環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

10年来の私の懸念:日本の地デジ対策に伴う「アナログTV」の不法投棄

2011-07-23 21:47:35 | 廃棄物
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 明日は日本のテレビ放送が「アナログ」から「デジタル」へ変わる歴史的な日です。

 国の意思による「地上デジタル放送への完全移行」に伴うであろう「アナログTV」の不法投棄問題は私の10年来の懸念でした。マスメディアが報ずる「地上デジタル放送の完全移行」に関するニュースのほとんどは「デジタル化のメリット」と「デジタル化への放送インフラの進捗状況」に関することばかりで、私の懸念である「アナログ・テレビの今後の行方」に関する報道は極めて少なかったと言えるでしょう。

 そうした中、今日の朝日新聞夕刊が一面で次のような記事を掲載しました。


 タイミングの良い記事ではありますが、何とも平坦な危機感の無い記事です。全国的にはどうなのでしょうか。この記事を補う意味で、私のこのブログから関連記事を紹介します。私の10年来の懸念が単なる杞憂であればよいのですが・・・・・


このブログ内の関連記事
IT革命と環境問題 ⑥  放送のデジタル化への懸念(2007-04-06)

「放送のデジタル化」と「ブラウン管テレビの行方」(2007-07-17)

「地デジへの移行」のもう一つの難問 「アナログTVの廃棄物化への対応」に問題はないか!(2010-03-20)


また、スウェーデンでは、社会の仕組みが不法投棄を制度的に抑えていると言えるでしょう。

このブログ内の関連記
緑の福祉国家50 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑭  電気・電子機器に対する製造者責任制度③(2007-05-20)



「地デジへの移行」 のもう一つの難問 「アナログTVの廃棄物化への対応」 に問題はないか!

2010-03-20 20:57:35 | 廃棄物

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2011年7月24日の地上デジタル放送の完全移行までに3月11日で、ちょうど残り500日となったそうです。そこで、今日は私が2000年頃からずっと懸念してきた「地上デジタル放送の完全移行」に必然的に伴う「使用済みの膨大な量のアナログTV受信機への対応」を取り上げてみます。

まず、今朝の朝日新聞に掲載された次の記事をご覧下さい。


10日前の3月11日の朝日新聞には「地デジ移行 まだ難問 あと500日 難視聴地区・ビル陰」という解説記事があり、「地デジ完全移行で必要な対策」と題するわかり易い図が添えられています。

これら2つの記事はいずれも、デジタル放送の導入に対するインフラ整備の話ですが、もう一つの難問である「使用済みの膨大な量のアナログTV受信機への対応」にはまったく触れていません。この大問題への解決は、インフラ整備と並行して着々と進んでいるのでしょうか。

突然ですが、ここで10年前にタイムスリップします。2000年12月1日(金)に、私はNHKラジオ第1放送のスタジオに待機していました。18:20から始まる生放送「ラジオ夕刊」のトーク番組「IT革命と環境負荷」に出演するためです。司会と進行は「ラジオ夕刊」の編集長の吉村秀実さんとパートナーの長谷川尚子さんです。

この日は偶然にも、NHKの「BSデジタル放送開局記念日」で、その意味ではグッドタイミングでした。




12月、クリスマスの月ですから、軽快な「ルドルフ・赤鼻のとなかい」(演奏:ピュア・ハート、フォアストリングス)のリズムに乗って、トーク番組がはじまりました。要旨は次のようです。

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                         ラジオ夕刊 「IT革命と環境負荷」

吉村編集長(司会・進行)
21世紀に向けての日本の経済再生は、「IT革命」こそが起爆剤になると言われ、来年度の予算要求を見ても、まさに「IT関連」ラッシュという感じです。しかし、その一方で「ITならば何でもありか」といった批判も出始めています。

そこで今晩は、元在日本スウェーデン大使館科学担当官(環境・エネルギー問題担当)で、現在、環境問題スペシャリストとして、静岡県立大学などで教鞭をとっておられる小沢徳太郎さんにスタジオにお越しいただき、「IT革命が環境に与える影響」などについてお話を伺います。

