環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

「保険料」と「給付」のバランス

2007-06-30 03:45:34 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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さて、もう一つの重要な議論は「現役世代が支払う保険料と年金受給世代が受け取る給付のバランス」についてです。

2004年の政府案は、現行の制度のこの部分を修正しようとするものです。現行制度を基本的には変えずに、労使で折半する現役世代が支払う保険料水準を段階的に引き上げる一方、年金受給世代が受け取る給付水準を引き下げることで対応しようというもので、現役世代と年金受給世代の双方に負担を強いるものとなります。
 
しかし、このような対応を今後も繰り返せば、現役世代は支払った保険料に見合うだけの年金給付額を受け取れないのではないか、年金受給世代も年金給付額が段階的に削減されていくのではないかと考えるようになり、公的年金制度への不安と不信がいっそう増大することになるでしょう。
 
2004年6月5日、年金改革関連法案は自民党、公明党が強行採決を行ない、賛成多数で大混乱のうちに可決、成立しました。成立した年金改革法は、政府・与党が「100年持つ制度」といっていた内容とはほど遠いものでした。日本の年金制度が将来、国民に安心感をもたらすか、さらに国民を不安に陥らせるかは、日本の国民の意識と現在の政治的決定にかかっています。



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5月の失業率 日本:3.8%、スウェーデン:3.9%、

2007-06-29 21:03:48 | 経済
 

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総務省が今日29日に、5月の完全失業率は3.8%だったと発表しました。これは9年ぶりに3%台になった4月と同率だったとのことです。



スウェーデンの統計局も6月20日に、同国の5月失業率をHPにアップロードしました。3.9%だったそうです。


両国の5月の失業率はほぼ同じレベルとなりました。実際には失業率の定義が異なるので、細かい数字の比較はあまり意味がありません。 「日本は失業率の計算に自衛隊員を含めているが、米国やドイツは軍人を除いている」と次の記事は書いています。スウェーデンとドイツの比較は可能だと思います。EU内で調整がなされているはずだからです。





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世界の科学研究の動向調査:存在感が薄い日本の「環境分野」

2007-06-29 17:07:28 | Weblog
 

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3日前の6月26日の朝日新聞が科学の欄で、日本、「環境」「宇宙」が手薄という、私には大変納得のいく調査結果を報じています。

●日本は物理学やナノテクノロジー・材料科学の研究で世界をリードしているが、環境・生態学・宇宙科学では存在感が薄いことが、文部科学省科学技術政策研究所が世界の科学研究の動向を調査した「サイエンスマップ」でわかった。

●この調査は米トムソンサイエンティフィック社のデータベースを基に、99~04年の6年間に発行された論文のうち、他の論文での引用数の多さが上位1%という、注目度が高い約4万7千の論文を分析した。

●環境・生態学や宇宙科学の分野では主要論文に占める日本の論文の割合が高い研究領域がなく、社会科学や精神医学・心理学では存在感がほとんどなかった。


私はこの記事を読んで、10数年前のことを思い出しました。

★IPCCへの貢献

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)が各国政府に呼びかけて、気候変動問題に関する科学的な情報を各国政府に提供することを目的に、1988年に設立されたものです。1995年当時1000人以上の科学者とWMOおよびUNEP加盟の約180か国がIPCCの活動に参加していました。

IPCCには次のような作業部会があります。
第1作業部会……科学的評価を行う。
第2作業部会……影響予測評価と対応戦略を行う。
第3作業部会……社会経済、防止策および適応策の費用便益、および将来の排出シナリオを検討する。

第1作業部会は温暖化問題を科学的に評価する最も重要な作業部会ですが、地球温暖化の分野の専門家であられる国立環境研究所の西岡秀三さん は公害対策同友会の月刊誌『資源環境対策』の1992年7月号で「温暖化問題に関して、科学面での日本の国際的貢献はとても十分とは言えない状況にある。その一例として、IPCC第1作業部会報告において引用された論文1200のうち日本からのものは8編に過ぎない ことが示している。このような状況は基礎科学の面で諸外国に遅れていることを示すのみならず、世界との交流の面でも遅れをとっている状況を見せているわけである」と書いておられます。

