環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年12月のブログ掲載記事

2010-12-31 20:38:49 | 月別記事一覧
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1.2010年12月のブログ掲載記事(2010-12-31)

2.もし、“もしドラ”に触発されていなかったら、ドラッカーを誤解したままだった!(2010-12-25)

3.“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その3(2010-12-17)

4.“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その2(2010-12-15)

5.“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」(2010-12-12)


2000年に想定した「このまま行けば、2010年は混乱、2050年は大混乱!?」(今年4月1日から「このまま行けば,2010年混乱、2030年大混乱!?」に修正しました)の2010年があと3時間半を残すだけとなりました。今年の世相を表す漢字としては「暑」が選ばれました。



2010年12月に、ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』が示唆する将来認識と私の将来認識が基本的に共有できることが明確となり、新しい気持ちで新年を迎えることができて身の引き締まる思いがします。

『ネクスト・ソサエティ』のサブタイトル「歴史がみたことのない未来がはじまる」 は、私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」 )を抱えた未来がはじまる」となります。

去りゆく2010年がこれからの「混乱」の始まりであったことはマスメディアが伝える今年のニュースを振り返るだけで十分だと思います。それでは、良いお年を。


もし、“もしドラ”に触発されていなかったら、ドラッカーを誤解したままだった!

2010-12-25 14:55:44 | 社会/合意形成/アクター

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“もしドラ”に触発されて、12月12日、15日、17日の3回にわたって、8年前に読んだドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』の中から私が疑問に思う個所と、共感/賛同できる個所を抜き出して皆さんに紹介しました。ドラッカーは日本のビジネス界に圧倒的な支持を得ていた偉大な経営学者ではありますが、私がこれまでに読んだドラッカーの作品は後にも先にもこの『ネクスト・ソサエティ』だけでした。17日のブログでは、『ネクスト・ソサエティ』を読んだまとめとして、次のように書きました。

xxxxx
この「訳者あとがき」に次のようなメッセージがあります。

しかしいまや、経済が社会を規定するとの思想どころか、経済が経済を規定するとの理論からさえ脱却しなければならない。間もなくやってくるネクスト・ソサエティ(異質の次の社会)においては、経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変えるからである。

このメッセージこそ、ドラッカーが276ページの『ネクスト・ソサエティ』に込めたもっとも重要なメッセージだと思います。この点では私は100%ドラッカーに賛同します。しかし、私がそう考えるのは、環境問題への基本認識が不十分なドラッカーとは大きく違って、経済活動の拡大の目的外の結果の蓄積が今私たちが直面している「環境問題」であり、21世紀の市場経済システムを揺るがす最大の問題である、と考える「私の環境論」に基づくからです。 

ですから、ドラッカーが主張する「ネクスト・ソサエティ」はスウェーデンの国家ビジョンである「20世紀の福祉国家から21世紀の緑の福祉国家への転換」とは方向性が一致しますがドイツの政策の根底にある「エコロジー的近代化論」日本の政策の大前提である「持続的な経済成長」(小泉、安倍、福田、麻生の自民党政権、それに続く鳩山、菅の民主党政権)とは方向性が一致しません。 
xxxxx

20世紀の「福祉国家」(旧スウェーデン・モデル)で強調された「自由」、「平等」、「機会均等」、「平和」、「安全」、「安心感」、「連帯感・協同」および「公正」など8つの主導価値は、21世紀の「緑の福祉国家」(新スウェーデン・モデル)においても引き継がれるべき重要な価値観です。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家3 スウェーデンが考える「持続可能な社会」(2007-01-13)

「大不況」、ドラッカーなら、ケインズなら、ではなくて、現在のスウェーデンに学んでみたら(2009-01-11)


2002年に『ネクスト・ソサエティ』を読んだ私の印象は、「21世紀の社会を議論する上で、環境問題に対するドラッカーの意識は極めて不十分」ということでした。そこで、今日は、ためしに、グーグルに「ドラッカーの環境問題に対する認識」と入力し、クリックしてみました。

すると、予期に反して、約470,000件がヒットしました。そして、大変驚いたことに、約470,000件最初の記事に、なんと「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし・・・とあるではありませんか。この認識は「私の環境論」と見事なくらい一致します。そして、この記事の次の2番目の記事がなんと、私のブログ記事、“もしドラ”が思い出させてくれたドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」でした。

