環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

国が管理する26空港のうち、22空港が営業赤字、国交省の初の調査で判明

2009-07-31 10:47:35 | 巨大構造物/都市/住環境
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7月17日のブログで、開港後15年経つ「関空」が巨額負債で窮地に立たされていることを取り上げ、18日のブログでは、そのような経済的難問に加えて,環境問題も同時に考慮すべきだと「私の環境論」に基づく考え方を示しました。 

空港などの巨大構造物が抱える「経済的問題」と「環境問題」はすべての巨大構造物が抱える問題ですので、関空の問題が理解できれば、それでは、他の空港は大丈夫なのかという疑問が湧いてくるでしょう。

図らずも、今日の朝日新聞がこの疑問に答えてくれています。

●記事の全文

なんと,この記事によりますと、国が管理する全国26空港のうち大阪(伊丹),鹿児島、熊本および新千歳の4空港だけが営業黒字だったそうです。そして、このことは7月6日のブログでお話した国の「累積債務残高」と関係してくるのだと思います。

●毎日新聞 2009年7月31日

これらの記事は環境問題には一切触れておりませんが、7月18日のブログ「経済的な窮地にある関空と忘れてはならない環境問題」で指摘したことはそのまますべての空港に当てはまります。


    

90年代前半に建設省や建設会社が考えていた「環境にやさしい都市」とは!

2009-07-20 21:35:08 | 巨大構造物/都市/住環境
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7月16日の「ハウステンボス」17日18日の「関空」を例に巨大構造物は経済的側面だけではなく、環境的側面も大変重要であることをお伝えしました。私は1990年頃からこの問題を取り上げ、講演会や私の本などで問題を指摘し続けてきたのですが、役所も専門家も建設業界もあまり気にしている様子もないようです。

もうそろそろ、私が懸念を言い続けて20年近くなりますので、1990年代に建設省(現在の国土交通省の前身)が「環境にやさしい都市」とはどのようなイメージを持っていたのか振り返ってみましょう。あえて説明を加える必要はないでしょう。


「都市の大きさ」と、そこに描かれた「その都市を支えるエネルギーシステムの貧弱さ」というアンバランスに、都市問題の門外漢である私は笑ってしまうのですが、当時の方々は、ジャーナリズムも含めて、けっこうまじめに考えていたようです。20年近く前にこのような「環境認識」を持っていた建設省や建設業界の方々は今、「環境にやさしい都市」とは、と問われたらどのような都市をイメージしているのでしょうか。

関連記事
巨大構造物と環境問題 ① 90年代の建設業界の「環境意識」(2007-04-05)

年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)






経済的に窮地にある関空と忘れてはならない環境問題

2009-07-18 18:43:50 | 巨大構造物/都市/住環境
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下の図をクリックしてください。
 


昨日の関空の記事の内容は経済面で、経済的視点からしか論じられておりませんでしたが、21世紀もほぼ10年経過した現在では経済的側面からだけでなく、環境的側面からの問題点も論じるべきものだと思います。そこで、一昨日のハウステンボスに関する記事で示した「巨大構造物に対する懸念」を再掲します。


上の図の環境的側面(③、④および⑤)を考えてみようと思うのです。次の図をご覧ください。




大量の電力消費、大量の水消費、大量の廃棄物、巨額の先行投資などの考え方は巨大構造物に共通するもので基本的には同じですが、空港の場合にはもう一つの新しい懸念材料が加わります。それは「今後の航空用燃料(ジェット燃料)の供給」がどうなるかということです。ある資料によりますと、航空用燃料の需要予測はみごとなまでに右上がりの傾向を示しています。この資料には2010年までの見通ししかありませんが、さらなる空港新設、既存空港の拡張・整備計画などがありますので、その後もジェット燃料の増加傾向は続くでしょう。


一方、次の図は化石燃料の可採埋蔵量を示しています。


現在のエネルギー体系のままで、世界がエネルギー資源を消費し続けると、一体どのくらいで地球上のエネルギー資源がなくなってしまうのか心配になりますが、この疑問に正しく答えられる人はおそらくいないでしょう。「神のみぞ知る」と答えるのが無難であり、また、正しい答えでもあるでしょう。しかし、私たちの地球が有限であること、私たちの生命の維持にかかせないエネルギーを地球のエネルギー資源に依存していることをはっきり認識すれば、この疑問に対する答えを探そうと考えるのは当然でしょう。エネルギーの専門家はとりあえずの手がかりとして「確認可採年数」を議論の参考にしています。

航空用燃料であるジェット燃料は石油製品の一つで、石油(原油)を常圧蒸留装置にかけて得られます。得られる各石油製品の割合は原油の種類によって異なりますが、ジェット燃料の生産割合は原油のおおよそ3%程度だそうです。エネルギーの専門家の中には灯油や軽油のようないわゆる白油(中間留分)が十分あり、これらの白油からジェット燃料が生成できるのでジェット燃料の供給の心配はないと言うのですが、果たしてそうなのでしょうか?

