環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2007年4月掲載のブログ記事

2007-04-30 13:13:11 | 月別記事一覧


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気持ちを新たに、そして真剣に!(4/1)

IT革命と環境問題① ITを経済発展の起爆剤!(4/2)

IT革命と環境問題② 乏しい環境経済・政策学会の反応(4/3)

「東京ミッドタウン」がオープンした(4/3)

IT革命と環境問題③ 「IT革命」への期待と懸念(4/4)

06年のODA実績 GNI比 スウェーデン1位、日本18位(4/4)

今日の決断が将来を原則的に決める(4/4) 

IT革命と環境問題④">IT革命による部分改良が社会全体のエネルギー消費を減らすか
(4/5)
 


巨大構造物と環境問題① 90年代の建設業界の「環境意識」(4/5)  


IT革命と環境問題⑤ テレビ会議はCO2を削減するか?(4/6)  

巨大構造物と環境問題② 建設業界の専門家は私の疑問にどう答える(4/6)  

IT革命と環境問題⑥ 放送のデジタル化への懸念(4/6) 

IT革命と環境問題⑦ IT化による電力消費の増加(4/7) 

2月の景気動向指数(4/7) 

巨大構造物と環境問題③ 技術者の恐ろしい単純思考(4/7) 

巨大構造物と環境問題④ 妄想か、ファンタジーか(4/8)

IT革命と環境問題⑧ IT革命、忘れてはならないこと(4/8)

IT革命と環境問題⑨ スウェーデンはどうなっているか(4/9)

原発を考える① まずは、皆さんへの質問(4/10)

原発を考える② 原子力委員会の「原発」の特性と位置づけ(4/11)

原発を考える③ 4月10日の「設問の意図」(4/12)

原発を考える④ 過去の「原発に関する世論調査」(4/13)

原発を考える⑤ エネルギーの議論は「入口の議論」だけでなく、「出口の議論」
も同時に行う(4/14)


原発を考える⑥ 原発に否定的な国際的評価の事例(4/15)

原発を考える⑦ それでは、高速増殖炉は、核融合炉は(4/16)

原発を考える⑧ 原発と持続可能な社会-その1(4/17)

原発を考える⑨ 原発と持続可能な社会-その2(4/18)

原発を考える⑩ 「持続可能な社会」のエネルギー体系とは(4/19)

緑の福祉国家⑳  税制の改革① 課税対象の転換へ(4/20)

緑の福祉国家21 税制の改革② バッズ課税・グッズ減税の原則(4/21)

緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油(4/22)

原発を考える⑪  CO2削減効果はない「原発」(4/22)

原発を考える⑫ (最終回) 私の素朴な疑問(4/23)

緑の福祉国家23 エネルギー体系の転換② 原発廃棄 「政治主導」から「電力会社主導へ」
(4/23)


緑の福祉国家24 エネルギー体系の転換③ GDPと一次エネルギー消費のデカップリング
(4/24)


緑の福祉国家25 エネルギー体系の転換④ 水力発電の新規拡張禁止(4/25)

緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況(4/26)

緑の福祉国家27 エネルギー体系の転換⑥ 電力研究所の2050年のエネルギー・ビジョン
(4/27)


緑の福祉国家28 エネルギー体系の転換⑦ 政府の2050年のエネルギー・シナリオ(4/28 )


緑の福祉国家29 エネルギー体系の転換⑧ 気候変動への有効な対応策(4/29)

緑の福祉国家30 エネルギー体系の転換⑨ スウェーデンの「バイオ燃料に対する基本認識」
(4/30)
 



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緑の福祉国家30 エネルギー体系の転換⑨ スウェーデンの「バイオ燃料に関する基本認識」

2007-04-30 12:09:39 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンは欧州の最先端を行く「バイオ燃料の先進国」です。その意味では世界最先端の国とも言えます。「エネルギー体系の転換政策」の最終回として、スウェーデンの「バイオ燃料に関する基本認識」をまとめておきます。

スウェーデンのバイオ燃料に関する研究、実用化には長い歴史があります。オイルショック後の1975年に自動車の石油依存から脱却するため、メタノールとガソリンの混合燃料の実用化試験を開始しました。現在のエタノールとガソリンの直接混合燃料はその延長上にあります。

また、4月28日のブログ「政府の2050年のエネルギー・シナリオ」に見られるようにバイオエネルギー・シナリオ」でさえも、再生可能エネルギーが大幅に見込まれているわけではないことです。このことは長年の議論を通してバイオ燃料の有効性と限界を十分認識しているからだと思います。

下の2つの図は1980年代にスウェーデンで議論されていたバイオ燃料に関する要点をまとめたものです。現在、バイオ燃料の導入に当たって国際社会で議論されていることがスウェーデンでは15~20年以上前に議論されていたことがわかります。

例えば、上の図の「1年生植物」の項には、 「食用に供しない穀物」の利用が提案されていますし、下の図では実用化前の課題として「森林と農地の利用の問題」が提起されています。







