環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年5月掲載のブログ

2010-05-31 21:19:37 | 月別記事一覧
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1.2010年5月掲載のブログ(2010-05-31)

2.CO2の中期削減目標:小宮山宏vs武田邦彦  日本経済の近未来:野口悠紀雄vs辛坊次郎+辛坊正記(2010-05-30)

3.「NHK クローズアップ現代:広がる“においビジネス”」、20年前の懸念がついに今(2010-05-21)
 


CO2の中期削減目標:小宮山宏vs武田邦彦  日本経済の近未来:野口悠紀雄vs辛坊次郎+辛坊正記

2010-05-30 23:02:55 | Weblog
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 ついに、大混乱の予兆が見えてきました。日本が抱える2つの大問題「地球温暖化対策としてのCO2の25%削減中期目標」と「日本経済の近未来」に異なる主張を明らかにした今年(2010年1月から5月)発売の最新著書を紹介しましょう。著者はいずれも社会的に大きな影響力を持つ方々なので、ここでは、本の表紙、著者の略歴および目次を紹介し、内容の是非はこのブログの読者の判断にお任せしたいと思います。

このブログのタイトル「小宮山宏 vs 武田邦彦」は小宮山さんと武田さんが同じ土俵の上でバトルを繰り広げたというわけではありません。野口さんと辛坊兄弟の場合も同様です。今年に入ってそれぞれが自己主張をする本を刊行したということです。しかし、それぞれの方の主張の基盤となる認識が対立的なのです。


★地球温暖化対策としてのCO2の25%削減中期目標

それぞれの主張は、鳩山首相が国連で行った演説への評価の「正反対ともいうべき相違」から始まります。


小宮山宏 著 『低炭素社会』 の目次



 小宮山さんは、著書「低炭素社会」の第1章で、2009年9月、ニューヨークで行われた国連気候変動サミットの開会式において、鳩山由紀夫首相が、「2020年までに1990年比で25%の温室効果ガスを削減する」すると宣言したことを日本の「先進国宣言」だと受け止めたと述べています。そして、その発言を、もっとも肯定的に解釈するならば、「これから人類は温暖化の解決にむかう」と、日本がいち早く世界に向けて宣言したと捉えることができると書いておられます。また、鳩山首相の発言は、日本がその長い歴史の中でほぼ初めて「人類の目標づくり、ルールづくりに主体的にコミットする」宣言であったと言える、とおっしゃっておられます。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という組織を積極的に肯定し、「温暖化懐疑論」のほとんどは間違いであるという立場をとっています。


 一方、武田さんは、著書「CO2・25%削減で日本人の年収は半減する」の「まえがき」の結びで、「本書では、この2つのスキャンダル(小澤注:COP15の前に起こった「メール流出事件」と「COP15において開催国デンマークの担当大臣が辞任するという事態」)を詳細に解説し、さらにわが国政府が打ち出した歴史的愚策、『CO2・25%削減』の実態を暴いていくことにする」と書き、鳩山首相の宣言を酷評しています。
 当然のことながら、IPCCには極めて批判的であり、本書の40ページには「さらに、前東大総長を中心として『温暖化に懐疑的な学者を叩く』というおよそ学問とは無関係のヤクザまがいの活動を展開し、反対する学者に東大は『反対できるものならやってみろ』と手紙をだすという有様だった」と書いておられます。
 武田さんの本の「最終章(第10章 ねつ造された「地球の危機」)」は、「精一杯勉強して、科学技術の進歩につながる研究をし、経済を成長させ、意味もなく節約することなく、将来に備えて今こそCO2を出すべきである。CO2排出量におびえず、よりよい未来を実現するべきだ。民主党政権の『CO2・25%削減』に伴う国民負担は、あらゆる点で無意味である」という主張で結ばれているところが、いかにも武田さん的です。


武田邦彦 著 『CO2・25%削減で日本人の年収は半減する』 の目次



 

★日本経済の近未来

 こちらは、このまま事態が経過すれば、「日本経済の近未来は極めて深刻である」という点では著者の意見は一致しています。どこが大きく異なるかと言いますと、「小泉・竹中改革」の評価であると思います。


