A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【地下音楽への招待】妄想コンピ『Tokyo Flashback 2020』収録音源#1~UH/分水嶺/脳BRAIN/Kito-Mizukumi Rouber/riparisa

2020年08月11日 01時17分44秒 | 素晴らしき変態音楽


当たり前だが音楽を紹介するのにコロナ禍を持ち出す必要はない。Covid-19があろうとなかろうと音楽は存在しているし、音楽表現の本質が変化するわけでもない。話をするのに前置きとして「コロナ禍」「Covid-19」を持ち出す世の中の風潮に音楽(および音楽語り)が同調する必要はない。とかいいつつすでに4回も禁止ワードを書き連ねる自分にイエローカードを出しつつ、もしモダーンミュージックの生悦住英夫氏が健在だったらリリースされたはずの『Tokyo Flashback 2020』に必ず収録されたであろう最新地下音楽音源を紹介することにしよう。

●UH / MORGANA


内田静男(b)、橋本孝之(sax)のデュオ「UH」の最新カセット・リリース。2020年2月8日国分寺モルガーナでのライヴ録音。この日はハードコア系のイベントで、静謐なベースとサックスのデュオにとってはかなりアウェーな環境だったという。それが影響してか、いつもは微弱音の静寂でスタートすることが多いが、この日は冒頭から絡み合う激音で始まる。すぐに静謐な演奏に変わるが、節目節目で爆発する過剰な音の放出は、カセット特有のダイナミクスの狭い団子状のサウンドも相まって、荒々しい気迫に満ちた音響を聴き手の脳内に送り込む。最初の方は観客の笑いや囁き声で騒めいていた会場が、ライヴが進むにつれ静まり返り、緊張感に満ちた空気に変化するのが分かる。2017年1月にユニットとして活動をスタートしてから3年、お互いの手の内も知り尽くしコラボレーションとして円熟味を増す彼らの動的な一面を明らかにする作品をカセットテープというニッチなメディアでリリースすることは、次のステップへの起爆剤となるだろう。UHがどんな世界を模索していくのか楽しみである。
購入⇒http://www.neconeco-rec.com/shop/html/products/detail/128


●分水嶺 / ファーストギグ 08112019at七針


宮岡永樹(Yonju Miyaoka)Gt.Vo.、桜井晴紀Vo.Pf.、田上杜夫Ba.からなるサイケデリック・フォークロック・バンド分水嶺が、ちょうど1年前の2019年8日11日八丁堀のライヴスペース七針で、Che-Shizuのフロントアクトとして出演した際のライヴ・アルバム。ドラムレスでピアノをメインにした不安定な演奏に輪郭がぼやけた儚いヴォーカルが乗るサウンドには、メインアクトのChe-Shizuや宮岡が以前参加していたマヘル・シャラル・ハシュ・バズの流れをくむ、逸脱サイケデリアの精神がある。時々聴ける千鳥足のギターソロは、真似しようとしてもできない工藤冬里のギターと同じイノセンスを感じる。後半に収録されたフィールドレコーディングとリミックス・ヴァージョンは、地下音楽のアンビエント化の好例として評価したい。個性的なアート作品も手掛ける宮岡のもうひとつのユニット終古のオミットのアルバムも年末にリリースされるというので楽しみだ。
購入⇒https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008129962


●脳BRAIN / SEX!


KAYO MAKINOとともにLos Kayosというユニットを組むtoplessdeath A.K.A 脳BRAINによるMIX CDR。昨年リリースしたDVDR『Surfin' L.S.D』が第1回【輝く、盤魔殿レコード大賞!!!】に選ばれたことで広く(?)存在が知られるようになった脳BRAINは、DJ ACID A MANNER名義の12インチ『XPERIENCE TRAXXX』や、自らのアパレルラインL.S.D L.T.DからTシャツを発売するなど、Los Apson?周辺の地下音楽界で精力的に活動する。 昭和歌謡からハードコア、アシッドハウス、レゲエ、ディスコ、民俗音楽など雑多なサウンドをミックスしたスカムなサウンド・コラージュは、クラブカルチャーの突然変異なのか、それともダンス・ミュージックの最進化形なのか。先日初めて脳BRAINのDJをナマで体験したが、レコード盤を次々投げ捨てながらスピンするスタイルは自分には真似できないと思考放棄するとともに、神髄にはダンス・ミュージックがあるように感じた。
購入⇒http://losapson.shop-pro.jp/?pid=151465960


●Kito-Mizukumi Rouber / Pudding Body Murder- Domdom Early Finish Burger GIG


ハードコアパンク・バンドあぶらだこの長谷川裕倫(vo,g)と大國正人(vo,g)を中心とするKito-Mizukumi Rouberのライヴ・アルバム。新大久保Earthdomへの支援も兼ねたリリース。公式サイトには「kito-mizukumi rouberが新大久保アースダムで73年前に行ったダンスショウの秘蔵音源が発掘された。メキシコのSAMURAI ROCKET RECORDSのオーナーの飼い猫によるMIXによって、ハイハイハイロウロウクオリティに磨き上げられた放屁ダンス曲集」と書かれているが、10年以上前の初期メンバーによるライヴ録音だろう。ハードコアのスタイルを破壊し逸脱しようとする意志を強く感じるローファイサウンドは、現在の箍が外れ切ったロックロールよりも、プリミティヴなカオスに満ちている。音だけでは何が起こっているかわからない謎の空気感こそ地下音楽の記録として純度が高い。
購入⇒http://bridge-inc.net/?pid=151931203


●risaripa / Parallel


女性シンセ奏者、risaripa (a.k.a. Risa Reaper) の最新アルバム。数年前Soundcloudで「発見」し、80年代初期の宅録音源、例えば大竹伸郎の19 JUKEや、Vanity Recordsや第五列の諸作を思わせるサウンドに興味を覚えたが、特に深く調べることなく放置していたアーティストだが、本日DD.Redords関係者のツイートでこのアルバムのことを知り、Bandcampで聴いてみたところ余りに素晴らしかったので即購入。本人曰く「ボクがかんがえたさいきょうのストレンジポップをモジュラーシンセと声ノイズで」制作したという。モジュラーシンセは面白いと思うが、多くの音を使い過ぎて複雑にしすぎたり、ノイズ・ミュージックにしてしまう傾向が多く不満を持っていたのだが、risaripaのリズム主体のシンプルな使い方こそまさに自分が聴きたかったモジュラーシンセ。言語不明の奇妙なヴォイスがテクノ感を増幅し、言葉通りの「最強の地下テクノポップ」になっている。昨年から再発が始まったVanity Recordsの諸作と同じように、時代に関係なく存在する地下音楽の原点と言える作風は、聴き続け語り続けてていきたい。
購入⇒https://risaripa.bandcamp.com/album/parallel

天国まで
伝えていくよ
地下音楽

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