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緑の福祉国家29 エネルギー体系の転換⑧ 気候変動への有効な対応策 

2007-04-29 08:44:22 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンが考える「エネルギー体系の転換」は、日本ように再生可能エネルギーを増やして現在のエネルギー消費量を維持・拡大するのではなくエネルギー消費量自体を減らし、原発や化石燃料を、段階的に再生可能エネルギーで置き換えていくという大変挑戦的な行動計画です。

1980年3月に行われた「原発に関する国民投票」の結果を踏まえた同年6月の国会決議に端を発した脱原発の努力は、現在でもその方向性については変わりませんし、将来も変わりないと思います。しかし、将来の方向性については、スウェーデンの国民と政府が決めることです。政治の決断が重要です。

化石燃料については、「2020年までに化石燃料からの脱却」という方向性が打ち出されました。

「脱原発」と「化石燃料からの脱却」という方向性は、地球規模の環境問題である「気候変動」にも大きな影響を与えるでしょう。次の図はCO2の削減の有効な手法を示したものです。スウェーデンは国内のCO2を削減するためには、「原発」、「森林」、「排出量取引」には期待していませんが、この問題は国際的な問題ですので、EUのプログラムの中で「排出量取引」に参加しています。


これまで紹介してきた「エネルギー体系の転換」に合わせて行ってきた様々な試みが、 「CO2排出の抑制」「経済成長(GDPの成長)」の達成という日本が手本とすべき一つの方向性を示しています。




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緑の福祉国家28 エネルギー体系の転換⑦ 政府の2050年のエネルギー・シナリオ

2007-04-28 08:31:42 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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昨日ご紹介したスウェーデン電力研究所(ELFORSK)の2050年のエネルギー・ビジョンに加えて、1999年4月に公表された政府の報告書に提示されているエネルギー・シナリオというのがあります。

京都議定書が制定された97年を基準年とし、2050年のエネルギー供給とエネルギー需要を考慮した「省エネルギー・シナリオ」、「バイオマス・シナリオ」、「風力シナリオ」の三つのシナリオが描かれています。


①いずれのシナリオも、基準年である97年に比べて、エネルギーの供給および需要がともに大きく減っている のが特徴です。

②どのシナリオでも、水力は現状維持であり、原発はなく、化石燃料も大きく抑制されています。

③そして、注目してほしいことは再生可能エネルギーも大幅に見込まれているわけではないこと です。

つまり、再生可能エネルギーを増やして現在のエネルギー消費量を維持・拡大するのではなく、エネルギー消費量自体を減らすことが、シナリオの描き出す未来図なのです


加えて、エネルギー部門の2050年の環境目標も提示されています。




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緑の福祉国家27 エネルギー体系の転換⑥ 電力研究所の2050年のエネルギー・ビジョン 

2007-04-27 07:22:53 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1996年4月、スウェーデンの電力会社の研究機関である電力研究所(ELFORSK)は「スウェーデンの持続可能な発電システム 2050年のビジョン」と題する報告書を公表しました。

94年の電力消費量138TWh(実績)が2050年には130TWhになると想定し、この想定量をどのように供給するかを検討したものです。ビジョンに示された電力体系は原発への依存なしに化石燃料を最小限にして達成可能で、このシナリオに基づいてCO2、二酸化硫黄、窒素酸化物の削減の可能性も試算されています。






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緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況 

2007-04-26 07:03:48 | 市民連続講座:緑の福祉国家

 
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しかし、「世界で最も安全性の高いスウェーデンの原発を意図的に廃止し、水力発電も現在より増やさない」とするスウェーデンには、「原発や化石燃料を使用する火力発電は、緑の福祉国家の電源としてふさわしくない」という科学的判断に基づいた明確な政治的判断があります。

「緑の福祉国家」を支えるエネルギーの転換政策は、「1996年9月17日の首相の施政方針演説」を背景に、1997年および2002年6月に国会で承認されたエネルギー政策に基づくものです。 

そこで、1996年当時のスウェーデンの「エネルギー構成」と「エネルギー政策」の概要を確認しておきましょう。比較のために、日本の状況を添えておきます。 

日本の一次エネルギーに占める再生可能エネルギー(水力+自然エネルギー)の割合が5%弱であるのに対し、スウェーデンのその割合は30%強となっています。また、日本の発電の化石燃料の割合が53%であるのに対し、スウェーデンの発電の化石燃料の割合は5%です。

10年経った今、両国のエネルギー政策の結果を検証しますと、スウェーデンの転換政策が着実に進展しているのに対し、日本のエネルギー政策はガイドラインの②で破綻している ことがわかります。ここに掲げた目標「CO2排出量を1990年レベルに抑制」が現在では8%増となっています。


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緑の福祉国家25 エネルギー体系の転換④ 水力発電の新規拡張の禁止 

