はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

第9回NU上映会感想

2008-02-23 23:28:30 | 藤子不二雄
 17日の日曜日に、東京で行われた「ネオ・ユートピア」藤子アニメ上映会に行ってきた。
 今回は、上映された作品のうち、アニメ限定で感想を書いておく。



・新オバケのQ太郎 第40話Aパート「ブルトラマンよたのんだぞの巻」
(脚本/松本力、コンテ/小華和ためお)

 原作でも好きな話の一つなので、今回アニメ版が観られて嬉しかった。シンエイ版でこの話がアニメ化されていないのは、ブルトラマンとカメ仮面が版権問題で使いづらくなったからだろうか。
 今回、特にブルトラマンとカメ仮面を誰が演じているのか注目していたのだが、ブルトラマン役は立壁和也(漢字表記時代)氏、カメ仮面は山田康雄氏が担当していた。二人とも、かっこいい(?)ヒーロー役は珍しいのではないだろうか。
 なお、「ブルトラマン」の監督役は肝付兼太氏(ゴジラと二役)。シンエイ版ドラえもん以前の藤子アニメで、この二人の掛け合いが登場するとは意表を突かれた。
 アニメ本編は、オチが原作と違ってU子さんに追いかけられるQ太郎で終わっていたのがちょっと物足りなかったが、全体的にテンションが高くてほぼ全編素直に楽しめた。特に、ブルトラマンの声をあてるQ太郎がノリノリで面白かった。そう言えば、原作にあった「テレビの視聴率はこっちの方が高いぞ」というセリフはなかったが、本当にテレビに流すと生々しすぎるからだろうか。



・新オバケのQ太郎 第40話Bパート「オバQ騎士道の巻」
(脚本/山崎晴哉、コンテ/棚橋一徳)

 Aパートに引き続いてU子さん登場。原作に馴染んでいると、どうしてもドロンパもどきの顔には違和感がある。作画の手間を省くためだったらしいが、これはアニメ「新オバQ」で唯一不満な点だ。
 こちらは、前話とは対照的にオチは原作通り。ただ、皮肉にも原作通りにしたせいで、ややインパクトが弱い結末に感じてしまった。「はたきをかける」に、何かもう一捻りしたらもっと面白くなったのではないだろうか。
 とは言え、騎士としてがんばろうとするQ太郎の姿は見ていて面白く、原作の面白さは十分に引き出せていたと思う。こうやって「新オバQ」を観る機会があると、あらためて原作もアニメも容易には観られない状態なのがもったいないと感じる。「新オバQ」は、シンエイ版「ドラえもん」と同時期に、生まれて初めて接したテレビアニメなので、ぜひいつか容易に観られるようになって欲しい。
 なお、各話スタッフでは脚本とコンテしか記載していないが、全話共通で演出(実質的には監督)は長浜忠夫、作画監督は椛島義夫が担当した。



・怪物くん[第1作] 第27話Aパート「島怪物の巻」
(脚本/吉田秀子)

 白黒版「怪物くん」は東京ムービーとスタジオ・ゼロが交互に制作していたが、今回上映されたのはスタジオ・ゼロ担当回だった。
 Aパートは、「太平洋上の一匹モンスター」の初のアニメ化。以前に当ブログで取り上げたシンエイ動画版では30分1話構成だったが、今回はAパートのみだったため、シンエイ版アニメだけでなく原作と比べても、ややこぢんまりとまとめた印象を受けた。
 オチは、前半でも触れられた「波島青年の遭難は怪物のせいか否か」の問題を取り上げていたが、これは口げんかをさせる事で怪物くんとヒロシの仲のよさがかえって描写されており、いいアレンジだった。
 ちなみに、半魚人の声は永井一郎氏、シーラカンス大統領は野本礼三氏(シンエイ版のドクター・ノオ)だった。



・怪物くん[第1作] 第27話Bパート「怪物学校の巻」
(脚本/藤原真純)

 夜中のエピソードなので、白黒でムードが良く出ている作品だった。
 この話で一番笑ったのは、怪物くんが生徒の怪物の出席をとっている場面での、「淀川くん!」→解説の淀川長治が登場して返事、の流れだった。当時としては、アニメ本編に実写の解説者、しかも淀川氏が登場するのは画期的だったのだろう。今観ても十分面白い。
 この話の後にED(歌はOPと同じ)も流れたが、「東京ムービー主題歌大全集」に収録されていない映像だったのが気になるところ。権利がスタジオ・ゼロ側にあるのだろうか。



・ドラえもん [第2作] 第100話「オールマイティーパス」
(脚本/なし、コンテ/野田作樹、演出/西牧秀夫、作画監督/椛島義夫)

