環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

35年間の虚しさ:1972年の「GNP至上反省」 と 2007年の「偽」、 でも、まだ希望はある! 

2007-12-31 11:18:24 | 社会/合意形成/アクター
 

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今年1月1日に始めたブログが1日も滞ることなく、12月31日を迎えました。この間に掲載した記事は442本、図表はおよそ800枚(私自身が作成した図表、かなり確度が高く皆が情報を共有できる新聞記事など)。

これらの材料を通して、「私の環境論」の概要を提示してきました。今日は暦の上では、今年最後の日となりますので、日本の1972年の「GNP至上反省」の記事同じ時期のスウェーデン首相のインタビュー記事を掲載します。 



GNP(国民総生産)とは今となってはなんと懐かしい言葉でしょう。今では国別の経済活動の大きさを表す指標として{GDP(国内総生産)が一般的です。時の流れを感じます。 にもかかわらず、大変不思議なことは、35年前の反省は改善されることなく、35年経った今なお、「持続的な経済成長」と名を変えて日本で、そして、「経済のグローバル化」いう新しい名のもとに世界では「経済規模の拡大」が、私の環境論の根底にある「経済活動を支える資源とエネルギーの有限性」を忘れて、地球全体を覆い尽くし始めていることです。




そして、今年の日本を象徴する漢字は「偽」いつになく的を射ているようで納得します。


それでは、私が1月1日のブログに掲げた図を再掲して、今年のブログを終わります。

1年間のお付き合ありがとうございました。明日から始まる新しい年が本当の意味で「大きな変革」の第一歩となることを期待して・・・・・



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「経済学者」と「工学者」の見解の相違

2007-12-30 09:35:25 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 

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昨日のブログで、内閣府の有識者会議「景気動向指数研究会」が景気動向指数の発表方式を2008年4月から変更する方針を決めたと報じた記事を紹介しました。

今日は、この有識者会議の座長を務められた吉川洋・東大大学院教授が、「第6回経済活性化戦略会議」(平成14年2月26日)で鈴木基之・中央環境審議会会長とかわした質疑を通して、日本の経済政策決定に深くかかわっておられる経済学者と同じく日本の環境政策に深くかかわっておられる工学者の見解の相違を探ってみましょう。


用いる材料は 第6回 経済活性化戦略会合 議事要旨 (インターネット上に公開)です。



なお、吉川さんの発言に出てくる「持続的な経済成長」というキーワード2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説に登場したもので、それ以降、政策当者の間でよく使われている言葉です。 




関連記事

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン① 「未来社会」の構想(7/21) 
 
フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン② フォアキャストvsバックキャスト(7/22) 

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン③ 21世紀はバックキャストが有効(7/23) 








敢えて、私のコメントを付け加えることもありませんが、このお二人の議論を見る限りでは、私の基本認識は鈴木さんの認識に極めて近く、その認識を見事なまでに実行に移してるのがスウェーデンであり、吉川さんの認識を基礎に行動を起こしているのが日本の現状ではないでしょうか。私はそう考えますが、皆さんはどう考えますか。



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来年4月から「景気動向指数」をDI方式からCI方式に変更

2007-12-29 10:38:03 | 経済
 

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私の環境論では、経済活動と環境問題は「原因と結果」の関係にあり、「コインの裏表」のように切っても切れない関係にあると考えています。そこで、私は私のブログ中で繰り返し、内閣府が毎月6日前後に公表する「景気動向指数」が60年頃の高度経済成長期につくられたものであり、21世紀の経済指標としてふさわしくないので変更すべきではないかと問題提起してきました。そして、指標を変えれば、今まで見えてなかったことが見えてくるようになるとも主張しました。

12月18日の毎日新聞が、来年4月分(公表は6月)から「景気動向指数」をDI方式からCI方式に変更することを内閣府の有識者会議が決めたと、報じています。


内閣府がこの指数を初めて発表した1960年以来、48年ぶりの変更だそうです。いかにも動きが遅いと思います。新しい景気動向指数がどのように変更されるのかわかりませんが、国際社会の大きな変動にハラハラしながら、この指数に一喜一憂してきたエコノミストやエコノミストの見解をそのまま受け入れてきた政治家や官僚、企業家に国際社会の大きな変動がわかるような指標になってほしいと思います。