白油からジェット用燃料を生成できても、白油の元である原油の供給量に資源上の制約があるわけですから、このような説明は私には納得し難いものです。関西国際空港の社会的寿命は少なくとも50年はあるでしょう。はたして、開港50年後の関西国際空港では離発着便数の削減無しに離発着するジェット機の航空用燃料は供給可能なのでしょうか?

借入金の返済のためには離発着する便数を増やすことになりますが、そうすれば、航空用燃料の消費量が増加することは火を見るよりも明らかです。一方、水素を将来の航空機の燃料と考える専門家がいますが、どの程度の可能性があるのでしょうか?

1995年8月3日、運輸大臣の諮問機関、航空審議会の空港整備小委員会は関西国際空港二期工事、中部新国際空港、首都圏第三空港の三都市圏の空港整備を三大プロジェクトと位置づける第7次空港整備5カ年計画(1996~2000年度)の骨格を決めました。日本のみならず、東南アジアの発展途上国は経済成長に合わせて空港の整備や新設など様々な巨大プロジェクトを計画しています。

私のような素人はこのようなプロジェクトを決めるにあたって、完成後のエネルギーの供給の可能性などが十分考慮されているのかどうか疑問に思います。もう一度、「今日の決断が数十年後の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則を思い起こしてください。

私の疑問に対しては、エネルギー関係者からは次のような回答がかえってきそうです。「化石燃料と言えば、これまで利用し続けてきた石炭、石油、天然ガスがあとどのくらい残っているかばかりが話題になるが、まだ、豊富な未利用資源が眠っているではないか」と。

ここで言う未利用のエネルギー資源とは、南ベネズエラのオリノコ河流域に広い範囲で存在が確認されている「オリマルジョン」(C重油、石油残さ油のようなもの)や「メタン・ハイドレート」のようなものです。一説では、オリマルジョンの埋蔵量は約1兆2千億バレル、サウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵する量だそうですし、メタン・ハイドレートは天然ガスがシャーベット状になったもので、水深約300メートル以上、26気圧以上の海域に天然ガス埋蔵量の数十倍から千倍の賦存量が見積もられているそうです。このメタンハイドレートを石炭・石油に変わる21世紀の主要エネルギー源になると期待する人もいます。

このような可能性を秘めたエネルギー源の存在が確認されていても、その商業的な利用までにはかなりのリードタイムが必要となります。エネルギーの供給の可能性よりもさらに重要なことは、環境への負荷の更なる増大であることは言うまでもありません。



昨日に引き続いて巨大構造物の問題、今日は「巨額負債の関空 窮地」

2009-07-17 13:59:40 | 巨大構造物/都市/住環境
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下の図をクリックしてください。
 



7月17日の朝日新聞が「巨額負債の関空 窮地」と報じています。




昨日のハウステンボスの記事同様、この記事の内容は経済面で、経済的視点からしか論じられておりませんが、21世紀もほぼ10年経過した現在では、当然環境的側面からも論じるべきものだと思います。







●倒産寸前 500億円超す初年度赤字(1994-09-03) 開港10年 膨らむ赤字、競争も激化(2004年9月9日)

●単年度 黒字達成にメド

そして、今日の冒頭の記事となるのです。


以上は、経済的な視点から見た関空の大問題ですが、明日は関空を環境問題の視点から考えてみたいと思います。

テーマパーク 経営再建中の「ハウステンボス」の業績がまた悪化、 エッフェル塔は120年を祝う

2009-07-16 09:02:50 | 巨大構造物/都市/住環境
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下の図をクリックしてください。
 


今日の朝日新聞朝刊が「ハウステンボスの業績債悪化」を伝えています。


●朝日新聞 2003年2月26日 ハウステンボス倒産へ 負債総額2200億円


これらの記事は経済紙面で、しかも、経済の視点からしか報じられていませんが、私はこれまでハウステンボスに象徴されるような巨大構造物を環境的側面から論じてきました。次の図をご覧になりながら、もう一度上の2つの記事を読んでいただけると私の指摘がご理解いただけるでしょう。


関連記事
年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)       


今日のブログとは直接関係ありませんが、フランスはパリの歴史的巨大構造物「エッフェル塔」が2日前の7月14日に塔の建設120年を祝ったそうです。人間の最長寿に迫ったわけですね。


巨大構造物が抱える大問題  都庁舎 780億円大改修

2009-03-25 18:28:21 | 巨大構造物/都市/住環境
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私が20年前より懸念していた「日本の都市再開発への疑問」がいよいよ現実の大問題となってきました。次の記事をご覧ください。


現在の都庁舎は世界的に有名な建築家、故丹下健三さんの作品です。私が以前から疑問に思っているのは、著名な建築家は一般に建物を設計するのには熱心なのですが、建設された構造物を維持することにはあまり関心がないようです。

●大型施設 維持費もズシリ

●自治体庁舎 どうしてそんなに高くなるの? 維持費は膨大

また、その構造物の建設時や使用時、ましてやその廃棄時にもたらされる環境問題に対してもあまり意識していないように思われます。

●新都庁舎にアスベスト材

企業にとって先行投資は、競争力を確保するために、そして何よりも企業の存続のために、経営上最も重要な意思決定です。目先の判断で誤った方向に先行投資すると、企業経営上致命的なダメージを招くことになるでしょう。
 