★日本学術会議の報告書     

また、同じようなことが日本学術会議の報告書でも述べられています。同会議の地球化学宇宙化学研究連絡委員会は「日本における地球化学の研究教育体制の確立について:平成6年6月27日」と題する同委員会報告を公表しました。この報告は、第15期日本学術会議地球化学宇宙化学研究連絡委員会の審議結果をとりまとめたもので、「1 はじめに」の中に次のような記述があります。
      
……地球化学(著者注 “地球科学”ではない)は、生物系の科学と物理系の科学をつなぐ要の位置にあって中心的役割を果たしている。このように地球化学は、学問として重要なものであり、国外では多数の研究者によって押し進められ、その責務を果たしている。ところが、後述するように、日本の現状はこれと全く異なったものである。特に、大学において、地球化学の講座がほとんどなく、地球化学者育成の点で危機的状況に陥っている。この結果が、最近は、研究面にも波及している。例えば、
      
1990年のIPCC(政府間気候問題パネル)の自然環境に関する第1作業部会の報告書中に日本の地球化学の貢献はほとんどみられない。この状況を解消し、地質科学や地球物理学とバランスのとれた地球化学をつくることは、日本における地球科学全体の発展のために必須の条件である。そこで、このような状態になってしまった原因を解析し、それを解消するための方策を提言する。

★学術審議会部会の報告書
 
1995年4月19日付けの日本経済新聞によりますと、文相の諮問機関、学術審議会の地球環境科学部会(部会長・中根千枝東大名誉教授)は18日までに「地球環境科学」研究の推進を求める建議をまとめ、与謝野文相に報告を出したそうです。建議によると、地球環境問題は「限りある自然と人類文明の発展が相いれないという基本的な問題」と指摘。建議ではこのような観点から、地球環境科学を「人類の生存基盤である地球環境の理解を深め、人間活動の影響で損なわれた地球環境の維持・回復に関する諸問題の解決のための総合的・学際的科学」と定義付けた。

とのことですが、何をいまさらという感が拭い切れません。あまりにも、遅すぎると言わざるをえません。それでも、当時 私はこの建議に期待をしたのですが、12年後の6月22日の調査結果を見ますと、やっぱりね!、という思いがしてなりません。

しかも、環境分野で日本の存在感が薄いのは科学研究の分野だけではありません。政治の分野も行政の分野もです。つまり、日本政府自体の関心が薄かったのです。

関連記事

90年代、日本政府の認識が薄かった「人権や環境分野」



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「年金制度の一元化」と「納税者番号制の導入」

2007-06-29 08:49:20 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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日本の年金問題の議論を通じて浮かび上がったキー・ワードは「年金制度の一元化」という問題です。日本の一元化は、サラリーマンは厚生年金、公務員は共済年金、自営業者は国民年金というように職業別に分かれている現行の年金制度を一本化し、全国民が一つの年金制度に入ることを意味しています。

この点に関していえば、スウェーデンの年金制度は1960年の「旧年金制度」の最初から一元化されていました。日本で農家や自営業者を対象とした「国民年金」が誕生し、全国民を対象にした日本の「皆年金制度」が確立したのは61年、つまり、スウェーデンの「旧年金制度」が成立した1年後であったことを思い出してください。スウェーデンで「一般国民年金法」が成立したのは1913年、つまり両国の公的年金制度の歴史には、50年近くの時間的な開きがあります。 

日本の年金制度一元化のためには、自営業者の所得を正確に把握するために、「納税者番号制の導入」のような新たな制度が必要だといわれています。しかし、プライバシーの侵害につながりかねないという懸念も強く、実現の段階には至っていません。

6月23日の朝日新聞によりますと、政府・与党は22日、年金や医療保険、介護保険の個人情報を一元的に管理する「社会保障番号」を11~12年度をめどに導入し、ICチップ入りの「国民サービスカード」(仮称)を全国民に1人1枚ずつ配布する方向で検討を始めたそうです。

スウェーデンでそれに相当するのは「住民番号制度」でしょう。この制度は1968年から実施されており、10桁の統一コードを用いて税務、社会保険、住民管理、各種統計、教育などあらゆる行政機関や民間部門のサービスで幅広く利用されています。スウェーデン中央センターには、国民背番号、氏名、住所から本人や家族の所得額、保有する不動産など広範なデータが記録されています。



