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スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決

2010-06-22 17:34:13 | 原発/エネルギー/資源
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6月19日付けの朝日新聞(朝刊)が「スウェーデン脱原発を転換 30年ぶり」と題する記事を掲載しました。


今回の報道は、前回(昨年2月6日)の報道に比べれば、かなり記事の内容の正確度が高くなりましたが、前回の日本の全国紙の各報道は日本社会をミスリードしたかもしれないほどのものでした。そこで、私は私の理解したスウェーデンの状況をこのブログにまとめておきました。今回の報道記事と前回の私のブログ記事の両方を合わせて読んでいただければかなり正確に「スウェーデンの原発に対する考え」を理解できるでしょう。

関連記事
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)


同じような趣旨の記事が同日の毎日新聞と讀賣新聞にも掲載されていましたが、日本経済新聞や産経新聞には関連記事がありませんでした。


日本ではなぜか「スウェーデンの脱原発政策」という表現が定着していますが、これは間違いではないものの、ことの本質を表現したものではありません。正しくは「スウェーデンのエネルギー体系転換政策」あるいは「スウェーデンのエネルギー体系修正政策」と呼ぶべきものです。私は20年前の1988年8月10日の朝日新聞の「論壇」(ここをクリック)で、このことを書きましたが、日本の学者も経済人も、一般市民もそして、マスメディアも「スウェーデンのエネルギー政策の本質」が見えず(あるいは、本質を見ず)、日本の関心事である原発だけに注目して、「スウェーデンの脱原発政策」という矮小化した認識で現在まで来てしまいました。

今回の記事は昨年2月6日の報道の続編で、その要点は「原子力と水力からなる現在の電力システム」(日本の発想で言えば“好ましい低炭素型発電システム”)に、今後第3の柱となるべき再生可能エネルギーを導入していく過程で、現在の電力のほぼ半分近くを供給している「既存の原発10基」(このうち4基は70年代に運転開始、すでに40年近く稼働している)のいずれかの更新が将来必要になったときに備えてあらかじめそれらの更新の道を開いておく用意をするというだけのことなのです。

スウェーデンの最初の商業用原子炉はオスカーシャム1号機(1972年運転開始)ですから、これが今後事故なく順調に稼働していけば、運転開始後50年になるのは2020年頃です。ですから、今回の「部分的な原発政策の修正(変更)」という決定が直ちに行動に移されるものではありません。

また、スウェーデンの福祉国家を築き、維持してきた比較第一党の社民党は、96年から20世紀型の「福祉国家」を21世紀型の「緑の福祉国家」へ転換しようと努力してきました。2006年の総選挙では現在の4党連立政権に僅少さで敗れ、下野しましたが、3ヶ月後に迫った9月の総選挙で政権奪還をめざしています。21世紀の「緑の福祉国」の構築」をめざす社民党の綱領には「エネルギーの使用には、環境的な配慮による制約がある。原子力は廃止し低下なければならないし、同時に化石燃料の使用は減少させなければならない。」と明記されています。

つまり、今回の現政権による「原発政策の部分的修正」は原子力の利用期間を延長し、最大10基までという現在の限定枠で既存の原発サイトでの更新を許可する。これにより、現在稼働中の原子炉が技術的および経済的寿命に達したときに、必要であれば、継続的に新設の炉で置き換えることができるようにするということなのです。
  
ですから、スウェーデンは「原発への依存」を今後さらに高めていく方針でもありませんし、ましてや「原発」を地球温暖化問題の解決策として位置づけたわけでもありません。地球温暖化問題の解決策としては「化石燃料の使用を削減する以外に有効な方法がないこと」が既に国民の間で共有されているからです。

スウェーデンの「この高齢化(老朽化)した原発の更新の問題」は、たとえ原発事故が起こらず、安全に運転されていても、これから20年間の「日本の原発推進政策」でも間違いなく再現される大問題です。ですから、今回スウェーデン国会で僅少さ(賛成174 対 反対172)で可決されたスウェーデンの「原発に関する新たな政策」、「原発ルネッサンス」だとか、「地球温暖化対策のために原発推進を!」などという日本の浮かれたお粗末な原発推進議論とは明らかに一線を画すものです。


ご参考までに、30年前の朝日新聞((1980年6月11日))の記事を掲げておきます。





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