●「今日の決断」と「将来の問題」

今日の決断が将来を原則的に決める(2007-04-04)

1993年7月に開業し、2002年9月に閉鎖された屋内スキー場「ザウス」(千葉県船橋市)、94年に全面開業し、2001年2月に倒産した「シーガイア」(宮崎県宮崎市)、92年3月開園し、2003年2月に事実上倒産した「ハウステンボス」(長崎県西彼町=現西海市)に代表されるようなテーマパークは、マスメディアでは、通常、経済的な視点(金の流れ)からしか論じられません。

しかし、巨大構造物は事業者にとっては先行投資による莫大な借金を、金融機関にとっては不良債権を、そして、環境にとっては多大な負荷を生じていることは疑問の余地がありません。全国の大都市につくられたドーム型の多目的施設、都庁をはじめとする自治体の高層庁舎、関空、本州四国連絡橋、東京湾アクアラインなどもその例外ではありません。
 
多くの場合、事業の決定者は後年、その責任を問われることはありません。構造物の経済的寿命は長く、事業決定の最高責任者は通常、高齢者であることが多いので、問題が生じたときには他界していることが少なくないからです。
 
このことについては、私の本『21世紀も人間は動物である 持続可能な社会への挑戦 日本vsスウェーデン』(新評論、1996年7月)でも指摘しましたが、2005年になって「無駄な公共事業の具体的事例」として関西経済圏の巨大構造物がマスメディアで批判されはじめました。

●関空離陸、湾岸開発促す 

それでは、2003年に完成した東京駅周辺、汐留、品川駅周辺、六本木周辺の高層ビルなどはどうなるのでしょうか。これらの巨大構造物は少子・高齢化などの将来の社会状況の変化とは無関係に存在しつづけます。
 
●これが汐留15万人都市

こうした建造物の経済的寿命は40~50年あるいはそれ以上ですから、事故が起こったり、エネルギー(とくに電力)不足になったり、あるいは意図的に廃止されないかぎりは、2050年あるいはそれ以降も稼働しつづけ、その間、それらの機能を維持するために大量の資源・エネルギー、水の供給を要求し、環境負荷を与えつづけることになります。そして、最後は廃棄物化します。次の図は私が20年前から抱き続けてきた「巨大構造物に対する懸念」をまとめたものです。
 

●巨大構造物の将来 その具体例を軍艦島にみる

●軍艦島 風化する20世紀建築の「祖型」


2000年末に、ヒートアイランド現象に歯止めをかけるため、東京都は、「東京都自然保護条例」を改正して、都内で新規着工するビルの屋上緑化を義務づけることを決め、屋上を緑化するビルに対しては容積率をアップする「ボーナス」を決めたという報道がありました。また、2003年1月11日付の朝日新聞に掲載された全面広告「新春座談会 人と資産の都心回帰」では建築家の故黒川紀章さんが「たとえば屋上に緑を植えた場合、容積率を上乗せするとか、インセンティブが必要」などと発言しています。
 
これらの決定や発言は「ヒートアイランド現象に歯止めをかける」という本来の目的と、その目的を達成する一つの手段と考えられる「屋上緑化」が意図的に逆転させられていて、「屋上緑化の推進」が目的化してしまっています。

これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようです。これから2030年ごろにかけて、巨大構造物(老朽化した原発の立て替え、あるいはその廃棄処分を含めて)から次々に発生する膨大な社会コストに、日本は追い立てられることになると思います。


関連記事

年度末に当たって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)
 
            

年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」

2008-03-27 18:43:09 | 巨大構造物/都市/住環境
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企業にとって先行投資は、競争力を確保するために経営上最も重要な意思決定です。目先の判断で誤った方向に先行投資すると、企業経営上致命的なダメージを招くことになるでしょう。

1993年7月に開業し、2002年9月に閉鎖された屋内スキー場「ザウス」(千葉県船橋市)、94年に全面開業し、2001年2月に倒産した「シーガイア」 (宮崎県宮崎市)、92年3月開園し、2003年2月に事実上倒産した「ハウステンボス」 (長崎県西海市)に代表されるようなテーマパークは、マスメディアでは、通常、経済的な視点(金の流れ)からしか論じられません。


しかし、巨大構造物は事業者にとっては先行投資による莫大な借金を、金融機関にとっては不良債権を、そして、環境にとっては多大な負荷を生じていることは疑問の余地がありません。全国の大都市につくられたドーム型の多目的施設都庁をはじめとする自治体の高層庁舎関空本州四国連絡橋東京湾アクアラインなどもその例外ではありません。 




多くの場合、事業の決定者は後年、その責任を問われることはありません。構造物の経済的寿命は長く、事業決定の最高責任者は通常、高齢者であることが多いので、問題が生じたときには他界していることが少なくないからです。

