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歩くことが唯一の趣味ですから。

吹屋

2022-05-01 | Weblog

噂に聞くほど紅くない。赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された吹屋の町並みは、岡山県高梁市のはずれ、標高550mの山間にある。近世以降、吉岡銅山と共に栄え、さらに江戸末期からベンガラの国内一の産地として富んだ長者の町。

一説によると、横溝正史が『八つ墓村』を執筆するときモデルにした町だという。『八つ墓村』は2度ほど楽しく読んだ。ベンガラのことなど書いてあっただろうか。鉱山で財を成した長者の家は出てきたかもしれない。金田一耕助が出てくる他の小説と印象が混ざっているかも。『八つ墓村』のモデルといえば、昭和13年に「津山三十人殺し」が実際に起きた津山の町(これも岡山県)がすぐに思い浮かぶ。あの事件とこの町を掛け合わせて横溝正史が創作したのが『八つ墓村』なのか。

鉱山の繁栄は昭和40年代で終わり、残った住民はベンガラ豪商の町並みに歴史的・文化的価値があることに気づいて昭和52年(1972)全国でも8番目に国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けた。たちまち半世紀が過ぎた。令和2年(2020)「ジャパンレッド発祥の地」として日本遺産に認定された。世界遺産ではなく日本遺産。

令和3年(2021)公開の映画『燃えよ剣』のロケが令和元年(2019)の3月に数日おこなわれた。この門は土方歳三が通った六車道場の門として撮影されたもの。道場の内部は別の場所でロケしたので、「※門の奥は何もありません!」とわざわざ貼り紙がしてある。のぞきに行く人がいて迷惑してるんだろう。

通りに砂を敷く前にカーペットを敷く様子がパネルで展示されていた。カーペットなしで砂を敷いちゃうと後片付けが大変だから。岡山の山間の長者町を京都に見せかけて映画を撮るのも大変だ。建物の内部もロケには使われている。見覚えのあるシーンでいうと、こんなのが吹屋の建物内部だ。

土方歳三の愛人が描いた絵を飾る部屋。

土方歳三の愛人が心の闇を描いた襖絵。

そんなものを見物して、約300mの町並みをぶらぶら歩く。

この建物なんかは紅くてかわいいと思った。通りは砂敷きではなく、このように舗装されている。このまんま映画を撮っちゃうと、スクリーンで観たとき違和感があるんだろう。学生映画になってしまう。

猫がのんびり寝ていた。

吹屋にはもうひとつ名物があって、通りをはずれた吉岡銅山本部敷地跡に明治42年(1909)落成した吹屋小学校校舎が、10年前まで現存する小学校の校舎として最古のものだった。平成24年(2012)に廃校になったから、小学校舎じゃなくなってしまったけれども、今でも大切に保存されて今年4月から公開されている。

小学校があれば中学校もある。隣にある擬洋風建築がそれで、改装されて「和味の宿ラ・フォーレ吹屋」として営業している。レストランとホテルを兼ねた施設。夜の教室の跡に泊まれるなんて、ホラー映画のロケができそうで素敵。

泊まりはしなかったけど、ラ・フォーレ吹屋でランチを食べた。鰆の刺身がおいしかった。山間なのに。天ぷらもサクッと揚がってた。見切れてる陶板焼きの鶏も美味しかった。地酒も美味しそうだったけど飲んだら散歩がダルくなるからやめておいた。津山三十人殺しの津山にいく用があったから。

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