環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

スウェーデンの故パルメ首相が32年前に広島の原爆資料館に残した言葉

2013-10-25 14:53:03 | 政治/行政/地方分権
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 4日前の私のブログ「小泉元首相の“脱原発論”が明らかにした“治療志向の国 ニッポン”」の中で、1972年の「第1回国連人間環境会議」のある会合でスウェーデンの当時のパルメ首相が述べた「科学者と政治家の役割」を紹介しましたが、今朝の朝日新聞のコラム「天声人語」には、32年前の1981年(昭和56年)に同首相が広島の原爆資料館に残した言葉が次のように紹介されています。



 私もこのブログで、広島の原爆資料館に残された故パルメ首相の言葉を紹介したことがあります。そこで、改めて、そのブログを検証してみました。偶然にも、このブログに掲載されていた同首相の言葉も1981年のものでしたが、内容は異なっていました。

天声 人語  どの国の政府であれ、責任ある地位に就く者には、すべて広島を訪ねることを義務づけるべきだ。
私のブログ  世界の人々は、ヒロシマの名において決して過ちを犯してはならない。このことが決して再び起こってはならない。

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22年前にタイムスリップ  「広島の原爆資料館」と「竹原火力発電所」を訪問(2010-08-14)

「原爆資料館で見つけた故パルメ首相のメッセージ」と「閣内の環境相の位置づけの重要性」(2010-08-17)


 今朝の天声人語は、「反核平和の政治家で知られたその人が、天上でうなずいているだろう。被爆国でありながら、『核不使用声明』への賛同を見送って来た日本が、ようやく声明に署名した。これまで、米の「核の傘」に頼る政策に合わないと拒んでいた。」と述べています。
ここでも、国際社会におけるスウェーデンと日本の立ち位置の相違を垣間見ることができます。

ネット上で見つけた関連記事        
検証 ヒロシマ 1945〜95 <15> 原爆資料館|検証ヒロシマ|ヒロシマ ...

3週間後に迫った「国連の持続可能な開発会議」(Rio+20)、日本の対応は20年前の再現か?

2012-05-31 09:26:07 | 政治/行政/地方分権
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 今年1月1日のブログで、私は次のように書きました。

xxxxx
今年2012年、国連は、1992年の「地球サミット」の20周年を記念して、6月20~22日に再びブラジルのリオデジャネイロで「持続可能な開発会議」(リオ+20)を開催する予定です。私の懸念は、日本のマスメディアが昨年から引き続くグローバル社会における国際的、国内的な政治、経済、社会の混乱や東日本大震災とそれによって引き起こされた福島第一原発過酷事故のフォローに忙しく、さらに大きな、そして、もっと基本的な 「人間社会の持続可能性」という重要性に、今なお思いを馳せる想像力が欠けてきているのではないかということです。
xxxxx


 私のこの懸念が現実のものとなりそうな状況になってきました。マスメディアだけでなく、国内の、そして、国際社会を動かしている日本の政治家に対してもです。朝日新聞に掲載された次の小さな記事をご覧ください。主催国のブラジル大統領が 「野田首相に出席を要請したところ」、野田首相は「出席者は検討中」と答えたそうです。


 今国会の会期は「国連のリオ+20会議」と重なっており、野田首相は重要な法案を抱えておりますので国会会期中(6月21日まで)を理由に会議への不参加となれば、20年前に当時の宮沢喜一首相がPKO法案の国会審議を理由に参加しなかったと同じような状況が再現されることになります。事態は20年前よりも一層深刻になっているにもかかわらず、です。

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地球サミット20年 日本とスウェーデンの相違(2011-02-26)

1992年の「地球サミット」当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違(2010-09-13)

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」、1992年の「地球サミット」は、その後は?(2007-09-28)

地球温暖化に対する日本の「政治の意識(認識)」と「行政の意識(認識)」(2007-09-29)

「個人」と「組織」のずれ(2007-01-29  )

昨日行われた野田首相の初めての「施政方針演説」

2012-01-25 22:49:51 | 政治/行政/地方分権
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昨日、第180通常国会が招集され、6月21日までの150日間の議論がいよいよ始まります。今朝の朝日新聞に、野田首相が首相就任後初めて行った「施政方針演説」の全文が掲載されています。全体の内容をつかむために、とりあえず「見出し」と新聞1面をフルに使った「施政方針演説」(全文)の中に、21世紀前半のキーワードである「持続可能な」という言葉が どの程度、どのような文脈で、使われているか調べて見ました。5回登場しますが、そのうち、4回が「持続可能な社会保障(制度)」というものでした。

 1.はじめに(1カ所)
   持続可能な社会保障制度を再構築するという大きな方向性

 2.3つの優先課題への取り組み(1カ所)
    -復興の槌音よ、鳴り響け
      津波を含むあらゆる自然災害に強い持続可能な国づくり ・地域づくりを実現するため、
    -原発事故と戦い抜き、福島再生を果たす
    -日本経済の再生に挑む

 3.政治・行政改革と社会保障・税一体改革の包括的な推進(3カ所)
    -政治・行政改革を断行する決意
    -社会保障・税一体改革の意義
      「社会保障を持続可能で安心できるものにしてほしい」という国民の切なる願いを叶えるため
    -改革の具体化に向けた協議の要請
      歴代の先輩方は年初の施政方針演説の中で、「持続可能な社会保障を実現するための革・・・」
       「持続可能な社会保障制度を実現するには、・・・・・・」

 4.アジア太平洋の世紀を拓く外交・安全保障政策(なし)
    -アジア太平洋の世紀と日本の役割
    -近隣諸国との2国間関係の強化
    -人類のより良き未来のために

 5.むすびに(なし)

 
 つまり、日本のめざす将来目標は「持続不可能な社会」の中に、「持続可能な社会保障制度」を構築するという大変矛盾をはらんだものとなっています。政治家も官僚も学者も企業家も、そして市民もこのおかしさに気づいていないのでしょうか。私は「持続可能な社会保障制度」は「持続可能な社会」の中に構築されるものだと思うのですが・・・・・・

 次の2つの図をご覧ください。この図は21世紀前半社会のキーワードである「持続可能な」という言葉の、スウェーデンと日本の使い方の相違を示したものです。10年前の2002年に描いたものですが、昨日の野田首相の「施政方針演説」を読む限り、内容的にはこの図を修正する必要はなさそうです。



 昨年3月11日に発生した東日本大震災の前まで、マスメディアを賑わしていた「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生型社会」という概念はどこへ行ってしまったのでしょうか? 4年前の2008年1月に行われた福田康夫・元首相の施政方針演説はなんだったのでしょうか。

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混迷する日本⑥ 福田首相の変心? 「持続可能社会」から「低炭素社会」へ転換(2008-01-20)

持続可能な社会、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、これらを組み合わせた社会とは何だろう?(2007-10-24)



