備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

名残りの鰆

2015-07-07 18:28:33 | 料理・食材


やきもん屋たるもの酒器の勉強に関しては、日々弛まぬ努力をせねばならない。これはもう業務上の義務である。
昨日も仕方なく、魚屋さん店頭にて勉強資料を眺めていると、矢鱈とサワラが目に付いた。サゴシではなくサワラ。しかも安い。
「むむむ、なんだろう、今日は。サワラ祭りか?」
しかし、サワラは産卵が終わってヘロヘロなタイミングである。サワラ祭りなのに卵も白子も出ていないのがその証拠。う~~ん、どうするかなぁ。

名残の鰆も一興か? 安いし。(←これ大事)
「腐っても鯛、ヘロヘロでも鰆」と言うし。(←これ言わない)

暫し、迷ったが、えーい、勝負だ!
いずれがご婦人かは知らねども、鮮度が良い事を頼りとして購入に至る。
既に3枚に卸してあるその身でも優に60cmは超える。身色もピンク。さて、どうしてやろうか。このサゴシでなくサワラ。
う�・ん、サワラにしてはちょっと小さい? 「いや、今日は正真正銘のサワラなのだ」という信念が大事。ほら、『鰯の頭も信心から』ってのもあるしね、サワラだけど。


サワラは岡山以外では西京焼きの魚という認識だと思う。実際、自分がそうだった。
しかし、岡山では刺身でも、また名物『祭り寿司』(バラ寿司)のトッピングでよく使われる。その場合、薄い切り身を酢漬けにする事が多いけれど、あれ、あまりお好みではない。

そこで片身全体をフル活用する。塩を当てて暫し後、再び購入時のトレーに戻して酢を注ぎ冷蔵庫へ。合わせ酢は米酢、レモン、塩、昆布をムニャムニャとして作った。
購入時のトレーは平たい切り身を管理するのは丁度良いパッドでもある。細くて長いパッドってなかなか無いもんねぇ。無駄に大きいと酢が沢山要るしね。(←ケチ)

さて、漬けて翌日の今朝。冷蔵庫から恭しく出す。
そーっと、身の割れ目から中心部を見る。ほんのりレアである。OK! 皮目をガスバーナーで炙る。

因みに、バーナーは本業で使うものであって料理用ではない事は、ごく力を入れて改めて言い添えておこう。

サワラは身が柔らかい魚。皮を引くと素人料理では触りすぎてグズグズにしてしまう危険性がある。皮付きなら身を崩さずに調理出来る。また食感の変化も期待できるかもという事もあって炙る。


しばし、粗熱を取る為に休める。


その間に寿司飯の準備。例によって色々と混ぜ込むパターンで。
本日は白ゴマ、黒ゴマ、生姜、青紫蘇。魚が淡白な事を予想して混ぜご飯の味で補う作戦である。


程よく納得がいったところで、身と合わせる。半身と寿司飯を長く棒状にラップで巻いて成形する。


よし、これで『炙り鰆の棒寿司』の入り口に立った。
あとは時間が調理するのだ。このまま冷蔵庫で保管する。あぁ、待ち遠しい。


ここまでが今朝の仕込み。勉強の為には準備が大事なのだ。


しっとりと馴染んだところで頂く予定である。おそらく夕方には良いんじゃないかな。およそ12時間で完成を想定。もっと置いても大丈夫だろう。

必要もないのに、時々、冷蔵庫を開けて観察する。
しかし、観察だけでは抑えも効かず……、お昼にちょっと摘み食い 試食。
試食用に端っこで巻いたものと薄焼き卵で巻いたもので。(←こういう段取りは実に良い)

薄焼き卵の棒寿司は寿司飯が余っていたので予定通りの昼食であるが、思いの外旨し。


うん、悪くないよ。夕方に期待。


本日は、『炙り鰆の棒寿司』で猛勉強である。
しかし、もっと美しく作れる様に、またマリアージュの検証にも量的な復習が必要であると既に現時点で思われる。そもそも、どのタイミングで炙るべきか判っていないし……。

あぁ、困ったこっちゃ。


次は、鱧かしら……。