昨年3月30日に、六本木の旧防衛庁跡地に「東京ミッドタウン」がオープンしました。そして、今年3月20には赤坂に「赤坂サカス」がグランドオープンしました。


そして、次の図が示しますように、同じような巨大構造物の建設がさらに続きます


関連記事

東京ミッドタウンがオープンした(07-04-03) 

巨大構造物と環境問題① 90年代の建設業界の「環境意識」(07-04-05) 

巨大構造物と環境問題② 建設業界の専門家は私の疑問にどう答える(07-04-06)

巨大構造物と環境問題③ 技術者の恐ろしい単純思考(07-04-07) 

巨大構造物と環境問題④ 幻想か、ファンタジーか(07-04-08) 



こうした建造物の経済的寿命は40~50年あるいはそれ以上ですから、事故が起こったり、エネルギー(とくに電力)不足になったり、あるいは意図的に廃止されないかぎりは、2050年あるいはそれ以降も稼働しつづけます。巨大な構造物はその一生(建設時、使用時、廃棄時)を通じて大量のエネルギー(とくに電力)や大量の水を要求し、大量の排熱(下の記事を参照)と廃棄物を生み出し、最終的には構造物自体が大量の廃棄物と化します。 

 

上の記事の最後のところで、建築研究所の足永上席研究員は「緑化など熱を逃がす方法は対症療法にすぎない。都市に化石燃料を持ち込むのを減らすこと。太陽光など自前のエネルギーで都市を維持する仕組みを作らないと、大変なのとになる」と警告しておられます。わたしも同感です。そのような意識をもって次の記事(広告)を御覧ください。広告記事とはいえ、日本の識者や専門家と称される方々の環境問題に対する「意識の低さ」というよりも「意識の無さ」という表現のほうが適当かも知れませんが、驚くばかりです。


島田晴雄さん(慶應義塾大学経済学部教授、内閣府特命顧問)の発言(上の記事の青網をかけた部分)

まず都心部の容積率を現在の1000%からニューヨークなみの2000%に引き上げることが必要です。
現在東京の建物は高層ビルの林立する山手線の内側ですから、平均するとわずかに2.5階しかない。

菊川怜:そんなに低いんですか。それでは、これから都心人口が増えていったら、とても収容しきれませんね。
 


黒川紀章さん(建築家、日本芸術院会員)の発言(上の記事の赤網をかけた部分)

さらに「屋上に緑を植えた場合は容積率を20%上乗せする」。


お二人とも、20世紀の「経済拡大の発想」から一歩も抜き出ていないことが明らかです。

そこで、私のささやかな提案です。このような開発行為やイベントはその目的や規模の大小にかかわらず、かならず「廃棄物」を出します。これまで、銀行系の調査機関、民間や公的な調査機関は、「大規模開発行為」(関西国際空港、本州四国連絡橋、各種テーマパーク、屋根付きドームの建設、首都移転計画など)や「大規模イベント」(オリンピック、万国博覧会など)が日本経済全体、あるいは、地方経済にどの程度の「経済波及効果」(市場規模の拡大、新規雇用の創出、税収の増加など)をもたらすかを経済成長の観点から調査し、マスメディアはその結果を大々的に報道してきました。

今後は、事業計画者は「経済波及効果」とともに、つぎのような情報をセットで試算し、マスメディアに提供したらいかがでしょうか。 


①開発行為の準備期間および完成した構造物の経済的な寿命の期間中に生ずる「水・エネルギー消費量」や「各種廃棄物の総量(固形廃棄物、排ガスおよび排水処理の結果生ずる廃棄物の総量)とその処理・処分に要する費用」

②イベントの準備期間および会期中に発生する「水・エネルギー消費量」や「各種廃棄物の総量とその処理・処分に要する費用」




私たちの経済活動が「環境の許容限度」や「人間の許容限度」ギリギリに近づいている、あるいは一部で限度を超えてしまった現在、環境への人為的負荷が増えるのを避けるためには、量の増大を意味する「新築・増築的発想」よりも、質の向上を重視する「改築的発想」が望まれます。そして、決して忘れてはならないのは、日本は「有数の地震国」であるという現実です。 



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10年前とほとんど変わらないたたずまいの首都ストックホルム

2007-10-15 23:16:49 | 巨大構造物/都市/住環境


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問合せ先

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>

メール     greenwelfarestate@mail.goo.ne.jp
 
ウェブサイト http://blog.goo.ne.jp/greenwelfarestate



ちょっとこの記事をご覧ください。なぜ、11年前の記事が出てくるのでしょうか。

上の投書の記事はアーランダ国際空港から、およそ45分かけてストックホルム市内に通ずるバスの中での話です。

私はスウェーデンでこのような説明を受けたことはありませんが、この光景は、すぐ思い浮かべることができます。この高層ビルはヴェンナーグレン・センターという名のビルです。

数日前に、10年前から毎年1回取材のためにスウェーデンの首都ストックホルムを訪問している雑誌の編集者の方と話をする機会がありました。この方の話では、10年経った今でもこのバスの沿線の風景はあまり変わっておらず、ストックホルム市のたたずまいも風景的にはあまり変わっていないとのことでした。