関連記事

1月23日のブログ「私の環境論13 環境と経済は切り離せない」

2月19日のブログ「景気動向指数と長期間労働」

4月7日のブログ「2月の景気動向指数」

5月12日のブログ「3月の景気動向指数」

6月11日のブログ「4月の景気動向指数」 

7月11日のブログ「5月の景気動向指数」  

9月10日のブログ 「7月の景気動向指数」 

10月10日のブログ 「8月の景気動向指数、学生の反応、環境危機時計、そして、割りばしリサイクルに励もう」(10/8) 

11月7日のブログ「9月の景気動向指数」 

12月12日のブログ「10月の景気動向指数」 


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日本の2006年の名目GDP:世界の10%を割る

2007-12-28 12:40:55 | 経済


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昨日の日本経済新聞が一面トップで「日本の2006年の名目GDPが、世界の10%を割った」と報じています。ニュースソースは、内閣府が一昨日発表した「06年度国民経済計算確報」で、この記事は昨日のブログとも関連します。
 

この記事の図をご覧下さい。94年をピークに「日本の世界経済に占める割合」は年々低下し、2006年には10%を切ったのですが、日本の、そして、世界のGDPは成長を続け、それを支えるエネルギー供給量と消費量は着実に増加しています。つまり、世界経済の規模が拡大し続けているからです。「有限な地球」という概念がいまだ十分に理解されていないのです。世界の大勢は「エコロジー的に持続可能な社会」へ向かっているとは言えません。

私の環境論では、経済活動と環境問題は「原因と結果」の関係にあり、「コインの裏表」のように切っても切れない関係にあるのですが、経済分野のジャーナリストやエコノミストは20世紀同様、21世紀になっても相変わらず経済活動と環境問題を切り離して考えているようです。



このように判断基準を変えれば、これまで見えてこなかった新しい潮流が見えてきます。


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日本の一人当たりGDP OECD30カ国中18位、そして・・・・・ 

2007-12-27 11:28:22 | 経済


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今朝の朝日新聞が、内閣府が昨日発表した「06年度国民経済計算確報」で、2006年の日本の国民一人当たり名目GDPがOECD30カ国中18位で、1980年以降最低であったと報じています。また、世界のGDPに占める日本のシェアは9.1%で、これも1980年以降最低だったそうです。


「経済成長が常に正しい」と考えられていた20世紀の判断基準では、日本のこの状況は困ったものですが、「環境への負荷」を考慮に入れなければならない21世紀の判断基準では、日本のこの状況は一層困った状況だと思います。 

このランキング表からは読み取れないのですが、「国民一人当たりのGDP」という指標ではルクセンブルグは少なくとも2000年以降ダントツで世界1位を保持してきた国です。12月7日に、バリ島で開かれていたCOP13の会議にドイツの環境保護団体「GERMANWATCH」が公表した「温暖化対策実行ランキング 2008」(下図)では、56カ国中53位となっています。京都議定書で-28.0%(EU内で最大の削減目標)に対して、0.4%増となっています。日本は42位、米国は55位です。


このように判断基準を変えれば、これまで見えてこなかった21世紀の新しい潮流が見えてきます。
 


関連記事

世界のGDP、日本のGDP(2/18) 

温暖化対策実行ランキング スウェーデン1位、日本42位(12/9)  




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時には、他人の意見も聞いてみよう 「新空気の研究」

2007-12-26 12:12:36 | 温暖化/オゾン層


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昨日は、クリスマスプレゼントとして、大変重い11の議論のポイントを贈りました。今日は私の考えではなく、毎日新聞のコラム「経済観測」に書かれているエコノミストの方(?)のお考えをお読みください。