2007-04-25 08:26:11 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデン政府は国の脱原発を含むエネルギー転換政策のなかで、水量豊富な北部の未開発の4河川を電源開発(ダム開発)の対象にしていません。

日本原子力産業会議の招きで90年5月に来日したスウェーデン・エネルギー庁のハンス・ローデ長官は、東京で開催された「スウェーデンのエネルギー政策に関する講演会」で、「北部4河川の周辺環境は、スウェーデンのみならずヨーロッパ全体に残された自然という観点から保全されなければならない」と述べ、一国のエネルギー政策のために貴重な自然を破壊することは避けなければならないという認識を示しました。

この考えは、他国からの圧力によるものではなく、スウェーデン国民の自らの判断による選択であり決定だったのです。17年近く年経った現在でも、この考えは国民に支持されています。 

スウェーデンではバルセベック原発の2基を廃棄した時点で10基の原発(39%)と水力(55%)で電力の94%を供給していました。現在は原発の基数は10基で変わりませんが、原発の出力をあげて運転していますので、原子力と水力の割合がやや変動してそれぞれ45%、50%程度になっています。

一次エネルギーの30%強が再生可能エネルギー(水力、バイオマス、風力など)で、再生可能なエネルギーによるいっそうのエネルギー体系の転換が図られています。

次の図は10年以上前のデータですが、スウェーデンに関する限りは現在と変わりません。このデータは、当時、東京電力の副社長(原子力担当)の加納時男さん(現参議院議員)が1995年9月にロンドンで講演したときに使われたデータです。スウェーデンの電源構成が他の先進工業国と大きく異なっていることがおわかりいただけると思います。合計の数字が100に満たない部分が化石燃料による火力発電と考えてよいでしょう


地球温暖化防止対策や酸性雨対策のために、「CO2や二酸化硫黄、窒素酸化物を出さない発電システム(発電燃料に占める非化石燃料率が高い発電システム)」という日本の判断基準ではスウェーデンの発電システムは理想的な発電システムといえるでしょう。



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緑の福祉国家24 エネルギー体系の転換③ GDPと一次エネルギー消費のデカップリング

2007-04-24 11:26:30 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンのエネルギー体系の転換プログラムは1980年3月の「原発に関する国民投票の結果」とそれに基づく同年6月の国会決議にさかのぼります。この時の転換プログラムは冷戦体制下における福祉国家スウェーデンが「脱原発をめざす一国だけのエネルギー政策」で、昨日のブログで書いたように、政治主導の段階的廃止計画でした。

しかし、緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)を支えるエネルギーの転換政策は「緑の福祉国家の実現」というビジョンを掲げた1996年9月17日のぺーション首相の施政方針演説に基づき策定され、1997年および2002年6月に国会で承認されたエネルギー政策に基づくものです


★電力開発の変遷

脱原発政策は国の「現在の電力状況」および「将来の社会のあり方」に直結します。そこで、スウェーデンの考え方を知る上で電力開発の変遷を概観します。次の図は電力開発の推進力の変遷をまとめたものです。1990年以前とそれ以降の推進力に大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。


次の図は前図に示した電力開発の推進力の変遷に合わせて、行われてきた「エネルギー分野の環境への配慮」をまとめたものです。ここでも日本のエネルギー分野の環境への配慮と大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。

ここで重要なのは「④エネルギーの総需給量の圧縮」です。その結果、上の図にも書かれていますように、最終エネルギー消費は1970年から97年までの27年間ほとんど横ばいでした。この間、GDPは着実に成長しています。


★「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリング

下の図は「GDP」と90年代の好調なスウェーデン経済を支えた「最終エネルギー消費」の推移の関係を示しています。

この図はスウェーデン統計局が作成し、公表した図です。1996年までしか表示されていませんが、スウェーデンエネルギー庁の資料で足りない部分を補えば、最終エネルギー消費の部門別割合は産業部門では70年の41%から2000年の39%へ減り、民生部門では44%から36%へ減りましたが、運輸部門は15%から23%に増えました。

ここに、「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリングの実現の兆候を見ることが出来ます。これらの事実は「経済」と「環境」はトレード・オフの関係にあるとするこれまでの通説が必ずしも正しい説ではないことを示唆するものです。
 
このことは、スウェーデンの将来のエネルギー政策を考えるうえで重要です。スウェーデンのエネルギー政策に対する論理は明快です。21世紀にめざすべき「緑の福祉国家」は、現在の市場経済システムを維持・拡大する方向にはあり得ないので、現在の市場経済システムを支えている原子力や化石燃料は「緑の福祉国家」を支えるエネルギー体系にはふさわしくないというものです。



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緑の福祉国家23 エネルギー体系の転換② 原発廃棄 「政治主導」から「電力会社主導」へ

2007-04-23 04:32:02 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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2002年3月15日、スウェーデン政府は新たなエネルギー政策を発表しました。このなかで、原発の段階的廃止をめぐって新しい考え方が提案されました。これまでの政治主導による原発の段階的廃止ではなく、政府が電力会社と交渉・契約し、電力会社に市場原理に即した自由な形で原発廃止を促進させる方法です。

