10月に楽しめる道具に、
「手向山香合」と「徳風棗」があります。
紅葉が秋の深まりを感じさせる「手向山」は、
百人一首にある菅原道真の歌から名前が由来しています。
このたびは 幣も取りあへず 手向(たむけ)山
紅葉(もみぢ)の錦 神のまにまに
簡単に意味を添えると、
「今回の旅は急のことだったので、神に捧げる幣(ぬさ)も用意する
ことができませんでした。代わりに手向けの山の紅葉を捧げますので、
神よどうか御心のままにお受け取りください。」
ということです。
この香合に、寄香など入れて、
爽やかな風の流れる中での炭手前もいいですね。
「徳風棗」は、歌ではなく「論語」から名前が付けられています。
「・・・君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を上うれば、必ず偃す。」
意味は、
「上に立つ者の徳は喩えてみれば風のようなものであり、下にある人民の徳は草のようなものです。
善い風を吹きかければ善い方になびき、悪い風を吹きかければ悪い方になびくものです」
蓋の文字は一粒の籾が万粒になるように、
徳の風を吹きわたらせましょうということでしょうか。
蓋裏には九つの籾が描かれています。
九は、一番大きな陽の数字ということで、必ず籾は九つありますよ。
このように、道具の名前のいわれをたどる時、
もう少し若い時に古典や、漢文に親しんでいればよかった・・と思います。
お茶をよりも楽しむためにも。
お若い皆さん、今のうちですよ。