環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2011年2月のブログ掲載記事

2011-02-28 22:59:02 | 月別記事一覧
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1.2011年2月のブログ掲載記事

2.低炭素社会:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-27)

3.地球サミット20年:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-26)

4.オゾン層保護:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-22)

5.動物福祉:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-17)

6.酸性雨汚染 地球を巡る:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-11)

7.地球サミット 新時代の号砲:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-04)

8.再び、「あべこべの国」 日本とスウェーデン(2011-02-01)



低炭素社会:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-27 18:17:45 | Weblog
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一昨日、2月24日の朝日新聞夕刊の「えこ事記 地球環境 4」のとなりに、日本の2050年頃をイメージさせる「低炭素社会 五つのシナリオ」という大きな記事がありました。この記事に示されているのは、中央環境審議会の中長期ロードマップ小委員会が作成した「40年後の日本の姿、つまり2050年の日本の姿を描いた五つのシナリオ」なのだそうです。

この記事のリードの部分には、「温室効果ガスを極力出さない『低炭素社会』を進めると、どうなるのか。原子力発電が増えて電気自動車も普及した便利な社会、少し不便でも自然の恵みを享受したゆったりとした生活-。目指す姿への議論を深めようと、環境省は2050年の『低炭素社会』の五つのシナリオを描いた。温暖化効果ガスを8割減らした社会とは。」とありますが、「私の環境論」に基づいて、日本の2011年2月27日現在から2050年を展望すると、私には極めて現実感のない、違和感のある面白いシナリオです。しかし、将来の議論のために保存しておく価値はありそうです。

私の違和感の元となっている基本認識を、このブログ内の関連記事から集め、この五つのシナリオに対するとりあえずのリアクションとしましょう。皆さんが「日本の将来」を考えるときにも、以下の関連記事は議論の手がかりとしてきっと役立つと思います。

このブログ内の関連記事
「現行の経済成長」は50年後も可能か?(2007-02-23)

2050年の世界をイメージするマクロ指標(2007-02-24)

2050年までの主な制約条件(2007-02-25)

再び「現行の経済成長」は50年後も可能か?(2007-03-09)

生産条件 資源からの制約(2007-03-10)

「新しい経済発展の道」をめざして (2007-03-11) 

「経済成長」は最も重要な目標か(2007-03-19)


では、この記事をご覧下さい。

この記事には、「中央環境審議会が五つのシナリオを作ったのは、温暖化対策をめぐる議論が混乱しがちだからだ。同じ『低炭素社会』を目指すとしながら、人によってイメージしているものが違う。『ものづくりを国内で続ける』『経済成長は目指さない』といった前提が共有されていなければ、話がかみ合わない」とありますので、日本の「低炭素社会」という概念は「温暖化対策」に特化した用語であることが理解できます。 

このブログ内の関連記事
2007年10月1日の福田新首相の所信表明演説 なんと「持続可能社会」が4回も登場(2007-10-02)

持続可能な社会、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、 これらを組み合わせた社会とは何だろう?(2007-10-24)

混迷する日本⑥ 福田首相の変心? 「持続可能社会」から「低炭素社会」へ転換(2008-01-20)

低炭素社会は日本の政治主導による「持続可能な社会」の矮小化か?(2009-01-12)

日本で「低炭素社会」の旗振り役を担っている西岡秀三さんは 『日刊 温暖化新聞』に2009年1月6日、「産業革命をリセットする 低炭素世界の到来」 と題する考えを投稿し、その中で、「道筋はバックキャストで」という見出しの下に、「低炭素社会の行き先は持続可能な社会である」と書いておられます。それならば、西岡さんのお考えは私にも十分理解できます。でも・・・・・  

西岡さんのお考えでは、まず「低炭素社会」に(2050年頃?)到達してから、次に「持続可能な社会」をめざすということのようですが、これでは本来の目標である「持続可能な社会」の実現はほとんど絶望的ではないでしょうか。私の環境論からすれば、時間的な制約を乗り越えられないと思います。私は「低炭素社会」などという言葉よりも、もっと具体的に、まず「持続可能な社会」をめざすという目標を掲げ、そのためには地球温暖化対策が大変重要であると認識し、「地球温暖化対策に真剣に取り組むべきだと思いますが、いかがでしょう。

次の大和総研の報告書は日本の温暖化対策が極めて不十分であることを示しています。

●大和総研 経営戦略研究レポート CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)  日本は環境先進国なのか? 
2008年3月10日