小沢さん、ITと言いますと、インフォメーション・テクノロジーの略語で、日本語で言えば、「情報技術」という何の変哲もない言葉になるわけで、初めから「情報技術革命」と言っていたら、こんなブームになっただろうかと思うんですが。

小沢
確かに、ITへの傾倒ぶりは呆れるばかり。
21世紀に向けての日本は今、「現行経済の持続的拡大」を暗黙の前提として、
     ★廃棄物対策としての「循環型社会」
     ★「景気刺激策」や「経済発展の起爆剤」としてのIT(情報技術)革命
などを構想し、ISO14000シリーズに代表されるような“輸入概念による環境対策”を実施しようとしています。
このような状況下で、「メガ・コンペティション」なる言葉と共に、「グローバリゼーション」と「IT革命」が経済学者やエコノミストによってもてはやされています。

吉村編集長
IT革命によって、世の中はどう変わるんでしょうか。

小沢
ITの最大の特徴は、物理的な「距離」とか「時間」を感覚上ほとんどゼロに変えてしまうことにあります。ですから経済学者やエコノミストは、「IT革命を“取引コスト”を限りなくゼロに近づける革命」と理解しています。

しかし、ITというツール(道具、手段)には、相反する2つの特性が混在していて、導入の仕方によっては、異なる効果が誘発されることになります。

★効率化や省資源・省エネ化を促進する可能性を秘めた技術
★モノや人の移動、サービスの増加を助長し、それに伴う資源やエネルギーの消費、環境への人為的な負荷の増大を誘発する可能性が高い技術

長谷川(司会・進行)
経済学者の人たちのIT革命に関する本を読んだり、話を聞いても、経済再生や景気刺激のことばかりで、環境への悪影響など全く触れていませんが。

小沢
IT革命が「景気刺激」や「経済発展」の起爆剤になるのなら、それに伴う資源やエネルギーの消費、環境への悪影響は当然考えなければなりません。

契約や取引、配信、決済などは全てネット上で完結できるから効率化や省エネ化は図ることができますが、「モノの輸送」はネット化することができません。ですから、景気刺激策によって、輸送エネルギーがこれまで以上に増大する可能性があります。

長谷川
日本の経済学者やエコノミストたちは、IT革命によって、今の慢性的な交通渋滞なども解消できると期待しているようですが。

小沢
ETC(電子自動料金収受システム)、VICS(道路交通情報通信システム)、AHS(走行支援道路システム)など、ITS(高度道路交通システム)のような技術体系が物流を効率化したり、交通渋滞を解決する手段など、部分的な「効率化」や「省エネ」は図れるでしょうが、その上限を設定しない限り、モノやサービスのさらなる増加によってその効果が相殺されてしまうことに気付かなければなりません。
  
私達が認識しておかなければならないことは、IT革命がもたらす「電力消費の増大」、「既存の家電製品や電子機器の廃棄物の増加」、また、間接的な「一般廃棄物のさらなる増加」で、「環境負荷の増大」という視点を欠いてはなりません。そして、電力のシステム・ダウンによる社会の様々なリスクや混乱です。

吉村
IT革命は、「景気刺激」とか「経済再生」など、光の部分にばかり焦点が当てられているけれど、物事には全て光だけではなく、影もあるということですね。

小沢
「経済発展」という目標のツール(道具)として導入される限り、「電力消費の増大」、「環境への人為的負荷の増大」を誘発する可能性が高くなります。環境問題を十分に意識した「総合的な経済対策」がとられない限り、環境にやさしい地球など望めません。

「電力をはじめとするエネルギーの総消費量の増減」と「廃棄物の総排出量の増減」をIT革命の新たな指標とすべきだと思います。
  
日本のように、国民の間に「経済の持続的拡大」という暗黙の前提がある社会では、21世紀の社会を論ずる場合には、特に注意が必要です。議論の出発点は、“ゼロ”からではなく、“人や環境が許容限度に近づきつつある現状”から考えるべきです。
  
