環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年11月のブログ掲載記事

2010-11-30 17:41:38 | 月別記事一覧
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1.2010年11月のブログ掲載記事(2010-11-30)

2.菅内閣の柳田法相更迭: 改めて思う「建前と本音」という日本社会の伝統的な特質(?)(2010-11-26)


3.日本の20年先を行くスウェーデンの「高レベル放射性廃棄物の処分」の進捗状況(2010-11-21)

4.8年前に 日本の若手国会議員が示した日本の「モデル国家」(2010-11-01)



菅内閣の柳田法相更迭: 改めて思う「建前と本音」という日本社会の伝統的な特質(?)

2010-11-26 05:28:57 | 政治/行政/地方分権
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「前日まで続投に意欲を示していた柳田稔法相が首相官邸で菅直人首相と面会し、発言の責任をとって辞表を提出し、辞表が受理され、辞任した」と、今週の月曜日(11月22日)の夕刊各紙が報じました。私のところに配達された朝日新聞の夕刊の一面トップには「柳田法相を更迭」と見出しがついていましたが、新聞によっては「柳田法相辞任」という見出しもありました。 「更迭」と「辞任」では、かなりニュアンスに差があります。ですから、朝日新聞の夕刊は「今年度補正予算の速やかな成立を図るため、首相が野党の辞任要求を踏まえて事実上、更迭したものだ」という記事となっていたのでしょう。 

ところで、次の図は辞任前に参院予算委員会で自らの発言で謝罪する柳田法相です。写真の神妙さに添えられた発言があまりに明快で、写真と対称的です。


柳田法相がこのような発言をしている場面が幾度となく各局のテレビで放映されていましたので、多くの方はご存じだと思いますが、そこに映っていた法相は、この神妙な謝罪の姿とはまったく別で、喜々としてにこやかに、そして楽しそうに、まるで、漫談のような雰囲気を醸し出していました。問題とされた発言は、広島での大臣就任祝いの会での発言だそうですから、仲間内での本音の発言ということでしょう。ここに、久しぶりに「建前と本音」という日本社会の1つの典型的な現象を見た感があります。「建前と本音」はどこの国にも少なからずある普遍的な現象ではあると思いますが・・・・・


私のこのブログでは、これまでに2回、柳田前法相を取り上げました。17年前に私が衆議院環境委員会の中央公聴会の公述人として柳田さんの質問を受け、それに答えるという機会があったからです。次の2つの記事が当時の中央公聴会の模様と、当時の私の「日本の環境アセスメントに対する認識」についての発言の一端を伝えています。



スウェーデンは「予防志向の国」です。問題が起きてから対処するより、事前に策を講じて、問題を未然に防ごうとする傾向があります。ですから、環境関連法もこれまで、「人間の活動は基本的には汚染活動である」と認識し、「問題を起こす可能性があるものは何か」という予防的視点でつくられてきました。

1969年に制定された環境保護法は「環境に有害な活動」を規制する包括的な法律で、いわば、「環境アセスメント法」とも言うべき性格の法律で、20世紀のスウェーデンの環境法体系の中心をなすものでした。この法律は98年の「環境法典」に統合されました。

一方、スウェーデンの「環境保護法」より2年早くつくられた67年の日本の「公害対策基本法」はその名が示すように、「問題を起こしたものは何か」という治療的視点でつくられ、再発防止が主な目的となっていました。

公害対策基本法の運用により、日本では排煙脱硫装置や排煙脱硝装置のような大気汚染防止装置に代表される終末処理技術(いわゆる「End-of-Pipe Technology」)が非常に発達しましたが、反面、将来の「持続可能な社会」に必要とされるクリーンな生産技術(いわゆる「CP Technology」)の発達には目覚ましいものが見られませんでした。逆に、スウェーデンの環境保護法は「クリーンな生産技術の開発」に大きな貢献をしたのです。

日本とスウェーデンの環境問題を考える際に理解すべきことは、環境問題に対する基本認識の相違とその相違に基づいた法体系により、極論すれば、日本は社会の中に「汚染」をスウェーデンは社会の中に「汚染防止ネットワークのシステム」と「そのシステムを支える技術」を蓄積してきたことです。



そして、1993年の「環境基本法」の成立から遅れること4年、97年にやっと日本でも「環境アセスメント法」が成立することになるのですが、次の記事が示しますように、この成立したばかりの「環境アセスメント法」も国際社会ではすでに出遅れであることがわかります。97年と言えば、その12月に気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が京都で開催され、「京都議定書」が成立した年でしたね。


このブログ内の関連記事
「環境基本法」成立から14年⑩  中央公聴会での質疑応答―その4:柳田議員とのバトル(?)(2007-12-15)