要約
世界銀行が2007年10月に公表した温暖化対策を評価した報告書において、日本は70カ国中62位、先進国では最下位という衝撃的な結果が示された。洞爺湖サミットで環境立国日本を標榜し、世界のリーダーシップをとるのであれば、日本は環境先進国、という思い込みを捨てて積極的かつ大胆な温暖化対策を早急に進める必要がある。


★スウェーデンの状況

スウェーデンでは、 「持続可能な社会」という言葉は政治、行政、企業、学者・研究者、市民などの議論によく登場しますし、長らく政権与党であった社民党の掲げる21世紀前半のビジョンも「エコロジカルに持続可能な社会の構築」です。2007年10月24日のブログを書くに当たって、私がスウェーデン在住でスウェーデン社会の政治、経済、社会に詳しい日本の方に尋ねたところ、スウェーデンでは「低炭素社会」という言葉は目にしたり、耳にしたことはないそうです。マスメディアもこの言葉は使用していないそうです。

1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年で24年が経ちます。この概念は1992年の地球サミット(環境と開発に関する国連会議、UNCED)で採択され、広く国際社会で共有された概念です。スウェーデンは、この国際的な概念を国の政策にまで高めた数少ない国の一つで、この概念に基づいて「持続可能な社会」の実現に具体的な一歩を踏み出した世界初の国です。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家2 なぜスウェーデンに注目するのか:国家の持続可能性ランキング1位はスウェーデン(2007-01-12)

緑の福祉国家3 スウェーデンが考える「持続可能な社会」(2007-01-13)


次の2つの図はスウェーデンが「20世紀の福祉国家(人を大切にする社会)」から 「21世紀の緑の福祉国家(人と環境を大切にする社会)」への移行を図る具体的な行動計画の概要を示したものです。


スウェーデンの環境政策の総合的な目標(ゴール)はスウェーデンが直面している主な環境問題が解決された「エコロジカルに持続可能な社会」を次世代に引き渡すことです。最終目標年次は2020~2025年です。ですから、2011年2月とはその最終目標年次に対しておよそ中間点と言えます。これまでの成果の中から「地球温暖化対策」の成果を示します。順調に推移しているように見えます。後半の10年に期待します。


スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出量の「デカップリング」がさらに明確に(2008-03-16)

次の図は国民1人当たりのCO2の排出量の推移を示したものですが、ここに示した先進国の中で唯一日本だけが京都議定の基準年以降1人当たりのCO2の排出量が増えていることがわかります。


このように、スウェーデンは「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)を実現する要因の一つとして「地球温暖化対策」を捉え、2011年2月現在で好ましい成果をあげているのに対して、日本は 「低炭素社会」 の構築の直接的な目標として「地球温暖化対策」を掲げているにもかかわらず、期待された成果がまったく出ていないのです。

このブログ内の関連記事
「2021年のスウェーデン・プロジェクト」 対 日本の「脱温暖化2050プロジェクト」(2007-10-25)

2021年のスウェーデン   我々はすでに正しい未来の道を選択した(2007-10-26)

希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、 バックキャストが有効だ!(2008-03-30)

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

「経済学者」と「工学者」の見解の相違(2007-12-30)

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン① 「未来社会」の構想(2007-07-20)


フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン② フォアキャストvsバックキャスト(2007-07-21)


フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン③ 21世紀はバックキャストが有効(2007-07-22)




地球サミット20年:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-26 21:38:19 | Weblog
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一昨日、2月24日の朝日新聞夕刊の「えこ事記 地球環境 4」で編集委員の竹内敬二さんが「地球サミット20年 再生へ」と題する記事を書いておられます。4回シリーズの最終回です。記事は1992年の地球サミット(リオデジャネイロで開催)で採択された『生物多様性条約』『気候変動枠組み条約』の20年後の現状に触れ、「市民の環境意識と走り始めたビジネス界が、時代を変えるエンジンになるだろう」と締めくくっています。

まずは、じっくりとこの記事をお読み下さい。




今日は、いわゆる「地球環境問題」という人類史上最大の問題に対する日本とスウェーデンの対応の相違を検証します。

92年の地球サミットから8年経った2000年に、「世界価値観調査」(実施母体:電通総研および余暇開発センター)が行われました。その中に、「環境保護優先意識についての国際比較(経済成長との関係)」という項目があり、非常に興味深い結果が報告されています。日本とスウェーデンはまさにあべこべの様相を呈しています。


この20年間の日本とスウェーデンの「環境問題に対する対応」の相違によって、その結果は20年前よりもさらに大きくなっていると思います。日本は世界に類を見ない健康被害を伴った「公害」を経験し、技術による公害防止には一定の成果を得ましたが、 「環境問題」への対応は十分ではありませんでした。