この記事の背景として次の記事をご覧ください。

そして、日本とスウェーデンの対応の相違を考えてみてください。


関連記事

日本政府が温室効果ガス排出枠をハンガリーから購入(11/30) 

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン1位、日本42位(12/17)




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クリスマス・プレゼントとしての 「日本の論点」

2007-12-25 21:42:44 | 市民連続講座:環境問題


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10日前の12月16日(日)、渋谷で第2回目の学習会を行いました。この日のテーマは下の図のように「日本はエコロジー的に持続可能な社会へ向かっているのか」でした。



これに対する私の答えはもちろん「NO!」でした。そして、私が提示した最も重要な論点は次のようなものでした。


しかし、日本では小泉前首相が2001年2月に掲げた「持続的な経済成長」を安倍前首相が引き継ぎ、そして福田首相も踏襲しているようですが、不思議なことに、次のような最も重要な論点がまったくと言ってよいほど議論されていません。

文藝春秋社が毎年発行する「日本の論点」シリーズ
でもこの議論はほとんどなされていないようです。20世紀から引きずってきた困った問題や21世紀になって生じた困った問題の中から毎年およそ100程度の論点をあげ、その論点に対して意見を異にする学者、評論家などマスメディアにしばしば登場する有識者(?)が議論を戦わせていますが、「持続的な経済成長」は、20世紀と同様、暗黙の了解(前提)のようです。

私が懸念するのは、マスメディアに登場するエコノミストや経済学者、評論家がまっとうな自然科学者が指摘している視点をまったく気にすることなく、あたかも「持続的な経済成長」が20世紀と同様に可能といわんばかりのスタンスをとっていることです。

つまり、実際の経済活動を支えている「資源」「エネルギー」「環境問題」への視点が欠落しているということです。お金の流れで社会の動きを見ているエコノミストが毎日対面しているPCに「資源」「エネルギー」「環境問題」「持続可能な社会」など、21世紀前半社会を規定するキーワードを入力すれば、いままで見慣れたPCの画面が一瞬にして別の画面に激変することに気がつかなければなりません。

そこで、私は学習会で「議論すべき日本の論点」として次の11の論点を提示しました。今日は奇しくもクリスマスの日ですので、“クリスマスプレゼント”としてその議論すべき11の論点を皆さんに贈ります。これらの論点に対する皆さんのお考えはいかがですか。 

① 「現行の経済成長」は今後50年も可能な?
② 原発は21世紀の電源にふさわしいか?
③ 持続可能なエネルギー体系とは?
④ 自然エネルギーにはCO2削減効果があるだろうか?
⑤ IT革命は省エネにつながるか?
⑥ テレビ会議にCO2削減効果はあるだろうか?
⑦ 日本はほんとうに省エネ国家だろうか?
⑧ 「分ければ資源、混ぜればごみ」はほんとうか?
⑨ 「経済活動」と「環境問題」の関係はどのような関係か?
⑩ スウェーデンと日本の「地球温暖化政策の相違」は何か?
⑪ 「民主主義」は「エコロジー的に持続可能な社会」の構築とどう関係するか?


これらの論点に対する「私の答え」あるいは「私の考え方」は、すでにこれまでのブログで明らかにしてきましたので、それらを手がかりとして皆さんご自身で考え、発言していただければ幸いです。21世紀前半にめざすべき「エコロジー的に持続可能な社会」の構築は私たちの考え方しだいなのですから



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環境問題のまとめ  ④企業の生産条件の劣化

2007-12-24 14:36:08 | 市民連続講座:環境問題


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今日は経済活動の基盤である「企業の生産条件の劣化」についてお話します。特に日本では官民ともに「日本はモノつくりが得意分野だ。これで世界に貢献する」と言い続けてきましたので、よく考えてみてください。

次の図に示しましたように、物の生産には労働力のほかに、生産工程に原料」、「エネルギー」、「水」など資源の供給(インプット)が必要です。一方、生産工程からは、製品と共に必ず、「廃棄物(固体廃棄物、排ガスおよび排水)」および「廃熱」が排出(アウトプット)されます。



