蕎麦のあがりに出てくる、そば湯。
蕎麦の有効成分であるルチンは水溶性なので、茹で汁に溶けだす。
そこで最後のそば湯までいただきましょうなんてことを言うのですが、よくは解りません。
ただ、端正込めて作ったつゆを残されては、職人だって悔しかろう。
そば湯でもって希釈してすっくりあがってもらいたいだろう。
これがね、単に茹で釜の茹で汁を汲んで出すのなら簡単だが、そういうもんでもない。
ここでズッコケたらすべて台無しになるので、各店、ここまで神経を使っている。
谷九「十割そば 喜らく」
師匠筋である奈良の「玄」のごとき、濃厚なそば湯。
ただの茹で汁ではこうはいかず、蕎麦粉を別に加えてドロリとした口当たりにする。
こうしたポタージュ系がちょっとした流行り。
新福島 「十割蕎麦 無文」
福島の隠れ家そば。
ここはボコボコ泡立つ、熱々のそば湯が出てくる。
冷たいつゆに冷たい蕎麦をつけて食べるものだから、仕上げは熱いもので、
お腹をほっこりさせてもらいたい。ぬるいそば湯では物足りない。
靭公園 「蕎麦切り masa」
元北新地のそば紀行、カハラを経て、シドニーのTetsuyaにもいた主人。
ドロリとしたポタージュタイプ。
つゆに加えると、こんな感じに。
酒飲みならば、これで二合ぐらいはいける。
谷六 「そば切り 蔦屋」
棒でくるりとかき混ぜて。
堺・津久野 「いんなーと みやびの」
すきっとした新しい店に、器もモダン。
食後感もすきっ。
西天満 「なにわ翁」
何種類ものそば湯を使い分けると聞いた。
翁系の店はポタージュのようなそば湯を好まず、
白湯に近いそば湯で残ったつゆを割り、こざっぱりした食後感を選択する。
福島第2原発の影響は、蕎麦の産地にも多大な影を落としている。
苦悩の蕎麦生産者たちに今年、いくらかでもいいことがありますように。