3月から東映チャンネルで始まった「闘将!!拉麺男」も、今週で第18話まで放映されて、全35話(最後の2回は総集編)の折り返し点まで来た。週に2話のペースだと、やはり早いものだ。
本作を1話から通して観るのはテレビ愛知の再放送以来だから約15年ぶりになるが、あらためて観てみると、原作をじっくりと読み込んだ上で丁寧に作られている事が伝わってきて、何度も観ているにも関わらず非常に楽しめる。
とにかく、ラーメンマンが格好いい。主人公だから当たり前だと思われるかも知れないが、そもそも元はギャグマンガ時代の「キン肉マン」の読者投稿超人であり、造形も明らかにギャグキャラ顔であるにも関わらず、アニメ版「闘将!!拉麺男」でのラーメンマンは、シリアスな話でも全く違和感なく格好良く見えるのだから、やはりすごい事だ。
性格は原作よりさらにストイックになっているが、決して単に厳しいだけではなく、強さと優しさを合わせ持った主人公として魅力的に描かれており、特に弟子のシューマイとの関係は、原作ではややラーメンマンが理不尽に思える場面もあるのだが、アニメ版では「師」として、また「父」代わりとして、時には厳しく、また優しく接するやりとりが毎回描かれていて、暖かさが伝わってくる。
また、ゆでたまご作品にありがちな矛盾点や強引な展開を、違和感なく無理のない話にアレンジしており、スタッフが原作のよい所も悪いところもわかった上で作っているのだと言う事がよくわかる。
例えば、第3話「破られた闘龍極意書!の巻」は、ラーメンマンと兄弟子・叉焼男(チャーシューメン)との因縁を描いたエピソードだが、原作では第1話ではいなかったはずの兄弟子が第3話でいきなりいた事になっていて、いかにも後付け設定だと無理を感じたのだが、アニメ版ではラーメンマンが陳老師に入門した時は叉焼男は修行の旅に出ており、旅から帰った後に初めてラーメンマンと対面した事になっている。
これなら、第1話に叉焼男が出なくても問題はないし、叉焼男の立場からすれば後から入ってきた弟弟子が老師にかわいがられている事でラーメンマンを邪魔に思うようになった訳で、話の展開としても自然だ。
他にも、話の改変は色々とあるのだが、原作との大きな違いとしては「むやみに人が死なない」点が挙げられる。
原作では、蛾蛇虫、砲岩、犬操など後で仲間となるライバルキャラクターは、ラーメンマンとの一度目の対決で明らかに最後はとどめをさされて息絶えているにもかかわらず、そんなエピソード自体がなかったかのように涼しい顔で再登場する。
死人の生き返りは、ゆでたまご作品では日常茶飯事なのだが、「キン肉マン」では後付けで「超人墓場で珠を四つ集めれば生き返られる」設定が登場したので何とか納得できる。だが、「闘将!!拉麺男」は、そのような設定は全くなく、それどころか「生命の石」争奪戦では「仲間を生き返らせるため」の戦いを繰り広げており、原作ではエピソードごとに命の重みが全然違うという変な状態だ。
だからこそ、話に無理のない形で、先に挙げたライバルキャラ達を含めて、極力死人が出ないようにしているアニメ版は話の陰惨さも薄れており、観ていて気持ちがいい作品となっている。
そして、アニメで導入された最大のオリジナル要素は、ラーメンマンと生き別れの妹・拉娘との関係だ。
拉娘は戦い自体を嫌っているため、ラーメンマンは拉娘との再会後も「戦わずして勝つ」極意を会得するまでは兄として名乗らないと心に決めており、それが話に一抹の哀愁と緊張感を与えている。
また、ラーメンマンと対比するように、蛾蛇虫や蛮暴狼は、妹との「兄弟の絆」が描かれる事で原作のように命を落とす事はなくラーメンマンの仲間となっており、「戦いを通していつの間にか仲間になっていました」という感じの原作よりも説得力がある。
兄妹の物語は、下手をするとベタベタなドラマになりかねないところだが、アニメ版では重要なエピソードに絞って拉娘を登場させているので、観ていて鬱陶しいと言う事はない。
以上のように、ストーリーは原作の肝を押さえながら、矛盾点を無くしてラーメンマンをさらに格好良く見せており、原作を知っていても知らなくても拳法アニメとして楽しめる作品になっている。
作画・演出も良好で、戦いの場面も毎回見応えがある。技の名前が文字で画面上に出るのはちょっと格好悪いように感じたが、観ているうちに慣れてしまった。
本作の放映開始は初代「キン肉マン」の放映終了から約1年3ヶ月後であり、両作品とも東映動画が作っているのでスタッフ・キャストはかなりかぶっている。
脚本家は山崎晴哉・寺田憲史のコンビで「キン肉マン」とまるっきり同じだし、他にも演出の山吉康夫・川田武範・白土武や作画監督の森利夫・高橋英吉など「キン肉マン」に参加していた人が多い。にも関わらず、おちゃらけた印象の強い「キン肉マン」とは全く違うイメージのこの作品を作り上げたのだから、驚きだ。