この方法では、原発を保有する電力会社がそれぞれ、政府と交渉し、原発による発電総量(限度)を決め、その範囲で電力会社が自主的に廃止ペースと原子炉の廃止順序を決め、原発を段階的に廃止していくことになります。政府と契約した原発の発電総量に達した時点で、原発による発電を停止して、原子炉を廃止します。

この方法には、原発廃止の最終期限がわからないという難点はありますが、政府や国民にとっては、原子炉廃止にともなう巨額の賠償金の支払いが不要になること、電力会社にとっては政治的に不安な要素が少なくなる、という利点があります。
 
1979年の米国スリーマイル島原発事故を契機に、80年3月の「原子力に関する国民投票」の結果と、それに基づく同年6月の「国会決議」に端を発したスウェーデンの「原発の段階的廃止計画」は、今回の新方針により事実上「政治主導」から「電力会社主導」に変わったことになります。

政治主導の段階的廃止計画は、冷戦体制下における福祉国家スウェーデンの一国だけのエネルギー政策でしたが、この20年間に国際情勢は一変しました。スウェーデンは1995年1月1日にEUに加盟し、97年には「電力自由化のEU指令」が発効しました。その結果、電力自由化が進展して、電力市場や電力網は拡大し、もはや一国のエネルギー政策を一国の事情だけでは決定できないほど、国際情勢は変わってしまったのです。

原発の段階的廃止計画の「政治主導」から「電力会社主導」への転換は、国際社会の潮流の大変化という現実を背景とした、スウェーデンの現実的な新たな政策の進展といえるでしょう。



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原発を考える ⑫ (最終回) 私の素樸な疑問     

2007-04-23 04:13:45 | 原発/エネルギー/資源


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4月10日から始めた「原発を考える」シリーズ も今日で12回となりました。私の環境論に基づく「原発に対する基本的な考え」を皆さんにお伝えできたと思いますので、今回でいったんこのシリーズを終わります。


シリーズを終わるにあたって、いかに日本のマスメディアがスウェーデンの原発政策をミスリードするのかを具体的に見ておきましょう。次の記事は1988年6月9日の朝日新聞の夕刊に掲載された記事です。同様の記事が他紙にも掲載されていました。




私が初めて原発問題を日本の社会に問いかけたきっかけは およそ20年前、1988年8月10日の朝日新聞の「論壇」でした。





この投稿記事に真っ先に反応したのは当時、反原発・脱原発運動を進めていた方々ではなく、科学技術庁でした。新聞掲載の翌日か2日後に、科学技術庁の課長(?)から職員に講演して欲しいとの依頼を受けました。

それ以来、私は日本とスウェーデンの原発の動向をウオッチしてきました。この「原発を考える」というシリーズを終わるに当たって、いまなお、十分な回答を得られていない私の率直な疑問を提示しますので、皆さんも一緒に考えてください。なお、これらの疑問は私の最初の本「いま、環境・エネルギー問題を考える」(ダイヤモンド社、1992年7月)に収録されています。


疑問:その1
1990年12月23日に発表されたわが国の総理府の「原子力に関する世論調査」によれば 調査対象の90%が原発に不安を感じるが、64.5%は原発の必要性を感じているそうです。一方、スウェーデンの世論調査では、自国の原発に不安を感じるのは常に調査対象の30~40%程度で、1980年の国民投票でも投票者の60%弱が12基までとの上限があるものの「原発容認」に票を投じていました。

2010年における原発を発電容量で「現在の2倍以上(110万Kw級原子炉で40基分相当)」にするという目標を1990年6月に設定した日本と、2010年には原発を「ゼロ」にするという目標を10年前に掲げて様々な試みを行ってきたスウェーデンとの間に「原発」に対する考え方の大きな相違があるのは何故なのでしょうか?
 

疑問:その2
日本の原子力関係者の一部には、スウェーデンはそのエネルギー政策で“苦悩あるいは迷走”しているという表現を好む向きがあります。

私に言わせれば、順調に稼働し、しかも自国の原発技術に対して政府や国民がかなりの信頼を寄せている原発を廃棄し、しかも自然破壊の原因となる水力発電のこれ以上の拡張を禁止し、さらに、環境の酸性化の原因とされる化石燃料の使用に厳しい規制を要求する国民各層の意見を反映して策定された「国のエネルギー政策」を、そのような判断基準を持たない国の視点で現象面だけを見れば、「苦悩しているように見える」のは当然でしょう。
   
(1)もし原発が環境に対してクリーンであるならば、20年以上も硫黄酸化物(SOx)         
   や窒素酸化物(NOx)に起因するとされる「環境の酸性化(日本では“酸性雨問
   題”と言います)」に悩み、しかも
(2)二酸化炭素(CO2 )の排出にも最も厳しい姿勢を示しているスウェーデンが順調      
   に稼働し、信頼されている原発を“苦悩あるいは迷走”しながらも廃棄しようとす
   るのは何故なのでしょうか?
 