約 474,000 件 (0.22 秒)
検索結果

「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし ...
2010年11月1日 ... ドラッカーは、生態系に対する問題意識と政策は、国境を越えざるをえないという。危機にあるのは、人類の生存 ... 「環境の破壊は地球上いずこで行われようとも、人類全体の問題であり、人類全体に対する脅威であるとの共通の認識が ...
diamond.jp/articles/-/9913 - キャッシュ

“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ ...
2010年12月12日 ... この本に示されたドラッカーの「環境問題に対する基本認識」は、彼が主張する経営学の中では「ほとんど意識されていない」と断じてもよいのではないでしょうか。私の環境論では「環境問題」は、「市場経済が直面する21世紀最大の問題」 ...
blog.goo.ne.jp/.../e/619f8cd8aba33fc0d30582b5b156ae5c - キャッシュ


何だか、とても不思議な気がします。インターネットという無限とも思える空間で、2つの記事がバッタリ出会うとは! まったく信じがたい出来事です。一気にドラッカーとの垣根が取り払われ、濃霧が去ったような気持ちです。検索のキーワードとして別の言葉を入れて検索したり、別の検索エンジンを使っての検索では、このような奇跡は起こらなかったでしょう。

せっかくの与えられた機会ですから、検索の結果ヒットした「約470,000件」の中から、「ドラッカーの環境問題に対する認識」を示す次の記事を紹介します。

●「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし(2010-11-01)

●歴史には文明を分かつ“峠”が存在する その峠が転換期である(2010-11-29)

●ドラッカーの環境意識
ドラッカーの環境意識(1)~分煙スペースはない  

ドラッカーの環境意識(2)~絶えざる創造的破壊  

ドラッカーの環境意識(3)~普遍性を持つ教養人間

●「アジア太平洋文明」とドラッカー

●人を幸せにするのは何か-「脱」経済至上主義のあり方

●ハーバード・ビジネス・レビュー 2009年12月号
 

●ドラッカーのIT経営論 『ネクスト・ソサエティ』を再読する



私は、今、ドラッカーの2002年の作品『ネクスト・ソサエティ』に付けられたサブタイトル「歴史が見たことのない未来がはじまる」の意味するところが理解できたような気がします。私が8年前に偶然手にしたドラッカーのこの1冊が「私の環境論」と基本的な枠組みでほとんど完全なまでに一致することを知り、改めて、ドラッカーの思索の深さにうたれました。そして、私は遅まきながら今日からドラッカーのファンになりました。

今日のブログ上の「奇跡」とも言える事実との出会いは、私にとってすばらしい、そして忘れがたい「2010年のクリスマス・プレゼント」となりました。今年最大の収穫といってもよいでしょう。もし、“もしドラ”に触発されて、このブログを書いていなければ、このようなミラクルは起こらなかったでしょうし、私は「経営学の神様」とも呼ばれているドラッカーを「環境問題」に対する認識が極めて薄い、多くの他の経営学者と同列に評価し、ドラッカーを誤解したまま年を重ねていったことでしょう。その意味で“もしドラ”には感謝でいっぱいです。“もしドラ”ありがとう。




“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その3

2010-12-17 15:02:09 | 社会/合意形成/アクター
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12月12日と15日に、「もしドラ」に摸して、8年前に読んだドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』の中から私が疑問に思う個所と、共感/賛同できる個所を抜き出して皆さんに提供しました。今日は、ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』への私のコメントの3回目(最終回)です。目次をご覧ください。


第Ⅲ部 ビジネス・チャンスに「第4章 資本主義を超えて」があります。この「第4章 資本主義を超えて」(p203~223)はインタビュー記事です。冒頭に、次のように書かれています。

このインタビューは、カリフォルニア州クレアモントの著者の部屋で「ニュー・ パースペクティブ・クォータリー」誌の編集者ネイザン・ガンデルスによって行 われた。著者がテーマを指定し、インタビューアーの原稿に手を入れた。「ニュー・パースペクティブ・クォータリー」誌、1998年春号初出)

「第4章 資本主義を超えて」の小見出しは次のようです。

資本主義のまちがい
市場経済理論の欠陥
資本家の退場
政府とNPO
NPOのベスト・プラクティス
公僕がNPOを破壊する
アジアの社会不安
19世紀型国家の日本    
中国の3つの道
21世紀最大の不安定化要因

この章から「19世紀型国家の日本」「21世紀最大の不安定化要因」がどのように書かれているかを抜き出してみます。


★「日本」は19世紀のヨーロッパ?