これらの条件(原料、エネルギー、水などのインプットおよび廃棄物と廃熱のアウトプット)のいずれか一つが、“量的あるいは質的”に有為に満たされなくなれば、21世紀の生産活動が持続できなくなることは疑う余地もありません。

上の図が示しますように、発生する固形廃棄物の処分場は最初は工場敷地内から、生産規模の拡大に伴って国内の近接地へ、そして国内の過疎地へ、さらに国外へと移動して行きます。

上の図で重要なことは、例えば、エネルギーの供給が十分であっても、その他の条件が一つでも有為に満たされなくなれば、生産活動ができなくなるという事実です。ですから、 「生産活動は最も少ない条件に縛られる」ということになります。



当然のことですが、生産量の増加は一般に廃棄物(固形廃棄物、排ガスおよび排水)の増加と廃熱の増加をもたらすことになりますので、「環境に配慮した持続可能な生産体系」で重要なことは原料やエネルギー、水などの供給側(インプット)よりも、むしろ排出側(アウト)である廃棄物や廃熱の処理・処分のシステムが社会の中に適切に整備されているかどうかにかかっています。

今後、「持続可能な開発」を模索する際に、廃棄物の問題は最大の関心事でなければならなりません。廃棄物という観点から見れば、中古品の輸出は「相手国での有効利用」というプロセスを経るものの、結果的には廃棄物そのものの輸出と同じことになるといってもよいでしょう。92年5月5日に発効した「バーゼル条約」は有害廃棄物の輸出に一定の歯止めをかけると期待されています。

先進工業国から発展途上国への有害廃棄物の輸出を全面的に禁止するこの条約改正案の採択を報じた95年9月24日の日本経済新聞によれば、「国連によると、有害廃棄物は先進国を中心に世界で毎年4億トン以上生み出されている。これが処理技術の不十分な途上国に持ち込まれると環境汚染を引き起こすという懸念から、条約加盟国は昨年春、拘束力のない輸出禁止決議を採択した。正式な条約改定には欧州連合(EU)や環境保護団体が熱心な一方、日本や米国、オーストラリア、韓国、インドなどはリサイクル目的の貿易を容認するよう主張したが、大多数の条約加盟国は全面禁止を支持した」そうです。

次の記事をご覧ください。2000年の日本の実態です。私が15年前のバーゼル条約発効以来、懸念して来たことが現実問題となりました。




次の関連記事をご覧ください。さらに、最近の状況が明らかになっています。

関連記事

家電リサイクル アジアへごみ輸出の危険性(7/28) 



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環境問題のまとめ  ③人間の生存条件の劣化

2007-12-23 23:50:18 | 市民連続講座:環境問題


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今日は「人間の生存条件の劣化」についてお話します。

私たちの「産業経済システム」とその下で行われる「消費活動」が、環境を構成している「生態系(エコシステム)」に影響を与え、その影響が、私たちが生きるために空気を吸い、水を飲み、食物をとる行動を介して、次の図のように、「人体への負荷」という形に収斂されます。




私たち人間は動物ですから、この図に示したように、ある範囲の温度と湿度の下で、光を浴び、空気を吸い、水を飲み、動・植物しか食べられません。この事実こそ21世紀の社会である「持続可能な社会」が備えるべき最も基本的な必要条件であり、これらの条件のいずれか一つが、環境の悪化により“量的あるいは質的”に有為に満たされなくなれば、21世紀の人間の生存が危ぶまれることは疑う余地もありません。

この他に、私たちは意識してタバコを吸ったり、無意識のうちに放射線にさらされたり、電磁波の影響を受けています。また、労働環境や住環境からも様々な物理的・化学的・心理的な影響を受けています。

最近では、低濃度の化学物質の摂取によると考えられる「化学物質過敏症」の報告が増えてきました。さらに、“いわゆる環境ホルモン”(内分泌かく乱物質)として知られる様々な環境由来の化学物質が、ある種の貝や野生動物の奇形や生殖機能に影響を与えているとする報告がありますし、人間の生殖機能や内分泌系統に影響をおよぼしたり、ホルモンのバランスを崩すことを示唆する医学的な報告も散見されるようになって来ました。