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大混乱する日本の年金改革

2007-06-28 07:54:38 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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2003年に入って、日本では新聞や雑誌に年金関連記事が多くなりました。2004年4月には国会で年金改革法案の実質的な審議が始まったので、テレビ番組でも連日のように年金問題がとりあげられました。
 
これらの報道を通して私たちが知ったことは、日本の年金制度が「国民の皆年金制度」を謳っていながら、実際は政治家の年金未納や未加入問題、さらには、年金財源があらぬ使途に費やされていた問題に象徴されるように、構造的に非常に危機的状況にあるという事実と、その解決策としてスウェーデンの年金制度(後日紹介します)が注目されていたことです。
 
年金改革の議論には、 「制度全体をどう設計するか」という議論と「現役世代が支払う保険料と年金受給世代が受け取る給付のバランスをどうするか」という二つの重要な議論があり、2004年4月の国会には政府案と民主党案が提案されました。
 
一つ目の議論である「制度設計の変更」は、政府案ではほとんど示されませんでした。民主党案は2003年に公表した「マニフェスト」に掲載されている「年金将来像――民主党案のイメージ図」と同じものです。これは、外見上、スウェーデンの「旧年金制度」(1960年の「国民付加年金制度」で、99年の新制度の施行により廃止された)によく似た2階建て構造になっています。
 
枝野幸男さん(民主党元政調会長)は、「民主党案が国会で成立した場合に、現行の年金制度が新しい一元化制度に完全に変わるのには、80年くらいかかるのではないかと思います」と述べています(民主統一同盟の機関紙「日本再生」第301号、2004年5月)。ちなみに、スウェーデンの新年金制度が旧制度に完全に置き換わるのは20年です。

民主党案の内容が外見上はともかく、実質的にもスウェーデンが「20世紀の経済成長を前提にした制度で、21世紀の少子・高齢化社会にそぐわない」という理由ですでに廃止した旧年金制度と同じようなものであるなら、民主党案は政府案よりすぐれているかもしれませんが、はたして、日本の「21世紀の持続可能な年金制度」として期待してよいものでしょうか。
 
また、2004年3月25日に放映された「NHKスペシャル――年金③」(再放送)で、笹森清さん(当時連合会長)は、「連合の主張は形からいけば、初期スウェーデン型、基礎年金は税金で、上は所得比例型」だと述べています。民主党案も連合案もおよそ45年前につくられ、1999年に「新年金制度」に置き換えられたスウェーデンの「旧年金制度」と制度設計上、どこがどう違うのでしょうか。



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年金改革行きの「終電車」に乗り遅れた日本!

2007-06-27 06:33:47 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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しかし残念ながら日本では、こうした不安を解消するための、つまり「安心の持続性」を維持するための、有効な対応はなされていないのが現状です。

「年金改革行きの終電車が発車するのは……」という、なんとも意表をついたタイトルの資料が、2004年9月に国際通貨基金(IMF)から出されているのをご存じだろうか、と作家の幸田真音さんは、2005年1月九日付の朝日新聞のコラム「時流自論」で次のように書いています。



このIMFの資料が示していることは、6月24日のブログで示した「最も厳しい状況にある日本」高齢社会への対応策で、米国やスウェーデン、その他の先進工業国に大きく後れをとっているということなのです。



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日本の少子・高齢社会②

2007-06-26 07:14:04 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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先進工業国のなかでスウェーデンと日本は、一見対極にあるように見えますがそれは20世紀後半の現実社会への対応の相違によるものです。60年代に表面化した「高齢化の急激な波」がスウェーデンの「高齢者福祉」を進展させ、1999年には世界が注目する「新公的年金制度」を生み出しました。そして、80年代に表面化した地球規模の環境問題が「緑の福祉国家」への転換を決めたのです。

