オランダ絵画によせて:冬の風物詩

 

 オランダのヘンドリック・アーフェルカンプ(Hendrick Avercamp)という画家は、冬景色ばかりを描いている。凍った運河の上で街の人々が賑やかに冬の遊びに興じている。
 アーフェルカンプの絵はちょっとフランドル的で、地平線の位置は高いし、人物も風景もどこか図式的、装飾的。私はずっと、こういう陽気な冬景色はアーフェルカンプのオリジナルだと思っていた。

 でも、違うみたい。オランダの風景画家たちは、一枚くらいは冬景を描いてる。で、そのほとんどがウィンタースポーツをしている。オランダ生まれのヨンキントも、そんな冬景画を描いている。
 どうやらオランダでは冬になると、運河も干潟も城壁の外堀も、一面に凍ってしまうらしい。オランダ出身の画家ゴッホが、南仏の太陽を称賛したのは、故国の冬がこんなにも冷たく凍えてしまうからなのだ。

 冬景画のなかでは、冷たい氷の上で、質朴な黒い服を着た人々が、男も女も、スケートをしたりホッケーをしたり、橇に乗ったりしている。後ろ手に組んで、すましてスーイと滑っている様子は、なんとも陽気そう。

 こりゃ、冬のオランダにも行ってみるかな。……ただし変温動物の私は寒いのが苦手で、冬には身体が凍えてこちこちに固まって、動けなくなってしまうんだけれど。

 ただ、オランダ・バロックの最大の風景画家と言われる、あのヤコプ・ファン・ライスダールの描く冬景だけは、陽気さがない。いかにも荒涼とした、寒々しい、どんよりとした絵しか描かない。
 ライスダールは冬が嫌いだったのかな。

 画像は、ヨンキント「オランダ、スケートをする人々」。
  ヨハン・バルトルト・ヨンキント(Johan Barthold Jongkind, 1819-1891, Dutch)
 他、左から、
  アーフェルカンプ「冬景色」
   ヘンドリック・アーフェルカンプ(Hendrick Avercamp, 1585-1634, Dutch)
  アーフェルカンプ「風車のある冬景色」
  E.フェルデ「堀の氷上の楽しみ」
   エサイアス・ファン・デ・フェルデ(Esaias van de Velde, ca.1587-1630, Dutch)
  I.オスターデ「冬景色」
   イサーク・ファン・オスターデ(Isaack van Ostade, 1621-1649, Dutch)
  J.ライスダール「冬景色」
   ヤーコプ・ファン・ライスダール(Jacob van Ruisdael, ca.1628-1682, Dutch)

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