声優は、松島みのりが「キン肉マン」のミート役からスライドでシューマイ役を担当しているのを初めとして、郷里大輔・堀秀行・戸谷公次・銀河万丈・佐藤正治など「キン肉マン」でお馴染みの面々が登場しており、中でも郷里大輔氏は土偶人やラーメンマン・キラーなどごついキャラの役を何度もあてていて、「キン肉マン」でも色々な役を同時にこなしていた事が思い出された。
しかし、その一方で、本作では「キン肉マン」のような無理な声優の使い回しはあまり無く、毎回登場するゲストキャラクターはきちんとイメージに合った人が呼ばれている。特に、ムンタ役の西尾徳とソドム役の大塚周夫、それにラーメンマン最大の敵である玉王役の内海賢二がはまり役だった。
大塚氏はソドムの前に十字拳黒龍役でも出演しており、その時に「どちらかと言うとソドムの方が合うんじゃないか」と思っていたら、本当にソドム役も大塚氏だったので驚いてしまった。もっとも、何度も再放送で観た作品なので、以前に観た時の記憶が残っていたのかもしれないが。
まだまだ話が残っているので、今後もどんな人が声をあてるのか、楽しみだ。暗器五点星の金剛以外の声優が思いだせないので、特に気になる。
さて、明日の放送からはシリーズ後半に入る。とりあえず、当面はモンゴルタイガーとクローン拳士のエピソードが楽しみだ。記憶にないのだが、「覇王一本杭」は果たしてアニメ版でもそのまま使われているのだろうか。第20話でアニメオリジナルキャラの皇帝(少年)が登場した事は覚えているのだが。
今後、第20話から第25話まで前後編構成のエピソードが続くが、今回の放送では全て後編が翌週に持ち越しとなってしまう。明日から三週間は、毎週次の展開にやきもきさせられる事になりそうだ。
なお、ここまで原作とアニメを色々と比較したが、色々矛盾や無茶な点がある事を含めて、原作は原作で大好きな作品だ。ゆで作品に突っ込みどころや死人の生き返りが無いと物足りない。砲岩が何度も死ぬのも、原作ならではの味の一つだと思う。
ただ、それをそのままアニメ化したら無茶になるのは明らかであり、アニメスタッフのアレンジも間違っていないと思う。原作もアニメも両方とも好きなのだ。本当に、アニメ版はいいスタッフに恵まれたと思う。それだけに、3クール足らずで終わってしまったのは残念だが、残り15話+総集編2回も楽しみだ。
本作を1話から通して観るのはテレビ愛知の再放送以来だから約15年ぶりになるが、あらためて観てみると、原作をじっくりと読み込んだ上で丁寧に作られている事が伝わってきて、何度も観ているにも関わらず非常に楽しめる。
とにかく、ラーメンマンが格好いい。主人公だから当たり前だと思われるかも知れないが、そもそも元はギャグマンガ時代の「キン肉マン」の読者投稿超人であり、造形も明らかにギャグキャラ顔であるにも関わらず、アニメ版「闘将!!拉麺男」でのラーメンマンは、シリアスな話でも全く違和感なく格好良く見えるのだから、やはりすごい事だ。
性格は原作よりさらにストイックになっているが、決して単に厳しいだけではなく、強さと優しさを合わせ持った主人公として魅力的に描かれており、特に弟子のシューマイとの関係は、原作ではややラーメンマンが理不尽に思える場面もあるのだが、アニメ版では「師」として、また「父」代わりとして、時には厳しく、また優しく接するやりとりが毎回描かれていて、暖かさが伝わってくる。
また、ゆでたまご作品にありがちな矛盾点や強引な展開を、違和感なく無理のない話にアレンジしており、スタッフが原作のよい所も悪いところもわかった上で作っているのだと言う事がよくわかる。
例えば、第3話「破られた闘龍極意書!の巻」は、ラーメンマンと兄弟子・叉焼男(チャーシューメン)との因縁を描いたエピソードだが、原作では第1話ではいなかったはずの兄弟子が第3話でいきなりいた事になっていて、いかにも後付け設定だと無理を感じたのだが、アニメ版ではラーメンマンが陳老師に入門した時は叉焼男は修行の旅に出ており、旅から帰った後に初めてラーメンマンと対面した事になっている。
これなら、第1話に叉焼男が出なくても問題はないし、叉焼男の立場からすれば後から入ってきた弟弟子が老師にかわいがられている事でラーメンマンを邪魔に思うようになった訳で、話の展開としても自然だ。
他にも、話の改変は色々とあるのだが、原作との大きな違いとしては「むやみに人が死なない」点が挙げられる。
原作では、蛾蛇虫、砲岩、犬操など後で仲間となるライバルキャラクターは、ラーメンマンとの一度目の対決で明らかに最後はとどめをさされて息絶えているにもかかわらず、そんなエピソード自体がなかったかのように涼しい顔で再登場する。