このブログ内の関連記事
1992年の地球サミット:「環境問題をリードしてきた国」 と 「そうでなかった国」(2007-12-04)

1992年の 「地球サミット」 当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違(2010-09-13)

10月の 「COP10」 議論される2つの主要テーマ 「名古屋ターゲット」 と 「名古屋議定書」(2010-09-12)


その相違は「環境問題に対する基本認識の相違」「その相違に基づくこの分野の法律」に求められます。具体的には、地球サミットの翌年に制定された日本の「1993年の環境基本法」(1967年の「公害対策基本法」から「環境基本法」へ)とスウェーデンの「1998年の環境法典」(1969年の「環境保護法」から「環境法典」へ)の相違です。

このブログ内の関連記事
私の環境論3 矮小化された「日本の環境問題」(2007-01-13)

私の環境論7 「環境問題」は「公害問題」ではない(2007-01-17)

環境問題に対する日本の議論の推移(2007-08-05)

「いわゆる地球環境問題」と「地球規模の環境問題」(2007-08-06)


私は日本の環境基本法の成立に先立って行われた衆議院の公聴会で私の考えを述べる機会を与えられました。


中央公聴会議録(全文):第126回国会 環境委員会公聴会 第1号 平成5年5月13日(木)



そして、環境基本法が成立して、17年経った今、日本とスウェーデンの現状は、幸か不幸か私が想定したとおりの結果となっています。その最も分かり易く、象徴的な具体例が次の図だと思います。

このブログ内の関連記事
スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出量の「デカップリング」がさらに明確に(2008-03-16)

「21世紀型経済の持続性」が現時点でEU内で最も高いと判断されたスウェーデン(2010-08-09)



★日本の状況は

このブログ内の関連記事から
日本の地球温暖化対策 もう一つの視点(2009-12-16)

判断基準の相違③: 「気候変動」への対応(2009-08-13)

判断基準を変えれば、別のシーンが見える、改めて 日本は世界に冠たる「省エネ国家か」?(2009-10-11)


日本がなぜ、「今日の化石賞」を受けるのか? 経済成長、エネルギー消費、CO2の整合性なき政策(2008-12-07)

日本の「温暖化懐疑論」という現象(2)(2008-09-25)

1990年代の「日本の温暖化政策」⑳(最終回) 温暖化対策議論を混乱させた「乾いた雑巾論」(2008-03-07)

1990年代の「日本の温暖化政策」⑲ まとめ(2008-03-06)

1990年代の「日本の温暖化政策」⑰ 90年レベルに抑えるには全家庭1年分の省エネが必要(2008-03-04)

混迷する日本⑩ 世界初の「温暖化防止法」、今月中にも成立! でも、10年前の話(2008-01-24)


「地球温暖化問題」についての世論調査の結果 2つ(2008-01-08)


★スウェーデンの状況は

このブログ内の関連記事から
「気候変動対策」、もう一つの視点(2009-11-15)

1970年代からCO2の削減努力を続けてきたスウェーデン(2009-06-02)


そして、冒頭の竹内さんの記事が伝えるように、国連は、地球サミット20周年を記念して、来年2012年5月14~16日に再びブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「持続可能な開発会議」(リオ+20)を開催する予定です。

オゾン層保護:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-22 14:45:14 | Weblog
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5日前の2月17日の朝日新聞夕刊で編集委員の竹内敬二さんが「代替フロン 温暖化を助長」という記事をお書きになっています。記事は「オゾン層保護は地球環境保全の成功例とされる」という書き出しで始まり、国際社会の対応を概観した上で、「しかし、成功の陰に大問題が横たわっていた」と述べ、日本の対応に言及しています。

何はともあれ、まずは、この記事をじっくりとお読み下さい。




今日は、この記事の流れに沿って、「オゾン層保護」という大問題に対する日本とスウェーデンの対応の相違を検証します。

次の図はフロン類規制の国際動向の概要を示すもので、およそ20年前の1992年に私がまとめたものです。


このブログ内の関連記事から
代替フロンの一つHCFCの規制 途上国で10年前倒し(2007-09-23)

そして、次の図は前の図「フロン類規制の国際動向」のモントリオール議定書による「最初の規制(1995年末までに先進国でのCFCsの生産中止)」に対するスウェーデンと日本の対応の相違を示しています。両国ともモントリオール議定書の規制をクリアーしていますが、スウェーデンは議定書が定めた期限の1年前の1994年末に「製造」の禁止だけでなく、「使用」や「再利用」の禁止に加えて「捨てた場合」の罰金まで独自の規制をかけました。

