はとちゃんが、どこからか、
突然キーボードの上に舞い降りてきました。
「あわわわわ」
はとちゃんのすがたが見えなかったので
すっかり安心してしまっていたのです。
棚の上の奥で、休んでいたのを
忘れてしまっていたのです。
「どうしたの?」
はとちゃんは、涼しい顔で
私を見ています。
はとちゃんは、私を安心させるために
わざと棚の奥で、休んだ
ふりをしていたのです。
「はとちゃんのフェイント」
に、まんまと、ひっかかって
しまいました。
棚の上の、はとちゃんを
見上げると、はとちゃんは
興味津々で、私を見下ろしています。
キーボードの水を拭いて
入力を再開しました。
はとちゃんが、降りてくるのを
警戒しながらです。
しばらくすると、はとちゃんの
すがたがみえません。はとちゃんは
棚の奥で、くつろいでいました。
「これならだいじょうぶ」
まったく無警戒でパソコンを
そうさしていました。
いっぷくして、椅子の背もたれ
で、休んでいたら、突然
はとちゃんがやってきました。
はとちゃんは、いたずらっぽい
表情をして、私のやることを
のぞきこむようにして、棚の上から
見下ろしています。
「もう、もう、もう」
まず、びしょぬれになった
キーボードをふきます。
「なにからやったらいいの」
すこしのあいだ、ぼうっと
してしまいました。
何をやっていたのかも
忘れてしまいました。
はとちゃんを見上げると
はとちゃんは、興味しんしんです。
「これからなにをするのかな?」
はとちゃんは、私をじっと見ています。
はとちゃんは、悠然と棚の上に
飛んでいきました。
「あーあ」
びしょぬれになった
キーボードを見つめていました。
キーボードをふきながら
めちゃくちゃになった
画面を見ていました。
私は、パソコンの素人なので
画面の修復はできません。
また最初からやり直しです。
「どうしたの?」
はとちゃんは、棚の上から
わたしを見下ろしています。
はとちゃんの、こととはいえ
すこし、腹を立ててしまいました。