しかし以前にも書きましたように、スウェーデンの経済は1990年と2005年を比較しますとこの15年間に36%成長し、CO2の排出量は7%減少しています。日本はこの間に経済は約15%成長しましたが、CO2の排出量は7.8%増加しています。そして、都心の風景は急速に変わってきました。

次の図はスウェーデンの最新のGDPと失業率の推移です。





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ストックホルム最大の「都市再生プロジェクト」の現状

2007-07-11 08:08:06 | 巨大構造物/都市/住環境


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この記事は7月2日の毎日新聞が伝える「ストックホルム最大の都市再生プロジェクト」の最新の状況です。記事のリードの部分に次のように書いてあります。

地球温暖化、ごみ、汚水-現代社会が直面する環境問題に正面から挑む再開発が、スウェーデンの首都ストックホルム中心部で進んでいる。水辺の街を意味する「シェースタッド地区」。ごみ・汚水を再利用する循環型社会の理念「エコサイクル」モデルの実現を目指し、市当局は「環境問題の最善の解決策がここにある」とアッピールする。面積約2平方キロノシェースタッド地区は、15年までに住居1万戸を整備し、人口2万5000人が住む「エコロジーと共生する街」に様変わりする(ストックホルムで中尾卓司、写真も)

また、本文には次のようなことも書かれています。

●ストックホルムが04年夏季五輪の候補地に名乗りを上げた95年ごろ、同地区を五輪会場とする計画が持ち上がる。開催地争いはアテネに敗れたが、再開発は大きく前進した。

この記事の中には、 「循環型社会」という言葉が「タイトル」として1回、本文で2回、計3回出てきますが、この言葉には注意する必要があります。スウェーデンの「エコサイクルの概念」「日本の循環型社会の概念」とはまったく似て非なるものだからです。

「循環型社会」を将来のめざす方向として掲げている日本の「都市再生(都市再開発)」は、汐留地区や六本木地区、さらには東京駅周辺の再開発を見れば明らかなように、巨大構造物が中心で、再開発の結果、必然的に、当該地区の大量のエネルギー(特に電力)、大量の水の消費、大量の廃棄物の排出を加速しています。つまり、ますます「現行の持続不可能な社会」を加速します。

ストックホルムのプロジェクトの目標は、日本の考えとは正反対で、施設の建設時及び建設後の使用期間中の環境負荷お89年から93年に建てられた建築物と比較して半減させることで、エネルギー利用、水利用、交通、建材など各分野の具体的な目標が設定されています。銅ぶきの屋根や銅管使用、塩ビ製品の使用、日本でいう「シックハウス症候群原因物質などの使用」は禁止されています。つまり、「現行の持続不可能な社会」を「持続可能な社会」へ転換する行動計画を加速させます。

このプロジェクトを貫く基本的な考え方は、市民に持続可能な街づくりに必要な環境情報を提供し、市民の選択の条件を整えることなのです。

この記事の関連情報として、私の2つのブログをご参照ください。

2007年3月23日のブログ「2004年 五輪招致をめざしたストックホルム」 

2007年5月29日のブログ「緑の福祉国家59 都市再生(都市再開発)④ ストックホルム最大の再開発プロジェクト」 



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最先端のシックハウス症候群予防

2007-06-19 06:02:39 | 巨大構造物/都市/住環境


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伝染病や栄養不良に起因する過去の病気に代わって、70年代後半頃から喘息、アレルギーやストレスに起因する健康の問題が増える傾向にあります。適切な住居と室内環境の維持が私たちの健康の上からも以前に増して重要となってきました。

スウェーデンは住環境・室内環境の分野でも「予防志向の国」の視点からさまざまな先駆的な試みを行なってきた、最先端をいく国です。80年代には、「Sick Building 」「Healthy Building」あるいは「Indoor Climate」と冠した住環境・室内環境に関する国際会議やシンポジウムを数多く主催してきました。

そこで議論されたテーマはラドン、カビ、アスベスト、ホルムアルデヒドのような化学物質、空調施設など様々です。建材から出る化学物質の健康への影響、気密性の高い住宅での空調施設のあり方など、まさにいま、日本で「シックハウス症候群」と呼ばれたり、あるいは「化学物質過敏症」と称されている問題群の解明と対策でした。

これまで、大気汚染を議論するときには、住宅や事務所の「室内空気の質」はほとんど考慮されてきませんでしたが、現在では、室内空気の質が外部空気の質より劣る場合があることがわかっています。建材、家具、脱臭剤、樟脳やナフタリンのような防虫剤などから発する化学物質、ダスト、たばこの煙、コピー機、燃焼施設からの排気など室内空気の汚染源は様々です。

日本でも、アルミサッシなどの使用や省エネルギー対策の結果として、住宅や事務所の気密性が高まるにつれ、「室内空気の質の問題」が重要になってきましたが、残念なことに、80年当時スウェーデンで開催された専門家会議についての日本の関心はあまり高くありませんでした。当時に比べれば関心は高まったとは言え、日本の状況は国際社会をリードするまでにはいたっていません。
 
