はとちゃんは、おきているかぎり
棚の上から、私を見ています。
『熱視線そのものです」
はとちゃんは、私が唯一の
頼みの綱なので、片時も
はなれたくないのです。
はとちゃんを見上げなくても
はとちゃんの視線は感じます。
しばらくすると
「あれっ」
視線を感じなくなり
見上げると、はとちゃんは
棚の上にいません。
「どこにいったんだろう?」
と、立ち上がってみると
「はとちゃんは、棚の奥のほうで
壁に背を持たれて寝ていました。
はとちゃんは、棚の上から
私を見下ろしています。
私が見上げて、はとちゃんを見ると
はとちゃんは、視線をずらします
これを何回か繰り返すと
はとちゃんは、「なに、なに、なに」
と、肩のうえに、降りてきました。
しばらく肩の上に、とまつていました。
「ようがないときは、呼ばないでくれませんか」
はとちゃんに怒られてしまいました。
はとちゃんは、また、棚の上に
戻っていきました。
はとちゃんは、わたしの昼食が
終わるまで、デスクの上で見ていました。
昼食が終わって
「ああ、おいしかった」
と、はとちゃんを見ながら言いました。
「もう、おわったの?」
はとちゃんは、ねぐらに戻っていきました。
はとちゃんの、ねぐらは、棚の上です。
そこから、わたしをじっと見ています。
はとちゃんは、起きている限り
わたしを見下ろしています。
はとちゃんは、まるまる一個のパンを
パクパク食べて、水をごくごく飲みました。
はとちゃんは、おなか一杯になり
満足して、私を見ています。
こうなると、私が食べていても
見ているだけで、ちょっかいはしません。
「へえー、こんなおおきな口を開けて
たべるんだあ。水をいれものから
ごくごくのむんだあー」
はとちゃんは、めずらしそうに
わたしをみています。
はとちゃんは、もうパンが
まちどうしくてたまりません。
しかし、ひとりでは食べたくないのです。
私がパンを食べ始めると
はとちゃんは、反対方から
「ぱくぱく、ぱくぱく」
すごい勢いで食べ始めます。
ひとつのパンは、あっというまです。
ふたつのパンを食べ終わると
はとちゃんは、満足します。
つまり、まるまる、ひとつのパンを
食べてしまうのです。
「ああ、おいしかった」
そのあと、はとちゃんは
のどがかわくのか
水を「ごくごく、ごくごく」
のみほします。
はとちゃんは、私が昼食を
買いに行くことには、まったく無警戒に
なりました。
無警戒どころか、はやく買いに行って
ほしいのです。
「いつものパンをお願いします。」
はとちゃんは、私の総菜パン
と、同じものを、ぺろっと食べてしまいます。
もちろん、総菜部分は、あげません。
わたしと同じパンを食べたいのです。
はとちゃんとの、靴箱の上の
やりとりは10分以上つづきます。
はとちゃんの、朝の熱烈歓迎
への、お返しです。
これによって、はとちゃんとの
強い関係が、できあがりました。
はとちゃんの、夕方から
翌朝までの、おるすばんも
すこしづつ、不安が
解消されてきました。
はとちゃんの背中をなぜてあげると
「くうく、くうく、くうく」
小さな声で、ないています。
しばらく、なぜてあげていると
はとちゃんの声がきこえなくなりました。
なんと、目を閉じて寝てしまいました。
「やれ、やれ、やれ」
手を止めて、行こうとすると
「くうく、くうく、くうく」
と、またなきはじめました。
もっと、してほしい、ということです。
はとちゃんは、毎朝、靴箱の上で
「熱烈歓迎」をしてくれます。
「ぐるっく、ぐるっく、ぐるっく」
大きな声で、なきながら
靴箱の上をかけまわります。
頭を、てのひらでなぜてあげると
「すごごん」を連発します。
しばらくこれが続きます。
そのうち、はとちゃんが
ひらぺったくなって、「こうばこ」
を、してしまいました。
「せなかをなぜてほしいのです」
はとちゃんは、私が毎朝
マンションに来るので
やっと不安が解消され
おちついてきました。
日によっては、靴箱の上ではなく
奥の部屋の、棚の上に
いることもあります。
私だとわかると、おもむろに
靴箱の上に飛んできます。
「やっと、安心して、待ってることが
できるようになったよ」
私も安心して、マンションに
来ることができるようになりました。