この種の化学物質の濃度と作用の関係は、ppt(parts per trillion:1兆分の1)という単位で表されるように、極めて低濃度(しばしば50メートル・プールに目薬一滴分などと形容される)と考えられるので、動物としての人間の持続性という観点からも、この種の報告は十分注目しなければなりません


関連記事

私の環境論11 人間の生存条件の劣化(1/21) 



このような視点から考えますと、今朝の朝日新聞(朝刊)の一面トップに掲載されていた次の記事は大変気がかりな記事です。

私たちの身体には生物としての許容限度(人体の許容限度)があるため、その許容限度を超えると、死亡から内分泌攪乱に至るまで、様々なレベルで健康の障害が出てきます。私たちが重視しなければならないのは多種類の化学物質による複合汚染です。


私たちは生きるがゆえに、「環境へ人為的負荷」をかけ(環境に影響を及ぼし)、逆に、「人体への負荷」を高めているのです(その影響を受けているのです) 。このような段階に、今、私たちは来てしまったのです。私は、これが「環境問題の本質」であると考えます。


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環境問題のまとめ  ②生態系の劣化

2007-12-22 22:06:08 | 市民連続講座:環境問題


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今日は「生態系の劣化」についてお話しましょう。

これまでの自然科学は、多くの場合、人間を除いた議論をしてきました。人間の問題は人文・社会科学の分野で扱われてきましたが、この分野では人間社会を他の生物社会と区別して考える習慣がありました。しかし、人間社会も人間という生物の集団である以上、太陽と植物を基礎にしたエネルギーの範囲の中で生きていることには変わりありません。

45億年の地球の歴史の中で、これだけ人間が他の生物よりも優先してしまった現実を直視すれば、自然科学の中心に人間を据えた新しい自然科学的な取り組みが必要です。これまでの生態系の説明では、人間の存在がみごとに抜けていました。
 
しかし、環境を支配している法則は数100年前も現在も基本的には変わりません。現在のように人間活動が「環境の許容限度」を越えるほどに大きくなってくると、自然の法則にしたがって、私たちの体には、これまで以上に大気、水、食物を介して、次から次へと負荷がかかってくるようになります。人間が、おのれの基本的立場である動物的次元を忘れ物理化学的要素の強い科学技術文明に軸足を掛け過ぎたために、「公害」を招き、「人体への負荷」が高まってきたのです。



私たちと生活環境を共有してきた野生の動・植物が徐々に姿を消して行くことは、同じ動物界の一員である人間にもその危機が忍び寄っていることを示唆しているのです。私たちが決して忘れてはならないことは、「生態系を支える食物連鎖の出発点は植物であり、食物連鎖で支えられた“生物ピラミッド”の頂点に位置づけられているのが人間である」という事実です。 

つまり、「人間を含めた動物の生存を支えているのは基本的には植物だ」ということです。植物を食べる動物がいて、その動物を食べる動物がおり、私たち人間は動物と植物の両方を食べているわけです。ですから、植物がだんだん失われてくると私たちは生きていけなくなるわけです。

関連記事

私の環境論10 生態系の劣化


このようなあまりにも当たり前のことを私たちはすっかり忘れ、環境問題は技術で解決できるかのような誤った認識(?)に浸っている感があります。それは私たちの「環境問題に関する基本認識」が20世紀後半に経験した「公害の概念」の域から未だ脱していないからです。環境基本法がその何よりの証拠です。 私たちはこれまでお話してきた原則を真剣に考える必要があります。

関連記事

環境基本法成立から14年② 不十分なので、このままでは私は反対だ!(12/7



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環境問題のまとめ  ①環境問題とは

2007-12-21 21:22:16 | 市民連続講座:環境問題


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今年1月1日(月)に開設したこのブログで、私の環境論の一端を皆さんに示して、環境問題の重要性を訴えてきました。あと10日ほどで今年も幕を閉じます。ここで、改めて「環境問題」に対する私の考え をまとめておきましょう。

