前日の金曜日午後3時。
これが買出しがあるので
山行を決行するかどうかの判断リミットだ。
その判断の役割がわしに課せられた。
仕事をしているふりをしながら、
インターネットで専門天気図をチェック。
高層天気図の予想図も確認した。
湿域は被っているものの、
激しい上昇気流はなさそう。
前線も南に下がる気配なので、
大きな崩れはないだろうと判断し、
買出し係及びリーダーに
「決行」
のメールを配信した。
開けて土曜日
当日は、朝からうす曇。
午前6時半に予定通りの出発となった。
目的地は天川村。
ミタライ峡に沿って
役場から1~2キロ奥に入ったところから、
林道へと入っていく予定だ。
途中、
車窓から見える植生を確認し、
山菜の状況を見ながら
順調に車を走らせた。
今年はまだ山菜には
少し早いかもしれん
などと考えながらも
やたら目に付く看板が非常に気になった。
北海道の観光ステッカーにあるあの五文字。
「熊出没注意」。
数年前、
今回の目的地の山域で、
登山者が熊の被害に遭った
という報道が脳裏をよぎる。
鈴を持ってくればよかったなあと思いながら、
林道の入り口にたどり着いた。
そこの地名も
「熊渡」。
真新しい「熊出没注意」の看板が
ここにも目立つように掲げられている。
普通なら、
ここから林道をさらに車で走って
できるだけ奥まで行くのだが、
この林道入口に通行止めの鎖がかけられてある。
後でわかったのだが、
その奥で林道の延長工事をしているので、
工事車両の妨げにならないように
通行止めにしているらしいのだ。
仕方がないので、
その「熊渡」に車を駐め、
歩いていくことになった。
歩いて約40分くらいのロスだ。
宴会用の食料やアルコール類をいっぱい担いで、
林道を歩き始めた。
30分くらい歩いただろうか、
前からひとりの登山者が下りてきた。
話を聞くと、
この奥に「キリシマミズキ」という
このあたりではかなり珍しい植物があるので、
それを見に行ってきたとのこと。
このあたりの山のことや、
自然に非常に詳しい人だという印象を受けた。
ひとしきり話をして、
「ではお気をつけて」
と別れ、数メートル下ったところで、
その人が振り向いてこんなことを言った。
「あ、そうそう、
さっきから熊の鳴声が
聞こえていたから気をつけて」
自然に詳しそうな人の言葉だから、
説得力があった。
「は、はい」
と答えたものの、
気持ちはかなり動揺した。
ところで
「熊の鳴声」ってどんなんだろう?
漫画なら「ガオー」やなあ、
でも現実には
「グオー」かな。
案外、「キャンキャン」だったりして。
んなわけないか
いつもなら、
山菜を探しながら
必要なら道もそれて
山中に入っていくのだが、
もう山菜どころではない、
全神経は「熊」に注がれた。
今回は山菜は無理やな、
と思いつつ恐る恐る進んでいった。
休憩中も耳を澄まし、
眼は林の中や、
曲がり角の向こうの気配をうかがっていた。
途中、
あたらしい墓碑のような石も置かれてあり、
熊の被害者のものなのかも、
と変な想像もしてしまいましたわい。
やがて林道は途絶え、
山道に入っていく。
熊除けのために
歌でも歌いながら
歩けばよかったなあ。
「ある~日
森の中
クマさんに
出会った」
ってアカンアカン!
小一時間も登ったところで、
致命的なアクシデントが起こった。
一年半くらい前に購入し、
使わずにおいていた
「メイドインチャイナ」
のわしの靴の靴底が、
ガバッとはがれたのだ。
紐などで応急措置をできる状態でもない。
こんな状態。
ここから先の山小屋までは
まだ2時間以上歩き続けないとたどり着かない。
結局、引き返して、
林道の突き当たりのあたりから、
河原に下りてテントを張ることになった。
今回はそこで、
のんびりキャンプをすることにしたのだ。
こんな広い河原。
しかし、この河原も
先ほどの登山者が
熊の鳴声を聞いたといって、
指を指していたあたりなので落ち着かない。
そこで早速、
火さえ焚いていれば大丈夫やろと、
枯れ木を集めて焚き火をすることになった。
しかし火付け用の杉の枯葉を探していると、
砂地には獣の足跡がいっぱい刻まれている。
そういえば耳を澄ますと、
野鳥や鹿や得体の知れない動物の鳴声も
頻繁に聞こえている。
ひとりでうろうろするのは危険かもしれないと、
そそくさと枯葉を集め
キャンプ地にもどる。
回りを見回すと、
河原らしく上流から流されてきたと
思える枯れ木がかなりある。
まあ、これだけあれば
火を絶やすことはなさそうだとひと安心。
こうして楽しく、
緊張感のあるキャンプが始まった。
以下明日以降に続く。
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