寒波襲来。やっと冬が本格化したか……。
キンキンと音がしそうなその寒い夜。ほぼ満月の月が天空にある。月光に冬枯れの森が青く浮かび上がって見える。
この寒月に思い出した歌。
ねがはくは花の下にて春死なん
その如月の望月のころ
出家した漂白流浪の歌人。西行さんの歌。2月の満月に桜の話。この方は、無類の桜好きというよりも、むしろ執着だな。
まぁ小生にしても、桜には想うところもある。1年のうちのホンの10日間ほどのドラマに……。蕾から散るまでのその僅かな期間に、桜への想いは常に変化する。しかし、遠くに、車窓に、眺めるだけのうちに花は散る。その散り行く様を見ると、理由なく 何故か心苦しくなってくる。「今年もまた散ってゆく」と……。一気呵成な盛り、しかし短命で、唐突な終焉。いわれのない切実さ。無常ということ。
そして、西行さんは……
春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸のさわぐなりけり
夢と現(うつつ)の境界をなくして、自身の心を行き来させるという境地。小生はまだそこまでは至らない。なので、今は具体的なコチラが性にあっている。
ひさかたの光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ (紀 友則)
この寒さに 急に春が恋しくなって桜を思う。
寒月に春を待つ夜更け。