強面のカナリヤ瀕死なり 映画『ヤクザと憲法』!
カメラ越しのヤクザ組員に対する質問が、なにやら“間抜け”だ。長細いナイロン製バッグを見つけて、「マシンガンですか」「そんなわけないじゃないですか!! ヤクザの事務所だからって」、開けてみるとテント道具だ。返答に納得できないのか「拳銃はないんですか?」「ないですよ。置いとけないじゃないですか」「置いとけないんですか?」「日本の法律で決まっているでしょう、銃刀法」「いざっていうときは、どうするんですか?他の組が攻めてきたり……」「そういうときは……、自分にはわからないです。テレビの見すぎじゃないですか?」。おもわず爆笑してしまった。誰だい、こいつはと思ったら、テレビ局で「やりたいやりたい」と主張した自称・発達障害、他称・漂流社員の本作監督インタビューなのだ。
法律監修は、映画『死刑弁護人』の、われらが安田好弘弁護士。あのときはマスコミ嫌いの安田さんを「騙して」撮影した東海テレビ、事後承諾作戦だったよね(笑)。
今回の取材で、ヤクザとの取り決めは、三つだけ。一、取材謝礼金は支払わない 二、取材テープ等を事前に見せない 三、モザイクは原則かけない。この原則を守ったら、すごいドキュメンタリーとなった。
部屋住みの新人青年、中堅、会長の日常もろもろ。実行犯が「トップの指示でやった」と供述したために川口和秀会長は逮捕され、十五年の実刑判決を受けた殺人事件が暴対法のきっかけだと言われる。百日間の密着取材は、どんどん広がる。葬式も撮る。どこから問題が噴出し、企画が中止になるか分からないから短期間で一気呵成に撮り上げた。
暴対法、暴排条例によってヤクザは絶滅危惧種となっている。例えば銀行口座が作れない。作ってばれると詐欺で訴えられる。銀行口座が作れないから子どもの給食費を現金で払おうとするとヤクザとばれて、子どもが学校で虐められる。 事故で自動車が傷ついたので保険会社に修理代を頼む。保険会社は不合理に渋る。こじれると、恐喝やら詐欺で逮捕される。
弁護を頼もうにも引き受けてくれる弁護士がいない。 山口組の顧問弁護士・山之内幸夫弁護士は、懲戒処分を受け、何度も起訴され、有罪確定で資格剥奪。
ヤクザと接点をもった人たちは、ヤクザと一緒に追いやられていく。安全安心社会の裏で、憲法番外地となっている。新左翼党派弾圧、オウム弾圧、刑務所、拘置所、大企業の職場、そしてヤクザ。日本中に広がる憲法番外地は怖い。それを許す「日本国民」も怖い。
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