ガリバー通信

「自然・いのち・元気」をモットーに「ガリバー」が綴る、出逢い・自然・子ども・音楽・旅・料理・野球・政治・京田辺など。

「ピアノこうて!」

2012年01月24日 | 感じたこと
 毎朝、NHKの連続テレビ小説「カーネーション」を観ているのだが、最近京都のあるご婦人とお話していて、あのテレビの言葉は「汚いし品がない」という感想を耳にしたのだが、私にとっては、このドラマの舞台になっている大阪の岸和田、つまり「カーネーション」の原作の基となっている「コシノ三姉妹」のお母さんが生まれ育った地域に近い、大阪の阿倍野に生まれ育ったこともあって、とても親しみやすく決して「汚い」とか「品がない」とは思わないのである。

 このドラマは、世界を舞台に洋装のファッションデザイナーとして活躍するコシノジュンコさんをはじめとする三姉妹の産みの親である母の戦前、戦後を通じての実家の着物を取り扱う和装店を「洋装店」として自立させていく、女性の半世紀を描いているのだが、当然ドラマの方言指導もあって、大阪弁の中でも「泉州弁」と言われている岸和田地域を中心とする「言葉」をできるだけ使用している様子である。

 主演の尾野真千子さんの出身は大阪ではなく隣の奈良県の現在の五條市、西吉野村だそうなので、たぶんそう違和感を感じることなく演ずることの出来るのだろうと思うのだが、このドラマでは泉州弁を使う地域にほぼ近い堺市出身の黒谷友香さんが主人公の最初のお客さんとして登場以来、仲のいい友人としてたびだび洋装の似合う女性として出演しているし、近所の髪結いの安岡に嫁いできた女性も田丸麻紀さんが演じていて、やはり岸和田に近い和泉市の出身だし、お笑いタレントの「ほっしゃん」も北村という事業者として登場しているが、彼もほぼ泉州弁を話す地域の出身者である。

 タレント、女優人としては他に、昔「タンスにゴン!」のCMを担当していた沢口お靖子さんも泉州弁丸出しで喋ったコマーシャルが受けていた様に記憶しているし、お笑いの山田花子、女優、萬田久子、歌手、神野美伽さんらも同地域の出身とされているので、幼い頃はたぶん泉州弁に近い言葉を日常的に喋ってはったのではないかと推察する。

 そんな一地域に長く伝承されている言葉のひとつではあるが、岸和田地域は「だんじり」の祭りが盛んな地域でもあり、勇壮かつ命知らずの男たちがだんじりを引いたり、その動く屋根に乗って跳ぶという祭りのハイライトに、男子はもちろんだが女子も血湧き肉踊るといった感が強いお国柄なので、とても言葉は勇壮かつ荒っぽくも感じる語感がするとは思う。

 しかし、この泉州弁に関わらず、長年その地方、地域に生まれ育った者たちにとっては、その地域特有の方言とは言っても、とても愛すべき言葉であり、決して「汚い」とか「品がない」とか他の地域に生まれ育った者たちが批判したり時には軽蔑したりできるものではないのではないだろうか。

 朝の連続テレビ小説「カーネーション」では、主人公糸子を演ずる「おかん」に対して、賑やかで元気いっぱいの三姉妹が、毎日の様にある時から、「ピアノこうて!」の大合唱を繰り返しているのだが、そんな子どもたちの要求に対して、母である糸子は、「あかん」と一言で突っぱねているのだが、子どもたちは全くヘコタレルことなく、タンスの各段に「ぴあのこうて」と記した紙をいれておいたり、母親が仕事で縫い上げた洋装のドレスや商品にも、「ピアノこうて」という札を各々ぶら下げて諦めない様相である。

 子どもたちの大合唱やこの様な責め文句に対して、「おかん」である主人公糸子が、何時になったら屈するのかはたまた屈せずに「買わない」意地を通すのかは、ドラマの今後に任せるしかないのだが、私はこの「ピアノこうて」の子どもたちの言葉とヒツコイほどの連呼が、ほほえましく大好きなのである。

 「○○、買うてきちゃって」とか「これからツレとこ行くよって、イヤじゃお、おかんいきよー」とか、「そーけえ、にくい子やなのー、カレー作っちゃうかおもちゃあったの、もうええわ」「ほんまけ?ほたら、楽しみにしてるよってに、作っちゃっちょう」などと、話されている泉州弁なのだが、生活の中で、とても暖かくて優しい言葉でもあるわけで、決して一方的に「汚い」とか「品がない」とか言うのは止めようではないか。

 兵庫県知事が再三にわたって、同じNHKの大河ドラマ「平清盛」について、映像描写が「汚い」とか瀬戸内海はもっと美しいのに暗くて汚いとか批判しているというのだが、昔昔のその時代に果たして、明るく美しい現在の風景や日常がどれほどあったのかと想像するのだが、決して意図的に暗く汚く描こうとしているのではなく、時代考証的にドラマの脚本と共に出きるだけ史実やその当時の現実に近い映像を描こうとしているのではないかと思う時に、一方的にやはり「汚い」、「暗い」と批判するのは如何なものかと思っているのである。

 何事にも、その地域や人々の暮らしや現実があり、また演出や描き方を何を大切にするかなどの価値観とでも言うべきコンセプトや方針があるのだろうと思うので、むやみやたらに批判だらけで放言するのはほどほどにした方が良いのではと思っている。

 それにしても泉州弁とは言わないまでも、子どもたちの「ピアノこうて」は、とっても素敵な大合唱であり、大好きなフレーズである。
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