はとちゃんは、私の肩の上に
乗って、張り付いたように
はなれません。
ちっちゃい子供が母親に
しがみついているようです。
私が、どっかに行ってしまったら
生きていけないのです。
それなのに、夕方になったら
出かけようとするんです。
「いったいこれから、どこに
いくんですか?私はどうなるんですか?
本当に、明日の朝来るんですか?」
はとちゃんにとっては、毎日が試練です。
はとちゃんとの親子関係は
一朝一夕のものではありません。
「カラスに襲われて、ひんしの
重傷を負ってしまいました。
それから一か月、けがの療養
をして、やっと、普通に
食事がとれるようになりました。」
その間、毎日毎日、私の看病を
うけました。
はとちゃんにとって、私は
単なる親ではなく、命の恩人なのです。
薄皮をはぐような回復の仕方だったので
苦しい日々だったのではないかと思います。
「本当に、明日来れるの?」
はとちゃんは必しです。
もし私が、これなければ、はとちゃんは
大変なことになります。
はとちゃんにとっては、1日1日
が、勝負です。
「部屋が暗くなるなんてことは
どうでもいいことなのです。
「ここで、なんで一緒に
いてくれないの?」
これが、どうしても理解できないのです。
このことになれるのには、だいぶ時間が
かかりました。
「絶対に、かえすまい」
はとちゃんは、ひっしのおもいで
肩の上にはりついています。
はとちゃんは、このまんま
私が帰るまで、張り付いてしまいます。
「はとちゃん、これ以上いると
部屋の中が、真っ暗になっちゃうよ」
「明日の朝来るから」
と言っても、聞く耳を持ちません。
はとちゃんにとっては
「夕方、家を出ていくのが
信じられないことなのです」
はとちゃんが、もっとも警戒しているのは
私が夕方、マンションから自宅に
帰ることです。
日の入りの30分ぐらい前には
マンションの部屋は、薄暗くなります。
はとちゃんが動ける限界の暗さです。
私が帰る支度を始めると
はとちゃんは気づきます。
それまで、棚の上で、
くつろいでいたのに私の肩の上に
飛び降りてきます。
はとちゃんはひっしです。
「もう帰るの?
なんで毎日、帰るの?」
なんとか私をひきとめようとします。