疑問:その3 
200年を越えるという情報公開制度の歴史を持つスウェーデンで、国際的に見ても
   (1)最大限の安全対策、
   (2)最大限の廃棄物対策、
   (3)徹底した原発労働者の放射線被ばく防護対策、
   (4)原発の安定した順調な稼働実績、
   (5)徹底した原発施設の一般公開
   (6)原発情報の積極的な公開と提供
などに加えて、十分な「PA活動(国民の合意形成活動)」を続けてきたにもかかわらず、1989年4月に東京で開かれた日本原子力産業会議の第22回年次大会で、スウェーデン原子力産業会議の会長に「スウェーデンでは『PA活動』が成功しなかった」と言わせしめたのは何故なのでしょうか?
 

疑問:その4
日本の高校社会科の教科書における原発の扱いにも問題があります。この件を報じた1990年7月1日付けの朝日新聞の記事をみますと、私は「原稿本」の表記が正しく、文部省の指示にしたがって修正した「見本本」は誤りであり、修正は改悪であると思います。



疑問に思う方は日本の原子力委員会が編集している「原子力白書(平成元年版)」の13~14ページのスウェーデンの項を参照してください。原子力白書はかなり正確にスウェーデンの状況を記述しています。

仮に、この記事の「見本本」の表記が正しいとすれば、スウェーデンのエネルギー政策の行方に一喜一憂(?)することもなければ、何組もの調査団をわざわざスウェーデンまで送り、類似の関心事項を繰り返し調査するような無駄は必要ないと思いますがいかがでしょうか? 


疑問:その5
皮肉なことに、スウェーデンの原子力技術の水準の高さを最もよく知っているのは、日本ではほかでもない、原子力の専門家の方々です。

原子力エネルギーが環境に対してクリーンかどうか、あるいは環境にやさしいかどうかは1991年8月12日の朝日新聞の記事「原子力への課税提案へ」という記事や業界誌の週刊「エネルギーと環境」の1991年7月11日号の「原発もCO2 課税の対象に、波紋投げる」という記事をみれば、明らかでしょう。

原子力エネルギーが環境にクリーンと言うなら、あるいは環境にやさしいと言うなら、スウェーデン以外の工業先進国、たとえば、米国、英国、ドイツ、フランスなどが原子力エネルギーの利用にこれまで以上に積極的にならないのはなぜなのでしょうか? 

もう一度繰り返しますが、これらの疑問は私が15年以上前からいだいてきた疑問です。

化石燃料に乏しく、輸入石油への依存度が高いという点で、かつては日本と似た立場にあった北欧の先進工業国スウェーデンの動向やEUの動向に適切に答えることこそ、日本の原子力関係者に求められていることではないでしょうか?


 
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原発を考える ⑪ CO2削減効果はない「原発」

2007-04-22 12:55:22 | 原発/エネルギー/資源


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4月10日のブログ「原発を考える ① まずは、皆さんへの質問」 に掲げた「21世紀の電源としての原発の論点」で8つの論点をあげましたが、今日はそのうちの一つ「環境にやさしいか」について検証します。具体的には原発にCO2削減効果があるかどうかです。


★原発にはCO2削減効果はまったくない

まず、私がはっきり申し上げておきたいことは、「原発は発電時にCO2を排出しない発電装置」ではありますが、原子力推進者が主張するように、「CO2の排出削減装置」ではありませんので、「原発にはCO2を削減する効果はまったくない」ということです。

次の図をご覧ください。この記事は「原発は発電時にCO2を排出しない発電装置」であると言っているにすぎません。

 

原発とCO2の削減に関する私の主張は次のとおりです。





★あえて、原発のCO2削減効果を主張したいのなら・・・・・

原発自体にCO2削減効果がないにもかかわらず、それでもCO2の削減に原発が有効であることをあえて主張したいのであれば、原発がつくりだす膨大な電力を生み出すために必要な化石燃料の使用を、原発の運転開始と同時に中止することです。このような措置をとれば、化石燃料は原発により置き換えられたことになりますので、原発の設置によって「CO2の排出量は削減された」とみなしてもよいでしょう。

こうすることによって、CO2の削減は可能になるでしょうが、同時に私たちは、現在十分に解決できていない原発特有のマイナス面(安全性、核廃棄物、核拡散、労働者被曝、廃炉、核燃サイクルなどの放射線がかかわる問題や温排水などの難問)とそれに対処するための「膨大なコスト」をさらに抱え込むことになります。そして、事故が起きた場合には、さらに・・・・・