 今年、6月にブラジルのリオデジャネイロで「1992年の地球サミット(国連環境開発サミット)」の20周年を受けて、 「国連のリオ+20」が開催の予定ですが、現政権は目の前に山積する国内の解決すべき大問題に気を取られるあまり、この大事な国連会議をすっかり忘れているのではないでしょうか。



野田首相は「1.はじめに」の中で、次のように述べておられます。
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昨年9月、野田内閣は目の前にある課題を一つ一つ解決して行くことを使命として誕生いたしました。 「日本再生元年」となるべき本年、私は、何よりも、国政の重要課題を先送りしてきた「決められない政治」から脱却することを目指します。
xxxxx

 是非、そうあって欲しいと思います。

 1月20日のブログでも述べたように、スウェーデンと日本の違いは、 「予防志向の国」 「治療志向の国」 、言い換えれば、「政策の国」「対策の国」です。「治療志向の国」日本は、戦後の経済復興から一貫して「経済の持続的拡大」を追い求めてきた社会の仕組みから、つぎつぎに発生する膨大なコスト(たとえば、国や自治体の財政赤字、年金をはじめとする社会保障費、企業の有利子債務など)の「治療」に追い立てられています。

 
  「対策の国」日本の舵取りを任されている野田首相は、昨日の「施政方針演説のおわり」の中で、次のように述べて、初めての施政方針演説を結んでおられます。
xxxxx
 ・・・・・・政治を変えましょう。苦難を乗り越えようとする国民に力を与え、この国の未来を切り拓くために今こそ「大きな政治」を、「決断する政治」を、共に成し遂げようではありませんか。日本の将来は私たち政治家の良心にかかっているのです。国民新党を始めとする与党、各党各会派、そして国民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、私の施政方針演説といたします。
xxxxx

 大変すばらしい決断です。しかし、忘れないでいただきたいことは、1月20日のブログで再考した私の環境論を構成する主要な原則の一つ「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則です。

このブログ内の関連記事
政治が決める「これからの50年」(2007-01-05)

政治が決めるこれからの50年:日本とスウェーデンの「将来像」と「展望」(2009-09-20) 

そして、もう一つ、次の図も参考に。


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私の環境論14 環境問題は経済の「目的外の結果の蓄積」(2007-01-24)

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン① 「未来社会」の構想(2007-07-20)

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン② フォアキャストvsバックキャスト(2007-07-21) 

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン③ 21世紀はバックキャストが有効(2007-07-22)


菅首相の施政方針演説

2011-01-25 22:14:41 | 政治/行政/地方分権
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1月24日、通常国会が開会され、菅首相の施政方針演説が行われました。首相の施政方針演説は非常に重要な資料ですので、将来の議論のために保存し、いつでも参照できるように保存しておきます。

菅首相の施政方針演説(全文)

1.はじめに
2.平成の開国-第1の国づくりの理念
3.最小不幸社会の実現-第2の国づくりの理念
4.不条理をただす政治-第3の国づくりの理念
5.地域主権改革の推進と行政刷新の強化・徹底
6.平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策
7.結び



今朝の朝日の社説:「人類史上で初の体験」、私の環境論では「環境問題」と「少子高齢化」が・・・・・

2011-01-01 19:49:56 | 政治/行政/地方分権
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新年明けましておめでとうございます。

いよいよ、今日から新しい年「2011年」が始まりました。今朝の朝日新聞の社説から「人類史で初めての体験」という小見出しが目に飛び込んできました。私は2000年頃から「私の環境論」で「環境問題」と「少子高齢化問題」の2つを人類史上初めて直面する大問題と位置づけてきたからです。

このことは昨年暮れに取り上げたドラカーの『ネクスト・ソサエティ』のサブタイトル「歴史がみたことのない未来がはじまる」は、私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となると書きました

大変残念なことに、今朝の朝日新聞の社説は、 「環境問題」にはまったく触れていません。まずは、この社説をご覧ください。

●今年こそ改革を 
人類史で初の体験、もう財政がもたない、民主は公約を白紙に


そして、その背景資料の1つとして、最新の人口減少の側面が次のように報じられています。

21世紀の日本が初めて直面する「2つの大問題」

これからの50年、私たちは否応なしに人類史上初めて直面する2つの大問題を経験することになるでしょう。どちらも、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、つぎの世代に引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっています。

その一つは、日本でも関心の高い「少子・高齢化問題」です。少子化も高齢化も、人類にとって初めての経験ではありません。しかし、少子化と高齢化が手を携えてやってきたことは、これまでにはありませんでした。これは「人間社会の安心」を保障する年金、医療保険、介護保険、雇用保険などで構成される「社会保障制度の持続性」にかかわる問題です。つまり、人間社会の安心と安全が保障されるかどうか、という意味において「社会の持続性」にかかわる大問題なのです。

もう一つはいうまでもなく、「環境問題」です。これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる大問題です。環境問題の根本には人間の経済活動が原因として横たわっているわけですから、この問題を解決するための具体的な行動は、経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。

先進工業国がさらなる経済規模の拡大を追求し、途上国がそれに追従するという20世紀型の経済活動の延長では、経済規模は全体としてさらに拡大し、地球規模で環境が悪化するにとどまらず、これからの50年間に人類の生存基盤さえ危うくすることになるでしょう。
 
この2つの大問題は、私たちが今まさに、 「人類史上初めての大転換期」に立たされていることを示しています。
 
地球的規模で生じている環境問題は人類共通の重大事であり、世界のほぼ全域に広がった21世紀の「市場経済システム社会(資本主義社会)」を揺るがす最大の問題ですから、国際的な環境問題の解決とは、「人間社会を含めた生態系全体のセーフティ・ネット」を地球規模で張り替えることを意味します。
 
20世紀後半に明らかになった「少子・高齢化問題」と「環境問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていませんでした。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることのできない問題です。 

このことは、「経済規模の拡大」を大前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになります。自然科学が(具体的には「資源・エネルギー・環境問題」)が、「これから50年後の社会のあるべき姿はいまの社会をそのまま延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからです。

このことから、昨年暮れに取り上げたドラカーの『ネクスト・ソサエティ』のサブタイトル「歴史がみたことのない未来がはじまる」は、私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となるのです。ドラッカーはこの著作の中で「2030年の社会」を想定しています。この点でも私はドラッカーの考えに賛同します。

今年こそ、 日本の社会が自然科学が示唆している「エコロジカルに持続可能な社会」の方向に舵を切れるように、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。皆さんからの真剣なコメントを期待しています。


     
  

菅内閣の柳田法相更迭: 改めて思う「建前と本音」という日本社会の伝統的な特質(?)

