ハブ ア ナイス doi!

いつまで続くのかコロナとの戦い。
全て解放されて、もっと、もっと
心から楽しまないとねえ。

砂棗(すななつめ)

2008年04月02日 23時58分01秒 | weblog
先日、「大地の子」を読んでいると書いた。

読んでいるといっても、
朝の通勤車で少しずつだから
まだ2巻の途中(全4巻)なのだが、
これまで読んできた中で
印象に残った植物が一つある。

「砂棗(すななつめ)」。

主人公が労改送りになった辺境の砂漠で
この花に出会った。
においに導かれるように歩いていくと
百里先まで香りが届くという
この植物が砂漠の中に
ぽつんと咲いていたという話。

主人公の
悲惨な灰色のような毎日の中で、
鮮やかな緑色と豊潤な香りが
浮き上がってくるような美しいくだりだ。

ところで、
わしはこの花の姿も
においもどんなのかをまったく知らない。
そこで、
この花のことを、
ネットでいろいろ調べてみることにした。
キーワードはもちろん「スナナツメ」だ。
ネット上には
図鑑のあるページや
植物に関する報告なんかもたくさんあるだろうから、
最初はすぐに見つかるだろうと
思っていたが、
これがなかなか見つからない。
文字だけで記述してあるページなら
いくつかあったが、
写真が全然ない。
個人のブログ、
通販、
学術研究のページまで捜して見たが、
どうしてもその姿に出会うことができない。

意地になって、
さらにあちこち渡り歩いているうちに、
どうやら、わしと同じように
「大地の子」を読んで
この植物の姿をひと目見ようと、
ネット上を漂流している人が
何人かいるらしいことがわかってきた。
同じようなことを考える人ているんやなあ、
と思いながら
その人の書き込みを見ていると、
香りのある植物を趣味にしている人で、
見ることがかなわない植物として、
正倉院の宝物の一つである香木
「蘭奢侍(らんじゃたい)」
とともに
砂漠に咲くこの「砂棗」の花を挙げている。
それほどまでに、希少なものなのかと
わしもその姿を見ることを
半ばあきらめながら、
次に「砂漠の植物」をキーワードに検索をしてみた。
そして行き当たったページの一つに、
ようやく小さな写真が載っているのに出会ったのだ。
グミ科のこの植物。
黄色い小さな実をいっぱいつけ、
根は根粒菌を持ち、
砂漠の土壌改良に適しているという
その姿に出会ったときはうれしかったね。

8年の歳月をかけて、
山崎豊子は「大地の子」を書いたらしいが、
きっと構想を固めていく中で
何度も現地取材をし、
ある時偶然に、
砂漠で香りを振りまくこの花に
実際に出会ったんだろうな。
中心のストーリーとは関係なく、
彼女がこの植物のことを取り入れて、
文字通り物語に花を添えているところからも、
この植物に出会った時の彼女の驚きが
推しはかれるというのは、
わしのあまりにも勝手すぎる想像だろうかねえ。