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■大嶋美樹絵展 ~やがて満ちてくる光の Ⅱ~ (2024年4月23日~5月6日、札幌)

2024年06月12日 07時55分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 大嶋さんは札幌拠点の画家。
 道内の団体公募展には出していませんが、二紀展には続けて出品していて、個展も時折開いています。

 個人的な感想を言えば、2010年代におもに取り組んでいて「其処そこ此処ここです」という題の個展で発表していたシリーズが、筆者は好きでした。
 おもに小樽の観光地を俯瞰 ふ かんしてとらえた絵なのですが、人々がふしぎな行動をとっていたり、地面に亀裂が入っていたり、遠くから煙があがっていたり…。単なる風景画ではなく、作者のイマジネーションがふんだんに盛り込まれていたのです。
 それを「楽しい」というと、ちょっと不謹慎になるかもしれません。亀裂や煙にはおそらく東日本大震災が画家に与えた影響が反映しているのでしょうから。
 しかし、長い間見ていても見飽きない、個性的な世界がそこには繰り広げられていたのです。
 
 ところが20年代に入り、大嶋さんの画業は新しい局面に入りました。
 俯瞰の画角も、いつまでも見飽きないことも、従来と変わっていませんが、夕闇に包まれる札幌の街並みを写実的に描いた作風に一変したのです。

(冒頭画像で、上辺の空に暗いところと明るいところが交互に描かれているように見えますが、これはライティングでこう見えるだけです。すみません)

 おそらく、札幌でいまのところ最も高い建造物であるJRタワーの展望室から見た眺めなのでしょう。
 札幌駅やJRの線路、大丸札幌店、5月末で営業終了の「センチュリーロイヤルホテル」、駅北口のホテル群や「タワーマンション」などが克明に描写され、遠景には、手稲山に連なる山並みと夕空が見えています。

 そこには以前のような、現実の風景を想像力で変えたところはまったくありません。

 ただ「マジックアワー」ともいわれる時間帯であることがポイントでしょう。
 昼と夜の境界線の時間帯。まちのあかりがともり始め、通常なら見えない魔物や怪異に出合いそうな時間です。
 昼の景色や夜景であればそのまま写真に撮れるのでしょうが、日没直後の短い時間帯に現れる微妙な光の加減は、絵画ならではの題材といえるかもしれません。
 
  会場のテーブルには、流木に着彩したような、ユニークな作品が置かれていました。


2024年4月23日(火)~5月6日(月)午前10時30分~午後7時30分(土日~午後8時)、ラストオーダー30分前、会期中無休
TO OV cafe / gallery ト・オン・カフェ/ギャラリー(札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)

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第16回春季二紀展 (3月25~31日、東京・上野) 2024年春東京(9)

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第14回北海道二紀展(2006)
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