2010-11-26 05:28:57 | 政治/行政/地方分権
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「前日まで続投に意欲を示していた柳田稔法相が首相官邸で菅直人首相と面会し、発言の責任をとって辞表を提出し、辞表が受理され、辞任した」と、今週の月曜日(11月22日)の夕刊各紙が報じました。私のところに配達された朝日新聞の夕刊の一面トップには「柳田法相を更迭」と見出しがついていましたが、新聞によっては「柳田法相辞任」という見出しもありました。 「更迭」と「辞任」では、かなりニュアンスに差があります。ですから、朝日新聞の夕刊は「今年度補正予算の速やかな成立を図るため、首相が野党の辞任要求を踏まえて事実上、更迭したものだ」という記事となっていたのでしょう。 

ところで、次の図は辞任前に参院予算委員会で自らの発言で謝罪する柳田法相です。写真の神妙さに添えられた発言があまりに明快で、写真と対称的です。


柳田法相がこのような発言をしている場面が幾度となく各局のテレビで放映されていましたので、多くの方はご存じだと思いますが、そこに映っていた法相は、この神妙な謝罪の姿とはまったく別で、喜々としてにこやかに、そして楽しそうに、まるで、漫談のような雰囲気を醸し出していました。問題とされた発言は、広島での大臣就任祝いの会での発言だそうですから、仲間内での本音の発言ということでしょう。ここに、久しぶりに「建前と本音」という日本社会の1つの典型的な現象を見た感があります。「建前と本音」はどこの国にも少なからずある普遍的な現象ではあると思いますが・・・・・


私のこのブログでは、これまでに2回、柳田前法相を取り上げました。17年前に私が衆議院環境委員会の中央公聴会の公述人として柳田さんの質問を受け、それに答えるという機会があったからです。次の2つの記事が当時の中央公聴会の模様と、当時の私の「日本の環境アセスメントに対する認識」についての発言の一端を伝えています。



スウェーデンは「予防志向の国」です。問題が起きてから対処するより、事前に策を講じて、問題を未然に防ごうとする傾向があります。ですから、環境関連法もこれまで、「人間の活動は基本的には汚染活動である」と認識し、「問題を起こす可能性があるものは何か」という予防的視点でつくられてきました。

1969年に制定された環境保護法は「環境に有害な活動」を規制する包括的な法律で、いわば、「環境アセスメント法」とも言うべき性格の法律で、20世紀のスウェーデンの環境法体系の中心をなすものでした。この法律は98年の「環境法典」に統合されました。

一方、スウェーデンの「環境保護法」より2年早くつくられた67年の日本の「公害対策基本法」はその名が示すように、「問題を起こしたものは何か」という治療的視点でつくられ、再発防止が主な目的となっていました。

公害対策基本法の運用により、日本では排煙脱硫装置や排煙脱硝装置のような大気汚染防止装置に代表される終末処理技術(いわゆる「End-of-Pipe Technology」)が非常に発達しましたが、反面、将来の「持続可能な社会」に必要とされるクリーンな生産技術(いわゆる「CP Technology」)の発達には目覚ましいものが見られませんでした。逆に、スウェーデンの環境保護法は「クリーンな生産技術の開発」に大きな貢献をしたのです。

日本とスウェーデンの環境問題を考える際に理解すべきことは、環境問題に対する基本認識の相違とその相違に基づいた法体系により、極論すれば、日本は社会の中に「汚染」をスウェーデンは社会の中に「汚染防止ネットワークのシステム」と「そのシステムを支える技術」を蓄積してきたことです。



そして、1993年の「環境基本法」の成立から遅れること4年、97年にやっと日本でも「環境アセスメント法」が成立することになるのですが、次の記事が示しますように、この成立したばかりの「環境アセスメント法」も国際社会ではすでに出遅れであることがわかります。97年と言えば、その12月に気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が京都で開催され、「京都議定書」が成立した年でしたね。


このブログ内の関連記事
「環境基本法」成立から14年⑩  中央公聴会での質疑応答―その4:柳田議員とのバトル(?)(2007-12-15)

「環境基本法」成立から14年⑪ 中央公聴会での質疑応答を終えた私の感想(20087-12-16)

昨夕、菅改造内閣が発足。 明日はスウェーデンの総選挙:こちらも大接戦(2010-09-18)


この機会に、改めて当時の「環境委員会公聴会議録 第1号」を見てみました。



新たな発見がありました。すでに亡くなられている方もおりますが、私が17年前に議論した菅内閣の柳田 稔さんに加えて、岡崎トミ子さん(現国家公安委員長、消費者・食品安全 少子化・男女共同参画担当相)および高木義明さん(現文部科学相)、つまり、今年9月に発足した菅内閣の3人の閣僚が当時の中央公聴会に環境委員として同席しておられたのです。

なお、この環境委員会の議事録の全文をPDFで読むことができます。ご関心のある方はどうぞ。


       

日本の「強固な思い込み」が覆される、日本より「大きな政府」スウェーデン、「人」重視で成長

2010-10-19 22:33:23 | 政治/行政/地方分権
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6月11日に菅直人・新首相の「所信表明演説」が国会で行われました。私は6月12日のブログ「待望の菅首相の『所信表明演説』、首相が追求する『第3の道』はスウェーデン型?」で、次のように書きました。

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首相の所信表明演説には、「スウェーデン」という言葉は一言も出てきませんが、これらの資料から判断しますと、菅首相は日本の望ましい将来像として、「スウェーデン社会」を念頭においているように思います。そうだとすれば、最近では、あの中谷巌さん や あの竹中平蔵さんさえも雑誌のインタビュー記事やご自身の最新の著書で「スウェーデンに学べ」と書いておられますので、37年間日本とスウェーデンの「社会と環境分野」を同時進行でフォローしてきた私にとって、「時代の大きな変化」を強く感じます。
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9月14日の民主党臨時党大会で菅首相が、小沢一郎さんを大差で破り、代表に再選され、10月1日に招集された臨時国会に望んでいます。その臨時国会も今日でおよそ3週間経ちましたが、テレビ中継された予算委員会を見る限りでは相も変わらずの与野党の足の引っ張り合いが続いています。


「菅首相が日本の将来像としてスウェーデンを念頭に置いている」と仮定した場合、私には次の朝日新聞の記事が大変興味深く見えます。およそ4年前の記事ですが、今読んでも私には何の違和感もなく読めますので、紹介しておきましょう。


日本の「強固な思い込み」、あるいは、大好きな議論に“大きな政府、小さな政府”というのがあります。スウェーデンの政治・社会に詳しい竹崎 孜さん(元ストックホルム大学客員教授、在スウェーデン日本大使館専門調査員)は著書『スウェーデンはなぜ貧困をなくせたのか 貧困にあえぐ国ニッポン、貧困をなくした国スウェーデン』(あけび書房 2008年11月1日発行)の中で、“大きな政府、小さな政府”について次のように書いておられます。

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Ⅰ章 「小さな政府」のもとで貧困にあえぐ日本 
   1 「小さい政府」の成功例はあるのか

 ・・・・・政府は大きいよりも、小さいほうが良いとの主張は、元来はアメリカやイギリスにおける話であった。だが、そのような主張は両国以外には世界のどこにも前例が見当たらず、政府の大小についての発想はまさに米英の模倣でしかない。
 両国に共通したのは、深刻な公共財政上の赤字対策として、予算縮小や国としての役割を削減すれば、国家はその分だけ身軽となり、目的を達成できると信じたためにほかならない。・・・・・(p12 以下省略)