そして次の記事は、最近、中国が大量の「代替フロン排出国」になっていることを伝えてます。




★日本の状況は

このような国際的な状況を背景に日本の最近の状況を調べてみましょう。次に示す新聞記事は「代替フロンの排出」に対する日本の対応が極めて不十分であることを示しています。

●温室ガス 断熱材も排出源 経産省 新建材の開発も目指す(朝日新聞 2007-02-04)

●代替フロン漏れ 想定の倍 温室ガス排出量 上方修正(朝日新聞 2009-03-21)

●代替フロン 07年度排出量1320万トン 昨年の速報値から倍増(毎日新聞 2009-04-03)

●フロン漏れ 温暖化の脅威 使用・修理中にも放出(朝日新聞 2009-10-02)

●空調・冷凍機の冷媒 脱・代替フロンを加速(日本経済新聞 2010-06-20)

●政府方針 代替フロン対策強化(毎日新聞 2010-07-04)



これらの記事が示唆していることは、いわゆる想定外の事態と言ってもよいかもしれませんが、次の図に示す現状は十分想定されていたものです。その実態にはあきれるばかりです。

日本は2002年10月に「フロン回収破壊法」を施行しました。この法律の対象ガスは「特定フロン(CFCs)」と上記の記事が漏れを指摘している「代替フロン」ですが、対象となる製品は「カーエアコン」、「業務用」および「空調機」のみで、 「スプレー」は対象外です。


そこで、次の記事をご覧下さい。



この記事は7年前の2004年の記事です。冒頭の竹内さんの記事の左上に掲載された写真に、「制汗剤、泡状整髪剤などほとんどのスプレーにフロンガスが使われていた=1988年、東京・銀座」という説明がつけれらています。23年前にほとんどのスプレーで使われていたとされるフロンガスが現在どのような状況にあるかは調べていませんのでわかりません。

しかし、日本では合法的に「温暖化ガスを使用したパソコン用スプレー」が量販店で今なお販売されているのです。同じメーカーが図の右に示した「ノンフロン製品」(成分:DME、CO2)を発売しているにもかかわらずです。合法的とは言え、日本のメーカーや販売店の認識を疑わざるを得ません。


なお、100%HCF-152aガス使用のダストブロアー(図の左側、オレンジ色)には保管及び廃棄上の注意として、「●火気のない屋外で完全にガスを抜いてから、“ガス抜き済み”と表示して、各自治体の分別に従って捨てて下さい」という指示が書かれています。





★スウェーデンの状況

次の図はスウェーデンの「フロンガス(特定フロン:CFCs)に対する規制状況」です。
1987年の「モントリオール議定書」が定めた1995年末までに「先進国での生産を中止する」という規制に対して、スウェーデンはその議定書の期限よりも1年早く、CFCsの全廃をめざす行動計画を立てました。


そして、その結果が先に示した「特定フロン(CFCs)に対する対応」という図です。


スウェーデンの行動計画の最終年の1994年8月、スウェーデン最大の家電メーカーのエレクトロラクス社は、ノンフロン冷蔵庫の販売を開始しました。当時の日本のメーカーはすべて、冷蔵庫の冷媒として代替フロンである「HFC-134a」という温暖化物質を使っていたことに注目して下さい。

このブログ掲載の関連記事
緑の福祉国家18 オゾン層保護への対応 ① (2007-02-05)

緑の福祉国家19 オゾン層保護への対応 ②(2007-02-06)

緑の福祉国家20 オゾン層保護に向けて(2007-02-07)


余談ですが、平成10年(1998年)、当時の日本の環境庁はスウェーデンのエレクトロラクス社の「ノンフロン冷蔵庫」を購入したとホームページで伝えています。

そして、スウェーデンから遅れること8年、2002年になって日本でも松下電器産業(株)からノンフロン冷蔵庫が発売されました。





冒頭の竹内さんの記事によりますと、米国では今年からGEが「ノンフロン冷蔵庫」を発売するのだそうです。スウェーデンの発売から8年遅れて日本が発売、そしてその日本からさらに遅れること9年、つまり、スウェーデンから遅れること17年ということになります。このことは、環境問題の解決は最終的には単なる技術の問題ではなく、「基本認識」と「将来を見通す力」や「倫理観」であることを示唆していると言えるでしょう。決して忘れてはならないことは、日本や米国や中国などの新興国の当該物質の消費量が極めて大きいことです。
 