現行の経済システムの下でデジタル化がいかに進もうとも、21世紀を生きる私たちの「身体の機能」や「自然の営み」は、アナログ的時間に支配されていることを忘れたてはならなりません。ここに、「テクノストレス」が生ずる可能性があるのです。

吉村
ありがとうございました。今晩は「IT革命がもたらす環境への負荷」をテーマに、環境問題スペシャリストの小沢徳太郎さんにお話を伺いました。
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このトーク番組の中で、私は「放送のデジタル化に伴うアナログテレビ受像機(当然のことながらほとんどすべてブラウン管テレビです)の廃棄物問題」に触れました。前述したように、この日は偶然にも、BSデジタル放送開始の記念すべき日でした。

当時は通産省(現在の経産省)の担当官も、環境省の担当官も2001年4月から施行される「家電リサイクル法」への対応に忙しく、「10年先のデジタル化に伴うアナログテレビの廃棄物化」に対する私の疑問に答えられませんでした。あれから10年、現在の経産省や環境省の担当官は「500日後に迫ったこの大問題」をどう考えているのでしょうか。

次の記事は、私が懸念しているこの大問題が未だ解決されていない可能性を示唆していると思います。


 
国が実施する「放送インフラの政策」の変更に必然的に伴う「大量のアナログテレビの廃棄物化」に対して、はたして「国民が安心できる対応策」を、国は用意してくれているのでしょうか?

関連記事
地デジ移行で最大6400万台のアナログテレビが処分--JEITAが予測(2007-03-09)  

IT革命と環境問題 ⑥ 放送のデジタル化への懸念(2007-04-06)

「放送のデジタル化」と「ブラウン管テレビの行方」(2007-07-17)

家電リサイクル アジアへごみ輸出の危険性(2007-07-28)

緑の福祉国家49 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑬ 電気・電子機器に対する製造者責任制度②(2007-05-19) 

緑の福祉国家50 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑭  電気・電子機器に対する製造者責任制度③(2007-05-20)





「首都圏におけるごみゼロ大作戦」  古くて新しい「デポジット制度」 と 「製造者責任制度」

2010-03-14 12:30:32 | 廃棄物

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昨日、NPO法人「町田発・ゼロ・ウェイストの会」が主催した「ワークショップ 首都圏におけるゴミゼロ大作戦」にパネリストとして参加しました。

参加者への配付資料に、次のような主催者の趣旨説明がありました。

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今日わが国では、環境問題に対して関心が高まる中、循環型社会形成に向けて市町村での取り組みが進んでいます。明確なごみゼロ社会への移行は、「ゼロ・ウェイスト宣言」によって実現されますが、初めての宣言が2003年徳島県・上勝町で制定されて以来、福岡県・大木町(2008年)、熊本県水俣市(2009年)がこれに続いています。ゼロ・ウェイストとは、無駄をなくし資源を大切にしながら環境をよくしていこうという考え方です。

「ゼロ・ウェイスト宣言」を制定した上記の自治体は、いずれも人口約3万人以下ですが、42万人を抱える町田市では、2006年から、「ゴミを作らない,燃やさない、埋め立てない」という理念のもとに1年間の大規模な「ごみゼロ市民会議」がおこなわれ、それ以来、ゼロ・ウェイスト社会の実現に向けた多くの取り組みが進んでいます。

21世紀は環境の時代といわれます。日本が環境負荷の少ない持続可能な国に生まれ変わるためにも人口が集中する都市でのごみ政策のあり方を抜本的に見直す必要があります。本ワークショップでは、首都圏において、ごみの削減と資源化をどのように進めるべきか、市民、行政、国の役割は何かなど、ゼロ・ウェイストのまちづくりについて多面的に検討を加え、皆様と一緒に今後の方向を考えたいと思います。

平成22年3月13日
NPO法人 町田発・ゼロ・ウェイストの会
理事長 広瀬 立成
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私のプレゼンテーションのテーマは「廃棄物に対する考え方の相違:日本vsスウェーデン 製造者責任制度の導入」でした。与えられたプレゼンテーションの時間は20分。

