マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

ああ、鶴橋案内人

2012-01-30 13:24:06 | Weblog

先ごろ、ご婦人たちをお連れして鶴橋へ。 私は名誉の負傷で杖をついている。

名誉の負傷なもんか。正月明け、運動不足を解消しようと久々にジムへ行き、
ひと汗かいて、最後にVTR画面に合わせストレッチやってて、腰が「ピキッ…」と言った。
それ以来、どんどんひどくなって行き、ザコツキーとなった。





この日はひときわ寒い日だった。 ボクはテーピングやホカロンやコルセットやらでぐるぐる巻き。
時間に余裕を持ち、ロックフィールドで珈琲を飲んで行く。
ギリギリ人間には珍しい。雨にならなきゃいいが。

鶴橋には5つの商店街と1つの市場がある。
つるしんをまっすぐ西へ歩けば、「新かどや」の前に出る。
店頭では鶴橋ぽっちゃりーず、豊山なみえ姉妹がチヂミを売る。
何度来ても鶴橋は迷う。 でも、この角迄できたら彼女らのキャラクターもあり、ホッとする。

チヂミとは一説に、鶴橋で生まれたことばだと聞いている。
韓国ではパジョンとか、ピンデットとか呼ぶことが多い。





本通りから鶴橋市場商店街をみる。
薄緑色の「鶴橋卸売市場」の網目のアーケードは最古の部類の物といわれる。
鶴橋は戦後すぐの姿を今に伝える、今や全国でも稀有な商店街なのだ。

いたるところに路地が走り、いびつな形の商店街が広がる。
これは戦争末期の建物疎開の影響なのだという。
類焼防止のために店や住居が壊され、駅前から点々とあった空地に、闇市が立ち、
戦後には3千人もの露天商が店を開いたという。これが原点となっている。

たしかに迷路だ。何度来ても磁場を失い、何処にいるのか解らなくなる。
北に向かえば千日前通。駅の方から、10班・11班・駅前通・本通りが南北に走っている。
不安になっても、ここは大阪よぉ。 なんぼでもそこらの人に日本語で尋ねたらよろし。





隠れ家といえば、これほど隠れ家的な佇まいはない、一軒の韓国料理店へ。
むろん、口で説明などできない、地図だってよう書かん。
築80年の普通の住居。友だちの家へあがる感じ。 右が入口、左はキッチン。





ここでチヂミをたのむと、でっかくて一人では食いきれない。
みんなで来て、いろいろ取った方が正解だろう。





女将の高さんは慶尚北道 金泉市の出身。 半島でいうと右側の内陸部。
キムチはもちろん自家製。辛すぎず漬かり具合は丁度いい。
となりはブロッコリーの白和え。真ん中はトウガラシを抜いた白いキムチ。
17世紀、日本からトウガラシが伝わるまでキムチは辛くなかった!





タラ・つくね・椎茸のジョン。煎と書いてジョン。冠婚葬祭には欠かせない料理。
ナムルには陰陽五行の考え方による取り合わせになっている。
上はチャプチェ(春雨炒め)。長い春雨は、長寿につながるという縁起物でもある。

韓国ではチェサという法事が重んじられ、4代5代前の祖先まで祭らねばいけないので、
年に数十回、女性たちは大わらわでこれらのたくさんの料理を作らねばならない。
儒教の国で、ワタシ作る人・ボク食べる人で、料理は女性が作るものだった。
だから、韓国では「オモニの味」なのであって、日本みたいに何百年も代々料理屋をする、
なんていうのは、かの国では信じられないのだという。



テジとじゃがいものチム


韓国では「なかむら」さんのような一子相伝の白味噌雑煮なんて考えられない。
オレごときに言われなくとも、料理人とは食べ手の命を預かる、特殊な技能者である。
国を挙げて、ユネスコの無形文化遺産に食文化を申請してるのだから、
もっと料理人の地位をあげることに努めてはいかがだろうか。宮中だけぢゃなくてね。
アボジのソンマッ(手の味)だって捨てがたいものがあるよなぁ。

骨付き豚カルビを使った肉じゃが。
コチュジャン味がベースだけど、ちょい甘口で美味い。





ナッチポック(手長ダコの炒め物) これも美味!
野菜を世界一食べる国民といわれるように、どれをとっても野菜がいっぱい。





タラのスープ  タコの煮汁でスープが色づく。
韓国料理に欠かせないのがこのスープ。
お腹の底からほっこりと暖まる!





テンジャン・チゲ  まさに具だくさんの味噌汁の感じ。
コチュジャン味もいいけれど、こういう味噌味ってのはほっとする味。





鮮やかなグリーン。 カボチャのおかゆ。
ホバックという、ズッキーニのようなカボチャを使う。
海老とカボチャなどのトッピングがアクセントになる。

おなかいっぱいに。
デザートに、スージョンガ(しょうが茶)。 ショウガ、黒砂糖、シナモンをきかせてある。






底に、もどした小さい干し柿が沈めてある。 柿の種を取り、そこに胡桃が射込んである。
手間のかかる仕事。 高さんの故郷は柿の名産地でもある。

シッケという、懐石における湯とうのような、粒々のお米の甘いお茶も。 
消化促進にいいそうだ。

薬食同源といわれる韓国料理。素材を生かし、身体にいい料理。
まだまだ知らない韓国料理、もっともっと奥を覗いてみたい気になった。 
「カナアン」の高さん、ありがとう。







ごちゃごちゃっとした商店街から少し離れて、銭湯の裏。
静かな路地の入口にある韓国カフェへ。



店主・崔さんにお茶の解説をしていただく。


夏場、ここのパッピンスを食べて、その山盛り加減に男一人で目を白黒させたが、
今回の狙いはお茶。 伝統茶がいろいろある。

一番人気は五味子(オミジャ)茶。 
「チャングム」の時に主演のイ・ヨンエが飲んでいたということで、
バケツ一杯のんでもあんな美人になれる訳はないだろうが、あやかりたいということで人気に。

店主の崔(チェ)さんにもらった、五味子の実を噛んでみると、その語源である五つの味がする。
もっともボクには、苦いすっぱい甘い…ぐらいだったが。





時間をかけて水出しした五味子茶を熱くして、甘味に蜂蜜が入っている。
凍えた身体が溶けて行くような、ほ~っとする味。 はぁ、胃壁にしみる。
お茶自体は、ハスカップのようでもあり、アセロラのようでもあり。
身体によさそ。

偶然居合わせた、M谷さんに韓紙(ハンジ)工芸を見せてもらう。
八角形の台のようなもので、そこに貼られた見事な切り紙の技術にみんな感心しきり。

鶴橋散歩で疲れたら、ぜひ、喧騒を逃れて、ここ韓流カフェ「あろんだろん」へ。
崔さん、K-Popにもめちゃ詳しいのです。 大勢で押し掛けてお世話かけました。
韓流コスメなどもあり、80才のおかあさんがカタツムリ化粧品を買われていたのには、恐れ入りました。 

アタシも一刻も早くジジむさい杖など、棄て去って、マシンガンに持ちかえなければ。