野口悠紀雄 著 『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』の目次①第1章~第5章

野口悠紀雄 著 『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』の目次②第6章~第8章



 野口さんは著書の244ページで、「潜在成長力」という概念の問題点を次のように指摘しています。

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景気拡大策の根拠付けとして、「潜在成長力」という概念がしばしばつかわれる。「需要が潜在供給能力」を下回っているから、需要を増やすべきだ」という考えである。しかし、この考えには大きな問題がある。なぜなら、そこでいう「供給能力」とは、現在存在する設備を完全利用した場合の生産量だからである。この概念を根拠として需要を拡大するのは、「現在存在する過剰設備を廃棄せず、それに見合う需要を探し出す」という考えにほかならない。
しかし、そうした発想からは脱却する必要がある。「生産能力を所与として販売を拡大する」というビジネスモデルは、もう継続できないのである。輸出や生産がピーク時から二割程度減少した状態が今後も引き続くと考え、その状況に対応できるように、日本の産業構造を基本から転換させる必要がある。
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 一方、辛坊さんらは、著書の「第3章 日本沈没を食い止めた小泉・竹中改革」で示されているように、小泉・竹中改革をはっきりと支持していますが、私の認識では、竹中さんの主張「サプライ・サイド政策」がまさに、野口さんのおっしゃる「潜在成長力」という概念だったと思うのです。竹中さんは当時、日本経済の「潜在成長力」はおよそ2%で、毎年2%成長すると、35年で所得水準が2倍になることをいみしている(1.02の35乗は2になる)、つまりおおむね1世代、つまり親から子どもの世代にかけて、生活水準を2倍にできるという「夢のある経済」なのである、と言っていた(著書「経世済民 経済戦略会議の180日」(ダイヤモンド社 p131~132 1999年3月)。




辛坊次郎・辛坊正記 著 『日本経済の真実 ある日、この国は破産します』の目次① 第1章~第2章 

辛坊次郎・辛坊正記 著 『日本経済の真実 ある日、この国は破産します』の目次② 第3章~第4章






「NHK クローズアップ現代:広がる“においビジネス”」、20年前の懸念がついに今

2010-05-21 11:17:03 | 化学物質/アスベスト
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 試しに、「においビジネス」をグーグルで検索してみました。5,370,000件がヒットしました。「香りビジネス」では4,250,000件がヒットしました。

 3日前の5月18日(火)に放映された「NHKクローブアップ現代:広がる“においビジネス”」を見て、20年前の状況を思い出しました。そして、ついに、「ここまできたか」というのが印象です。今日はこの懸念を紹介しましよう。

20年前の“においビジネス”に対する私の懸念が、幸いにも1992年に刊行された私の最初の本「いま、環境エネルギー問題を考える」(ダイヤモンド社 1992年)の169~170ページに収録されています。その懸念は、20年後の今改めて読んでも、違和感はまったく違和感がありません。むしろ、3日前の「NHKクローブアップ現代」を見た直後の感想だと言っても通用するのではないかと、私自身は思っています。皆さんの判断はいかがでしょうか。

 ここで、20年前の私の懸念を紹介しておきましょう。

 
 ご覧にならなかった方のために、まず、NHKクローブアップ現代のホームページから「内容」を紹介します。

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消費不況が続く中、従来の視覚や聴覚ではなく、嗅覚に訴えかけるビジネスに注目が高まっている。大手の航空会社や自動車メーカー、さらに、進学塾やパチンコ店まで、幅広い業種がにおいを活用して、イメージアップや販売促進を狙っているのだ。こうした“においビジネス”を可能にしたのは、記憶力を高めたり、禁煙を手助けする効果があるとされる“機能性アロマ”や、10時間以上も香りを長続きさせる最新の“におい噴霧器”の開発だ。その一方、人工的な香りの氾濫によって、日本人がもつ繊細な“香り文化”が失われているのではないか、自然のかすかなにおいを教える必要があるのではないかという専門家の指摘もある。いま急速に広がりつつある“においビジネス”とどう付き合えばいいのか考える。
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 番組の前半では、環境にやさしい企業のイメージづくりや、モノが余っている中でいかに売り上げをアップするか、販売促進をするか、他社との競争を有利にするための戦略としての“においビジネス”の事例が紹介されています。

 番組の後半では、米国シカゴのカジノで柑橘系のにおいを室内に流すことによって、客が居心地よく、気分が高揚して長居をした結果、53%の売り上げ増につながった例が紹介されていましたし、シカゴのカジノで用いられた柑橘系のにおいを流しているパチンコ店がすでに日本にもあるとのことでした。

 米国シカゴのカジノや、それをまねた日本のパチンコ店の実例は、言葉は適切でないかもしれないが、まさに「人体実験」ではないでしょうか。この20年間に、日本では低濃度の化学物質の暴露により、数多くの「化学物質過敏症」「化学物質アレルギー」などの症状や「シックハウス症候群」など新築マンションにかかわる不都合が報告されています。このあたりについて、国谷キャスターとゲストの坂井信之さん(神戸松蔭女子学院大学准教授)の認識を拾っておきましょう。

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●ビジネス戦略や生活製品の一部として、いつのまにか鼻や皮膚を通して人工的な香りをかがされることで、健康への影響など心配はないのか?
そこが今、問題だとは思うんですけれども。まだ、人間が人工的な香料をかぎ始めてそれほど長い時間がたっていないということから、実際にそのような被害があるかどうか、まだよくわからないというのが現状です。それから、においの種類というのは、膨大にありますので、例えば食品添加物のように、このリストの中から使いなさいというような(安全)リストを作るのには、かなりな労力が必要なんですね。しかも毎日、作られつつあるということですから、なかなかそこの部分は難しいところだと思います。今、そういうところを、各種団体や行政がいろんな試みを行いながら、なんとか解決していこうと、工夫しているところです。
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 この対話に日本が「治療志向国」であることが読み取れるでしょう。また、私の20年前の本の記述からスウェーデンが「予防志向の国」であるということも容易に想像できるはずです。