私の前に基調報告をされた物理学者の広瀬さんが、ごみ問題にかかわりのある物理学の基本的な法則をお話になりましたので、「広瀬さんがお話になられた物理学の基本法則が理解できれば、廃棄物に対するスウェーデンの考え方は非常にわかりやすく逆に、日本の考え方はわかりにくいのでは・・・」と、日本のゴミ対策に多少の皮肉を込めて、私のプレゼンテーションを始めました。                                 
最初に、次の報道記事を見ていただきました。


私のことを知らない方でも、廃棄物の分野でご活躍中の服部さんのことをご存じの方は多いでしょう。服部さんは行政職員、事業者、学識者と共に、ごみ減量とリサイクルの推進に長く取り組んできたそうです。その服部さんが、家庭から出た空き缶やペットボトルに対する対策としてデポジット制度に注目しているそうです。その制度を導入している国として、スウェーデンの名が出ています。

そこで、次のスライドを見ていただきました。


このスライドはスウェーデンで1984年に導入された「アルミ缶回収システム」の概略を示した図です。その回収率は1990年以降、90%以上となっています。このシステムの導入に当たって、それまで使われていたスチール缶は市場から姿を消し、市場で流通する飲料缶はアルミ缶だけになりました。

1994年からはこのシステムを用いてペットボトルの回収も始まりました。ペットボトルの回収率も現在では90%以上となっています。当初スウェーデンのペットボトルはリユース(再利用)用のペットボトルが主流でしたが、海外からワンウェーのペットボトルが多量に入ってきた結果、数年前からリユース用の厚手のペットボトルは姿を消し、ほとんどがワンウェーのペットボトルになりました。

服部さんが日本でも導入したいとおっしゃる「デポジット制度」は、スウェーデンでは25年以上前に導入され、確実に成果をあげてきたことがおわかりいただけたでしょうか。

関連記事
緑の福祉国家45 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑨ 包装に対する製造者責任制度の成果(2007-05-15)

緑の福祉国家46 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑩ アルミ缶のリサイクル(2007-05-16) 


続いて、次の2枚の図を見ていただきました。





そして、スウェーデンの「廃棄物に対する製造者責任制度」の概要をお話しました。
1.廃棄物に対する製造者責任の必要性
2.1990年代の廃棄物政策
3.スウェーデンの製造者責任制度


時間が限られていましたので、「1994年10月1日に導入された古紙、包装およびタイヤ」、「98年1月1日に導入された自動車」および「2001年7月1日に導入された電気・電子機器」の製造者責任制度のうち、「電気・電子機器」に対する製造者責任制度を説明するとともに、日本の家電リサイクル法の問題点を指摘しました。 

関連記事
緑の福祉国家43 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑦ 導入までの流れのまとめ、基本的な考え方(2007-05-13) 

緑の福祉国家48 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑫ 電気・電子機器に対する製造者責任制度①(2007-05-18)

緑の福祉国家49 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑬ 電気・電子機器に対する製造者責任制度②(2007-05-19) 

緑の福祉国家50 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑭  電気・電子機器に対する製造者責任制度③(2007-05-20)


スウェーデンが「製造者責任制度」(拡大生産者責任とも言う)を導入した1994年、OECDは「拡大生産者責任(EPR)」を検討する委員会を発足させました。この委員会に全額財政的援助をしたのが日本です。しかし、これまで、日本は得られた成果をほとんど活用してきませんでした。スウェーデンOECDの検討結果よりも数年早く類似の制度を導入したことは特筆に値します。


「ゼロ・ウエィストワークショップ  首都圏におけるごみゼロ大作戦」のご案内

2010-01-29 16:24:26 | 廃棄物
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下の図をクリックして下さい。
     

 

今日は、3月13日(土)に開催されるNPO法人 町田発・ゼロ・ウエィストの会主催の催しのご案内です。私もパネリストとして参加します。お問い合わせは、直接、主宰者にお願いします。





関連記事
今日の製品は明日の廃棄物(2007-01-02)

緑の福祉国家37 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入①  今日の製品は、明日の廃棄物(2007-05-07)

「都市鉱山」とは何か?

