時々……というか、概ね忘れているけれど、拙ブログは陶芸ブログなんですな。
なので、ヤキモノのお話。
陶芸業界において最も重要な材料は『粘土』です。
チビッ子が大好きな粘土は、かつてはアブラ粘土ばかりでしたが、今や小麦、寒天、お米、蜜蝋など植物性まであります。
さて、我が業界で扱う粘土は岩石の風化物です。
その元となる岩石の種類、風化分解の仕方によって粘土の性質が変わります。粒度、粘度、耐火度、金属含有量、砂分などが異なります。
それらを感覚的には『土味』と表現します。
備前焼は、釉薬を使わない為、その焼肌が重要になってきます。その焼肌を決定的にするのが、原料となる粘土です。
古来より『一土、二焼、三細工』などと云われてきたのは、その為です。
陶芸においても潮流というか流行というものも勿論あるわけですが、近頃は世界的に『Wild Clay』についての話題が多いようです。
これは地域に根ざした個性のある土(local Clay)の元を意味します。
現在の陶芸家は、輸送手段の発達によって窯業地に限らず何処でもアトリエを構えて製作可能になりました。
しかし、どの分野でも便利さが進み一般化する過程で、失われつつあるものが注目されるのは良くある事です。言葉やファッションなどはその身近な例です。
その伝であるか否かは別問題として、近年はローカルな素材『Wild Clay』が注目される時代のように感じています。
奇しくも現代アートにおいても『場との呼応性』(サイトスペシフィック)がキーになっているのも偶然ではないでしょう。
材料屋さんで便利よく買える粘土に対して、コツコツと自分で作る粘土。
さてさて、釉薬を掛けない備前焼の粘土。
土の表情がはっきりと露呈する為、土作り(=粘土作り)は最も重要な表現のプロセスとなっています。
作家によって原土や土作りは異なり、結果として焼成後に現れる『土の色・質感』が異なります。
では、ここで小生のレギュラーな土作りのプロセスを。
原土には夾雑物である小石、砂、シルトなどがあります。それらをどのサイズまでをどうやって取り除くか、または残すかが重要な要素となります。
【以下手順】
原土
乾燥
粉砕
水で溶かす
数日放置
攪拌
ザルで漉す(土によって使うメッシュサイズが異なる)
ドベ鉢で水分を適度に抜く
となっています。
いわば、湿式による土作りです。乾式というのもあって、これは粉砕して水に溶かす前にザルを通します。(=早く出来るが埃っぽいのでしません)
これが基本の土作りですが、一窯あたりに数種類の土を使うので、それぞれをストックしておきます。
作るモノによっては、原土のまま作る場合もあって、この場合は手で小石をひとつづつ取り除くという地味極まる方法をとります。
まぁ、世間の皆様が思う陶芸家の仕事風景とはロクロ仕事なのでしょうが、実際はこれが一番時間が掛かっている仕事です。
以上が、土作りでした。
さぁ、この個性ある素材としての原土『Wild Clay』。その過程、結果としての『色』を切り口とした展示を致します。
所属しております『備前焼作家集団けらもす』の展覧会のご案内です。
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タイトル : けらもす8.1 Wild Clay
会 期 : 2017年9月15日㈮~10月1日 ㈰ (9月25日㈪は休館)9:00~17:00
会 場 : 加計美術館
〒710-0046 岡山県倉敷市中央1丁目4−7
TEL 086-427-7530
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是非、ご高覧いただけると幸いです。 よろ。 (`・ω・´)ゞ
(まったく笑う要素がない記事にしてしまった……。反省)