しかし、実際には原発をつくるだけで、化石燃料の削減はなされていないようです。これではCO2は削減できません。次の図をご覧ください。



1990年4月に運転を開始した柏崎刈羽原発5号機から、97年7月運転開始の玄海4号機まで、15基の原発が90年代に新設され、稼働してきましたが、この間に日本のCO2排出量は10%強も増加しています。この10年間に石油、水力、地熱、新エネルギー、再生可能エネルギーの供給量はまったく同じです。変化があるのは、石炭と天然ガスと原発の増で、総エネルギー供給量は増えています。

そして、この間の原発は15基増えており、CO2排出量は1億トン以上(10.1%増えています。)このことは、原発と化石燃料との置き換えがまったくなされていないことをはっきり示しています。なお、1990年から2006年末までに原発はさらに3基増え、18基が稼働しているにもかかわらず、CO2の排出量も90年代に比べてさらに増えています。

逆に、次の記事は必要な電力の供給量を維持するために、停止した原発が化石燃料を燃やす火力発電で置き換えられた」という趣旨の記事内容となっています。ですから、私の推測通りの結果が出ているのです。




以上の理解は、次の図からも支持されるでしょう。



さて、もう一度、 「原発はCO2の削減に有効か」を皆さんにお尋ねします。次の2つの相反する意見を私のコメント抜きで紹介します。前者は1990年当時の電気事業連合会会長・那須翔さんの発言です。後者は1991年の東京大学教授・鈴木篤之さんの発言で、核廃棄物の専門家であられる鈴木篤之さんは現在、原子力安全委員会の委員長を務めておられます。みなさんで考えてみてください。




 

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緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油

2007-04-22 07:17:15 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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一昨日再開した「市民連続講座 スウェーデンの挑戦:緑の福祉国家」シリーズは2月6日以来、2ヶ月半以上中断後の再開ですので、この講座に途中から参加した方々には再開を始めたテーマの位置づけがおわかりにならないかも知れません。

そこで、このシリーズのテーマの位置づけをはっきりさせるために、1月21のブログ「緑の福祉国家11 緑の福祉国家を実現するための主な転換政策」 に掲げた図を再掲します。


一昨日、昨日のブログのテーマはこの図の「(3)税制の改革:課税対象の転換」に相当します。ですから、今日のテーマは「(4)エネルギー体系の転換:原発を新設しない・脱石油」です。そして、今後(5)~(8)のテーマを順次検証していきます。なお、「(1)地球温暖化防止への対応(国際的な対応)」「(2)オゾン層保護への対応(国際的対応)」はすでに検証済みです。

さて、それでは今日のテーマ「エネルギー体系の転換:原発を新設しない・脱石油」に入ります。

国内政策のなかでとくに重要なのは、エネルギー体系を転換する政策です。エネルギー体系が変わることにより、技術体系が変わってくるからです。
 
1980年6月、スウェーデン国会は、同年3月に実施された国民投票で過半数を占めた、建設中の原子炉を含む12基すべてを使用するという結果を踏まえて、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という国会決議を行ないました。
 
その後、紆余曲折を経て、1997年6月10日に国会で承認された「1997年のエネルギー政策」で、2010年までにすべての原発を廃棄するという最終期限は公式に撤廃されましたが、12基の原子炉すべてを段階的に廃止するという国会決議は、現在でも堅持されています。
 
このことは、2005年7月22日にアップデートされた持続可能な開発省のホームページの「エネルギー政策」の項で、「原子力は計画された方法で責任を持って段階的に廃棄されなければならない」と記されていることからも明らかです。

1999年11月30日にバルセベック原発の1号機(出力約60万キロワット)が閉鎖されました。政治的な判断で、順調に稼動している民間の原発を廃炉としたのは、世界で初めてのケースです。バルセベック原発1号機の閉鎖後の12月29日、ABB社(すぐれた原発技術を有するスウェーデンの原発会社ASEA・ATOM社を買収した)は、すべての原発関連事業を英国の原発技術会社BNFLに売却することを決めたと発表しました。
 
2005年5月31日、バルセベック原発2号機(出力約60万キロワット)が閉鎖のために停止されました。これにより、シードクラフト社の保有する原発はなくなりました。

スウェーデンの脱原発政策を理解するのに、4月10日から始めたシリーズ「原発を考える」 が参考になるでしょう。



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緑の福祉国家21 税制の改革 ② バッズ課税・グッズ減税の原則

2007-04-21 10:25:58 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンは、1990年の税制構造改革(税制のグリーン化)で、課税対象の転換の第一歩を踏み出した、ヨーロッパ初の国(世界初の国)となりました。

この税制構造改革で、

①二酸化炭素税(CO2税):1991年1月1日施行
②二酸化硫黄の排出税:  1991年1月1日施行
③窒素酸化物の排出税:  1991年1月1日施行 

が新たに導入され、所得税率と法人税率が引き下げられました。その結果、スウェーデンの法人税率は、次の図に示したように、経済協力開発機構(OECD)加盟29カ国中、最低(1999年時点で28%、日本は40%台)となっています。 



