環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「21世紀型経済の持続性」が現時点でEU内で最も高いと判断されたスウェーデン

2010-08-09 20:02:07 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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8月1日の朝日新聞の社説の「菅直人首相が、スウェーデンの名をよく口にする。目標に掲げる『強い経済、強い財政、強い社会保障』を実現した国としてだ。この北欧の国は、日本のモデルになるのだろうか」という問いかけに対する、私の個人的な回答は「21世紀に日本が進むべき方向を知るモデルになり得る」というものでした。


その1週間後の8月7日付けの日本経済新聞は、欧州の独立系シンクタンク「欧州政策センター(EPC)」が今年6月16日に公表したEU加盟27カ国の「中長期的な経済持続可能性」のランキングを、次のように報じています。


この記事の出典は「European Economic Sustainability Index June 2010 By Fabian Zuleeg」で、EU加盟27カ国のランキングと判定は次のとおりです。


この調査に用いられた6つの分野の判断基準は「20世紀型経済の持続可能性」を検証する判断基準であっても、「21世紀型経済の持続可能性」を検証する判断基準ではありません。ですから、今日は、この調査の判定結果をもうすこし広く、私の専門分野である「資源・エネルギー・環境の視点」を加味して、「21世紀型経済の持続可能性」を考えてみましょう。「私の環境論」では、2010年1月18日のブログで書きましたように「経済活動と環境問題の関係」を次のように考えています。

端的に言えば、環境問題は経済活動の「目的外の結果」の蓄積である。つまり、現在私たちが直面している「地球規模の環境問題」の主因は、人間の意志でコントロールできない自然現象を除けば、人為的な経済活動(企業による生産・流通・販売活動および消費者による消費活動)である。

これが「私の環境論」の基本認識の一つで、多くの日本の環境問題の学者や専門家、政策担当者、環境NPO、そして、企業人との認識と表現方法を異にする点なのです。
 

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欧州政策センター(EPC)の評価は、その判断基準(6分野のデータから算出した指数)に環境問題への視点をまったく考慮に入れていない国際エコノミストの「中長期的な経済持続可能性」に対する評価結果です。この評価結果に、私のブログですでに紹介した次のような環境分野の評価を加えてみます。

★緑の福祉国家2 なぜスウェーデンに注目するのか:国家の持続可能性ランキング1位はスウェーデン(2007-01-12)

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こうすることによって、「経済の中長期的な持続性」および「環境問題への対応」の両分野から見て、スウェーデンがEU加盟27カ国の中で「経済と環境」のバランスが最もよくとれている国であり、 「21世紀型経済の持続可能性」ランキングでもトップにランクされることは明らかでしょう。米国や日本、それに中国やインドに代表される新興国やそれに続く途上国と比べても、その優位性はかわらないでしょう。

このことは8月1日のブログにも掲載した次の図が示す「経済成長」と「CO2排出量」のデカップリングが何よりの裏付けといえるでしょう。左の図は日本の場合ですが、京都議定書の基準年である1990年以降両者の関係は見事なまでのカップリングを示しています。このことは景気回復のために高い経済成長(GDPの成長)を設定すれば、CO2排出量も増加する可能性があることを示唆しています。




次の図は京都議定書の基準年である1990年から2008年までのスウェーデンの温室効果ガスの排出量の推移を示しています。2008年、スウェーデンは6400万トンの温室効果ガスを排出しました。これは、2007年に比べて220万トンの削減で、1990年比11.7%の削減となります。ちなみに、スウェーデンの国民1人当たりの温室効果ガスの排出量はOECD加盟国の中で最も少ない状況にあります。



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これまでに、何回もくり返して来ましたように、「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)には「社会的側面」、「経済的側面」および「環境的側面」の3つの側面があります。今日のブログでは、緑の福祉国家の「経済的側面と環境的側面のかかわり」を検証しました。

21世紀前半のビジョンとして、「緑の福祉国家」を掲げたスウェーデンは、2008年9月のリーマンショックからも早急に回復し、その目標年次である2020~2025年をめざして今のところ比較的順調に歩を進めているように見えます。


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