スウェーデンがこれらの問題に早めに取り組んだのは、30年前のオイルショックのときの省エネ対策と無縁ではありません。化石燃料の高騰に対応する策の一つとして、空調設備を効率的に機能させて省エネルギーを図ろうとすると、どうしても住宅の気密性が高くなります。そうすると、室内の空気の循環が悪くなり、建材からの化学物質が外に出ていかなくなります。それが、健康に悪い影響を及ぼさないかどうか、いち早く議論していたのです。ここで有効な手段は日本ではあまりポピュラーではない「疫学(Epidemiology)」という学問です。
 
90年代中頃から日本でも「シックハスウス症候群」という言葉がマスメディアに登場し、いまでは社会に定着した感があります。この言葉の広がりと、それへの対策を観察すると、日本がまさに「治療志向の国」であることがよくわかります。それゆえに、住環境・室内環境や労働環境に関する研究も、データの蓄積も、そして、具体的な対応もまた、日本の大変遅れている分野の一つであると言わざるをえません。



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空調と人工の香り②

2007-06-18 05:11:11 | 巨大構造物/都市/住環境


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今日の話は昨日の続きで、20年近く前の話です。

1988年12月6日付けの毎日新聞は「人知れぬ悩み:香りアレルギー、電車やエレベーターで、化粧品の香りだけでかゆくなる人も多い」と題する記事の中で、化粧品会社「アクセーヌ」の事業部長、宮原幹夫さんは「香り商品の代表格である化粧品の場合、10人に1人がアレルギーを起こすが、その原因物質として最も多いのが香料」とおっしゃっています。

「社外から疲れて、本社に帰って来ると、パット感じ、リフレッシュしたような気分になり、一日の生活にリズムがつくような感じ」「香りによる刺激はキー・パンチャーのミス率を減少させることが確認された」「オフィス空間に香りを流してストレス解消に役立てたい」「ショールームに香りを流してイメージアップをはかろう」「会議中にレモンの香りを流すと会議の能率が上がる」などという断片的な情報や一過性の調査結果を基に、次々とこの種の機器やシステムを導入していくところは技術に偏りがちなわが国の大きな問題であろうと思います。 

私は「香り」にある種の治療効果があることを否定するつもりはありませんし、ほのかにかおる香水の効用を否定するものではありませんが、問題なのは空調施設を利用してある意図のもとに化学物質を不特定多数の人々のいる室内に供給するというアイデアです。

私はこのような問題意識を持って、1989年の秋頃からおよそ2年間、「香り」に関する新聞記事を見てきましたが、香りの効用をうたい、香りが快適生活を約束するかのようなPRまがいの記事が次から次へと登場する中で、これらの風潮に疑問を呈した意見はほとんどありませんでした。

私の目にとまったのはわずか2つの記事だけでした。一つは1990年9月2日付けの朝日新聞の「天声人語」で、もう一つは1991年5月10日付けの日本経済新聞に掲載された立教大学教授の北山晴一さんという方のエッセイ「もの観高く…無臭化社会」です。

北山さんは「先日、新聞で大手建設会社がオフィスでのテクノストレスの緩和のために、空調を利用して人工の香りを流すことを開発した、という話を読んだ。これには驚きどころか、恐怖を感じた。人間の感覚の中で最も敏感なきゅう覚を職場で一律に管理しようというのである。こうゆう発想は他の国ならファシズムと呼ばれるだろう」とおっしゃっています。

建設会社にも室内環境の専門家はいるでしょうし、化学会社や化粧品の会社には人工の香料の専門家がいるはずです。また、建築学科を有する大学は数多くありますし、住居学という講座を設けている大学もあります。労働衛生の専門家の中には、空調関係の専門家がいるはずです。厚生省、労働省、建設省の本省あるいはそれらの付属研究機関には空調関係の担当者や専門家がいるはずです。空調関係の企業団体もあります。このような専門家の方々がこうした新しい傾向にほとんど声をあげないのはどうゆうわけなのでしょうか? 

日本は「治療志向の国」なので事故が起こり、犠牲者が出るまでは研究者も行政も腰を上げないというのでしょうか?

今日の話は最初にお断りしたように、20年近く前の話です。人と人との関係、人と機械の関係に加えて、国際競争の激化、労働時間の延長や雇用形態の変化など労働環境は2000年以降さらに厳しさを増しています。家族関係も劣化してきたように感じます。このような現状への対症療法として、癒し系ビジネスやスピリチュアルなビジネスなどを含め、「人の心へアクセスするビジネス」が増えてきていることが気がかりです。



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空調と人工の香り①

2007-06-17 09:32:31 | 巨大構造物/都市/住環境


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この事例も、20年近く前の1990年前後の話です。

日本では、数年前から「アロマコロジー」などという言葉と共に、大手の建設会社と化粧品関連会社などが「香りビジネス」を展開しつつあります。森林欲の気分にひたれる家庭用空気清浄機、森の匂いをまく目覚し時計、フロラール調の香りつき布団乾燥機、ラベンダーの香る足袋、パンストなどそれぞれの製品の基本的な部分はほぼ必要十分なレベルまできているために、いかに付加価値を付けていくかが商品開発の焦点になってきたとメーカーの担当者は言っているそうです。