★21世紀最大の不安定化要因は少子高齢化

2日前の12月15日の産経新聞が出生率に関する最新の状況を報じています。次の図はその記事に添えられた図です。



ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』には「日本の読者へ」と題するメッセージがあり、著者による「あとがき」がない代わりに、訳者による「訳者あとがき」があります。この本を再読し、「日本の読者へ」と「訳者あとがき」に私が共感/賛同できるポイントが見事に盛り込まれていましたので、両者のコピーを添付しておきます。


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「成長一辺倒」の戦後60年 ①(2007-02-15)

「成長一辺倒」の戦後60年 ② そして、これからも?(2007-02-16)

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21世紀前半社会:ビジョンの相違② 日本のビジョン「持続的な経済成長」(2007-07-26)

「困った状況」が目立つようになってきた日本(2007-11-03)

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混迷する日本②  臨時国会閉会 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(2008-01-16)

混迷する日本⑦ 「日本はもはや経済一流」とは呼べない、太田弘子・経済財政担当相(2008-01-21)



この「訳者あとがき」に次のようなメッセージがあります。

しかしいまや、経済が社会を規定するとの思想どころか、経済が経済を規定するとの理論からさえ脱却しなければならない。間もなくやってくるネクスト・ソサエティ(異質の次の社会)においては、経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変えるからである。

このメッセージこそ、ドラッカーが276ページの『ネクスト・ソサエティ』に込めたもっとも重要なメッセージだと思います。この点では私は100%ドラッカーに賛同します。しかし、私がそう考えるのは、環境問題への基本認識が不十分なドラッカーとは大きく違って、経済活動の拡大の目的外の結果の蓄積が今私たちが直面している「環境問題」であり、21世紀の市場経済システムを揺るがす最大の問題である、と考える「私の環境論」に基づくものです。

ですから、ドラッカーが主張する「ネクスト・ソサエティ」はスウェーデンの国家ビジョンである「20世紀の福祉国家から21世紀の緑の福祉国家への転換」とは一致しますがドイツの政策の根底にある「エコロジー的近代化論」日本の政策の大前提である「持続的な経済成長」(小泉、安倍、福田、麻生の自民党政権、それに続く鳩山、菅の民主党政権)とは一致しません。 

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エコロジー的近代化論(環境近代化論)(2007-03-14)

エコロジー的近代化論の問題点(2007-03-15)

ドイツの環境政策を支えるエコロジー的近代化論(2007-03-16) 

2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説(2007-09-12)

2007年9月10日の安倍首相の所信表明演説 ハイリゲンダム 美しい星50(2007-09-11)


13年前に、日本経済新聞社から「7つの資本主義」という本が刊行されています。

私はこの本を読んでおりませんが、本の内容は「資本主義は一つではない。国の数だけ経済システムは存在する。歴史・文化によってその姿は様々だ。米・英・仏・日・独・オランダ・スウェーデンの七ヶ国を取り上げ、膨大なデータを駆使してその経済システムの特色を解明。 」と非常に魅力的です。ネット上にはこの本に対するかなりの情報があります。参考のために、その中から内容の濃いものを2点紹介しておきましょう。

ネット上の関連記事
●松岡正剛の千夜千冊 281夜 『7つの資本主義』 2001年4月30日

【スウェーデンの資本主義】かつては社会主義と資本主義の間にいたと思われていたスウェーデンだが、実際には「社会品質に関心がある資本主義をつくりたがっている国」だった。「社会が市場をつくるもので、市場が社会をつくるものではない」というこの国の経営者たちの哲学は、アメリカや日本に聞かせたい。

●情報システム学会 メールマガジン 2010.8.25 No.05-05 [12] 情報システムの本質に迫る 第39 回 制約条件としての情報システム

この分類結果から、各国の文化について、次のような特徴を挙げることができる。まず米国は、7 つの項目すべてで、前者側の特質をもっている。対照的に、日本は7 つの項目すべてで後者側の特質をもっている。スウェーデンは、6つの項目で米国と同じ特質をもち、外部基準に関してのみ、日本と同じ特質をもっている。

ここに掲げた「情報システム学会のメールマガジン」ではスウェーデンの資本主義についてかなり詳細に分析されています。それにしても、なぜ、情報システム学会が13年前に刊行された「七つの資本主義(現代企業の比較経営論)」を今年の8月のメールマガジンで取り上げ、とりわけスウェーデンに誌面を割いているのでしょうか?