20世紀には、ほとんどすべての国が「個人の労働による所得」に対して所得税を、「企業活動による所得」に対して法人税をかけてきました。このことは、繰り返し述べてきた、 「日常の経済活動が環境問題の主な原因である」という事実からすれば、環境破壊によって得た利益に対して、所得税や法人税をかけていたことになります。

このような現実を直視し、スウェーデンでは21世紀最大の問題である環境問題の解決への有効な「社会科学的な対応」の一つとして、「課税対象の転換」が真剣に検討されてきました。20世紀はグッズ(労働など「良いもの」)への課税で国家財政がまかなわれてきましたが、21世紀にはバッズ(汚染物質の排出行為など「悪いもの」)へ、課税対象をシフトしようとするものです。これは「バッズ課税・グッズ減税の原則」と呼ばれています。
 
課税対象の転換は、21世紀の税制を先取りする新しい試みとして期待されています。税制構造の変革は、産業界をエコロジカルで持続可能な開発へ向かわせる原動力となる可能性を秘めているからです。

つい最近まで、政府税制調査会長を務められた一橋大学学長・石弘光さんは、「環境経済・政策学会 年報第9号 環境税」(東洋経済新報社 2004年12月28日)で、北欧型の環境税を、次のように評価しておられます。




ちなみに、日本の環境税導入の議論は結果的には、いまだに90年代とあまり変わらない議論を続けているようです。3日前の日本経済新聞が次のように報じています。




日本の困った問題は、90年代に比べて、二酸化炭素の排出量が大幅に増加したという現実があり、この1ヶ月の間にIPCCが地球温暖化に関する最新の厳しい報告書を発表した現在でもなお、議論が審議会の委員の間で対立していることです。環境税導入を巡っては、日本とスウェーデンの間には16年の落差があります。

大変な事実を目の前にしてもいまなお、好ましいと考えられる対応策が審議会の委員の間で合意できないのは委員の資質もあるでしょうが、強固な縦割り行政と組織の論理が常に優先し、ものごとの本質への対応が少なく、現象面への対応が多い日本の伝統的な手法に問題があるのではないでしょうか。

日本の経済学者やエコノミスト、政治家の多く、それに政策担当者は、現行の税制のもとで「景気が回復すれば、税収(法人税/所得税)が上がり、財政が好転する」と考えていますし、企業経営者の多くは「景気が回復すれば、環境保全への投資を増やす」と考えているようです。

しかし、日本のこの考えは20世紀の考えそのままで環境問題の本質を考えると、このようの考えを早急に改める必要があると思います。 

 

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緑の福祉国家20  税制の改革① 課税対象の転換へ

2007-04-20 21:18:03 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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「市民連続講座 スウェーデンの新たな挑戦:緑の福祉国家」シリーズは2月6日の「緑の福祉国家19 オゾン層の保護への対応 ②」 以来、2ヶ月半以上にわたって中断していましたが、今日から再開します。今日のテーマは緑の福祉国家(エコロジカルに持続可能な社会)に向けた「税制改革:課税対象の転換」です。

スウェーデンは、日本や米国のような直接税中心の国ではありません。むしろ、税収の多くは付加価値税(日本で言う消費税)などの間接税によるもので、国税としての所得税は、一部の高額所得者にだけ単一税率(95年に20%から25%へ)で課税しているにすぎない「間接税国家」です。
 


★付加価値税(日本で言う消費税)

スウェーデンの付加価値税は、次の図に示したように、1960年に「取引高税」として4.2%の税率で導入され、90年には25%(食料品は12%、書籍は6%、このほか医薬品などには軽減税率が適用され、住宅は非課税)で世界最高水準となり、現在に至っています。



★1990年の税制構造改革

1990年6月、スウェーデンの国会で、税制改革法案が可決されました。この法案は92年のEC統合(実際には95年にEU加盟)を意識しながら、これまでに築き上げてきた「高度福祉国家」を21世紀に向けて立て直すことをめざす画期的なものでした。

新しく成立した新法では、全体の約85%にあたる年収18万クローナ(当時は1クローナ約25円、約450万円相当)未満の国民には、所得税として30%の「地方所得税」だけが課税されるものでした。それ以上の収入のある「高額所得者」は、これに加えて20%の国税を払うことになりました。法人税は52%から30%に減税されました。


★その後の増税

スウェーデンは財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施しました。歳出の削減と同時に、景気回復のために経費の中身を次の4分野に大きく転換させました。

①教育への投資
②IT(情報技術)インフラの整備
③環境政策
④強い福祉

そして、増税です。スウェーデンの所得税は大多数(全体の約85%)の国民が納税する「地方所得税」と高額所得者が納税する「国の所得税」からなっています。95年から「地方所得税」の税率は30%+200クローナと若干増税され、高額所得者に課税される「国の所得税」の税率は20%から25%に引き上げられました。

この政策が実り、2000年以降、スウェーデンは好調な経済を背景に、上記の4つの分野でめざましい進展を遂げました。その成果は国際機関が公表する様々な分野の国際ランキングでトップ5に入っています。


