特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

お化け屋敷(後編)

2024-07-13 06:25:10 | 特殊清掃
休暇をとった管理人は、身内の法事に行ってきたらしい。
その割には赤く日焼けした顔が、どことなく気まずそうにも見える。
人手が足りない時は特掃隊に編入しなければならない哀れな?身の上だから、まぁ、黙認した方が親切というものか。
管理人を労う書き込みも多かったし。

前編から話を続ける。
そして、その顔が私に近づいて来るような気配を感じた私は、声にならない悲鳴をあげて家から飛び出した!
全身に悪寒が走り、息を吸うことができなくなった私。
霊感がないのが少ない取り柄のひとつだったのに・・・とうとう見てしまったのか!?
そして、私が見てしまったモノの正体は!?
さすがに気持ち悪くなった私は、再び家の中に入ることはできなくなった。
本当は二階の状況も確認しなければらなかったのだか、結局、二階は想像見積。
間取りと遺族の話と一階の状況を考え合わせて推測した。

幸い?肝心の腐敗痕は一階だったからよかった。さすがに汚染箇所は、想像で見積できるような代物ではないから。

頭部が当たっていたと思われる段ボール箱は丸く凹んでいて、腐敗液にくっついた頭皮と頭髪が残っていた。そして、大量のウジも。
一般の人にとっては、腐乱死体痕の方がよっぽど恐いのだろうけど、私にとってはそんなものはどうってことない。

それよりも、二階に見たモノの正体ばかりが気になっていた。

さて、施工の日。
明るい昼間でも、何だかイヤ~な気分だった。
いつもの流れで、まず一階の汚染箇所から着手。
一階をほぼ片付け終えたところで問題の二階へ。
階段を見上げる決心は、なかなかつかなかった。
ウジじゃあるまいし、いつまでもウジウジしてたって仕方がない。
勇気をだして恐る恐る階段上を見てみた。
すると、どうだろう。
壁にモノクロの写真が掛けてあった。
多分、御先祖の遺影だろう。
「な~んだー、そういうことかぁ」
過日の夜は、それが外からの淡い月明かりにボンヤリ照らし出されて、顔が宙に浮いているように見えたらしい。
「ちょっと顔が違うような、もっと近くに見えたよう気がしたけど・・・」と少々怪訝に思ったが、深く考えないことにした。
とりあえず正体が写真と分かって(決めて)安堵した。

遺族からは「家の中の物は全部ゴミ、全て捨てていい物」と言われていたが、この遺影は捨てる気にならず遺族に渡すことにした。
二階で写真を梱包していると、誰かが私の背中をポンポンと軽く叩いた。
「ん!?」と思ったが、私はあえて振り返らなかった。
そこには、私の他に誰もいるはずがなかったから。


トラックバック 2006/08/07 10:34:16投稿分より

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