動物福祉:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-17 19:14:34 | 農業/林業/漁業/食品
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(財団法人)地球・人間環境フォーラムの機関誌『グローバルネット』の最新号(2011年2月号 243号)に、ジャーナリストの吉田光宏さんが「動物福祉に沿う自然の中の飼育~ストレスなくし『命の尊厳』守る」という記事を寄稿しています。この記事は「動物福祉」の国際的な大きな流れと歴史的側面を解説し、最近のEUや国際機関の動向を紹介しています。そのポイントは次の通りです。

①効率優先の工業的畜産がBSE(牛海綿状脳症)を引き起こしたことなどを反省し、家畜の健康維持には動物の福祉が必要という考えからEU(欧州連合)は2006年から「動物福祉5カ年行動計画」を開始し、より快適な飼育環境の整備などを加盟国に求めるなど、確実に動物福祉の取り組みは前進している。
②コーデックス委員会(FAO/WHO合同の国際食品規格員会)は、有機畜産物のガイドラインに動物福祉遵守を盛り込んでいる。

まずは、ご自身でこの記事を読んでみて下さい。

「よろず効果」が創る持続可能な社会
新時代の牛放牧で日本を救おう!
動物福祉に沿う自然の中の飼育~ストレスなくし「命の尊厳」守る
ジャーナリスト 吉田光宏


さて、日本の状況は?、そして、スウェーデンの状況は?

★日本の状況

次の記事は2007年6月22日の朝日新聞に掲載されたものです。現状は「日本の乳牛の半数がいる北海道。尾を短くする『断尾』は、効率優先を象徴する光景だ。尾の付け根から約20センチのところに輪ゴムをはめて約1ヶ月、尾が腐って落ちるのを待つ」いうショッキングな描写から記事は始まります。

★スウェーデンの状況

22年前の1988年に改正された「動物保護法」(1998年、「動物福祉法」に改称)はすでに、ペットだけでなく、家畜の飼養・管理に関する配慮がうたわれています。

スウェーデンは95年1月1日にEUに加盟しました。当時、EUは「動物福祉」に今ほど熱心ではありませんでしたので、次のブログのような状況が生ずることになりました。

このブログ内の関連記事
初めてのトラックバック-その2:家畜の飼養(2007-01-06)

ネット上の関連記事
●スエーデンにおける動物実験の規制

●スウェーデン動物福祉法(The Animal Welfare Act, The Animal Welfare Ordinance)


動物福祉の分野でEUの先を歩んでいたスウェーデンは2001年4月、「動物倫理対策プログラム」を発表し、動物福祉を専門に担当する行政機関の設置を検討しました。その結果、2004年に農業省の行政機関として世界初の「動物福祉庁」(Animal Welfare Agency)が設置されました。

ネット上の関連記事
●Swedish Animal Welfare Agency: Building a governmental authority based on public demands for improved animal welfare

●Hästinventering i Degerfors kommun

日本と違って、スウェーデンは国内外の問題に迅速に対応するために絶えず行政機関の刷新を行なっていますので、行政省や行政庁の廃統合や名称の変更が容易に行われます。2007年、「動物福祉庁」はなくなり、動物福祉庁の所管事項は再び農業庁(Swedish Board of Agriculture)に移管されました。また、以前、動物福祉庁などの行政機関が属していた伝統的な「農業省(Ministry of Agriculture)」は2011年1月1日から英訳名を「Ministry for Rural Affairs」と改称しています。

●The Ministry of Agriculture has become the Ministry for Rural Affairs
The Ministry of Agriculture changed its name to the Ministry for Rural Affairs on January 1, 2011. The website will be updated regularly.

●Ministry for Rural Affairs: To strengthen trust in the future and growth throughout the country


さて、BSE(牛海綿状脳症)についても、スウェーデンの予防対策は見事です。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家54 持続可能な農業・林業④ BSE(牛海綿状脳症)への対応(2007-05-24)

1989年から2010年までのBSEの発生状況はスウェーデンでは1例のみ(2006年)であるのに対し、日本は36例となっています。


また、スウェーデンは1986年に動物の飼料へ抗生物質の添加をヨーロッパで最初に禁止しました。この禁止が後にEUの禁止につながったのです。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家52 持続可能な農業・林業② 抗生物質の使用禁止、家畜の飼養管理(2007-05-22)



酸性雨汚染 地球を巡る:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-11 09:14:18 | Weblog
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2月10日の朝日新聞夕刊に掲載された「えこ事記 地球環境 2」は「酸性雨汚染 地球を巡る」です。この問題でも日本とスウェーデンの間には問題に対する認識や対応に大きな相違があります。まずは、この記事をご覧下さい。