『もしドラ』旋風に触発されて、改めて8年前のドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」を読んでみると、先進工業国としてスウェーデンと日本はグローバルな市場経済社会の中で、正反対と言ってもよいほど「国民の意識」と「社会の制度」に相違があることがわかります。このことが理解できれば、日本が得意とする(?)そして、こだわりが強い「技術論」では「21世紀の社会の変化」に迅速に対応できないこと がおわかりいただけるでしょう。

このブログ内の関連記事
スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1(2009-01-08) 

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“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」 その2

2010-12-15 17:56:46 | 社会/合意形成/アクター
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今日のブログは、12月12日の“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」の続き(その2)として、12月12日のブログの内容を発展させたものです。ドラッカーの著書「ネクスト・ソサエティ」の表紙をもう一度ご覧ください。


サブタイトルが「歴史がみたことのない未来がはじまる」となっています。このサブタイトルを私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となります。



このブログ内の関連記事
2つの大問題:「環境問題」と「少子・高齢化問題」(2007-06-24)

 
ドラッカーは『ネクスト・ソサエティ』で「2030年の社会」を想定し、対処するための論述を重ねています。「2030年」というのは私がこのブログの左上に掲げ「このまま行けば、2030年は大混乱!?」と想定した年ですし、昨年来日した「成長の限界」の著者の1人デニス・メドウズさんが新たに想定している年でもあります。2002年に出版されたこの本を読んだ当時、私が注目した点を挙げると次①~⑤のようになります。合わせて、スウェーデンがとってきた対応を併記しておきます。 

1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年(2010年)で23年が経ちました。スウェーデンは、この国際的な概念を国の政策にまで高めた数少ない国の一つで、その実現に具体的な一歩を踏み出した「世界初の国」といえるでしょう。

①ドラッカーが「2030年の社会」を想定するときに、資源・エネルギー・環境問題の視点が極めて乏しい。(懸念)

1996年9月17日、当時のペーション首相は施政方針演説で、「スウェーデンはエコロジカルに持続可能性を持った国をつくる推進力となり、そのモデルとなろう。エネルギー、水、各種原材料といった天然資源の、より効率的な利用なくしては、今後の社会の繁栄はあり得ないものである」と述べました。これは、20世紀の「福祉国家」を25年かけて環境に十分配慮した「緑の福祉国家」に転換する決意を述べたものです。

首相がこのビジョンを実現するための転換政策の柱としたのは、「エネルギー体系の転換」「環境関連法の整備や新たな環境税の導入を含めた新政策の実行と具体的目標の設定」「環境にやさしい公共事業」「国際協力」の4項目でした。

スウェーデンはこのビジョンを実現するために「環境の質に関する16の目標」を定めました。目標年次は2020~2025年です。この目標年次はドラッカーが述べた「2030年の社会」と重なります。



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②アメリカでは安全保障が脅かされているときを除いて、最も重要なものは経済であるとされる。日本をはじめ、アメリカ以外の先進国では社会こそもっとも重要である。(共感)

1996年9月17日に当時のペーション首相が行った施政方針演説のなかで、「持続可能な開発」に対するスウェーデンの解釈が明らかになっています。英文では、つぎのように表現されています。

Sustainable development in the broad sense is defined as community development that 〝meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own needs〟.

ここでは「広義の持続可能な開発とは、将来世代が彼らの必要を満たす能力を損なうことなく、現世代の必要を満たす社会の開発」と定義されています。重要なことは「社会の開発」であって、日本が理解したような「経済の開発、経済の発展や経済の成長」ではありません。資源・エネルギーへの配慮を欠いた経済成長は「社会」や「環境」を破壊する可能性が高いからです。
 
偶然にも、スウェーデンの行動は、ドラッカーの「日本をはじめ、アメリカ以外の先進国では社会こそもっとも重要である」という主張と一致していますが、日本は不一致です。スウェーデンの考えが公表されたのは1996年ですから、ドラッカーの主張をスウェーデンが参考にしたとは考えられません。