Ⅲ章 貧困と格差をなくした「大きな政府」 
    1 大きな政府に動じない国民

 ・・・・・・ところで国民から与えられた政策や財政にかかわる大きな権限はただちに税金と関連するが、重荷と思われる税制負担に国民は平然としている。
 大きい政府を実際に、しかも長年にわたって背負ってきた国民だけに、小さい政府をめぐる議論が割り込んでくる余地はどこにもなくて2006年に政権を復活させた保守連合政府でさえ、政府を小さくする、あるいは財政を縮小するとの公約を掲げていない。 したがって、国民は大きい政府を容認し、信頼してきたが、財政面から調べても、いかにそれが大型であるかを明確に読み取れる。何よりも税金の国民負担率がそれをはっきりと裏付けている。・・・・・(p56 以下省略)
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このブログ内の関連記事
朝日新聞の社説:スウェーデン 立ちすくまないヒントに、を読んで(2010-08-01)



なぜ、このような好ましい結果が導かれたのかを知るためには、現象面の分析だけでなく、その背景にある「スウェーデンの行動原理」を理解する必要があるでしょう。私は次の図のように考えています。20年前に考えついたことですが、20年経った今でもこの考えを変える必要はないと思っています。


そして、次に示したような国際社会が評価する好ましい成果が得られていることはすでに、このブログで折に触れ、お知らせしてきたとおりです。経済成長も、社会も、そして、環境もです。主な成果を再掲しておきます。

このブログ内の関連記事
世界経済フォーラムの「国際競争力報告 2010-2011」 スウェーデン2位、日本6位(2010-09-10)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-08)

予防志向の国・治療志向の国 16年前に「CO2税」導入(2007-06-07)

法人税の減税については
緑の福祉国家21 税制の改革 ② バッズ課税・グッズ減税の原則(2007-04-21)
およそ10年前の1999年には、先進工業国で法人税が最も低かったのはスウェーデンで30%を切っていたし、最も高かったのは日本で45%を超えていた。

混迷する日本⑬ ダボス会議から 国別環境対策ランキング スウェーデン2位、日本21位(2008-01-27)

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン 1位、日本 42位(2007-12-09)

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)
 

4ヶ月足らずで、趣を大きく変えた10月1日の菅首相の「所信表明演説」

2010-10-03 22:04:49 | 政治/行政/地方分権
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昨日の朝日新聞の一面トップは「前特捜部長ら逮捕 FD改ざん 隠蔽容疑 組織ぐるみ不正浮上」という見出しを掲げた信じられない内容の記事でした。「最強の捜査機関」とも呼ばれてきた特捜検察が、トップ以下の組織ぐるみで不正を隠蔽しようとした疑いが浮上、しかも、特捜部長が在任中に手がけた事件に関連して逮捕されるという前代未聞の不祥事に、検事総長の辞任や特捜部の解体も含めて議論になるのは必至だ、と報じています。

そのあおりで、一昨日(10月1日)に開会された第176回国会(臨時国会)関連の記事が1面ではなく、4面から始まっています。今日のブログはこの臨時国会の冒頭に行われた菅首相の「所信表明演説」にかかわるものです。

菅改造内閣は10月1日に開会された会期64日(10月1日から12月3日まで)の臨時国会(衆議院HP)に臨みました。初日に行われた菅首相の所信表明演説は、去る6月12日に行った菅首相の所信表明演説とかなり、趣(トーン)を異にしています。わずか4ヶ月足らずの間になぜ、このような変化がおきたのでしょうか。7月11日に投開票された第22回参院選で民主党が大敗し、与党過半数割れをおこしたことにより野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」が再現したこと、国民の政権与党に対する期待が大きかったので、失望も大きかったこと、任期満了に伴う民主党の代表選挙が行われた9月14日の民主党臨時党大会で菅首相が小沢一郎さんを大差で破り、代表に再選されたことなどが反映していると考えられます。

まず、今回の菅首相の所信表明演説をご覧ください。続いて、6月12日の所信表明演説をご覧ください。

●2010年10月2日の朝日新聞
 菅首相の所信表明演説(全文)

●2010年6月12日の朝日新聞
 菅首相の所信表明演説(全文)


菅首相の2つの所信表明演説の相違について朝日新聞に解説記事が載っています。


詳細はこちら



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論説委員による解説記事
菅首相の出直し所信表明に思う
消えた看板「最小不幸社会」 「遠望するまなざし いまこそ」


朝日新聞社説 首相の所信 「菅外交」の姿が見えない



6月12日のブログで、私は待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?と書き、菅首相に大いに期待しました。

このブログ内の関連記事
朝日新聞の社説:スウェーデン 立ちすくまないヒントに、を読んで(2010-08-01)



今回の所信表明演説の「1.はじめに」で、菅首相は次のように述べています。


このように見てくると、菅首相が掲げた「5つの解決すべき重要な政策課題」というのはいずれも自民党の長期政権下で20世紀から引きずってきた問題であり日本が21世紀の新たな問題にほとんど対応出来ない状況にあることがはっきりしてきます。内容的には、まさに日本が、混迷状態にあることを直視した画期的な所信表明であったと思います。

一方、スウェーデンはこれらの問題をすでに解決しており、21世紀の新たな問題への包括的な解決に向けて努力していることがわかります。その具体例が20世紀の「福祉国家」から21世紀の「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)への転換政策です。日本の自民党を上回る社民党の44年にわたる長期単独政権の成果の上に現在の連立4党による中道右派政権があります。

今日のブログの冒頭に、3つの図があります。これら3つの図の中央にある図が、そのことを表しています。その具体的な成果を、私のこれまでのブログから拾ってみます。  

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●「経済成長」
世界最強の 「IT国家」 となったスウェーデン(2010-07-18)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-09)

ニューズウィーク誌の「世界のベスト・カントリー 100」 スウェーデン3位、日本9位(2010-09-05)

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●「社会保障改革」の一体化の実現
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グリーン・ニューディール(米国)、緑の日本、そして、緑の福祉国家スウェーデン(2009-01-04)

「グリーン・ニューディール」と呼ぶにふさわしい スウェーデンがめざす「緑の経済と社会」の変革(2009-04-08)





スウェーデン総選挙の開票結果:「連立与党が勝利、172議席獲得、過半数には3議席届かず」

2010-09-21 21:24:50 | 政治/行政/地方分権
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9月18日のブログの「★明日は、スウェーデンの総選挙」の項で、「明日以降、スウェーデンの選挙結果を日本の一般紙がどのように報道するか注目しましょう」と書きました。今日はその最初です。

今朝の朝日新聞、毎日新聞および産経新聞が9月19日に行われたスウェーデンの総選挙の開票結果を次のように報じています。スウェーデンのメディアによれば、この選挙の最終結果が出るのは、9月22日(水)だそうです。ですから、ここに掲げた朝日新聞や毎日新聞、産経新聞の報道記事はあくまで9月19日に行われた投票の開票結果で、期日前投票の結果や外国在住の投票者の投票結果は反映されていません。