小泉・前政権が始めた地域限定で規制緩和する「構造改革特区構想」という新しい試みは、袋小路に追い込まれた日本の経済状況を打開する試みであり、うまく機能すれば、それを全国に広げていくというものです。そうであるなら、人口、そして経済規模で神奈川県に相当する、世界の最先端をいくスウェーデンの試みを、日本の総力を集めて検証することは、たいへん意味のあることではないでしょうか。

まず、図をとくとご覧ください。国連は65歳人口が総人口の7%を超えると、「高齢化社会」と定義しています。7%(高齢化社会)から14%(高齢社会)に要した年数は、スウェーデンが85年(1900年にはすでに7%を超えており、14%に突入したのは70年代前半)、日本はわずか24年(7%を超えたのは1970年、14%を超えたのは94年)でした。
 
日本の高齢化人口の割合は90年代前半に米国に追いつき、90年代後半にスウェーデンを追い越しました。そして2007年には20%を上回り、2050年には35%に近づくと予測されていました。
 
ところが、2004年9月の「敬老の日」にちなんで総務省がまとめた9月15日現在の推計によれば、総人口(1億2761万人)に占める全国の65歳以上の高齢者の割合はすでに19.5%(2484万人)で、総人口、高齢者の割合ともに過去最高を更新したそうです。 

2050年のスウェーデンの推定高齢化人口の割合は、30%程度とされています。しかし、スウェーデンは長い準備期間を経て高齢化社会に適応し、高齢社会の前方に明かりが見えてきた国です。日本は短い高齢化社会を経て、十分な準備のないまま長い高齢社会のトンネルに突入したばかりです。そのためか、少子・高齢社会の真っ暗なトンネルの入り口で立ちすくんでいるように見えます。
 
日本の過去数年の調査では、「将来の生活に不安を感じている人の割合」は80%に達しています。2003年6月21日付の朝日新聞や同年9月11日付の読売新聞のアンケート調査では、自分の老後の生活に不安を感じている人が、両紙とも80%弱となっており、2003年10月13日付の毎日新聞の年金調査では、国民の90%が年金の将来に不安を感じている と回答しています。


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日本の少子・高齢社会①

2007-06-25 06:28:12 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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2005年12月22日に厚生労働省が公表した「人口動態統計の年間推計」によりますと、日本の人口は1899年(明治32年)に今の形で統計を取り始めてから初めて、2005年に生まれた子どもの数が死亡者数を1万人下回り、政府の推計より1年早く「人口の自然減」に転ずる見通しとなることが明らかになりました(朝日新聞2005年12月22日付)。
 
5日後の12月27日の閣議で竹中平蔵・総務大臣は、同年10月1日に実施した国勢調査の速報値を報告しました。日本の総人口は1億2775万7000人で、2004年10月時点での推計値の1億2777万6000人より1万9000人減少しました。総人口が前年を下回ったのは戦争の影響を受けた1945年を除いて初めてで、政府の予測より2年早いと報じています(朝日新聞2005年12月27日付)。
 
これらの事実は「少子・高齢化」という先進国共通の社会現象に、日本では新たに「総人口の減少」が加わったこと を示しています。

日本がいま、直面している少子・高齢社会はこれまでに人類が経験したことがないスピードと規模で進んでいます。このような未知の、しかも大規模な21世紀前半の大問題に対して、「日本の経済の活力を低下させないように国民負担率を50%以内に抑える」という90年代の経済目標は、現実への対応という意味から、はたして適切な目標設定といえるのでしょうか。

「国民負担率」とは「国民所得に占める税金と年金・医療・福祉の合計の割合」で、年金など社会保障の財源をめぐる議論にかならず持ち出される指標ですが、国際的にはほとんど使われていない、専門家の間で批判の多い日本独自のものです。ご参考までに、1996年と2007年(見通し)の日本の国民負担率を示します。


 
下の図は文藝春秋(2007年4月特別号)に掲載された「財政再建 特別鼎談 成長なくして財政再建なしの理念で編成された平成19年度予算」に掲載されているものです。鼎談では尾身幸次・財務大臣、西室泰三・財政制度等審議会会長、フリーアナウンサー・酒井ゆきえさんの3人が語り合っています。