首相は施政方針演説後の記者会見で「緑の福祉国家の実現を社民党の次期一大プロジェクトにしたい」と語り、「スウェーデンが今後25年のうちに緑の福祉国家のモデル国になることも可能である」との見通しを示しました。ここに、明快なビジョンが見えてきます。 

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③先進国の政府のうち、今日まともに機能しているものはひとつもない。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本のいずれにおいても、国民は政府を尊敬していない。信頼もしていない。あらゆる国で政治家のリーダーシップを求める声が聞かれる。だが、それはまちがった声だ。あらゆるところで問題が起こっているのは、人間に問題があるからではない。システムに問題があるからである。 (共感)

つい最近のことですが、北岡孝義さんという方の『スウェーデンはなぜ強いのか 国家と企業の戦略を探る』(PHP新書681 2010年8月3日 第1版第1刷)という魅力的なタイトルの本に出会い、読んでみました。北岡さんは、この最新著の「終章 スウェーデンから何を学ぶか」を次のように結んでいます。

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④いまでは新しい考えが求められている.この60年間を支配してきた経済理論と経済政策についても同じことが言える。今後25年間、イノベーションと企業家精神がもっとも必要とされているのが政府である。(共感)

次の毎日新聞の「余録」をご覧ください。ドラッカーが主張しているようなことがスウェーデンではすでに行われていることがわかります。



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安倍首相の「イノベーション」 (2007-01-30)



⑤日本の失業率はアメリカやヨーロッパの失業率の算出基準と異なる。(共感)

ドラッカーは日本の失業率について、次のように書いています。



私は常々、国際比較をするときに「対象となる事象」の定義が国によって異なるのではないかと考えてきました。次に示す2001年9月5日の毎日新聞の記事は、ドラッカーの記述を裏付けているように思います。


また、ネット上には、この件について、次のような記事を含めて大量の関連記事がありますが、これらの記事が説明する「失業率の定義」を読んでも、門外漢の私にはその相違がよくわかりません。

●日本の失業率は10%以上!? 各国の失業率定義

●各国の失業者の定義と失業率

重要なことは、それぞれの国の経年変化を重視し、どうしても国際比較をしたいのであれば、「単年度の失業率の国際比較」をするのではなく、「失業率の経年変化の国際比較」をするべきだと思います。理由は簡単です。それぞれの国内では失業率の定義が変化しないからです。




“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」

2010-12-12 12:42:16 | 社会/合意形成/アクター
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このブログの目的は、
日本の困った問題の本質を「私の環境論」を通して理解し、その具体的な解決法のヒントを「スウェーデンの現実の政治と行政を基盤とする行動計画」から見つけ、それらの行動計画やその成果を検証して、 「21世紀前半(2020~2050年頃)の日本がめざすべき新しい社会の方向性」を見いだすこと

です。 

このブログ内の関連記事
「混迷する日本」を「明るい日本」にするために(2009-01-13)


 「もしドラ」という言葉が今年の流行語大賞にノミネートされた、発売からわずか6ヶ月で100万部を超すベストセラーとなったと、何かと年の瀬を賑わしています。すでに皆さんもご承知のように、「もしドラ」とは岩崎夏海 著「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略称です。

ネット上には、「もしドラ公式サイト」まであります。

今朝、ためしにグーグルに「もしドラ」と入力し検索したら、約2,840,000件、 「もしドラの感想」と入力し検索したら、約1,540,000件と表示されました。大変な件数ですね。

今までほとんど忘れかけていたのですが、今回の「もしドラ旋風」にあおられて私が直ぐ思い出したのは、2002年に読んだドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社 2002年5月23日第1刷発行)でした。この本の奥付に「2002年8月8日 読了、環境問題に対する認識はほとんどなきに等しい」と記した私のメモ書きがありました。



そこで、今日は「もしドラ」の正式名称である「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を摸して、 「もし環境問題スペシャリストがドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみたら」と題して、 2002年当時のドラッカーの「環境問題に対する意識」に注目しながら、その内容の全体を検証してみました。

とは言っても、ドラッカーは「経営学の神様」として日本の企業経営者にたくさんのファンを持つ米国の経営学者であり、社会学者で、私とは専門分野を完全に異にしますので、門外漢の私が8年前に読んだときに私が感じた「疑問の部分」「納得し、賛同した部分」を紹介するに止めます。