毎日新聞 2010年9月21日
与党連合が辛勝 スウェーデン総選挙 極右、初の議席



産経新聞 2010年9月21日
スウェーデン 中道右派 与党が勝利 高福祉の左派は退潮





今日はスウェーデンの総選挙、 ドイツは原発回帰に猛反発デモ

2010-09-19 10:58:24 | 政治/行政/地方分権
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今朝の朝日新聞は4面(国際面)で、今日行われるスウェーデンの総選挙とドイツの首都ベルリンの中心部で行われた大規模な原発反対運動を伝えています。今日はこの2つのニュースを将来の参照用としてこのブログ上に留めておきます。





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スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)



9月6日の毎日新聞と7日の朝日新聞が、ドイツのエネルギー体系を支えている原発について、新しい決定がなされたと、次のように報じています。

原発「必要」12年延命 独政権、全廃から転換(朝日新聞 2010年9月7日)
 

そして、今日、9月19日の朝日新聞はこの決定に対して、首都ベルリンで大規模なデモが行われたと報じています。詳しいことはわかりませんが、これらの記事を見る限り、ドイツの原発に対する考え方は、スウェーデンが21世紀前半社会にめざす「エネルギー体系の修正計画」と似て来たようにも見えます。
独・原発回帰に猛反発  ベルリンで大規模デモ(朝日新聞 2010年9月19日)  


(注)9月26日に、関連記事として上の記事を追加した。


この機会に、原発を運転すれば必ず排出される「高レベル放射性廃棄物」に対する処分の現状を示しますので、合わせてご覧ください。米国のオバマ政権が2009年に、前政権が決定していた「高レベル放射性廃棄物処分計画」を適切でないとして計画変更を決めましたので、現時点では、最先端を行くフインランドとスウェーデンにフランス、ドイツが続くという構図となっています。

今後も原発推進を続ける方針を明らかにしている日本は、2009年に日本の資源エネルギー庁が作成した次の資料によれば、皆さんの期待に反して(?)、高レベル放射性廃棄物の処分の分野ではスイスやイギリスと共に、中国の後に位置づけられています。日本政府の原子力担当の行政機関である資源エネルギー庁が作成した最新の広報資料ですので、誤りはないでしょう。

関連記事として、このブログ内の記事からスウェーデンの動きを掲げておきますので、合わせてご覧ください。

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スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決(2010-06-22)

日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?(2010-02-17) 




昨夕、菅改造内閣が発足。 明日はスウェーデンの総選挙:こちらも大接戦

2010-09-18 23:50:42 | 政治/行政/地方分権
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今朝の朝日新聞は昨夕発足した菅改造内閣の関連ニュースが満載です。他の全国紙も同様でしょう。

環境問題の改善や解決の為には「技術」よりも「政治」や「社会制度」だ、と考える私が最も注目しているのが菅改造内閣の顔ぶれです。予想外に早く、その顔ぶれが決まりました。

内閣閣僚名簿(時事)


今日とりあげる閣僚は、今回の菅改造内閣で環境相となられた松本 龍さん(この方についてはまったく知りません)ではなく、法務・拉致を担当することになった柳田 稔さんです。私は今回の菅改造内閣の発足まで、柳田さんのことをすっかり忘れていましたが、テレビでお顔を拝見し、17年前のことを思い出しました。

17年前というのは、環境基本法案とその関連事項が衆議院環境委員会で審議された年です。私は中央公聴会公述人の1人として柳田さんの他、何人かの環境委員と向き合っておりました。

○原田委員長 柳田稔君。

○柳田委員 まず最初に、小沢公述人にお伺いをしたいのでありますけれども、「この法の制定により、環境問題が改善の方向に向かうとは到底考えられない。」だから反対だというふうな結論であります。

私は逆に、先生が望んでおるような、ここまでできれば、例えばスウェーデンの先ほど言った環境コードですか、までできればそれはすばらしいものかもわかりませんけれども、現段階でこの環境基本法をつくっていって、さらに、先生も書いてあるとおり「法律には国民を間接的に教育してしまう効果がある」ということですから、国としてもこういうふうに環境に対して大変関心を持って前に進めるんだ、そういうふうなことも出てくるんではないかと思うので、私は、なぜ反対されるのか、まだ少しわからないのでありますけれども、いかがでしょうか。

○小沢公述人 反対というか、あるよりない方がいいかと問われれば私はあった方がいいという程度の話でして、つまり実効があるかどうかという点を考えたときに、もう少し環境問題ということを真剣に考えてやればもっと別なものができるであろう、こういうふうに私は思うわけです。

それはなぜかといいますと、今私が聞いている範囲では、この法律ができたときになくなるものは何かというと、公害対策基本法がなくなる、それで、そのほかのものは残るというわけですね。つまり、公害対策基本法のもとでできた大気汚染防止法とか水質汚濁防止法とか、そうゆうたぐいは残るわけです。そうしますと、過去の行政の対応と、つまり法律というのは生きているわけですから、変わらないではないか。もし許認可事項をやるとしても、今までの大気汚染防止法に沿ってやるのでしょうし、水質汚濁防止法に沿ってやるわけです。あるいは廃棄物もそうだと思います。
そうだとすると、私の認識では、20年前よりも今の環境の状態は一部のものを除いて悪くなっている、こうゆうふうに考えているわけです。ですから、従来と同じ法律が生きていて、それを早く変えるというなら別ですよ。早く変えるということがあれば、そうですけれども、既存の法律として生き続け、それに基づいて行政が判断をする、アセスメントもそうです、そういうことになれば、汚染物質はふえてしまうじゃないか、そういう意味で反対だと言うわけです。

○柳田議員 また、小沢先生に質問でありますけれども、基本法、これで環境を守るのだという理念を我々はうちだすわけですね。・・・・・・



この議論の続きは、次の 「環境基本法成立から14年⑩」をご覧ください。続いて、このブログの最終回「環境基本法成立から14年⑪」をご覧ください。なお、この環境委員会公聴会の議論全般にご興味のあるかたは、下記の関連資料をクリックして下さい。

このブログ内の関連記事
環境基本法成立から14年⑪ 中央公聴会での質疑応答を終えた私の感想(2007-01-16) 

環境基本法成立から14年⑩ 中央公聴会での質疑応答-その4 柳田委員とバトル(?)(2007-12-15) 

環境基本法成立から14年⑨ 中央公聴会での質疑応答-その3 情報公開、海外での企業の倫理規制(2007-12-14)

環境基本法成立から14年⑧ 中央公聴会での質疑応答-その2 環境教育、エネルギー政策(2007-12-13)

環境基本法成立から14年⑦ 中央公聴会での質疑応答-その1  環境計画、アセスメント、情報公開(2007-12-12) 

環境基本法成立から14年⑥ 中央公聴会での意見陳述-その4(最終回) 環境問題の本質(2007-12-11) 