1972年6月、スウェーデンの首都ストックホルムで開催された第1回国連人間環境会議のスウェーデンにとっての重要な論点は「環境の酸性化」でした。長年にわたる大気中の硫黄酸化物濃度のモニタリングの結果から、環境の酸性化の原因がスウェーデン国内の産業活動に起因するというよりもむしろ国外に起因することを突き止め、1968年には、スウェーデン国内での環境の酸性化論争が開始されました。環境の酸性化論争は政府を動かし、その蓄積されたデータをもとにして環境の酸性化防止のために国際協力を求めたわけです。

 スウェーデンの調査によれば、スウェーデンの環境の酸性化の原因と考えられる硫黄酸化物の85~90%、窒素酸化物の70~85%は外国に由来するとされています。スウェーデン国内で発生する窒素酸化物のうち、およそ70%は交通手段(自動車などの交通車両57%、その他、航空機、船舶などの交通手段13%)に起因するということでした。環境の酸性化はスウェーデンが抱える国内最大の環境問題です。

 スウェーデンは1972年の第1回国連人間環境会議の10周年を記念して、1982年にストックホルムで「環境の酸性化に関するストックホルム会議」(1982 Stockholm Conference on the Acidification of the Environment)を開催しました。スウェーデン政府はこの会議のために、当時の知見をまとめた『Acidification: Today and Tomorrow 』と題する230ページを越える報告書を作成し、同会議に提出しました。

 会議後、スウェーデン環境保護庁はこの会議の報告書をまとめ、1983年1月に公表しました。この報告書の末尾の参加者リストには、北欧諸国、米国、英国、東西ドイツ、カナダ、フランス、イタリア、スイスを含む21か国から100人を越える研究者や行政官が名を連ねていますが、日本からの参加者の名は見当りません。

 ところが、翌年の1983年(昭和58年)に、環境庁の「酸性雨調査」に初めて予算がつきますと、日本のかなりの数のマスコミや研究者がスウェーデンの環境の酸性化の取材、調査研究に出かけました。また、世界の環境問題に関する年表の類いが、時々、日本の環境関係の雑誌や本に掲載されていますが、興味深いのはそれらの年表に、この1982年の「環境の酸性化に関するストックホルム会議」の開催を取り上げているものがゼロではありませんが、かなり少ないことです。

 今でこそ、環境の酸性化は日本でも「酸性雨」の名の下に9つの地球環境問題の一つとして取り上げられていますが、わずか1年違いで、日本の“酸性雨に対する関心”がこのように変化したのは大変興味深いものです。毎年500ページを越える日本の環境白書(平成2年度/1990年度版まで)の中で、“便宜上”とは言え、①二酸化硫黄、②二酸化窒素、③一酸化炭素、④炭化水素、⑤浮遊粒子状物質および⑥降下ばいじんなどの汚染物質別の大気汚染状況を環境白書の大気分野の中心的課題と掲げ、「その他の汚染物質対策」というタイトルの下に「酸性雨対策」として1ページ足らずの記述しかなかった日本とスウェーデンの間には環境の酸性化に対する大きな認識の相違があり、この問題に対する取り組みには大きな隔たりがあります。

 スウェーデン国内の最大の環境問題である「環境の酸性」は長期にわたる人間活動の環境への負荷がもたらした現象であり、これまで予測されなかったわけではありません。およそ160年ほど前の1852年には、英国のスミスが「Acid Rain」という表現で、現在の「環境の酸性化」の兆候を警告していましたし、1940年代から60年代にかけて石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の消費量が増大するにつれて、米国、スウェーデンの研究者の研究報告が散見されるようになってきました。

 現在では、160年ほど前に科学者が発した警告が現実化し、環境の酸性化問題は北欧地域だけでなく、その影響や被害を確認出来る状態までになってしまったと言えるでしょう。そして、今、世界は顕在化し、進行しつつある環境の酸性化の防止のために、多額の経費の投入と様々な努力を余儀なくされているのです。




地球サミット 新時代の号砲:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-04 07:14:44 | Weblog
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昨日2月3日の朝日新聞の夕刊から、編集委員の竹内敬二さんによる「えこ事記 地球環境」という4回シリーズの1回目が始まりました。毎週木曜日の夕刊に掲載されるそうです。

国連環境開発会議(UNCED)=地球サミットは、1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された、国連主催の環境と開発に関する国際会議です。「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」「森林原則声明」「環境と開発に関するリオ宣言」(ここで、「持続可能な社会」という考え方が提案されました)や、のちに述べる 「アジェンダ21」などが採択されました。翌年には、地球サミットの合意の実施状況を監視し、報告するために、国連経済社会理事会によって「持続可能な開発委員会」が設立されています。