2008-02-25 17:57:50 | 廃棄物
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今日の「ニュースがわからん!」は「都市鉱山って何?」です。日本の工業製品の中に希少金属が含まれておりますので、それらの廃棄物中にはかなりの希少金属が含まれていることになります。スウェーデンの廃棄物に対する考えである「今日の製品は明日の廃棄物」が理解できれば、このような概念もお分かりいただけるでしょう。




関連記事

生産条件 資源からの制約(07-03-10) 



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ドイツの廃棄物政策を踏襲する日本

2007-10-07 10:48:00 | 廃棄物
  

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問合せ先
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メールgreenwelfarestate@mail.goo.ne.jp  
ウェブ http://blog.goo.ne.jp/greenwelfarestate

 ●関連記事 学習会のご案内(10/5) 


9月30日のブログ「持続可能な社会を目指す国際社会と独自の循環型社会をめざす日本」 で、国際社会がめざす「持続可能な社会」と日本のめざす「循環型社会」は異質なものであると書きました。

この記事の追加として、今日は、日本の廃棄物分野の第一人者と称される同志社大学経済学部教授の郡嶌 孝さん(環境経済学)のお考えの一端を紹介しましょう。2年前の話ですが、日本の「循環型社会形成推進法」の成り立ちについて触れられています。



上の2つの図は、次の資料から抜粋して作成したものです。

海外廃棄物・リサイクル動向セミナー
「遠くて近き環境先進国-ドイツ、近くて遠き環境先進国-韓国」

この資料の中には、スウェーデンに関して次のような記述があります。

スウェーデンでは自然の循環を乱すという点で、有害物質の削減を図り、RoHS(Restriction of certain Hazardous Substances)指令という有害物質に関する規制を決めている。また、そのような有害物質について、事前的に調査をしていくREACH(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals)という法律も定めている。

正しくは、「RoHS指令」も「REACH」も1999年施行の「環境法典(環境コード)」という名の法律の「第14章 化学製品およびバイオテクニカル生物」に定められている規定です。重要なことは、私たちがEUの最新の化学物質政策として理解している「「RoHS指令」や「REACH」のルーツが「スウェーデンの政策」にあるということです。
 

また、余談ですが、日本の「循環型社会形成推進基本法」が成立したのは2000年5月ですが、その前年には次のような報道記事がありました。当時の政策担当者や政治家、そしてこの分野の専門家はこの報道が示唆するドイツの状況を法律成立の前に再調査をしたのでしょうか。郡嶌さんのセミナーが開催されたのは、その5年後の2004年です。では、ドイツの現状はどうなっているのでしょうか。



一転して、今度は日本の状況です。次の記事をご覧ください。どのような予測すれば、この記事にあるような状況になるのでしょうか。


日本の「循環型社会形成推進法」が成立してからすでに7年が経ちました。はたして、現実は、元環境庁地球環境部長・加藤三郎さんが予測した「この法体系(注:循環型社会形成推進法+個別のリサイクル法)を見ると、日本から廃棄物がなくなっていくという印象を受ける。とくに産廃は急速になくなっていくだろう」という状況になっているでしょうか? その答えは、最新の平成19年版「環境・循環型白書」が伝える次の図です。「とくに、産廃は急速になくなっていくだろう」という加藤さんの予測とは反対に、私には事態は悪化しているように見えます。  




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家電リサイクル アジアへごみ輸出の危険性

2007-07-28 16:07:12 | 廃棄物


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今朝の朝日新聞朝刊に、私が永らく懸念していた事態に大変よく答えてくれた意見/主張が掲載されていました。東アジア環境情報発伝所代表の廣瀬稔也(ひろせ としや)さんという方の投稿記事です。

この記事の赤で網をかけた部分を見やすいようにリライトします。そして、関連記事を添えて、コメントに替えます。

●日本で廃棄された廃電気・電子機器製品が中国に流れている。資源回収を目的としたリサイクルの過程で、作業に携わる人やその周囲の人びとの健康被害や環境汚染を引き起こしている。

関連記事
エコロジー的近代化論(環境近代化論) 