環境基本法成立から14年⑤ 中央公聴会での意見陳述-その3 この法案の最大の欠陥(2007-12-10) 

環境基本法成立から14年④ 中央公聴会での意見陳述-その2 「環境保全」の意味が明確でない(2007-12-09) 

環境基本法成立から14年③ 中央公聴会での意見陳述-その1:エコロジー的視点が欠落している(2007-12-08) 

環境基本法成立から14年② 不十分なので、このままで私は反対だ!(2007-12-07) 

環境基本法成立から14年①(2007-12-06) 

関連資料
第126回国会 環境委員会公聴会 第1号(議事録全文)

今日改めて、この議事録を開いてみますと、今回の菅改造内閣で文部科学大臣になられた高木義明さんと国家公安および消費者・食品安全・少子化・男女共同参画担当大臣になられた岡崎トミさんのお二人のお名前を目にします。



私が17年前の柳田さんとの「環境基本法案」を巡る17年前のバトル(?)を、今日わざわざ持ち出したのは、今、山積している問題に対して目の前の困難から 「無いよりはまし」 程度の法律をつくっても、早晩行き詰まるという経験則を政治家にしっかり理解して欲しいからです。日本の政治家は行き詰まると、かならず「抜本的○○」というのですが、文字通り実行したことは一度もないといってよいでしょう。

菅首相は初めての内閣を自ら 「奇兵隊内閣」 と名付けました。奇しくも、菅首相は昨日発足した菅改造内閣を自ら 「有言実行内閣」 と名付けたそうです。そうであれば、菅内閣の閣僚が「抜本的な○○」と発言したときにはぜひ、文字通り抜本的な行動をとって欲しいと思います。

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政治が決める「これからの50年」(2007-01-05)



★明日は、スウェーデンの総選挙

さて、明日9月19日(現地時間)はスウェーデンの総選挙の日です。こちらも大接戦です。世論調査によれば、現政権である連立与党がやや優勢のようですが、野党連合が勝つとスウェーデン政治史上初の女性首相の誕生というサプライズがあるようです。

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スウェーデン社民党新党首に モナ・サリーン氏を選出(2007-03-25)

政治家の不祥事(2007-01-20)


また、移民促進政策に強く反対するスウェーデン民主党(極右政党)が初の国会議席を獲得するかもどうかも大多数のスウェーデン人にとっては大変気がかりなところです。与党連合 (保守党+自由党+中央党+キリスト教民主党)、 野党連合 (社会民主党+左翼党+環境党)共に真っ二つに別れ、数議席を争う大接戦ですから、スウェーデン民主党が国会の議席を獲得した場合に、この党にどう対応するかで大変難しい問題が生ずるからです。

明日以降、スウェーデンの選挙結果を日本の一般紙がどのように報道するか注目しましょう。

このブログ内の関連記事
スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)



「原爆資料館で見つけた故パルメ首相のメッセージ」と「閣内の環境相の位置づけの重要性」

2010-08-17 11:15:13 | 政治/行政/地方分権
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8月14日のブログでは、22年前に当時のスウェーデンのエネルギー・環境大臣一行と広島の原爆資料館と竹原火力発電所を訪問した思い出を紹介しました。
そして、8月15日は第65回の終戦記念日でした。


今日はもう一度、思い出を紹介します。

★原爆資料館で見つけた故パルメ首相の色紙

ダール大臣一行と広島の原爆資料館を訪問した翌年、89年4月4日に、私は再び、原爆資料館を訪問しました。そして、その時に見つけたのが次の写真が示すスウェーデンの故パルメ首相の手書きの色紙でした。



No man or woman on earth can be ? ? (文字が判読不明) on the name of Hiroshima. This must never happen again.
世界の人々は、ヒロシマの名において決して過ちを犯してはならない。このことが決して再び起こってはならない。

Olof Palme
December 8 1981
軍縮と安全保障に関する独立委員会委員長      
オロフ・パルメ氏
昭和56年12月8日来館

写真を撮り損ねたのですが、近くに飾られていた中曽根康弘氏の色紙は私のアルバムのメモによりますと肩書きと名前、つまり「内閣総理大臣 中曽根康弘」とだけだったと書いてありました。

余談ですが、故パルメ首相がヒロシマを訪れたおよそ10年前、1972年6月に「第1回国連人間環境会議」がスウェーデンの首都ストックホルムで開催されました。そのときの新聞記事にスウェーデンの「戦争と環境問題に対する基本認識」の一端を垣間見ることができます。



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社会的な合意形成 ⑤ 環境問題解決の鍵:科学と政治()2007-03-04)

社会的な合意形成 ⑥ 科学者と政治家の役割(2007-03-05) 

再び「科学者」と「政治家」の役割(2007-11-29)


★1990年1月9日の内閣の改造

次の図は、スウェーデンの環境・エネルギー大臣一行がヒロシマを訪問した8ヶ月後に行われた内閣改造の一端を示したものです。


故パルメ首相を引き継いだカールソン首相は、当時スウェーデンが直面していた諸問題に対処するため、内閣の中に全体を統括する「特別グループ」と具体的な問題に取り組む「3つのグループ」を設置し、各閣僚をそれぞれのグループに配置しました。このグループの配置に当時の首相の「環境問題に対する基本認識」が見てとれます。特別グループと3つのグループのすべてにエントリーされているのが「環境相」です。

この内閣改造に伴って、来日中は「環境・エネルギー相」であったビルギッタ・ダールさんは内閣改造後に「環境相」となりました。スウェーデンが直面していた諸問題の対処に設置されたすべてのグループに環境相がかかわっていることに注目して下さい。「日本の環境相の閣内での位置づけの重要性」と「スウェーデンの環境相のそれ」との間には大きな落差があることがわかります。この落差は「環境問題に対する基本認識」の相違に基づくものだと思います。

この内閣改造が1990年、つまり20年前だったことが重要です。20年後の今なお、そして、政権交代がなされても、日本では「強固な縦割り行政」が“継続(持続)し”、問題の解決を妨げています。気候変動への対応のような具体例でも、日本の環境省と経済産業省の間には協力関係が成り立っているようには見えません。  

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朝日新聞の社説:スウェーデン 立ちすくまないヒントに、を読んで

2010-08-01 17:20:05 | 政治/行政/地方分権
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「菅直人首相が、スウェーデンの名をよく口にする。目標に掲げる『強い経済、強い財政、強い社会保障』を実現した国としてだ。この北欧の国は、日本のモデルになるのだろうか」という書き出しで始まる今朝(8月1日)の朝日新聞の社説「スウェーデン 立ちすくまないヒントに」を読みました。

