「はとちゃん、どうしてるかなあ」
と、おもいながらマンションのドアーを
開けました。
はとちゃんは、玄関の靴箱の上で
待っていました。
しばらく私を見ていて、私だとわかると
もう大変でした。
靴箱の上と奥の部屋の棚の上を
「ばたばたばた」
すごい音を立てながら、何往復もしました。
うれしくてたまらなかったのです。
何度も、腰をかがめても
はとちゃんは、おりてくれません。
そこで、意を決して
「えいやっ」
と、勢いよく、かがんだら
はとちゃんは、やっと靴箱の上に
おりてくれました。
「はとちゃん、明日の朝
はやく来るから」
はとちゃんは心配そうな眼をして
私をじっと見ています。
「じゃあ、はとちゃん、ばいばい」
やっと、ドア^をしめて
帰ることができました。
いよいよ、外が薄暗くなり始めました。
「はとちゃん、もうすぐ暗くなるから
かえるよ」
と、いいながら玄関に行きました。
はとちゃんは首筋の後ろに
かくれっぱなしです。
しょうがないので、腰をかがめれば
はとちゃんが、降りるかと思い
「えいっ」
と、腰をかがめました。
しかし、はとちゃんは、首筋から
背中のほうに、移っただけで
降りてきませんでした。
はとちゃんは、首筋の後ろに
かくれてしまいました。
「はとちゃん、もうすぐ
くらくなっちゃうよ」
外が薄暗くなったら、部屋の中は
もう、真っ暗です。
ですから、帰る時間の30分ぐらい前には
帰る準備をしはじめています。
この30分の時間が、はとちゃんにとっては
必死の時間なのです。
はとちゃんは私の肩の上で
ひっついています。
多くの時間を、肩の上で過ごしています。
洗面所に行くときも、そのまま動きません。
マンションの部屋が暗くなる前には
帰らなければなりません。
暗くなってしまったら、はとちゃんが
動けなくなるからです。
「はとちゃん、暗くなるから
そろそろ帰るよ」
はとちゃんは、気配を察知したのか
ふりむいても見えないように
肩から首筋の後ろに、かくれてしまいました。