1月18日のブログ記事「私の環境論8 環境問題とは何か」で次の図を掲げました。


私の環境論では、環境問題とは上の図が示しますように、人間活動の拡大(資源とエネルギー利用の拡大)による 

①生態系の劣化」

②「人間の生存条件の劣化」 および


③「企業の生産条件の劣化」

です。  


次の図に示した「経済活動」と「環境問題」の関係が理解できれば、上の図「環境問題とは何か?」の社会科学的に見た環境問題の原因と結果、そしてその対応がお分かりいただけるでしょう。日本では環境問題を上の図の自然科学的な見方で理解してきたきらいがあります。


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東海大学湘南公開セミナー   「21世紀前半社会の最大の問題:環境問題」-原因は経済活動の拡大ー

2007-12-20 23:46:26 | 市民連続講座:環境問題


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東海大学公開セミナー委員会は2007年度の秋学期に2本の講演会を企画しました。一つは12月12日(水)に行われた講演会で、講師は寺島実郎さん(日本総合研究所 会長・三井物産戦略研究所 所長)で、演題は「21世紀世界の潮流と日本」、もう一つは1週間後の昨日行われた私の講演で、演題は「21世紀前半社会の最大の問題:環境問題―その原因は日常の経済活動の拡大である―」でした。

私の講演の冒頭で参加者に、先週の寺島さんの講演を聞いた方がどのくらいいるのか挙手をしてもらったところ参加者の20%程度でした。おそらく、この20%の参加者は寺島さんと私の話を聞くことによって問題の存在の大きさを知るきっかけをえられたのではないでしょうか。主催者がつくった資料に書かれている「講演概要」を記しておきましょう。


第288回 『21世紀世界潮流と日本』
寺島実郎(財団法人 日本総合研究所 会長、株式会社 三井物産戦略研究所 所長)

今回は混迷する21世紀の世界潮流に対するお考えをお話し頂くと共に、その中で日本はどのような役割を果たすべきか、特に今後、日本は国際社会の中でどのような立場で行動しなければならないのか。また、現在の世界経済の視点現状などについて持論を展開して頂ける予定となっております。グローバルな観点から国際社会の中の日本の立場をいかに進めていくべきかを考え直す機会ともなり、また世界経済の現在置かれている現状、問題点、国際社会における日本の立場などとても大変役立つお話が伺えるものと思います。

具体的には海外企業・市場の動向、為替、各国国債、社債、株式、石油、派生商品市場や海外企業・産業におけるトピックスを紹介するとともに国際政治経済の動向、欧米に限定せず、現代の国際経済・国際金融動向に欠かせない中国、ロシア、インド、中東、中南米そして中東欧などの政治・経済トピックスを選び出し、寺島実郎氏の詳しい解説が加えられます。


第289回 『21世紀前半社会の最大の問題:環境問題―その原因は日常の経済活動の拡大である―』
小澤徳太郎氏(環境問題スペシャリスト)

昨今、温暖化などの環境問題について、6月6日~8日、ドイツのハイリゲンダムで主要テーマを「地球温暖化対策」とした主要国首脳会議が開かれました。日本の安倍首相がその会議において、「世界全体の温室効果ガス排出量を2050年までに半減する」という長期目標を設定し、その達成手段として革新的技術の開発と低炭素社会の実現を目指すという提案がなされました。

確かに、これは良い提案であると思われますし、環境問題に常に他国の後手に回ってきた日本から見れば、大きな一歩であると言えます。しかし、世界全体で半減という数値目標は、京都議定書の削減目標である6%すら削減できず、逆に8%増やしてしまった日本には無理なことです。

そして、タイトルからわかるように、経済活動が環境問題の原因となっています。日本はそれを全く理解せず、20世紀の考え方のまま、経済成長一辺倒です。それに、日本は省エネが世界でもトップレベルだと言っていますが、それなら何故一向に削減できていないのでしょうか。例えば、スウェーデンは小国ながら、「緑の福祉国家」・「持続可能な社会」を目指し、世界の先頭に立って、様々な政策を実施し、既に素晴らしい成果をあげているのです。