発行部数およそ800万部と言われている大新聞が、社説のテーマとして、人口930万人の小国「スウェーデン」をこの時機に取り上げたのはタイムリーだと思います。内容的にも特に違和感はありませんが、 「理想郷」という言葉が2回も出てきたのには少々驚きました。社説の筆者はほんとうにスウェーデンを「理想郷」と考えていたのでしょうか。この発想は20世紀の考えをかなり引きずっているように思います。そのように考えると、1980年代末までの多くの論調がそうであったように、「理想郷」の裏だとか、「理想郷」の光と影というような論調が必ず出てきます。現に、10日前の朝日新聞の「声」の欄に「スウェーデンは理想郷ではない」と題する投書が掲載されました。

80年代に入ってスウェーデン社会は徐々に変質し、特に1995年のEU加盟後は、スウェーデンは欧州の「特殊な国」から「小国ではあるが、無視できない“普通の国”」に変身してきました。欧州の「無視できない普通の国」という視点で、スウェーデンの様々な状況を分析すれば、今まで見逃してきた「新しいスウェーデン」を見ることができるでしょうし、その中に日本社会の改善のヒントになることを多く発見することになるでしょう。社説の執筆者のお考えの中で、まったく異論はなく、私もその通りだと思うのは、次の2点です。

●スウェーデンから学ぶべきは、高福祉高負担の仕組みそのもの以上に、難しい政策選択を可能にする政治のあり方ではないだろうか。

●人口1千万弱の国の高福祉高負担を日本にそのまま持ち込むのは難しいかもしれない。だが、政治への信頼感確保のいくつかのヒントなら、スウェーデンにある。

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つい最近のことですが、北岡孝義さんという方の『スウェーデンはなぜ強いのか 国家と企業の戦略を探る』(PHP新書681 2010年8月3日 第1版第1刷)という魅力的なタイトルの本に出会い、読んでみました。北岡さんは、この最新著の「終章 スウェーデンから何を学ぶか」を次のように結んでいます。


朝日新聞の社説は市場経済社会が直面する21世紀最大の問題である「環境・エネルギー問題」への対応にまったく触れていませんし、北岡さんの著書もこの点にはほとんど触れておりません。

北岡さんの記述(上の赤網をかけた部分)を証明しているのが次の図です。96年にスウェーデンが掲げた「緑の福祉国家への転換政策」の進捗状況の一端を示しています。過去36年間の日本とスウェーデンの「GDPとCO2の排出量の推移の関係」は、日本が見事なまでのカップリング(相関性)を示しているのに対して、スウェーデンの「経済成長(GDP成長)と温室効果ガス(GHG)の排出量の関係」は97年以降、見事なデカップリング(相関性の分離)を示しています。

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2008年の温室効果ガス排出量:スウェーデンは90年比11.7%減、日本は7.4%増(CO2)+α(2009-12-19)

 「希望の船出」から11年、経済も、福祉も、環境も


私のこのブログのタイトルは、「経済」「福祉(社会)」「環境」、不安の根っこは同じだ! 、「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだですから、「政治への信頼感の確保」という点では、お二人と共通しています。

そこで、日本とスウェーデンの現在と将来に対する私の考えをまとめておきます。私は日本の多くの識者がまったくと言ってよいほどフォローしてこなかったスウェーデンの「環境問題・エネルギー問題に対する考え方」や「その政策」を1973年の「第1回国連人間環境会議」(スウェーデンの首都ストックホルムで開催)以来、およそ40年にわたって日本と同時進行でフォローしてきました。両国の間には、21世紀最大の問題であるはずの「環境問題に対する認識や行動」に20年以上の開きがあるといっても過言ではないでしょう。


次の図は、私の環境論から見たスウェーデンと日本の環境問題の社会的な位置づけの相違を示したものです。

スウェーデンは環境問題を、人間社会を支えている「自然」に生じた大問題(図の右下)と考えてきました。ですから、人間を大切にする「福祉国家」のままでは、環境問題には耐えられないことに気づいたのです。そこで、人間を大切にする「福祉国家」を、人間と環境の両方を大切にする「緑の福祉国家」へ転換していこうとしています。
 
一方、日本では、環境問題は人間社会に起こる数多くの困った問題の一つとして理解されてきたので、つねに環境問題よりも「図の左中に例示した社会・経済問題」のほうが優先されてきました。スウェーデンでは、ここに例示した日本の経済・社会問題はほとんど問題にならないか、すでに解決ずみといってよいでしょう。両国は「あべこべの国」だからです。


次の図はスウェーデンと日本の「21世紀前半社会のビジョン」の相違を示したものです。

1996年9月にスウェーデンは、20世紀の「福祉国家」を21世紀の「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)へ転換していく壮大なビジョンを掲げました。スウェーデンの「緑の福祉国家」には

 ①「社会的側面」 ②「経済的側面」 ③「環境的側面」

の3つの側面があります。スウェーデンは福祉国家を実現したことによって、これら3つの側面のうち、「社会的側面」と「経済的側面」はすでに満たしているといってよいでしょう。しかし、今後も時代の変化に合わせて、これまでの社会的・経済的な制度の統廃合、新設などの、さらなる制度変革が必要になることはいうまでもありません。>朝日新聞の社説も、北岡さんのご著書も、私の考え方からすると主として「緑の福祉国家」の社会的・経済的側面をフォローしたものです。

残されたもう一つの環境的側面については、この分野で世界の最先端を行くスウェーデンもまだ十分ではありません。20世紀後半に表面化した環境問題が、福祉国家の持続性を阻むからです。そこで、21世紀前半のビジョンである「緑の福祉国家の実現」には、環境的側面に政治的力点が置かれることになります。

日本のビジョンは小泉政権以前も、そして小泉政権を引き継いだ安倍政権、福田政権、麻生政権も「持続的な経済成長」を掲げ、昨年の民主党による政権交代後もこの流れは変わっていません。

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緑の福祉国家63(最終回) あらためて、緑の福祉国家の概念を(2007-06-02)


そして、次の図は、朝日の社説の冒頭に書かれている「この北欧の国は、日本のモデルになるのだろうか」という問いかけに対する「私の個人的な回答」です。この見解は「私の環境論」に基づくものです。


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スウェーデンと日本は、一見対極にあるように見えますが、それは「20世紀後半の現実社会」への対応の相違によるものです。60年代に表面化した「高齢化の急激な波」がスウェーデンの「高齢者福祉」を進展させ、世界が注目する「新公的年金制度」を生みだし、80年代に表面化した「地球規模の環境問題」が20世紀の「福祉国家」を21世紀の「緑の福祉国家」への転換を決めたのです。一方、日本はこの間、難しいことはほとんど先延ばしにしてきました。このことは10月1日に行われた菅首相の「所信表明演説」の「はじめに」 で明らかにされています。

 

今後20年の展望:スウェーデン vs 日本

2010-06-13 20:24:45 | 政治/行政/地方分権
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昨日のブログで私は、6月11日に行われた菅直人・首相の「所信表明演説」から首相が追求する第3の道とは「スウェーデン型ではないか」と書きました。とは言っても、それは「1990年代のスウェーデンの社会および経済的側面」ということです。所信表明演説には「スウェーデン」という言葉はまったく出てきませんけれども・・・・・
この推測が正しいかどうかは別にして、2010年の現時点で両国の現状には大きな落差があります。