 小原さんが喉を痛めて、丸山裕子さんが代役を務めた期間のエピソード。「代役のび太」の話は全編ソフト化されておらず、私も日曜版で観たっきりだったので、29年ぶりに観た事になる。
 丸山さんののび太は、どうしても「おじゃまんが山田くん」の山田みのるにしか聞こえない。声だけ聴いたら、「何で「ドラえもん」にみのるが?」と思ってしまいそうだ。情けない少年キャラという点では共通しているが、声質の点で無理があったと思う。これでは、ビデオやDVDに収録されないのも仕方がないか。
 そう言えば、スネ夫が代役の話もソフト化されていない。こちらは近年まで何度か再放送されたので、まだ観た人は多そうだが。



・ドラえもん [第1作] 第10話Bパート「ねがい星ながれ星の巻」
(脚本/鈴木良武、コンテ/生頼昭憲)

 前回の上映会に続き、日本テレビ版「ドラえもん」が登場。やはり、真佐美ジュン氏のご提供による映像だ。
 このエピソードは富田耕生氏がドラえもんを演じた時期のもので、やはり何度聴いてもおっさん臭い印象を受けてしまう。
 サブタイトル通り、原作の「ねがい星」をアニメ化しているが、後半はアニメオリジナルの展開となっており、静香が「弟が欲しい」と願った結果、ねがい星が捨て子を源家に連れてきてしまう。静香の母はシンエイ版と似た顔だが、父は原作と比べても別人、さらに「ぼた子」(声・野沢雅子)がお手伝いとして源家に住み込んでいる様子が観られる貴重なエピソードだ。
 オチで、静香が無邪気に両親に向かって「本当の弟を作って」と頼む場面は、原作「人間製造機」の「いっしょに作らない、赤ちゃん!」の反応とはまるで別人のようだ。いずれにしろ、子作りの意味を知らないと理解できない大人向けなオチになっている点が面白い。



・ドラえもん [第1作] 第21話Bパート「お天気ボックスの巻」
(脚本/鈴木良武、コンテ/矢沢則夫)

 2クール目・野沢雅子主演版のうちの1本。この話でもぼた子に少しだけ出番があるが、声は別人(誰だか判別できず)に変わっていた。さすがに、主役との掛け持ちは無理があったのか。
 サブタイトルは「お天気ボックス」だが、内容はほぼオリジナル。「虹を持ってきてくれたら何でも言う事を聴いてあげる」という静香の言葉を聞いて、のび太が虹を手に入れようとする話だが、ドラえもんまで一緒に空を飛んで虹のところまで行こうとするあたり、原作の「おいかけテレビ」で電気屋に行って「これだけたくさんあるんだから、のび太をテレビに出しなさい」と言っている時のような、いかにも原作初期っぽい感じだ。空を飛ぶ時に「ヘリトンボ」を使っているのもポイント。
 結局、お天気ボックスを使って複数の天気の組み合わせで虹を出すのだが、その後の展開が凄まじかった。何しろ、最後は頭をぶつけたドラえもんが虹の幻覚を見て「虹が出た。のび太にも見せてあげたい」で終わってしまう。後期のドタバタ路線を象徴するオチだろう。あまりに唐突に終わってしまうので、前半の相撲大会で尺を使いすぎて、時間が足りなくなったのかと勘ぐりたくなる。



 以上、感想終わり。ここで取り上げた以外にも、普段はなかなか観られない貴重な映像が上映されて、非常に楽しい時間だった。白黒藤子アニメを観る機会が少ないのは言うまでもないが、帯番組時代の大山ドラも現在はCSですら再放送はされていないので、今回のように未ソフト化作品が観られるのは有り難い。
 その後は、2次会で参加者の方々と歓談した。久しぶりにお会いした方もいて、こちらも非常に楽しい時間だった。ただ、逆に今回は来られなかった方もいたのは少し残念だったが。

 今回、ギリギリまで参加できるか微妙なところで、スケジュールの調整に手間取ったが、無理して参加しただけの甲斐はあった。それにしても、参加者が限定されているとは言え、少し前まで完全に幻の作品だった旧ドラ=日本テレビ版「ドラえもん」をみんなで一緒に観て楽しむ事が出来るようになったのは、非常に感慨深い事だ。
 旧ドラに限らず、昭和40年代の藤子アニメはなかなか観る機会がないが、今後よい方向に動く事を期待したい。ともかく、NUスタッフの皆さん、それに参加された方々にはお疲れさまでした、ありがとうございましたと申し上げたい。