西成区というところ、割方好きである。 忘れてしまったものがある気がする。
天下茶屋にかつて有楽町という地名があり、かの織田有楽斎が住んだという、
もっともらしい話が残っていたり、茶人も多く住んだ。
岸里玉出からかなり歩き、迷った。
商店街があるわけでなし、人通りなどほとんど見当たらないのだが。
39年続く「新富士本店」。
友人から、「関西最強のポークチャップが食える!」と聞いたからには、
黙って見過ごすわけにはいかない。
予約を入れて、開けといてもらった。普段客が途切れたら中休みを設けるのかもしれない。
客は吾一人。黙りこくってるのも怪しいので、女将さんと雑談なぞを。
メニューをちら見して、すぐに、ポークチャップ。実は決めている。
手持無沙汰だし、まだ日が高いが、「ビールくださぁい」
ぬか漬けをポリポリ・・・ ビールをぐいっ・・・
こういう脇役もきちんとしている店は、まことに主菜に期待が持てる。
ポークチャップは注文してから、肉塊から切り分ける。鹿児島のもち豚ロースを分厚く・・・
こいつをフライパンで焼きあげる。
待つこと、10分~15分。 いや、たまらんね、香りが。
ど~~~~~~~~ん !!!!!
迫力の330g
レモンを動かし、絞りを替えてみた。
見やすくなったが、結果的にはどす黒い方がおいしく見える。
ドミグラスソースは10日かけるという。
丁寧な野菜、赤スパゲティにも好感が持てる。 辛子も客のことを考えている。
銀串を指して、内部の火の通りを確認しながら、クラシックな基本に忠実な作業。
塩胡椒、フランベして、たっぷりとドミグラスソースを。
ひと口、真中の肉から行ってみる。
う~~~ん こりゃたまらんぞ。
脂のうまさ。 濃厚なソース。 頬張り咀嚼するたびに肉のジューがあふれ出し、
生きてる実感が湧いてくる。これだ、生きてる実感!
何食ってんだか、生きてるんだか死んでるんだか、分からないような料理は願い下げだ。
よせばいいのに、こりゃ、白ごはんだ。
ドミグラスソースは残せない性格で、ご飯で拭き取り?ながら、
残さずいただく。
関西随一の噂は伊達ではなかった。
わざわざ遠回りするだけの価値ある料理が、ここにはある。
とんかつ・洋食 新富士本店 西成区千本南2 あたり