環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

3週間後に迫った「国連の持続可能な開発会議」(Rio+20)、日本の対応は20年前の再現か?

2012-05-31 09:26:07 | 政治/行政/地方分権
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 今年1月1日のブログで、私は次のように書きました。

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今年2012年、国連は、1992年の「地球サミット」の20周年を記念して、6月20~22日に再びブラジルのリオデジャネイロで「持続可能な開発会議」(リオ+20)を開催する予定です。私の懸念は、日本のマスメディアが昨年から引き続くグローバル社会における国際的、国内的な政治、経済、社会の混乱や東日本大震災とそれによって引き起こされた福島第一原発過酷事故のフォローに忙しく、さらに大きな、そして、もっと基本的な 「人間社会の持続可能性」という重要性に、今なお思いを馳せる想像力が欠けてきているのではないかということです。
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 私のこの懸念が現実のものとなりそうな状況になってきました。マスメディアだけでなく、国内の、そして、国際社会を動かしている日本の政治家に対してもです。朝日新聞に掲載された次の小さな記事をご覧ください。主催国のブラジル大統領が 「野田首相に出席を要請したところ」、野田首相は「出席者は検討中」と答えたそうです。


 今国会の会期は「国連のリオ+20会議」と重なっており、野田首相は重要な法案を抱えておりますので国会会期中(6月21日まで)を理由に会議への不参加となれば、20年前に当時の宮沢喜一首相がPKO法案の国会審議を理由に参加しなかったと同じような状況が再現されることになります。事態は20年前よりも一層深刻になっているにもかかわらず、です。

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5月5日、日本の原発がすべて稼働停止した日 42年前にタイムスリップしてみると・・・・・

2012-05-07 17:53:20 | 原発/エネルギー/資源
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  5月5日の朝日新聞朝刊が一面で、「全原発 きょう停止」のタイトルのもとに「国内で唯一運転している原子力発電所、北海道電力泊原発3号機(北海道泊村、出力91.2万キロワット)が5日深夜、発電を停止して定期検査に入る。これで国内の原発50基がすべて止まる。全原発が止まるのは1970年以来、42年ぶり。政府は電力危機を回避するため、関西電力大飯原発3、4号機の早期再稼働をめざしているが、めどは立っていない」と報じ、3面で「再稼働急ぎ、全原発停止 場当たり策に批判」「事故未解決解明のまま」「40年 高めた依存深めた不安」と題した解説記事を、28面で「達成感なき原発ゼロ」の見出しで、脱原発を訴えてきた市民活動の動きを報じています。

 4月の私のブログでは、私のこれまでの原発に対する基本的な考え方や社会との接点を知っていただくために、まず2000年(12年前)にタイムスリップ(新長計)しました。続いて、1996年(16年前)にタイムスリップ(賢人たちが語るエネルギービジョン エネルギーから21世紀を解く  原子力は21世紀の電源として望ましいのか?  1996年の第11回原子力円卓会議  原子力は21世紀の電源として望ましいのか? 1996年の円卓会議の結末は? )し、今日はさらに26年タイムスリップして、1970年(42年前)です。

 次の図をご覧ください。1970年と言えば、大阪万博が開催された年です。


 「人類の進歩と調和」(Progress and Harmony for Mankind)という共通のテーマの下に開催された大阪万博の会期は、1970年3月15日(日)から9月13日〈日〉までの183日でした。この間の入場者数は6421万8770人だったそうです。

●70年万博タイムスリップ | 独立行政法人 日本万国博覧会記念機構


 「科学技術の発展がバラ色の未来を約束する」と一般に考えられていた70年代の初めに、「人類の進歩と調和」という共通のテーマの下で提示されたスウェーデン、日本および米国の世界観は大きく異なっていました。スウェーデンは「環境問題」を、日本は「原子力」を、米国は「月の石」でした。

 42年後の今、改めてこれらの3カ国の当時の世界観を検証してみますと、スウェーデンが取り上げた「環境問題」はまさに21世紀最大の問題となっており、日本館の展示は日本産業の巨大さと成長ぶり、それをささえる日本のエネルギーの紹介でした。日本が大阪万博を通して誇示したバラ色の「原子力」は、その後、米国スリーマイル島原発事故(1979年3月28日 レベル5)、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日 レベル7)、そして昨年の東京電力福島第一原発事故(2011年3月11日 レベル7)の大事故を経て今やその技術の是非が国内で、そして国際社会で議論されています。

ネット上で見つけた興味深い関連記事
●原子力委員会 長計についてご意見を聴く会(第9回)議事録 ご意見を伺った方 小林 傳司 南山大学教授 

 この議事録は32ページにおよぶ長文ですが、その12ページに次のような興味深い記述がありました。
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 ・・・・・それから、大学紛争、公害問題、皆さんご存じのとおり、それからアポロ11号、これは1969年の7月です。大阪万国博覧会、人類の進歩と調和、月の石が展示されました。未来学ブームです。唯一未来を謳歌しない展示をしていたパビリオンがありました。それはスカンジナビア館でありまして、そこでは公害問題の展示一色でした。ちょうどこの時期に入れかわるわけですね。意識が少しずつ変わり始める時期です。日本でも万博会場の外側では公害問題が議論されていました。そして、オイルショックが1973年です。そして、アメリカがテクノロジー アセスメントの部局をつくるのが1972年です。・・・

・・・・・大阪万博のときの電力は当時稼働を始めた若狭湾の原子力発電所によって全面的に供給され、それは未来の火として売物でありました今4割近くの電力を原子力発電所で賄いながら、万博のときに、2005年、愛知万博ですが、売物に絶対なりません。これをどう考えるかということになるわけです。・・・・・
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●PDF] 淀野 隆 「私の万博体験」 ~モノとヒトの出会いのドラマ~この報告書も33ページにおよぶ長文ですが、7~8ページにかけて次のような興味深い記述があります。
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・・・・・スカンジナビア館はこのスライドプロジェクター技術をフルに活用し、公害問題に真正面から取り組んだパビリオンだった。来場者は入り口で「紙のスクリーン」を渡される。その手に持ったスクリーンで、天井から投射される映像を受けて進む。中央から右がマイナスの世界、左がプラスの世界だった。公害に対する警告や生活のあり方が映像や文字で投射された。これも大阪万博のお客には「奇異」であり、「面白くない」ものだった。 殆どの来館者が素通りした仲の良いスカンジナビア館の広報官からある日相談を受けた。

「みんな素通りしてしまう。どうすれば良いだろう?」「そうだね出口の扉を閉めて中で滞在させるようにしたら……」とアイデアを出した。数日後に電話があり「駄目だ!今度はみんな出口の前に集まり出口が開くのを待っている…」これには私も絶句してしまった。
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 では、米国が大阪万博で展示した「月の石」はその後どうなっているのでしょうか。次のような少々興味深い報道がありました。

 42年前の1970年の大阪万博の日本館やアメリカ館には長蛇の列ができたのですが、42年後の現在を、当時的確に予見したスカンジナビア館を訪れた入場者は多くありませんでした。この事実は3つの先進工業国の特徴を見事に表していると思います。スウェーデンの特徴は、他の2つの国と違って、中・長期的にも科学的視点に基づく社会的な合理性が高い国と言えると思います。

このブログ内の関連記事
1970年の大阪万博のスカンジナビア館(2007-03-18)

常に時代の最先端を歩むスウェーデン:上海万博の 「スウェーデン館」、大阪万博 「スカンジナビア館」(2010-09-25)