上の記事で紹介されている1988年のシュワルナゼ・ソ連外相の国連演説「今や地球環境の破壊という脅威に直面し、世界をイデオロギーで分断していた線は消えた。地球を生物圏として見れば国境に意味はない」は大変感動的です。

スウェーデンは1972年の「第1回国連人間環境会議」や82年の「環境の酸性化に関するストックホルム会議」に代表されるような環境問題に関する国際会議を積極的に開催してきました。87年9月の国連総会では、スウェーデンの環境・エネルギー相が「第1回国連人間環境会議」の20周年に当たる1992年に、「他国の同意が得られれば」という条件付きで、スウェーデンは「第2回国連人間環境会議を」開催する必要性とその用意があることを表明し、1988年秋の国連総会でもこの提案をくりかえし表明しました。結局、1992年の第2回の環境に関する国連会議「国連環境開発会議」(後に“地球サミット”と呼ばれる)はブラジルのリオデジャネイロで開催されることに落ち着きました。

1989年10月23日、国連総会の環境に関する全体討議でスウェーデンの環境・エネルギー相は北欧5か国を代表して次のように述べました。
     
①先進工業国は環境にマイナスの影響をおよぼすような生活様式を減ずると共に発展途上国が持続性のある環境にやさしい開発様式を選択できるように、資源を多めに提供する用意があることを示さねばならない。

②「温室効果ガス排出の削減」および「生物学多様性の保護』など数多くの国際的な協定が1992年以前に調印されることを希望する。特に、「生物多様性の保護」という点に関しては、その生物資源を所有し、管理している人々に開発者がどのように補償するのかというルールが必要である。バイオ・テクノロジーの利用は国際的な合意の下に規制されるべきである。

③1992年の国連環境開発会議で、「有害廃棄物の越境移動の規制に関するバーゼル条約」が適切であるかどうかの決定と共に、「国際取り引きされる化学物質に関する情報交換のためのロンドン要綱」を国際条約に変更する必要性を検討すべきである。
  
④エネルギーについては、「一層の有効利用を押し進める政策」と「再生可能な環境にやさしいエネルギー源に転換する政策」の二通りのアプローチが必要である。化石燃料の利用は環境の酸性化の原因になるし、気候に対しても重大な脅威であるが、他のエネルギー源もまた環境に有害な側面を持っている。このことは北欧5か国のうち4か国が「原発の建設をしないこと、あるいは原発プログラムの段階的廃棄」を決定したときの重要な要因であった。


このような国際社会の動きを見てくると、国際的な動向、例えば、一連の「気候変動枠組条約」、「生物多様性条約」、「バーゼル条約」などの締結国会議、WECなどのエネルギー会議などの報道を見るにつけ、スウェーデンの先見性と国際的な発言力の強さを感じます。


竹内さんの記事からは日本の政府代表団が当時どのように、この地球サミットに貢献したかが書かれておりませんので、このブログ内の関連記事を参照することにしましょう。

1992年の地球サミット:「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(2007-12-04)

1992年の 「地球サミット」 当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違(2010-09-13)

1992年の地球サミット以来、「NGO(非政府機関)」という言葉がしばしば大きな国際会議の報道記事の中にみられるようになってきました。これらの記事をみてすぐ気がつくことは、多くの国で、政府の代表とNGOの代表はしばしば意見や立場を異にし、ときには対立していることです。先進工業国、発展途上国を問わず、ほとんどの国でNGOは政府と対立する存在であると考えがちですが、スウェーデンでは政府とNGOの関係は非常に協調的です。

スウェーデンの主要なNGO(通常はNGOよりも「Interest Group」と呼ばれます)は政治的、社会的に大きな影響力を持っており、国の政策決定に参加しています。また、国際会議に送る政府代表団には、通常、政府関連の省庁の代表に加え、NGOの代表が参加しています。

1994年12月に『NGO先進国 スウェーデン』を書かれた国連広報センターの馬橋憲男さんは著書の中で「1992年の国連環境開発会議(地球サミット)へのスウェーデン政府の代表団は総勢26名で、このうち5名は環境NGOの代表だった。また、この種の会議では国連事務局に国別報告書の提出が義務付けられている。スウェーデンでは、この報告書の作成のために「地球サミット国内委員会」が設置されたが、この委員会の委員28名のうち7名がNGOの代表であった。スウェーデンにはNGO大使(Ambassador to NGOs)があり、政府とNGOとの連絡、調整に当たっている。この大使は1974年に外務省に設置された。」と書いておられます。