この講演会では、環境問題とは何かという根本的な問題や、日本における環境問題やその対策の現状を、スウェーデンという国を通して比較しながらお話頂きます。そして、現状をしっかり知ってもらい、環境問題に対して自ら正しく考える事ができるようにして頂きたいと思います。


私が思うに、せっかくの機会ですからこの種の講演企画は同じ日に行うとか、対論にするとかすると、もっと話が現実的になると思います。いずれにしても、このような企画が今後増えることが望まれます。






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21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本

2007-12-19 20:17:18 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト


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2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説で述べられている「持続的な経済成長」が、日本型企業経営をはじめ、日本のさまざまな社会制度(もちろん、年金制度や医療保険制度などの社会保障制度も含む)や慣行が、有効に機能するための必要条件の一つであったことは、疑いの余地もないところです。 

最近では崩壊しはじめたようにも見える談合などの商習慣、系列関係、政官業の癒着、年功序列や終身雇用など、これまで日本社会の特徴とされ、評価されていた制度も、経済の持続的拡大が止まれば、立ちゆかなくなるのは間違いありません。

それでは、21世紀もこれまでどおりの「経済の持続的拡大」ができるかといえば、その可能性はほとんどないでしょう。何度か述べたように、「環境への負荷」を軽減することに配慮しなければならない21世紀には、これまでのように資源やエネルギーを自由に使うことができなくなるからです。このことは、 「環境論」こそ、21世紀の国家論であることを示唆しています。

「日本には21世紀のビジョンがない」という大方の識者やジャーナリズムの見解とは異なって、私は日本には「21世紀のビジョン」はあると思っています。小泉首相が掲げていた「持続的な経済成長」は安倍前首相に引き継がれ、そして、福田首相にも引き継がれているようです。ですから、少なくとも現時点では、「持続的な経済成長」という目標は21世紀前半の日本のビジョンと考えてよいと思うのです

12月16日の学習会では、上の図を説明する材料として次のような話題を提供しました。


 ●小泉内閣の下で成立した法律(135本) 

 ●安倍内閣の下で成立した法律(141本) 

そして、両内閣の下で成立した法の多くが「新しい21世紀の社会を構築することを目的にした法」ではなく、既存法の「改正」であることを指摘しました。



●福田内閣の下で成立した法律

それでは、福田内閣の下で成立した法律はどうだったでしょうか。次の新聞記事が示しますように、ここでも圧倒的に 「改正法」が多いのです。



この事実は日本が21世紀も、20世紀社会の延長上にある「持続的な経済成長」を求めているからではないのでしょうか。


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環境省が「地球温暖化対策推進法改正案」を検討

2007-12-18 14:44:42 | 温暖化/オゾン層


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一昨日、12月16日(日)にモンベル渋谷店の会場で「第2回学習会」が開かれました。第1回第2回の学習会の両方に参加された方はスウェーデンと日本の「持続可能な社会に関する基本認識」に大きな落差あることを理解していただけたのではないでしょうか。

当然のことですが、私の結論は「日本はエコロジー的に持続可能な社会へ向かっていない」でした。私のプレゼンテーションではたくさんのスライドを見ていただきましたが、ここではその中からの2枚を見ていただきます。

日本のビジョンはスウェーデンとは異なって「持続可能な社会の構築」(そのような言葉は踊っていますが)ではなく、本当のところは「持続的な経済成長」 (2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説2005年4月19日公表の日本21世紀ビジョン、その後の2007年1月26日の安倍首相の施政方針演説2007年10月1日の福田首相の所信表明演説など)ですので、そのビジョンを実現するためにはスウェーデンのようにビジョンが変わったのだからそのビジョンの実現のために環境関連の法体系を新しく作り直すのではなく既存の法体系を改正することが立法分野の主な作業である思います。 