1990年の第二次行政改革最終答申が「国民負担率は50%以下をめどにする」と提言して以来、この目標は変わることなく、「日本の社会保障制度の枠組み」を決める際の重要なよりどころとなってきました。2004年6月3日、政府の経済財政諮問会議がまとめた、中期的な政策運営と2005年以降の予算編成の方向を示す「経済財政運営の基本方針」(いわゆる「骨太の方針」第4弾)にも、この目標が90年当時のまま、盛り込まれています。
 

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2つの大問題:「環境問題」と「少子・高齢化問題」

2007-06-24 21:42:23 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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人類の歴史はつねに「経済規模の拡大」の歴史でした。「経済発展(成長)」という概念は、自由主義者や新自由主義者、保守主義者、民族主義者、ファシスト、ナチ、レーニン主義者、スターリン主義者など、イデオロギーにかかわりなく「共通認識」として共有していた考え方で、その必要性については、イデオロギー間にまったく意見の相違がありませんでした。つまり、20世紀には、「経済発展(成長)」は疑問の余地がないほど当然視されていたのです。

これからの50年、私たちは否応なしに人類史上初めて直面する2つの大問題を経験することになるでしょう。一つは「環境問題」で、もう一つは「少子・高齢化問題」です。このことについては、1月3日のブログ「人類史上初めて直面する2つの大問題」 でも触れました。

20世紀後半に明らかになった「環境問題」と「少子・高齢化問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていませんでした。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることができない大問題です。このことは、「経済規模の拡大」を前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになります。「資源・エネルギー・環境問題」が、「これから50年後の社会のあるべき姿はいまの社会をそのまま延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからです。

環境問題解決への具体的な行動は、経済的に見れば地球規模での「経済の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。このことはおよそ半年間かけて検証してきました。

今日からしばらく、もう一つの大問題「少子・高齢化問題」を検証していきましょう。米国を除くすべての先進工業国が共通にかかえる「少子・高齢化問題」から派生する問題のなかでは、周知のようにとりわけ、 「年金制度の持続性」が緊急の課題です。年金はいうまでもなく、生産活動から離れた世代への支払いですから、経済的にはコストでこそあれ、経済発展に寄与する要因ではありません。

サミット参加8カ国(G8)のなかで、 「少子・高齢化問題」の影響をいちばん強く受けるのは、私たちの国、日本であることは明らかです。なぜなら、日本は先進工業国のなかで少子・高齢化の速度がいちばん速く、しかも総人口が減少し始めた国であるにもかかわらず、この大問題への対応がたいへん遅い国だからです。

そして、日本のあらゆる社会的・経済的な仕組みが経済規模の拡大を前提につくられており、21世紀になっても、国の政策は「経済拡大(経済成長)」ばかりを考え、表面的にはさまざまな分野で変化しているように見えても、基本的な法体系や社会制度にほとんど抜本的な変化が見られないからです。

いま、日本に求められているのは、「行き詰まった年金制度」を21世紀の社会の変化に耐えられる「持続可能な年金制度」につくりかえること、そして世界に先駆けて21世紀最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」の解決に道筋をつけ、21世紀前半にめざすべき日本独自の「持続可能な社会」をつくる勇気と強い意志、そしてすばやい行動力です。
 


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「将来不安」こそ、政治の力で解消すべき最大のターゲット

2007-06-23 21:23:21 | Weblog

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90年代後半以降のスウェーデン経済は「GDPの推移」「一般財政収支の対GDP比」「国際競争力」など国際比較の可能な基礎データを見るかぎり、きわめて好調でした。21世紀前半のビジョンである「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)」の社会的側面と位置づけられる「新公的年金制度」がいま、国際的に注目されています。

経済のグローバル化や国際競争の激化が、20世紀後半にそれぞれの国が築いてきた年金制度の前提を変え、制度の維持をきわめて困難にしてきたからです。1999年から始まった新公的制度の特徴は「年金受給世代」に優先権を与えていた「旧制度」とは違って、21世紀の社会を生きる「現役世代」に優先権を与えたことです。