★高い税金に対する国民意識

日本では、スウェーデンの福祉政策は「高福祉高負担」として知られていますが、スウェーデンでは、高い税金はすべて国民に還元されるのが当然と考えられており、福祉や医療だけでなく、義務教育から高校、大学、成人学校に至るまで教育費もすべて無料で、落ちこぼれても一生涯でやり直しがきく教育体制が原則となっています。

そのせいだと思いますが、国民にアンケート調査を行ってみると、税金が安くなるよりも医療・福祉・教育システムが整備されている方がよいという回答がえられるのです。

ちょっと古い資料で、しかも字が小さくて恐縮ですが、日本の電通総研・余暇開発センター編「世界23カ国 価値感データブック」(同友館 1999年10月発行)の中に、「増税容認」と「もし仮に戦争が起こったら、国のために戦うか」という問に対する回答があります。いずれの回答でも、スウェーデンと日本の位置が対極にあることが示唆されていて興味深いと思いました。



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原発を考える ⑩ 「持続可能な社会」のエネルギー体系とは

2007-04-19 21:45:34 | 原発/エネルギー/資源


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4月10日から始めた「原発を考える」のシリーズも今日で10回目を迎えることになりました。原発の本質的な問題を考えるために、私はあえて、原発事故には触れませんでした。そして、4月10日のブログの最後に、次のように書きました。

X X X X X 
ここに掲げた論点は、原発の問題点として、電力会社の不祥事の問題は一切取り上げていません。私がここで議論したいことは原発の本質を議論するために、「原発が正常に稼働しており、原発に対する安全性向上に向けたさまざまな技術開発が常に着実に行われており、電力会社も真剣に対応している。情報公開は完全に確保され、電力会社の不祥事は一切ない。」という前提での議論です。
X X X X X


★「原発」に対する私の結論

そして、原発に対する私の結論は、

たとえ上記のような条件が整っていたとしても3月11日のブログ「新しい経済発展の道をめざして」昨日のブログ「原発と持続可能な社会-その2」の最後に書きましたように、

火力発電と原発の増大は、ますます「持続可能な社会への軟着陸を難しくすることになる」ということです。 


★原発トラブル

2007年3月30日に電力各社が経済産業省原子力安全・保安院に提出した報告書から、70年代から2001年にかけてさまざまな不祥事を繰り返していたことがわかります。




ですから、これまで検証してきた原発の本質に加えて、上の図表のような不祥事や事故の現状を考えると、原発は21世紀の持続可能な社会の電源としてふさわしくないことは明らかだと思います。


★「持続可能な社会」のエネルギー体系とは

それでは、「持続可能な社会」のエネルギー体系としては、どのようなエネルギー体系が望ましいのでしょうか。私は次のように考えます。

21世紀前半の社会を支える技術体系は、そのエネルギー体系に左右されます。20世紀に頂点を極めた近代工業の高い経済性は、「すぐれた技術力にある」と考えがちですが、これらの技術はすぐれた一次エネルギーである「石油」「石炭」「天然ガス」などの化石燃料や電力に支えられたもので、化石燃料が入手しにくくなれば、現在の高度な技術は役に立たなくなり、現在のような高い経済性は期待できないことを理解しなければなりません。

21世紀初頭のエネルギー政策で最優先すべき政策課題は、最終エネルギー消費を抑制する「省エネ政策」でなければなりません。ここで注意しなければならないのは、3月16日のブログ「環境効率性、そして、効率化と省エネの混同」3月17日のブログ「日本はほんとうに省エネ国家なのか、評価基準の見直しを!」
で指摘しましたように、日本の省エネの概念が「効率化や原単位」をベースに考えていることです。この考えを改め、省エネの概念を 「最終エネルギー消費の削減」に変えなければなりません。

その上で、21世紀前半にめざすべき日本のエネルギー体系の構築にはつぎのような視点が必要です。

①現行のエネルギー体系のもとでは、投入したエネルギーのうち有効利用されているエネ 
 ルギーは3分の1で、残りの3分の2は廃熱として損失となっている。このエネルギー
 体系そのものの改善なしに、需要に応じてエネルギー供給を増大させることは、環境へ
 の人為的負荷をさらに高めることになる。したがって、まず現行のエネルギー体系を改
 善し、省エネルギー化に努めて最終エネルギー消費を抑制する。

②そのうえで、既存の化石燃料や原発の利用を現状に凍結し、「新しいエネルギー利用技術 
 (燃料電池、コジェネレーション、ヒートポンプ、クリーン・エネルギー自動車など)」
 や「自然エネルギー」で既存の化石燃料と原発を段階的に代替して(置き換えて)いく。

③めざすべき目標は、ただ「自然エネルギー(再生可能なエネルギー)の導入促進」することではなく、21世紀の望ましい社会である「持続可能な社会」を支える、さらに進んで「再生可能なエネルギーによる新しいエネルギー体系の構築」である。
 


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