 「エコロジー的近代化論」の問題点

●昨年開催された有害廃棄物の越境を規制するバーゼル条約第8回締約国会議でも、この問題が焦点となった。

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私の環境論12 企業の生産条件の劣化

●昨年から家電リサイクル法の改正論議が始まった。私たちも改正に向けて政策提言をしている。これを議論する国の審議会で、毎年各家庭から廃棄されていると推定されるテレビなど廃家電4品目の半数約1100万台が行方不明となり、その1部が中国に流れていることが紹介された。

関連記事
家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入断念

●11年の地上デジタル放送移行で、ブラウン管テレビの大量廃棄が予想される。

関連記事
 「放送のデジタル化」と「ブラウン管テレビの行方」 


●この問題を引き起こすのは、家電リサイクル法対象の4品目だけではない。品目を拡大し、国内リサイクルの体制を作りあげることが必要だ。

関連記事
緑の福祉国家49 電気・電子機器に対する製造者責任制度② 

●数千円するリサイクルの費用を嫌い、行方が確認できない業者に渡してしまう消費者も多い。半分しかない廃家電の回収率を高めるために、現在のリサイクル費用の排出時支払い方式から購入時支払い方式への変更とデポジット(預かり金)制度を提案したい。廃棄時にリサイクル費用が要らず、一部のお金が返金されれば回収率も高まる。

関連記事
家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入断念

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家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入を断念

2007-07-18 22:45:59 | 廃棄物


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昨日、「放送のデジタル化」に伴うブラウン管テレビの行方を取り上げましたが、今日の朝日新聞は、「家電リサイクル法」の見直しが難航している と大きく報じています。


リード部分は次のように書かれています。
●家電4品目のリサイクルを義務付けている家電リサイクル法の見直し作業が難航している。焦点のリサイクル料金の支払い方式をめぐっては、現行の後払いか、それとも前払いにするか、賛否が分かれているからだ。廃家電が同法で定めたルート以外に流れる問題も課題だ。

次の図は上の図を拡大したものです。


朝日の記事に合わせて、今日の日本経済新聞の関連記事を読むと上の朝日新聞の内容をより具体的に知ることができます。



この記事のリードの部分は次のようです。
●経済産業省と環境省は消費者が家電の廃棄時に支払うリサイクル料金について、「前払い方式」の導入を断念する見通しになった。廃棄家電の半数が正式な再処理経路に乗っておらず、前払い方式にすると消費者の「払い損」になりかねないためだ。17日に開いた両省審議会の共同作業部会で現行の後払い方式を維持する意見が大勢を占めた。完全な家電リサイクルからほど遠い現状を追認した形で、両省は違法な処理をした業者に罰則を強化するといった是正策を打ち出す方針だ。

次の図は日本経済新聞の記事の中の図を拡大したもので、家電リサイクル法の対象となる4品目(テレビ、冷蔵・冷凍庫、エアコン、洗濯機)の年間廃棄台数およそ2300万台のうち、小売店からメーカーに還流する正式なルートを経て再処理される数は1160万台にすぎず、およそ半数の1100万台がこのルートに乗っていないこと を示しています。

このような日本の状況をスウェーデンの状況と比較してみますと、この問題でも両国の間にかなりの落差があることがわかります。

参考

電気・電子機器に対する製造者責任制度① 

電気・電子機器に対する製造者責任制度② 

電気・電子機器に対する製造者責任制度③ 

今日の決断が将来を原則的に決める



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 廃棄物に悩む「超輸入大国」日本

2007-03-13 08:46:06 | 廃棄物


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日本で生産活動を続けるには、原材料のおよそ40%とエネルギーの90%以上をつねに海外から輸入しなければならないことは、昨日のブログでお話したとおりです。
 
下の図は平成17年版「循環型社会白書」に掲載されている「日本の物質フロー」(平成14年度)です。

この図には次のような解説つけられています。

我が国の物質フロー(平成14年度)を概観すると、20.7億tの総物質投入量があり、その半分程度の10.4億tが建物や社会インフラなどの形で蓄積されています。また1.4億tが製品等の形で輸出され、4.1億tがエネルギー消費、5.8億tが廃棄物等という形態で環境中に排出されています。循環利用されるのは2.1億tです。これは、総物質投入量の1割に過ぎません。廃棄物・リサイクル問題、地球温暖化問題が我が国社会の構造的・根本的な問題であることが見てとれます。  