スウェーデンがめざした福祉国家の基本的な考えは「国民に安心感を与えること」、つまり、「不安からの解放」「機会の均等」「連帯」などをよしとする価値観です。安心感とは文字どおり、「不安でないこと」です。たとえば、歳をとれば、財産の有無にかかわらず、誰でも、かならず身体のどこかに障害が起こり、健康に不安を覚えます。けれども、歳をとるということは「予想できる不安」であり、すべての人に共通する問題です。
 
これに対して、「予想できない不安」というものがあります。たとえば、町中を歩いているときに、突然、上から何かが落ちてきて怪我をしたとか、車にはねられたとかいうように、災難や事故に遭うことがあります。そうしたときに、災難や事故に遭った本人はもちろんですが、家族も非常に不安になります。

ですから、私たちが生きていくうえで起こる可能性のあるさまざまな突発事に対して、できるだけ不安が少なくてすむようにというのが、スウェーデンが考える安心感なのです。人間を中心に考えれば「将来不安」こそ政治の力で解消すべき最大の対象であることは間違いありません。

それでは、明日から「少子・高齢化問題」に早い時期に気づき、いち早く21世紀型の年金制度に切り替えたスウェーデンの「新公的年金制度」の概要を紹介しながら、新年金制度が「緑の福祉国家」の社会的側面としてどのように位置づけられているかを考えてみましょう。



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送電線から出る電磁波に対するWHOの「新たな環境保健基準」

2007-06-22 19:12:58 | IT(情報技術)


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6月14日のブログ「電磁波対策の最も進んだ国② 携帯電話」で、技術評論家の剣持一巳さんが1986年に(株)日本評論社から出された著書『ハイテク災害』の「第三章:電磁波にさらされる人体」で、WHOが1981年に加盟各国に勧告した「電磁波に関する環境保健基準」に対する当時の日本の状況を紹介し、次のように書きました。

剣持さんが書いたこの状況は、20年後の今、どのくらい改善されているのでしょうか。ここにはまだ、携帯電話は登場していません。剣持さんの「このまま高度情報化社会が進めば、その社会の電磁波的な環境は、人びとを巨大な電子レンジの中に閉じ込めてゆっくり焼きあげるようなものになっていくであろう」という記述が妙に気になっていました。

なんという偶然か、5日前の私の疑問に対するそのままズバリの答が3日前にもたらされました。6月19日の毎日新聞です。

この記事では、

●WHOが送電線などから出る電磁波について、「新たな環境保健基準」を6月18日に公表し、新基準に基づいて各国に予防策をとるよう勧告したこと、
●経済産業省の原子力安全/保安院が先月、送電線などの電磁波について健康影響を考慮し規制を検討する作業部会を設けたこと、WHOの新基準への対応は今後この部会で検討すること、

が報じられています。この事例も、6月6日のブログ「国際機関への提案が多い国と国際機関からの勧告を受けることが多い国」で書いたように、日本が「治療志向の国」である好例だと思います。



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「アスベスト問題」へのすばやい対応②

2007-06-21 08:03:45 | 化学物質/アスベスト


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ILOの専門家会議でアスベストの職業がんの発生が指摘され、WHOの国際がん研究機関の専門家会議でアスベストの発がん性が指摘されたのがともに1972年で、ILO条約で青石綿の使用禁止が勧告されたのが86年、WHOが青石綿と茶石綿の使用禁止を勧告したのが89年ですから、76年に「青石綿」を法的に全面禁止したスウェーデンの行政的決定は、特筆に値します。

規制の効果を反映して、アスベストによる健康被害の発生は80年代半ば頃までにピークに達し、現在ではほとんど報告されていません。ただし、アスベストが原因とされる中皮腫の潜伏期間は30年以上とされていますので、中皮腫の報告例が年々増える傾向にあるようです。

日本では、1975年に青石綿と白石綿の吹きつけが原則禁止されましたが、青石綿と茶石綿の使用が禁止されたのは95年で、白石綿も含めたアスベストの原則禁止は2004年10月でした。アスベストの全面禁止は2008年の予定だそうです。ここでも、行政の縦割りの弊害が問われます。
 

アスベストにかかわる日本とスウェーデンの行政対応の20年の落差は、大きな社会コストの差となって、21世紀前半の日本社会を直撃することになるでしょう。アスベスト問題は、私の環境論の考え方である「今日の決断が原則的に明日の状況を決めるという経験則」と「環境問題は蓄積性の問題」であることを理解する好例といってもよいでしょう。



