備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

懸案事項…少し終了

2009-06-06 21:03:56 | 陶芸
朝起きてからPCに張り付いて、懸案事項についての調査。
そのまま時計がテッペンを過ぎ…、気分転換に昼ごはんを作り…、モニターを睨みながら咀嚼嚥下。そのうちに何だか訳が判らなくなり…、おやつを食べつつ頭をクールダウン。

すると唐突に、身近なところで解決方法を思いつく。
糖分パワー、グッッ ジョブ!


解決の糸口が見つかったもののグロッキーな精神状態。こういう時は何も考えずに体を動かす事が一番。単に犬の散歩ぐらいでは治まらないだろう。

そこで、「梅雨入りもあることだし~」と思って、これまた懸案事項の割り木運び。外に並べていた割り木を窯の屋根の下へ。ここは雨が掛からないし、窯焚きするにも便利な位置。次回まで、ここで待機。

とりあえず黙々と運ぶ。
と言っても、ほんの200束程度。あっという間。

それでも終わった頃には日も暮れて、大きな月が上がっていた。
言い訳程度に体を動かしたし……、あとは……晩酌ですな。

今日はカロリーのINとOUTのバランスが悪い…。でも、気にしない~!
懸案事項は次々と派生していく。でも、しばし忘れよう。


そそくさとグラスを用意。こういう時は段取りが早いのが常。
本日はベルギーの発泡酒『VEDETT EXTRA WHITE』
コリアンダーとオレンジピールのハーブ入りのビール。楽しみ~~。

失われた『傾き』を求めて

2009-06-05 08:59:44 | 陶芸
備前焼は、窯詰め(人)と窯焚き(自然)の共働によってその景色が描かれる。

その為に、窯詰めは『偶然』と言われる景色を『必然』へと換える方程式を模索する事になる。モノ同士を組み合わせて窯詰めしていく作業は、ある意味、知的作業。

酒器セットなど『組み物』では、あらかじめ徳利に酒呑を被せておいて景色とするパターンもあれば、同じような景色になるように別々に焼いて窯出し後に合わせるパターンなど様々。窯詰めやセッティングが違うので、景色は変わる。


ひとくちにセッティングで、『被せる』といっても色々あって、古典から学ぶ事も多い。
現在、備前焼で『被せ』と言えば、その景色は酒呑の口辺に沿うので、ほとんど水平な『抜け』になっている。
しかしながら、古典と言うべき古備前の蕪徳利などでは、水平な抜けばかりでは無い。かなり傾いた『被せ』を見かける。古備前の鑑定でも、基本と成り得る要素でもある。
この傾いた『被せ』……現在は少なく、過去には多い。


何故そうなるのか?


答えは、『模様は道具によって規定される(by bizen-nabechan)』から。


この場合の道具とは、窯の事。

現在、多くの窯の床は、作業性を考慮して階段状に作る。いつでも水平な床であれば棚組みもしやすい。レンガのおかげでロストルというものも作れる。

しかし古い時代の窯床は、階段ではなく傾斜になっている。大甕を窯詰めするとなると傾斜の方が運搬に差し障りがないし、そもそも現在のような耐火物での棚組みは無い。
窯詰めでモノが倒れないように安定させるとなると『馬のツメ』と呼ばれるクサビを床とモノの間に挟む。それでも足りなければ、窯の床を掘れば良い。


さて、傾斜のある処に蕪徳利などを置くとする。当然、口の方は傾いている。
この上の空間にもっとモノを積み上げていこうとすれば、当然、次は口の広い『被せ』られる形状のモノとなる。水甕、種壷、鉢、擂鉢……。
そして、そのモノの底は水平にならないと更に上に積めない。となると必然的に口辺は蕪徳利に対して傾く。かくして傾いた『被せ』の景色が出来る。

つまり、傾いた『被せ』の景色は、その窯の傾斜の由来する。
もし『被せ』が水平に近ければそのモノの底には、馬のツメの痕跡か、甕などに入れられていたか……と、なってくる。結果には必然性がある。
(傾き具合の平均を即、古窯の斜面の角度とみなすのは拙速だけれど、比較すると何かが見えるかも。)


現在、窯床が傾斜の窯は圧倒的に少ない。
その為に、現在の備前焼では、大多数の『被せ』は傾きを失っている。

『模様は道具によって規定される』の意。


ちなみに小生、最近、『被せ』というセッティングをしていない事に気がつきました。
結構、『積み上げ系』の窯詰めなんですけどね……。


今度、無理やり傾斜作ってやってみようかな。
失われた『傾き』を求めて……。(何か間違ってるような気がする…)