この図とその解説から「日本の循環型社会」の概念が、国際社会で語られる「持続可能な社会」の概念とはまったく非なるものであることがご理解いただけるでしょう。循環型白書の内容を見れば、日本の循環型社会という概念は小泉政権が掲げ、安倍政権が引き継いでいる「持続的な経済成長」という政策目標のもとでの「廃棄物対策」にすぎないことが明らかです。

この図から想像できますように、国外から投入された輸入資源は国内で廃棄物、製品、構造物となるのです。そして、スウェーデンの「今日の製品は明日の廃棄物」の標語のとおり、製品は国内で消費され、やがて廃棄物となり、構造物も一定の期間を経て廃棄物化することは、いくら経済学者やエコノミストでも否定できないでしょう。
 
さらにいえば、日本は海外から資源として7.1億トン輸入するために、およそ25億トン強の捨て石、土壌浸食)など海外で環境破壊を続けているのです。 

また、10年前の古い話で恐縮ですが、田口正己さん(立正大学教授)の調査によれば、1997年時点で、日本全国で約950件の廃棄物処分場に関する紛争が発生しており、そのうち、民間の産業廃棄物処分場が約600件を占めているそうです(朝日新聞1998年1月25日付)。

この10年間に、解決されたものあるでしょうが、新たな紛争やトラブルも起こっています。現状はどうなっているのでしょうか。

これらのことから、地球的規模の生産活動の拡大の最大の制約要因は水資源だと思いますが、日本の生産活動の最大の制約要因廃棄物(産業廃棄物+一般廃棄物)だと思います。


今日の製品は明日の廃棄物

2007-01-02 11:43:44 | 廃棄物


岡野守也さん、大井玄さん、それに私の3人が呼びかけ人となって昨年11月19日に鎌倉のお寺で開催したシンポジウム「日本も<緑の福祉国家>にしたい! スウェーデンに学びつつ」を基礎にして、いよいよ「持続可能な緑と福祉の国・日本をつくる会(仮称)」が活動を開始しました。

旗揚げしたばかりの新しいブログで、事務局幹事を務める斉藤さんが新年のご挨拶とともに、家庭ごみの扱いについてご自身の面白いアイデアを披露しています。

斉藤さんのアイデアを読んで、2004年6月8日付の朝日新聞の投書欄に掲載された「家庭ごみ削減 源を断たねば」と題するご意見を思い出しました。このご意見は、廃棄物問題の本質をみごとにとらえていると思います。投稿されたのは当時66歳の無職の方です。



今日の製品は明日の廃棄物(スウェーデン)、「分ければ資源、混ぜればごみ」(日本)という表現に、「経済活動の必然的な結果である廃棄物問題」に対する両国の基本認識と、その認識に基づいた廃棄物政策の違いが端的にあらわれています。

スウェーデンの「今日の製品は、明日の廃棄物」というのは、いくら環境にやさしい製品をつくっても、環境にやさしいからといってその製品を大量に生産し、消費すれば、大量の廃棄物を発生させることになることを意味しています。大量の資源と大量のエネルギーを消費する結果、全体として環境悪化を促進することを示唆しています。
日本では、「分ければ資源、混ぜればごみ」。大量に製品をつくり、消費しても、分別して排出すれば資源となるので、「問題はない」ということになりがちです。

大量生産・大量消費という20世紀型の産業構造を転換させようとしているスウェーデンと、大量生産・大量消費をしても大量リサイクルをすればよいと考えている日本、この二つの国の考え方には大きな違いがあります。

前者は1994年に始まる一連の「廃棄物に対する製造者責任制度」の構築・運用を経て、国際的な考え方である「持続可能な社会の実現」へと向かい、後者は国際的な考え方とは似て非なる「持続的な経済成長」をめざす日本独自の「循環型社会の実現へ」と向かいます。