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■北村哲朗彫刻展ー樹憶 III (2024年6月11~16日、札幌)

2024年06月15日 23時08分04秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 2010年からほぼ毎年個展を開き、新作の木彫を発表している北村哲朗さん。
 登別市在住ですが、伊達市大滝の作業場で創作を続けています。
 今回も、さまざまな樹種による大作や小品が並びました。

 
 イタヤカエデの一本の木による「風のトルソ」。
 まず、今どきこんな巨木があることにおどろきましたが、北村さんに話があったときは「このままだと薪になっちゃうよ」と言われたそうです。

 木の中の空洞などの部分をくりぬいた結果、まるで2人の人物が出会ったかのようなシルエットになっています。

 北村さんは
「風は目に見えないけれど、形にしたい。木がもともと持っている形をそのまま残すように、作品にした」
といいます。

 会場に運び込んで、ライトを当てたところ、まるで題名の「トルソ」のような形の影が、背後の壁に浮かび上がりました。
 衣料品店の倉庫にありそうな、頭部や両手両足の無い形です。
 北村さんはもちろんライティングまでは想定しておらず、意図しない形の影にびっくりしたそうですが、「してやったり」という気持ちが伝わってくるようでした。
 
 次の画像は、中央の背が高い作品が「玄」(ヤチダモ)。
 左右の一対が「光陰」です。
 また、右端の小さい作品が「果」(イチイ)


 「光陰」の樹種はシナで、同じ幹から制作しています。
 ちなみに、向かって左側のほうが上の側だそうです。
 また、中央に刺さっている板のようなものは、すぽっと取り外せる仕組みになっています。
 北村さんは「流動的な、動きのような気配を取り込みたかった。自由さを呼び込みたい」と、作品に寄せた思いを語ります。
 
 
 もうひとつの大作が「眾」(ヤチダモ)。
 「しゅう」とよみ「衆」の正字体だそうです。
 大勢の人をあらわす漢字で、確かにこの文字と似た形状をしています。
 これに限らず、漢字から作品を着想する場合がよくあるそうです。漢字はもともと絵(象形文字)ですからね。

 以前の北村さんは自分に彫りたい形があって制作を進めてきたことが多かったのですが、今回など近年は、自分を無にして、作品と対峙することが増えているそうです。これを「アフォーダンスの視点」と、北村さんは称しています。
 もとのかたちを生かす―という意味で、来年は木の根による作品を出品するとのこと。
 早くも次回個展のプランに取りかかっている北村さんのエネルギーにはあらためて脱帽するばかりです。


 冒頭画像、左手の壁にかかっているのが「過客」(ヒバ)。
 中央で、鉄の台座の上に載っているのが「因」(セン)。

 その右側、一対の作品が「風の手」。
 その手前の床の上に展開している、複数のパーツからなる作品が「風に散る」。

 台座上の作品で、右端にあるのが「ゆい」(イタヤカエデ)です。

 会場入り口附近にあった「光陰」と「萌」。

 このほか窓際に「双」(4点組み)がありました。


2024年6月11日(火)~16日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
gallery ESSE(札幌市北区北9西3)

過去の関連記事へのリンク
北村哲朗彫刻展 ー樹憶 II― (2023年6月12~17日、札幌)

北村哲朗彫刻展ー地平と辺縁ー (2019、室蘭)

北村哲朗彫刻展―地平と辺縁Ⅱ― (2018)

北村哲朗 彫刻展―境界の構図 (2015)
首展 (2015)

北村哲朗彫刻展 (2010、画像なし)



・地下鉄南北線「北12条駅」から約400メートル、徒歩5分
・同「さっぽろ駅」から約610メートル、徒歩8分

・JR札幌駅北口の出口から約340メートル、徒歩5分
・地下鉄東豊線「さっぽろ駅」17番出口から約750メートル、徒歩11分。同「北13条東駅」から約1キロ、徒歩13分

※モスバーガーの北側の並びです


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