橘木俊詔さんの『家計からみる日本経済』(岩波新書873 2004年1月20日 第1刷発行)によれば、先進工業国のなかで公的部門の社会保障制度が小規模なのは、日本と米国で、日米両国は「非福祉国家」の典型国だそうです。この対極にあるのがスウェーデンで、ドイツ、フランス、英国などEUの主要国はその中間に位置します。

ここで注意を要するのは、スウェーデンの福祉は日本や米国、EU諸国の福祉とは概念を異にし、 「全ての国民を対象とし、国民の最低生活を保障するものではなく、一定の生活水準を保証する」というものです。日本や米国、EU諸国に比べて、スウェーデンが高水準の「育児サービスや高齢者福祉サービス」などを提供しているのはその具体例です。

スウェーデンと日本は、一見対極にあるように見えますがそれは20世紀後半の現実社会への対応の相違によるものです。60年代に表面化した「高齢化の急激な波」がスウェーデンの「高齢者福祉」を進展させ、世界が注目する「新公的年金制度」を生みだし、80年代に表面化した地球規模の環境問題が「福祉国家」から「持続可能な社会」)への転換を模索し始めたのです。そして、90年中頃には「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)への転換を決めたのです。

菅首相の「第3の道」が私が推測する「スウェーデン型」であるならば、日本のこれからを考えるときに役立ちそうな図を8点(いずれも10年以上前に作成したもの)と「過去60年間のGDPの推移」を示す図を提供しましょう。明確な政治的ビジョンとそれを行動に移す社会システム(社会制度)が既に構築されていることを知っていただきたいと思います。皆さんの参考になれば幸いです。  







 




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待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?

2010-06-12 20:29:26 | 政治/行政/地方分権
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6月11日に待望の菅直人・新首相の「所信表明演説」が国会で行われました。今朝の朝日新聞にその全文が掲載されています。私は昨日の国会での演説をテレビ見て、今朝、朝日新聞で演説内容を再確認しました。

日本の国会で内閣総理大臣(首相)が本会議場で行う演説には「所信表明演説」と「施政方針演説」があります。フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、両者の相違は次のように定義されています。

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所信表明演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が自分の考え(所信)を述べる演説で、以下の場合に衆議院と参議院の本会議で行われる。

   ●臨時国会の冒頭
   ●特別国会で内閣総理大臣が指名・任命された後
   ●国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合

施政方針演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が年初における政府の方針を述べる演説で、通常国会(年に1回、予算編成のため必ず召集されることが憲法上義務づけられている国会のこと。憲法では「常会」という。1月末に召集、150日間の会期で6月まで行われるが、1回のみ両議院の議決で会期延長ができる)での冒頭で衆議院と参議院の本会議場で行われる。
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つまり、通常国会の冒頭において、内閣総理大臣が内閣全体での方針や重点課題を説明する演説を「施政方針演説」と呼ぶのに対して、その他の機会(今回の場合は上記の国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合)に、内閣総理大臣の所信(個人としての自分の考え)として、国政についての方針や重点課題を説明する演説を「所信表明演説」とよぶのです。 

6月7日の私のブログ「菅直人新首相は、所信表明演説で『環境問題』について、何を語るか」で、私は、2001年の小泉純一郎首相から、安倍晋太郎首相、福田康夫首相、麻生太郎首相(以上は自民党政権)と民主党政権の鳩山由紀夫前首相の「所信表明演説」とそれに続く「施政方針演説」に期待し、そしてその結果にことごとく失望してきました、と書きました。

6月11日の菅新首相の「所信表明演説」は過去10年間の歴代の首相の「所信表明演説」よりもかなり期待できそうな気がします。また、この所信表明演説の背景として朝日新聞に掲載されたインタビュー記事「新政権 経済政策の課題 上中下」も、従来のインタビュー記事とは内容的にかなりの相違があるように思います。菅新政権の今後あるいは成果をしかるべき時に評価するときの背景資料として役に立ちそうですので、このブログに収録しておきましょう。

今日の朝日新聞によりますと、「菅首相は口述筆記で初稿を作り、その後官邸スタッフが整えた原稿に自身が手を加えるという作業を10回程度くり返した。最後は『おれが全部書く。1時間、時間を作れ』と自ら執務室にこもり、最終稿を書き上げた」のだそうです。

首相の所信表明演説 財政重視 筋道は不透明(朝日新聞 2010年6月12日)



菅首相の所信表明演説の構成は次のようになっています。
1.はじめに
2.改革の続行-戦後行政の大掃除の本格実施
3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し
4.責任感に立脚した外交・安全保障政策
5.むすび

私の関心事である環境分野の記述は2カ所あります。歴代の首相の「所信表明演説」よりも格段の期待が持てそうな記述です。一つは「3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し」のところで、次のように書かれています。

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第1の「グリーン・イノベーション」には、鳩山前総理が積極的に取り組まれ、2020年における温室効果ガスの25%削減目標を掲げた地球温暖化対策も含まれます。その他にも、生物多様性の維持や、人間に不可欠な「水」にかかわる産業など、期待される分野は数多く存在し、その向こうには巨大な需要が広がっています。運輸部門や生活関連部門、原子力産業を含むエネルギー部門、さらには、まちづくりの分野で新技術の開発や新事業の展開が期待されます。
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もう一つは「4.責任感に立脚した外交・安全保障政策」のところで、次のように書かれています。

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我が国は、地球規模の課題についても積極的な役割を果たしていきます。気候変動問題についてはCOP16に向けて、すべての主要国による、公平かつ実効的な枠組みを構築すべく、米国、EU、国連などとも連携しながら、国際交渉を主導します。この秋、愛知県名古屋市で開催されるCOP10では、生物の多様性を守る国際的な取り組みを先進させます。
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菅首相の「所信表明演説」(全文) 朝日新聞 2010年6月12日


また、朝日新聞は、6月10日から12日まで、菅新首相の経済政策に関連して「新政権経済政策の課題」と題するインタビュー記事を3回掲載しています。これらの記事も首相の「所信表明演説」を理解する助けとなるでしょう。



 

神野さんがおっしゃる「社会正義」 、言いかえれば、「格差是正」や「所得の平等な分配」などの観点などはスウェーデン型福祉国家の骨格をなす価値観です。21世紀にスウェーデンがめざしている「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)の概念でも、次の図に示したように、「社会正義」が明確にうたわれています。



首相の所信表明演説には、「スウェーデン」という言葉は一言も出てきませんが、これらの資料から判断しますと、菅首相は日本の望ましい将来像として、「スウェーデン社会」を念頭においているように思います。そうだとすれば、最近では、あの竹中さんでさえ雑誌のインタビュー記事やご自身の最新の著書で「スウェーデンに学べ」と書いておられますので、37年間日本とスウェーデンの「社会と環境分野」を同時進行でフォローしてきた私にとって、「時代の大きな変化」を強く感じます。

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