また、下の図に示したように、「地球温暖化対策の推進に関する法律」は京都議定書の実施を担保する法律とは位置づけられていませんでした(平成11年版環境白書の63ページにそのような記述があります)。




今日の朝日新聞の朝刊の一面トップの記事が、まさに、私の主張を裏付けてくれていると思います。

この朝日の記事は、環境省が「京都議定書の約束期限の始まる2008年に京都議定書を担保する法律」にするために慌てて改正案を準備していると私は考えます。そして、またいつものパターンを繰り返し、「企業活動への規制強化につながることから経済界や経済産業省などの反発が予想され、調整が難航する可能性がある」と記事は書いています。
皆さんはいかがですか。


明日のブログで、日本では、スウェーデンのように21世紀前半の新しい「エコロジ-的に持続可能な社会」を構築するための新しい法ではなく、20世紀の社会を温存するような既存の法の改正案がいかに多いかを示しましょう。


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国と地方の役割分担②  主役の変更:国から地方へ

2007-12-18 07:48:30 | 政治/行政/地方分権


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スウェーデンの環境政策が変化しはじめたのは、実は80年代に入ってからのことです。それ以前は、環境政策の主な目標は、地域と地方に影響を及ぼす主な固定発生源からの排出をモニタリングし、汚染物質の排出量を低減することが中心でした。それであっても当時としては先進的で、いくつかのスウェーデンらしい方法はあったものの、具体的な対応策では日本の環境対策とそれほど違いはありませんでした。

80年代後半になりますと、環境政策は交通、農業、製品、原料などの日常の経済活動から拡散された排出に対応するようにシフトしてきました。

さらに90年代に入りますと「持続可能な開発」、さらには「持続可能な社会」の実現をめざして、問題が起こる前に発生源で問題を解決する手段(予防原則)を見出すことにいっそうの力点を置く政策がとられるようになってきました。

20世紀の国づくりでは想定外であった「環境問題への対応」が、 「21世紀の国づくりの大前提」としてはっきり意識されるようになってきたわけです。

90年以前の環境問題への対応は主として“トップ・ダウン”の観点から行われてきましたが、今後はおそらく国内では“ボトム・アップ”の観点からの取組みが一層重要になるでしょう。その理由は大型の固定発生源からの環境汚染が現在では少なくなり、代わって、私たちのライフスタイルを変え、天然資源の浪費を抑えることが益々重要になってきたからです。

この変化は「個人の役割」を受け身から積極的な役割に変えると共に、「市町村の役割」を増大させることになるでしょう。持続可能な社会の実現には、国内政策についてはこれまでの役者(国会、中央政府)から、これからの役者(地方自治体、特に市町村および住民、特に個人)に役割の重要さが移行してきます。

この移行をスムーズにするために「地方主権」の更なる強化が必須です。このような明確な認識から、スウェーデンでは1992年1月に「新地方自治法」が成立し、地方自治体の権限がさらに強化され、市町村は必要とする「行政局/庁」を自由に設置することができるようになりました。 

エネルギー資源の制約から、将来、「再生可能な自然エネルギー」の導入が非常に期待されていますが、その場合にも、自治体の役割は特に重要となります。21世紀型のエネルギー・システムの中心となると考えられる再生可能な自然エネルギーは本質的に分散型エネルギー・システムに適したものだからです。

96年末までに全国288のすべてのコミューン(市町村)が、持続可能な開発をめざす行動計画「ローカル・アジェンダ 21」を策定しました。ロカール・アジェンダ 21というのは1992年の「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)で採択された「地方自治体向けの行動計画」です。スウェーデンは地球サミットで採択された合意を忠実に行動に移しています。

北欧のエネルギー事情に詳しい飯田哲也さんの著書「北欧のエネルギーデモクラシー」(新評論 2000年3月15日発行)の29ページに掲載の図をお借りします。


国の政策は地方自治体と住民の協力により、具体化されます。地方自治体と住民の協力こそが現実的な問題解決の基本であるという考えです。                                                    

まさに、環境問題に関心のある方なら大好きな
Think globally, Act locally
の標語どおりです。



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