この様な製品を「エコ・ビジネス」の一つにあげるようなマスメディアや“環境問題の評論家”もでてきました。環境問題をこの様な薄っぺらな発想でとらえたり、おもしろおかしく次から次へとこの種の製品を供給していく企業の風潮には警告を発せざるをえません。

1989年の秋頃からは「人工の香りで能率アップ」、「空調から香りが出る、ぼけ防止になるかも」、「香りをつける空調」などのタイトルをつけた記事が目につきはじめました。最近になりますと、香りを空調を通じて流すことは快適なオフィスの条件の一つであるかのような記事が出始めました。

ここで問題視したいのは「低濃度とはいえ、人工の化学物質を空調施設を通じて流すというアイデア」です。私たちは嫌な匂い、まずい物には比較的注意が働き、拒否する能力が備わっていますが、いい香りや、おいしい物には弱いという弱点があります。最近のオフィス、特に、最近の建設ブームにのって次々と建設される高層のいわゆる「インテリジェント・ビル」では気密性が非常に高まっています。

日本のある大手の化学会社と大手の建設会社は共同で建物の中に香料を流して気分転換や心身の沈静などに役立てる「環境フレグランス(香料)システム」を開発しました。そうして、水仙、桜、ユズ、はまなす、ハーブなど九種類の植物の芳香を人工的に再現しました。いずれも、エアゾール状にして容量千ミリリットルのボトルに詰め、これを30分に1秒の割合で建物の空調ダクト内に噴霧すると、空気に乗って香りが流れるという仕掛けです。

会議が半ばともなれば必ず眠気をもよおす人が出てきます。そのような場合に、空調を使って会議室に流す香りの濃度を高くしたり、あるいは眠気を払う効果のある香りを流すなど様々な応用が可能だとしています。
 
スウェーデン労働安全衛生庁の空調の専門家は、日本のこの様な流行の兆しに対する私の懸念に対して、「スウェーデンでは、そのような空調の利用は許可されないであろう。スウェーデンをはじめヨーロッパでは空調を通して新鮮な空気を供給する以外は許されない。例外として、希に新鮮な空気に水蒸気を添加して供給する場合がある」とテレックスで回答してきました。

「空調施設を通じて供給される空気は可能な限り新鮮なもの(フレッシュ・エア)であるべきだ」というのが住環境や室内環境の改善に多くの研究をしてきたスウェーデンの基本的な考えです。

20年近く前の話です。



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住環境② 高層ビル

2007-06-16 08:12:06 | 巨大構造物/都市/住環境


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20年近くタイムスリップしたついでに、私が1990年前後に抱いていた「住環境に関する懸念」を今日から数回にわたって紹介します。あれから20年近く経った今、事態は改善されているのかどうか、はなはだ疑問です。

ビルに入ると中央が最上部まで100メートル以上も吹き抜けになっているビルが増えてきました。1990年5月19日付けの朝日新聞は「高層ビルの巨大吹き抜け、大災害防げと基準」と題して、東京都消防庁が報告書をまとめ、この報告書を基に、建設省など関係省庁とも検討を重ね、防災上の指針となる初のガイドラインを6月初めにも作成すると報じています。

「アトリウム空間の防災上の特性を踏まえた安全基準は現行の消防法や建築基準法にはなく、特別扱いとなっているのが実情。報告書ではアトリウム空間を持つ建物では、火災が起きたとき、空間そのものが煙突状態となって建物全体に火や煙が一気に広がる危険を指摘」といっていますが、日本では、なぜ、この様な素人でも想像できそうなことを建設前にはっきりとさせておかないのでしょうか? 

大手建設会社は「160階、高さ800メートルの超々高層ビル」、「地上480メートル、100階建て」、「800メートル、200階建て」、「600メートル、一五〇階建て」などの空中都市構想を競っています。そして、「容積率」が緩和されれば明日にもという状況だそうです。このことについては、4月5日のブログ「①90年代の建設業界の環境意識」から4回にわたって紹介しました。

一方、高層住宅に住む幼児の発育に関する懸念や超高層ビルで働く人々の中には眩暈や耳鳴りを訴える「超高層ビル症候群」などと呼ばれる問題点が指摘され始めました。いずれにしても、高層ビルを建てれば、必ずその中で人が生活したり、あるいは仕事をしたりするわけでしょうから、この様な技術競争を競うよりも、もう少し、そこで仕事をしたり、住む人の健康への配慮をしたほうがよいと思います。高層住宅と健康については、4月7日のブログ「③技術者の恐ろしい単純思考」 で触れました。

最近、建てられる高層住宅は非常に気密性が高まっていますから、従来にも増して室内環境に注意を払わなければならないのですが、日本の建築家は建築デザインや機能性については熱心なのに、建材についてはあまり関心がないようです。新建材の多くがプラスチック系であり、多くの家具類にもプラスチックが使用されている現実を考えますと、気密性の高いビルの室内環境の問題は今後ますます重要になってくると思います。