あらかじめお断りしておきますが、私がドラッカーの著作を読んだのは後にも先にもこの『ネクスト・ソサエティ』一冊だけです。経営学者としてのドラッカーの名声と日本の企業人やビジネスマンに多くのファンをもっている程度の知識はありました。この本の購入動機は著書のタイトル「ネクスト・ソサエティ」とそのサブタイトル「歴史が見たこともない未来がはじまる」のネーミングの見事さにひかれ、私の問題意識と見事に一致するような著作を上梓したこの偉大な経営学者が、21世紀を考える時の最大の問題であるはずの「環境問題」をどう認識し、どう記述しているかを知り、学びたかったからです。

ですから、ここでの検証は、あくまでドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』にのみ限定していることを強調しておきます。読了後にメモ的に作成しておいた以下の図を見ていただくと、ドラッカーの「主張の限界とすばらしさ」をご理解いただけるでしょう。

P.F.ドラッカーはウィーンで生まれ、ドイツで新聞記者、英国で証券アナリストを経て米国に渡り、学者となったそうです。そして、2005年11月11日に95歳でなくなりました。


★ドラッカーの「環境問題に対する基本認識」に疑問を感じる部分

ドラッカーの著書『ネクスト・ソサエティ』は2002年の発刊ですから、ネクスト・ソサエティとは2000年代中盤頃をイメージして書かれているはずです。「2030年の社会」という記述がありますので、ドラッカーはその頃をイメージしていると見て間違いないでしょう。

そうだとすれば、2002年発刊のこの本は私たちが20年後にそのときに至るわけですから、この本に書かれている内容は、現在から2020~30年の未来社会をドラッカーが提示したシナリオと見てもよいのではないでしょうか。 「京都議定書」が成立したのは1997年ですから、ドラッカーが京都議定書を知らないはずはありません。

おりしも、今日の朝刊各紙は、メキシコのカンクンで開催されていた「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)が新たな対策の骨格を「カンクン合意」として採択し、閉会したことを報じています。会議のテーマはまさに2020~30年をめざした「地球温暖化対策」についてです。

このような現状を背景に、ドラッカーの「環境意識」を見てみましょう。

この本に示されたドラッカーの「環境問題に対する基本認識」は、彼が主張する経営学の中では「ほとんど意識されていない」と断じてもよいのではないでしょうか。私の環境論では「環境問題」は、「市場経済が直面する21世紀最大の問題」と位置づけているのですが、私が手にした唯一のドラッカーの著書『ネクスト・ソサエティ』は来るべき21世紀の望ましい社会を議論しているにもかかわらず、そこには「環境問題に対する基本認識」がほとんどないようです。

経営学とはまったく無縁であった私は、1990年半ば頃(1995年?)に静岡県立大学の経営情報学部の講師控え室でたまたま、私が数人の講師の方々と雑談しておりましたら、三戸 公(みと ただし)さんが議論に参加したいとおっしゃって議論の輪に加わってこられました。経営学者であられる三戸さんが環境問題に対して私の環境論に非常に関心を示して下さったのをよく覚えています。

このことが縁で、その時以来、私が信頼し続けている経営学者三戸さんは、1994年の著書『随伴的結果-管理の革命-』(文眞堂 1994年6月発行)の中で次のように述べておられます。このお考えに私は大変勇気づけられたものです。



ネット上の関連記事から
●三戸 公 最終講義 何を学んできたか 


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★ドラッカーの主張に納得し、賛同できる部分



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2007年1月1日のこのブログ開始以来、私がこのブログで取り上げてきた諸問題(環境問題、エネルギー問題、福祉問題、少子高齢化問題、)に関連するネット上の最新の記事を紹介して、今日のブログの結びとします。

●少子化高齢化急激な人口減少と高齢化がもたらす日本の未来「崩壊か明るい未来か、いま選択の岐路に立つ」――政策研究大学院大学・松谷明彦教授インタビュー(ダイヤモンド・オンライン 2010-12-13)

●資源枯渇、環境問題、高齢化に直面する日本は世界の「課題先進国」、その解決に成長の活路あり――三菱総合研究所理事長 小宮山 宏(ダイヤモンド・オンライン 2010-07-09)