死人の生き返りは、ゆでたまご作品では日常茶飯事なのだが、「キン肉マン」では後付けで「超人墓場で珠を四つ集めれば生き返られる」設定が登場したので何とか納得できる。だが、「闘将!!拉麺男」は、そのような設定は全くなく、それどころか「生命の石」争奪戦では「仲間を生き返らせるため」の戦いを繰り広げており、原作ではエピソードごとに命の重みが全然違うという変な状態だ。
だからこそ、話に無理のない形で、先に挙げたライバルキャラ達を含めて、極力死人が出ないようにしているアニメ版は話の陰惨さも薄れており、観ていて気持ちがいい作品となっている。
そして、アニメで導入された最大のオリジナル要素は、ラーメンマンと生き別れの妹・拉娘との関係だ。
拉娘は戦い自体を嫌っているため、ラーメンマンは拉娘との再会後も「戦わずして勝つ」極意を会得するまでは兄として名乗らないと心に決めており、それが話に一抹の哀愁と緊張感を与えている。
また、ラーメンマンと対比するように、蛾蛇虫や蛮暴狼は、妹との「兄弟の絆」が描かれる事で原作のように命を落とす事はなくラーメンマンの仲間となっており、「戦いを通していつの間にか仲間になっていました」という感じの原作よりも説得力がある。
兄妹の物語は、下手をするとベタベタなドラマになりかねないところだが、アニメ版では重要なエピソードに絞って拉娘を登場させているので、観ていて鬱陶しいと言う事はない。
以上のように、ストーリーは原作の肝を押さえながら、矛盾点を無くしてラーメンマンをさらに格好良く見せており、原作を知っていても知らなくても拳法アニメとして楽しめる作品になっている。
作画・演出も良好で、戦いの場面も毎回見応えがある。技の名前が文字で画面上に出るのはちょっと格好悪いように感じたが、観ているうちに慣れてしまった。
本作の放映開始は初代「キン肉マン」の放映終了から約1年3ヶ月後であり、両作品とも東映動画が作っているのでスタッフ・キャストはかなりかぶっている。
脚本家は山崎晴哉・寺田憲史のコンビで「キン肉マン」とまるっきり同じだし、他にも演出の山吉康夫・川田武範・白土武や作画監督の森利夫・高橋英吉など「キン肉マン」に参加していた人が多い。にも関わらず、おちゃらけた印象の強い「キン肉マン」とは全く違うイメージのこの作品を作り上げたのだから、驚きだ。
声優は、松島みのりが「キン肉マン」のミート役からスライドでシューマイ役を担当しているのを初めとして、郷里大輔・堀秀行・戸谷公次・銀河万丈・佐藤正治など「キン肉マン」でお馴染みの面々が登場しており、中でも郷里大輔氏は土偶人やラーメンマン・キラーなどごついキャラの役を何度もあてていて、「キン肉マン」でも色々な役を同時にこなしていた事が思い出された。
しかし、その一方で、本作では「キン肉マン」のような無理な声優の使い回しはあまり無く、毎回登場するゲストキャラクターはきちんとイメージに合った人が呼ばれている。特に、ムンタ役の西尾徳とソドム役の大塚周夫、それにラーメンマン最大の敵である玉王役の内海賢二がはまり役だった。
大塚氏はソドムの前に十字拳黒龍役でも出演しており、その時に「どちらかと言うとソドムの方が合うんじゃないか」と思っていたら、本当にソドム役も大塚氏だったので驚いてしまった。もっとも、何度も再放送で観た作品なので、以前に観た時の記憶が残っていたのかもしれないが。
まだまだ話が残っているので、今後もどんな人が声をあてるのか、楽しみだ。暗器五点星の金剛以外の声優が思いだせないので、特に気になる。
さて、明日の放送からはシリーズ後半に入る。とりあえず、当面はモンゴルタイガーとクローン拳士のエピソードが楽しみだ。記憶にないのだが、「覇王一本杭」は果たしてアニメ版でもそのまま使われているのだろうか。第20話でアニメオリジナルキャラの皇帝(少年)が登場した事は覚えているのだが。
今後、第20話から第25話まで前後編構成のエピソードが続くが、今回の放送では全て後編が翌週に持ち越しとなってしまう。明日から三週間は、毎週次の展開にやきもきさせられる事になりそうだ。
なお、ここまで原作とアニメを色々と比較したが、色々矛盾や無茶な点がある事を含めて、原作は原作で大好きな作品だ。ゆで作品に突っ込みどころや死人の生き返りが無いと物足りない。砲岩が何度も死ぬのも、原作ならではの味の一つだと思う。
ただ、それをそのままアニメ化したら無茶になるのは明らかであり、アニメスタッフのアレンジも間違っていないと思う。原作もアニメも両方とも好きなのだ。本当に、アニメ版はいいスタッフに恵まれたと思う。それだけに、3クール足らずで終わってしまったのは残念だが、残り15話+総集編2回も楽しみだ。