「環境基本法」成立から14年⑪ 中央公聴会での質疑応答を終えた私の感想(20087-12-16)

昨夕、菅改造内閣が発足。 明日はスウェーデンの総選挙:こちらも大接戦(2010-09-18)


この機会に、改めて当時の「環境委員会公聴会議録 第1号」を見てみました。



新たな発見がありました。すでに亡くなられている方もおりますが、私が17年前に議論した菅内閣の柳田 稔さんに加えて、岡崎トミ子さん(現国家公安委員長、消費者・食品安全 少子化・男女共同参画担当相)および高木義明さん(現文部科学相)、つまり、今年9月に発足した菅内閣の3人の閣僚が当時の中央公聴会に環境委員として同席しておられたのです。

なお、この環境委員会の議事録の全文をPDFで読むことができます。ご関心のある方はどうぞ。


       

日本の20年先を行くスウェーデンの「高レベル放射性廃棄物の処分」の進捗状況

2010-11-21 16:21:23 | 原発/エネルギー/資源
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去る9月19日のブログ「今日はスウェーデンの総選挙、ドイツは原発回帰に猛反発デモ」を、私は次のように結びました。

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この機会に、原発を運転すれば必ず排出される「高レベル放射性廃棄物」に対する処分の現状を示しますので、合わせてご覧ください。米国のオバマ政権が2009年に、前政権が決定していた「高レベル放射性廃棄物処分計画」を適切でないとして計画変更を決めましたので、現時点では、最先端を行くフインランドとスウェーデンにフランス、ドイツが続くという構図となっています。

今後も原発推進を続ける方針を明らかにしている日本は、2009年に日本の資源エネルギー庁が作成した次の資料によれば、皆さんの期待に反して(?)、高レベル放射性廃棄物の処分の分野ではスイスやイギリスと共に、中国の後に位置づけられています。日本政府の原子力担当の行政機関である資源エネルギー庁が作成した最新の広報資料ですので、誤りはないでしょう。
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この事実を朝日新聞は、独自の取材によって検証していますので、ご紹介しておきましょう。先ずは、最近の次の3本の記事をご覧ください。

成功に導いた「スウェーデン方式」に、世界の熱い視線が注がれる。もう一つの候補地だったオスカーシャム市の地下研究施設には毎週、海外の政治家や原子力関係者が見学に訪れる。エストハンマル市幹部も毎週のように海外に招かれる。10月には、SKB社の幹部が経済産業省の招きで来日し、講演した。

転機の原子力 廃棄物処分場② 候補地選び、信頼築く道は 街頭調査やシンポで探る(朝日新聞 2010年11月12日)
今年8月、先行するスウェーデンを訪ねた秋葉悦子委員は「時間をかけ信頼関係を築いていくことが大切ではないか.スウェーデンでも時間がかかった。遠回りに見えるが確実な道だと思う」と話す。

転機の原子力 廃棄物処分場③ 数万年の安全、どう確保、公募、地学的特徴を問わず(2010年11月19日)
自治体の自発性を重視した全国一律の公募方式。新たな応募がない状況に、その限界を指摘する声も専門家の間にはある。「例えば、長期に火山の影響を受けにくい地域はある。本来なら、より安定性の高い地域を科学的に示すべきでは」と高橋正樹日本大教授は話す。

転機の原子力 廃棄物処分場④ (最終回) 千年以上先へ 伝える責任 処分 柔軟な手段も議論 (2010年11月26日)
現世代は半世紀近く原子力発電の恩恵を受けてきた。生じた廃棄物は世代を超え残り続ける。未来世代にかかわることを、どこまで現世代で決められるのか。こうした「世代間倫理」は、資源の枯渇や地球温暖化など原発を取り巻く様々な環境問題に共通する。
(注:2010年11月26日に追加)


ところで、最初の記事に書かれていますように、経済産業省資源エネルギー庁は10月にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)の社長とSKBインターナショナル社シニアアドバイザー(元SKB社フォルスマルク事務所長)を招き、東京で「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンにおける対話の取り組み~」と題するシンポジウムを開催しました。このシンポジウムは原発の運転に伴って排出される「高レベル放射性廃棄物」の処理・処分に関するスウェーデンの取り組みをテーマとするシンポジウムで、主催は経済産業省資源エネルギー庁、後援はスウェーデン大使館でした。

実はこのシンポジウムは昨年10月27日に浜離宮朝日ホール・小ホールで開催されたシンポジウム「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンの取組から学ぶ~」(主催:経済産業省資源エネルギー庁、後援:スウェーデン大使館)の続編でした。

今回のシンポジウムのプログラムは次の通りです。



第1部 基調講演
    わが国の地層処分事業について
    苗村公嗣(資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室長)    
    15枚のスライドを用いたプレゼンテーション「高レベル放射性廃棄物と地層処分について」