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住環境① 住環境の充実こそが福祉の基本

2007-06-15 06:02:20 | 巨大構造物/都市/住環境


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昨日は携帯電話の話から、一気に20年前の剣持さんの電磁波への警告へ話が飛びましたが、今日もタイムスリップして20年近く前の「住環境」に関連した話を2つ紹介しましょう。ここでも、「予防志向の国」と「治療志向の国」の発想の違いを垣間見ることができます。


★スウェーデン王立工科大学のティーベィ教授の話

朝日新聞社の週刊誌『アエラ』(1989年1月17日号)は「スウェーデンは世界一の住環境を築くのに約60年の歳月をかけた。戦後の住宅政策に関与してきた重要人物の一人、王立工科大学のティーベィ教授はこんなふうに話す」という書き出しで、「住環境の充実こそ福祉の基本。住宅造りは利潤追求のタネにさせない政策が大切」という同教授の考えを次のように紹介しています。
    
●1920年代までのスウェーデンは気候の厳しさを考えたらヨーロッパでも最 も貧しい国。人々は貧弱な住宅で飢え、寒さ、病気などの脅威に悩みました。当時、貧農が中心の社民党が政治の主導権をとったのですが、党第一世代といわれる人々は「国民住宅」運動を起こしました。全国民が十分な住宅を持って心身健やかに生きなければ国の存立はあり得ないという考えです。

●国民は強く支持しましたが45年までは目覚ましい進展はなし。でも、戦火が国土に及ばなかったのは幸いでした。50~60年の経済大成長時代の時に政策は一気に花開きました。住宅こそ健康維持に最も欠かせないものという考えの正しさは国の調査でも証明されました。結論からいえば、収入、健康、教育の条件の悪い人ほど、良質の住環境を与えないとさらにだめになるのです。

●ある条件が整えばハンディはハンディでなくなる。子供は高いところに手が届かないが、踏み台が一つあれば、ことは解決します。ハンディは環境との関係の問題です。この思想がスウェーデンの哲学として定着してきたのです。 


★スウェーデン在住の建築家、田中 久さんの話

スウェーデン在住の建築家、田中 久さんは20年ぐらい前に読売新聞(日付不明)の「論点」へ「スウェーデンの住宅政策に学べ」と題した記事を投稿しています。この記事を要約すると次のようになります。
     
●スウェーデンの住宅政策は社会福祉政策の中の重要な部分であり、建築基準法はすべての国民に文化的生活の最低線を保障するため、住宅の質を規制する目的で作られている。

●わが国の基準法が主として家屋の構造、安全性や衛生など技術面に重点を置いているのに対し、スウェーデンでは、住宅の平面計画から、暖房、換気などの設備や台所の機能に至るまで総合的な居住性に関する基準を示している。したがって、これらの基準を満足させない計画の場合には建築許可が下りないことになる。

●例えば、設計計画の図面に流しとガス台が書き入れられていても、それだけでは台所とはみなされない(実験室かも知れない)。冷凍、冷蔵庫や食品の収納庫(戸棚)はもちろん、調理用の機器と住宅の広さに相当するダイニングテーブルとイスが置ける場所がなければ、台所の定義には当てはまらない。
      
●スウェーデンで、住宅地開発の主導権を握っているのは地主や開発業者ではなく、地方自治体である。自治体の都市計画家や建築家が民間の計画家と協力して、住宅地の基本計画からマンションや一戸建て住宅の設計図も製作する。開発に当たって地主の権限は、日本流に解釈すれば、全然考慮されないのと同じである。 
 

最後の「スウェーデンでの住宅地開発の主導権」については、私のブログでも前に少々触れたことがあります。次の2つをご覧ください。

5月28日のブログ:土地の公共利用権
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/278b63892928e5a90693eca9c51108ac

5月29日のブログ:伊藤 滋(都市政策の専門家)さんと幸田シャーミン(ジャーナリスト)の対話
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/e1400467db0ea318264b3cdc84761cb2



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巨大構造物と環境問題 ④ 妄想か、ファンタジーか

2007-04-08 06:53:48 | 巨大構造物/都市/住環境
  

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90年代初頭に、日本を代表するゼネコンは、競って、次から次へと巨大構造物のアイディアを発表していました。そして、著名な建築家も。そのいくつかを紹介します。










上図の右側の記事によれば、著名な建築家であられる菊竹清訓さん(日本建築士会連合会名誉会長)が1960年東京電鉄社長の故五島昇社長から依頼を受けて想い描いた「江田駅付近に想定した115階建てのペアタワー」は日の目を見ることはなかったそうです。まだ都市計画上の高さ制限はない時代でしたが、210億円を要する大事業で「経済的な問題が大きかった」からとのことです。

しかし、皮肉なことに、菊竹さんの設計事務所が設計した1975年の沖縄海洋博のシンボル「海上未来都市 アクアポリス」は、下の記事が伝えるように、25年後の2000年に哀れにも中国で鉄くずとなったのです。建造費123億円のアクアポリスが1400万円で売却されたと、この記事は伝えています。海上未来都市のプロトタイプとして建設された「アクアポリス」の寿命が日本の一般住宅の平均寿命にも達しないとは・・・・





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