ってくださった肝付さんには、藤子ファンとして感謝するばかりだ。
 長い間、本当にありがとうございました。