    サイト選定と理解促進の取り組みにおけるマネージメント戦略
    クラース・テーゲシュトローム(SKB社 社長)
    45枚のスライドを用いたプレゼンテーション

    地域社会における地層処分事業への関心喚起と信頼構築
    カイ・アールボム(SKBインターナショナル社 シニアアドバイザー)
    56枚のスライドを用いたプレゼンテーション

第2部 パネルディスカッション
論点1 信頼の構築

論点2 共生のための対話

論点3 メディアとの対話、反対派との対話


このシンポジウムに参加した私の推定では参加者はおよそ300人、会場は満席でした。私はスウェーデン大使館勤務の時から現在に至るまで35年以上、日本とスウェーデンの原子力行政をウオッチしてきましたので、第1部の基調講演についてはまったく違和感はありませんでした。

ところが、非常に違和感を覚えたのは第2部のパネルディスカッションです。前出の朝日の記事(2010年11月12日)に登場する苗村公嗣さん、秋庭悦子さんらが参加したパネルディスカッションは「論点1 信頼の構築」、「論点2 共生の為の対話」および「論点3 メディアとの対話、反対はとの対話」の3つの論点に沿って粛々と行われ、終始、日本のパネリストが質問を発し、それにスウェーデンのパネリストが答えるという一問一答の形で進められましたので、わかりやすく、それなりに良い成果が得られたと思います。

しかし、私が驚いたのは、パネリストによる日本側とスウェーデン側の質疑応答が終わった後、コーディネーターがフロアーからの質問を求めたのに対し およそ300人の参加者からはまったく質問が無く(ゼロ)、会場が一時しーんとした静寂に包まれたことです。参加者には原子力関係者も相当数いたはずですが、まったく発言がなかったのはどういうことなのでしょうか。このような場面は、私が環境論を講じているマンモス大学では、時々見かける現象ですが、多くが社会人の参加者と見られる今回のシンポジウムはその意味では異様な感じがしました。


関連記事
スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物(NUMO)

スウェーデン資料(NUMO)


今日のまとめとして、11月12日の朝日新聞の記事に掲載されていた図「高レベル放射性廃棄物処分の流れ」、このシンポジウムで配付された資料の中から、今日のテーマに関連する図2点「諸外国における放射性廃棄物の地層処分の状況」と「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」を抜き出して、ここに掲載します。





これら3枚の図が示唆していることは、日本の高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況が、フィンランドやスウェーデンよりもおよそ20年遅れ 、スイスや英国と共に、中国より後に位置づけれらていることです。 つまり、日本は原発推進には熱心ですが、原発推進の結果必然的に生ずる「高レベル放射性廃棄物の処分」は原発利用国の中で極めて遅れていることです。なお、米国は上の図「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」では、最先端を走っていたようですが、図中の「*5」が示すように、ユッカマウンテン計画を2009年に撤回しました。


このブログ内の関連記事
日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?(2010-02-17)

雑誌 『WiLL』 にも、「スウェーデンの“高レベル放射性廃棄物”処分を語ろう」 という記事が(2010-02-18)

24年前の今日、スウェーデンのフォーシュマルク原発がチェルノブイリ原子力原発事故を特定(2010-04-27)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

日本の原発も高齢化、そして、「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)

原発を考える ⑤ エネルギーの議論は「入口の議論」だけでなく、「出口の議論」も同時に行う(2007-04-14) 




8年前に 日本の若手国会議員が示した日本の「モデル国家」

2010-11-01 20:55:31 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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10月25日のブログで、現在の日本は「持続可能な社会」を構成する3つの側面、①経済的側面、②社会的側面、③環境的側面のいずれもが不十分で、先進工業国の中で21世紀にめざすべき「持続可能な社会」の実現が極めて困難な国であることが明らかとなりました。

10月31日のブログでは、そのような日本が21世紀のさまざまな問題を解決し、「21世紀に求められる持続可能な社会」をめざすのに、どんな国が日本のモデルとなるかを考え、私はスウェーデンが日本のモデルになりうるという考えを示しました。

ただし、私がここで考えているスウェーデン・モデルというのは、いわゆる「高福祉高負担」として知られている20世紀の「福祉国家」スウェーデンではなく、21世紀の「エコロジカルに持続可能な社会」の構築をめざしている「現在のスウェーデン」の方向性です。



今日のブログでは、日本の若手国会議員が8年前の2002年8月に示した見方(願望?)を紹介しましょう。次の記事をご覧ください。


この記事が報じる「日本がモデルとするべき国」をまとめたのが次の図です。

関連記事
希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!(2008-03-30)

希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)