はとちゃんは、もうパンが
まちどうしくてたまりません。
しかし、ひとりでは食べたくないのです。
私がパンを食べ始めると
はとちゃんは、反対方から
「ぱくぱく、ぱくぱく」
すごい勢いで食べ始めます。
ひとつのパンは、あっというまです。
ふたつのパンを食べ終わると
はとちゃんは、満足します。
つまり、まるまる、ひとつのパンを
食べてしまうのです。
「ああ、おいしかった」
そのあと、はとちゃんは
のどがかわくのか
水を「ごくごく、ごくごく」
のみほします。
はとちゃんは、私が昼食を
買いに行くことには、まったく無警戒に
なりました。
無警戒どころか、はやく買いに行って
ほしいのです。
「いつものパンをお願いします。」
はとちゃんは、私の総菜パン
と、同じものを、ぺろっと食べてしまいます。
もちろん、総菜部分は、あげません。
わたしと同じパンを食べたいのです。
はとちゃんとの、靴箱の上の
やりとりは10分以上つづきます。
はとちゃんの、朝の熱烈歓迎
への、お返しです。
これによって、はとちゃんとの
強い関係が、できあがりました。
はとちゃんの、夕方から
翌朝までの、おるすばんも
すこしづつ、不安が
解消されてきました。
はとちゃんの背中をなぜてあげると
「くうく、くうく、くうく」
小さな声で、ないています。
しばらく、なぜてあげていると
はとちゃんの声がきこえなくなりました。
なんと、目を閉じて寝てしまいました。
「やれ、やれ、やれ」
手を止めて、行こうとすると
「くうく、くうく、くうく」
と、またなきはじめました。
もっと、してほしい、ということです。
はとちゃんは、毎朝、靴箱の上で
「熱烈歓迎」をしてくれます。
「ぐるっく、ぐるっく、ぐるっく」
大きな声で、なきながら
靴箱の上をかけまわります。
頭を、てのひらでなぜてあげると
「すごごん」を連発します。
しばらくこれが続きます。
そのうち、はとちゃんが
ひらぺったくなって、「こうばこ」
を、してしまいました。
「せなかをなぜてほしいのです」
はとちゃんは、私が毎朝
マンションに来るので
やっと不安が解消され
おちついてきました。
日によっては、靴箱の上ではなく
奥の部屋の、棚の上に
いることもあります。
私だとわかると、おもむろに
靴箱の上に飛んできます。
「やっと、安心して、待ってることが
できるようになったよ」
私も安心して、マンションに
来ることができるようになりました。
はとちゃんは、「ぐるっく、ぐるっく、ぐるっく」
大きな声で鳴きながら、靴箱の上を
かけまわっています。
てのひらにも、「すごごん」を
連発しています。
「はとちゃん、背中をなぜてあげようか」
といいながら、背中をなぜてあげました。
はとちゃんは、小さな声で
「くうく、くうく、くうく」
なきながら、ひらぺったく
なってしまいました。
驚くほど、気持ちよさそうでした。
はとちゃんは、うれしくてうれしくて
靴箱の上を、
「ぐるっく、ぐるっく、ぐるっく」
大きな声でなきながらすごい勢いで
かけまわりました。
「はとちゃん、げんきにしてた?」
と、いいながら、てのひらで
頭をなぜてあげました。
はとちゃんは、頭をすごい勢いで
てのひらに、ごんごんぶつけてきました。
「すごごん(すごいごんごん)」の連発でした。
はとちゃんは、うれしくてうれしくて
靴箱の上を
「ぐるっく、ぐるっく、ぐるっく」
大きな声でなきながら、かけまわりました。
「はとちゃん、げんきにしてた?」
と、いいながら
頭をなぜてあげました。
はとちゃんは、手のひらを
すごい勢いで、ごんごんしてきました。
「すごごん(すごいごんごん)」
の連発でした。
「はとちゃん、どうしてるかなあ」
と、おもいながらマンションのドアーを
開けました。
はとちゃんは、玄関の靴箱の上で
待っていました。
しばらく私を見ていて、私だとわかると
もう大変でした。
靴箱の上と奥の部屋の棚の上を
「ばたばたばた」
すごい音を立てながら、何往復もしました。
うれしくてたまらなかったのです。