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「アスベスト問題」へのすばやい対応①

2007-06-20 07:25:20 | 化学物質/アスベスト


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労働安全衛生分野も、スウェーデンが国際社会から高い評価を受けている分野です。スウェーデンのアスベスト(石綿)使用量は、50年代には5000トン、1965年頃には2000万トンに達しましたが、つぎつぎに規制が強化されましたので、84年には1000トンまで減少し、その後、商業用途は完全に禁止されました。
 
最初のアスベストの行政規制(労働安全衛生庁の指示書)がつくられたのは1964年でした。75年には、労働環境における制限値が決められ、76年には制限値の強化とともに、最も毒性が強いとされる「クロシドライト(青石綿)の使用」が法的に全面禁止されました。 

1986年には、法的な拘束力を持った総合的な規制が始まり、92年にはさらに規制が強化されました。92年の規制は、それまでの知見を集大成した新しい規制で、アスベスト問題を幅広くとらえています。アスベストはさまざまな用途に使われてきたので、建造物を解体するときにどうしたらよいか、粉塵用の安全防具はどうしたらよいか、医学的にどう監視していくかなど、規制の実効性を高める具体的事項が盛り込まれています。このような広範な対応は、「アスベストという物質が人の健康および環境に有害である」という科学的事実を理解すれば、当然のことです。

スウェーデンでは、アスベスト問題は「環境の酸性化(日本では、酸性雨問題)」との関連でも議論されました。環境の酸性化とは、化石燃料の燃焼で生じた、硫黄や窒素の酸化物が環境に与える影響のことです。環境の酸性化の影響で、過去に使われたアスベスト・セメント中のアスベスト繊維が環境中に放出しやすい状況にあることが、科学者の間で指摘されたからです。



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最先端のシックハウス症候群予防

2007-06-19 06:02:39 | 巨大構造物/都市/住環境


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伝染病や栄養不良に起因する過去の病気に代わって、70年代後半頃から喘息、アレルギーやストレスに起因する健康の問題が増える傾向にあります。適切な住居と室内環境の維持が私たちの健康の上からも以前に増して重要となってきました。

スウェーデンは住環境・室内環境の分野でも「予防志向の国」の視点からさまざまな先駆的な試みを行なってきた、最先端をいく国です。80年代には、「Sick Building 」「Healthy Building」あるいは「Indoor Climate」と冠した住環境・室内環境に関する国際会議やシンポジウムを数多く主催してきました。

そこで議論されたテーマはラドン、カビ、アスベスト、ホルムアルデヒドのような化学物質、空調施設など様々です。建材から出る化学物質の健康への影響、気密性の高い住宅での空調施設のあり方など、まさにいま、日本で「シックハウス症候群」と呼ばれたり、あるいは「化学物質過敏症」と称されている問題群の解明と対策でした。

これまで、大気汚染を議論するときには、住宅や事務所の「室内空気の質」はほとんど考慮されてきませんでしたが、現在では、室内空気の質が外部空気の質より劣る場合があることがわかっています。建材、家具、脱臭剤、樟脳やナフタリンのような防虫剤などから発する化学物質、ダスト、たばこの煙、コピー機、燃焼施設からの排気など室内空気の汚染源は様々です。

日本でも、アルミサッシなどの使用や省エネルギー対策の結果として、住宅や事務所の気密性が高まるにつれ、「室内空気の質の問題」が重要になってきましたが、残念なことに、80年当時スウェーデンで開催された専門家会議についての日本の関心はあまり高くありませんでした。当時に比べれば関心は高まったとは言え、日本の状況は国際社会をリードするまでにはいたっていません。
 
スウェーデンがこれらの問題に早めに取り組んだのは、30年前のオイルショックのときの省エネ対策と無縁ではありません。化石燃料の高騰に対応する策の一つとして、空調設備を効率的に機能させて省エネルギーを図ろうとすると、どうしても住宅の気密性が高くなります。そうすると、室内の空気の循環が悪くなり、建材からの化学物質が外に出ていかなくなります。それが、健康に悪い影響を及ぼさないかどうか、いち早く議論していたのです。ここで有効な手段は日本ではあまりポピュラーではない「疫学(Epidemiology)」という学問です。
 