このブログの最初のほうに、「アジェンダ21」という言葉が登場します。この言葉は地球サミットを象徴する言葉で、「21世紀に向けた人類の行動計画」を示すアジェンダ21が最も重視しているのが地方政府の役割です。おそらく先進工業国の中で最も
地方分権が進んでいると言われるスウェーデンは、ローカルアジェンダ21に取り組む自治体数は92年の地球サミットから4年後の96年にはすべての自治体(288)で取り組まれることになりました。




この記事の冒頭で竹内さんは1992年6月9日の「地球人口推計時計」が54億6684万7920人を示しており、19年後の今、地球人口は約69億2000人になったと、記事を結んでいます。40年後の2050年には約90億人に達するという予測があります。竹内さんは「世界の貧困と格差 なお課題」という項で、「地球サミットが掲げた『持続可能な開発』『環境と経済の両立』という哲学はまだ理想にとどまっている」と書いておられますが、私はスウェーデンでは実現しつつあると見ています。

このブログの関連記事
希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も


「地球環境元年」という言葉があるとすれば、日本にとっての地球環境元年はおそらく1988年で、スウェーデンにとってのそれは国内で環境の酸性化論争が起こった1968年でしょう。ここに、20年の認識上の落差があります。この認識上の落差に基づく行動計画の相違により、両国の環境問題に対する対応は大きく異なり、その結果は、将来、ますます異なったものとなっていくでしょう。



再び、 「あべこべの国」 日本とスウェーデン

2011-02-01 10:54:24 | Weblog
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今年も1月が終わり、今日から2月です。私はこのブログの開設(2007年1月1日)以来4年間、国際社会の様々な分野でなされてきたスウェーデンの行動や政策を、「私の環境論」の立場から見ると普遍性が高いので「混迷する日本の問題解決」のために参考になる、あるいは役立つのではないかと考え、そのような視点から情報を提供してきました。

しかし、日本の状況は改善するどころか、ますます混迷を深めているように思います。いくつかの大学での「私の環境論」を通じて見えてきた学生の反応は、「日本とスウェーデンを比較することによって日本の問題点がはっきり見えてきた。日本の進むべき方向を変えることによって、あるいは判断基準を変えることによって希望が出てくる」というものでした。

判断基準の相違①: ワシントン条約 「クロマグロ禁輸」をモナコ提案、17年前にはスウェーデン提案が(2009-08-11)

判断基準の相違②: 「将来の電源」としての原発(2009-08-12)

判断基準の相違③:「気候変動」への対応(2009-08-13)

判断基準の相違④: なぜ、共通の問題へ対応に落差が生じるのか(2009-08-14)

そこで、今年はしばらく、国際社会における共通問題に対して日本とスウェーデンの考え方や対応の相違など、「相違を意識的に強調する視点」で書いてみようと考えました。このような記述をする私の本意は、何はともあれ、日本が明るい希望のある社会に向かって進んで欲しいからです。

そのようなわけで、今日のタイトルは 「再び、『あべこべの国』 日本とスウェーデン」 としました。“再び”と書き加えたのは、以前、このブログ内で同じタイトルの記事を書いたことがあるからです。


過ぎ去った20世紀も、そして、これから歩む21世紀も日本とスウェーデンは、現在までは多くの分野で「あべこべの国」の様相を呈しているように思います。それは社会に対する「価値観の相違」「将来に対する判断基準の相違」と言ってもよいのかもしれません。

「環境問題スペシャリスト」を肩書(日本で唯一人?)として使用している私がなぜ、このブログで経済や財政、社会の仕組みを取り上げるのかと問われれば、私の環境論では、 「環境問題は、私たちが豊かになるという目的のために行ってきた経済活動の結果、必然的に目的外の結果が蓄積し続けているもの」  、平たく言えば、「昔から環境と経済は切ってもきれない関係にある(識者は90年代中頃から「環境と経済の統合」など言い始めましたが)と考えているからです。

このブログ内の関連記事
日本の「強固な思い込み」が覆される、日本より「大きな政府」スウェーデン、「人」重視で成長(2010-10-19)

今朝の朝日の社説:「人類史上で初の体験」、私の環境論では「環境問題」と「少子高齢化」が・・・・・(2011-01-01)

2つの大問題――「少子・高齢化問題」と「環境問題」、日本社会に求められていることは何か?(2011-01-02)

皆さんは本当にそう思うのですか!(2011-01-03)