【歴史の再帰性と対称性の破れ】
LIVE; シベールの日曜日, 小さいテレーズ, ファンシーナムナム, 幾何学模様
昨年夏に二枚組の3rdアルバム『Gypsy House』をリリースした直後にベーシストが脱退して以来、便りがなかった轟音サイケ・バンド、シベールの日曜日・坪内和夫から9月にハガキが届いた。新作の告知と共に、「シベールもこれから一寸活躍しようかなと思っています」とのメッセージが記されていた。11月28日に東高円寺UFO CLUBでレコ発が開催されるとのこと。
ふと気づけばUFO CLUBも9か月ぶり。このライヴハウスには格別の思いがある(過去ブログはコチラ)が、何故か最近縁がなかった。昨年は最も頻繁に通ったライヴハウスのUFO CLUBに行かないでどこヘ行っていたのか、と調べてみると新宿ロフトと秋葉原CLUB GOODMANが多く、中央線を東へ進みつつあることが判る。そのうち亀戸や小岩に侵攻するかは疑問だが、UFO CLUBのあるビルが近づくにつれ、幼なじみに再会するような安堵と期待が膨らむのを感じる。実際この日は1年半近くご無沙汰のバンドが大半。衒学的なイベントタイトルは坪内らしいが、裏高円寺(表かも?)の象徴であるサイケデリアの集いである。
●小さいテレーズ
グニャグニャサイケトリオ、Le Petit Terezesは4年前にやはりシベールの対バンで観た時の第一印象そのままのステージ。腰抜けビートとフレーズ無視の不安定なギター、自信の無さげなヘタレヴォイスにはラリってしまう。常にアームを握って音像を捩じ曲げるアガサ森田の偏執狂プレイに目が眩む。どうしてもメインのアガサに目が行ってしまうが、実は他のふたりも見事な異能戦士である。特に女性ドラマー小指の常軌を逸した叩きまくりは必見。ノンミュージシャンだから可能な怖いもの知らずの逸脱ぶりは真似したくても出来ないだろう。
(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
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●ファンシーナムナム
妖しい三人娘Fancy numnumの中毒性の高い世界も不変。ドラムマシーンの無機的な四つ打ビートが催眠術のように、聴き手を夢見心地に導く。赤い壁面照明が見事にフィットして、三人の放つオーラが空気中に虹を描く。乙女心に潜む様々な情念をサイケ味のスープで煮込んで熟成させる魔女の儀式は、夢破れたバンドマン&ウーマンの魂が跋扈するUFO CLUBのサイキック空間を浄化する慈愛に満ちていた。
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●幾何学模様
2012年夏、高田馬場で結成されたフリーフォームサイケデリア5人組。全く未知のバンドだが、公式サイトで聴ける音源は天晴な程に時代錯誤していて、裏高円寺の錯乱の夜に相応しい。シタール奏者以外は全員ゲバゲバロングヘアー。サンフランシスコ+デトロイト×インド=高円寺という方程式を証明するワールドワイドなサウンドは、さすがTOKYO PSYCHE FESTの中心バンドだけある。海外レーベルからアナログLPをリリースし、オーストラリアツアーも敢行する若い才気(PSYCHE)溢れる彼らの布教活動に期待したい。
●シベールの日曜日
再びメンバーチェンジした新生シベールは、現時点では実質的に坪内和夫のソロプロジェクトといえる。初期の精神を拡張させる轟音ジャムから、より直裁的に精神を刺激するガレージロックへと変貌を遂げ、まだ5曲しかレパートリーがないという不完全な演奏が、逆に持ち前の繊細なロマンティシズムを前面に打ち出し、痛々しい程のナイーヴなアシッド感を醸し出す。その感覚は最新アルバム『TSUBOUCHI』に顕著に現れている。裸のラリーズ『MIZUTANI』へのオマージュといえるこのアルバムでは、ドラム以外の楽器を殆ど坪内ひとりが手がけ、サイケデリア、アシッドフォーク、ガレージロックの間を去来するサウンドを聴かせる。突き抜け過ぎたヴォーカルと濃厚なギミックサウンドの中に内的狂気が渦を巻き、精神が崩壊する一歩手前の危ういバランスを描き出す。余りに甘美な世界はシド・バレットやディノ・ヴァレンテに通じる魅惑がある。果たして坪内があっちの世界へ行ってしまうかどうか判らないが、21世紀の東京にひとり描いた魂の花の輝きが失せることは無いだろう。
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長髪が
これほど多い
店は無い
少し前にTLを賑わせた「難波ベアーズあるある」というネタがあったが、「UFO CLUBあるある」ってのも盛り上がりそう。
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