90年代中頃から日本でも「シックハスウス症候群」という言葉がマスメディアに登場し、いまでは社会に定着した感があります。この言葉の広がりと、それへの対策を観察すると、日本がまさに「治療志向の国」であることがよくわかります。それゆえに、住環境・室内環境や労働環境に関する研究も、データの蓄積も、そして、具体的な対応もまた、日本の大変遅れている分野の一つであると言わざるをえません。



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空調と人工の香り②

2007-06-18 05:11:11 | 巨大構造物/都市/住環境


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今日の話は昨日の続きで、20年近く前の話です。

1988年12月6日付けの毎日新聞は「人知れぬ悩み:香りアレルギー、電車やエレベーターで、化粧品の香りだけでかゆくなる人も多い」と題する記事の中で、化粧品会社「アクセーヌ」の事業部長、宮原幹夫さんは「香り商品の代表格である化粧品の場合、10人に1人がアレルギーを起こすが、その原因物質として最も多いのが香料」とおっしゃっています。

「社外から疲れて、本社に帰って来ると、パット感じ、リフレッシュしたような気分になり、一日の生活にリズムがつくような感じ」「香りによる刺激はキー・パンチャーのミス率を減少させることが確認された」「オフィス空間に香りを流してストレス解消に役立てたい」「ショールームに香りを流してイメージアップをはかろう」「会議中にレモンの香りを流すと会議の能率が上がる」などという断片的な情報や一過性の調査結果を基に、次々とこの種の機器やシステムを導入していくところは技術に偏りがちなわが国の大きな問題であろうと思います。 

私は「香り」にある種の治療効果があることを否定するつもりはありませんし、ほのかにかおる香水の効用を否定するものではありませんが、問題なのは空調施設を利用してある意図のもとに化学物質を不特定多数の人々のいる室内に供給するというアイデアです。

私はこのような問題意識を持って、1989年の秋頃からおよそ2年間、「香り」に関する新聞記事を見てきましたが、香りの効用をうたい、香りが快適生活を約束するかのようなPRまがいの記事が次から次へと登場する中で、これらの風潮に疑問を呈した意見はほとんどありませんでした。

私の目にとまったのはわずか2つの記事だけでした。一つは1990年9月2日付けの朝日新聞の「天声人語」で、もう一つは1991年5月10日付けの日本経済新聞に掲載された立教大学教授の北山晴一さんという方のエッセイ「もの観高く…無臭化社会」です。

北山さんは「先日、新聞で大手建設会社がオフィスでのテクノストレスの緩和のために、空調を利用して人工の香りを流すことを開発した、という話を読んだ。これには驚きどころか、恐怖を感じた。人間の感覚の中で最も敏感なきゅう覚を職場で一律に管理しようというのである。こうゆう発想は他の国ならファシズムと呼ばれるだろう」とおっしゃっています。

建設会社にも室内環境の専門家はいるでしょうし、化学会社や化粧品の会社には人工の香料の専門家がいるはずです。また、建築学科を有する大学は数多くありますし、住居学という講座を設けている大学もあります。労働衛生の専門家の中には、空調関係の専門家がいるはずです。厚生省、労働省、建設省の本省あるいはそれらの付属研究機関には空調関係の担当者や専門家がいるはずです。空調関係の企業団体もあります。このような専門家の方々がこうした新しい傾向にほとんど声をあげないのはどうゆうわけなのでしょうか? 

日本は「治療志向の国」なので事故が起こり、犠牲者が出るまでは研究者も行政も腰を上げないというのでしょうか?

今日の話は最初にお断りしたように、20年近く前の話です。人と人との関係、人と機械の関係に加えて、国際競争の激化、労働時間の延長や雇用形態の変化など労働環境は2000年以降さらに厳しさを増しています。家族関係も劣化してきたように感じます。このような現状への対症療法として、癒し系ビジネスやスピリチュアルなビジネスなどを含め、「人の心へアクセスするビジネス」が増えてきていることが気がかりです。



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