環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「環境省」から「持続可能な開発省」へ、そして2年後、再び「環境省」へ

2007-01-08 10:51:18 | 政治/行政/地方分権
昨年2月に、私の本「スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」(朝日選書 792)」が出版されました。好意的な書評が多数マスメディアやネット上に登場しましたので、その主なものをご紹介しましょう。

(1)毎日新聞 書評「今週の本棚」 小西聖子 評  2006年3月26日

(2)週刊エコノミスト 2006年3月28日号 大橋照枝 評

(3)毎日新聞 「余録」   2006年5月4日

(4)福岡県弁護士会 弁護士会の読書  2006年5月29日

(5)リクルート「WORKs」06年6月7日号(76)目次 2006年6月13日

(6)山口大学工学部工学教育センター 溝田忠人 評

(7)環境カウンセラー 中村公雄のブログ 2006年3月3日

(7-2)環境カウンセラー 中村公雄のブログ 2007年1月15日


さて、この本の冒頭で2005年1月1日、スウェーデンで世界初の『持続可能な開発省』が誕生し、『環境省』が廃止された」と書きました。

昨年10月6日に発足したラインフェルト連立内閣(4党)の下で、今年1月1日から3つの新しい省(Ministry of Culture、Ministry of Employment、Ministry of Integration and Gender Equality)が発足しました。

これに合わせて、「持続可能な開発省」は今年1月1日から再び「環境省」に名称変更することが明らかになりました。「教育・研究・文化省」は「教育・研究省」に変わることになります。これらの新設、名称変更に伴って、各省間の所管事項の変更が行われています。

新しい環境省の組織と所管事項
環境・エネルギー分野では、持続可能な開発省が所管としていた「エネルギー分野」は企業・エネルギー・通信省へ>、「住宅分野」は財務省へ移管することになっています。新しい環境省には、次の10部門があります。

★ 環境の質
★ 天然資源
★ 環境管理戦略および化学物質
★ 持続可能な開発および環境問題の統合
★ 管理
★ 国際
★ 持続可能な開発のための各省の調整
★ 人事管理
★ 法政管理
★ 広報

環境省の主な所管事項は次のとおりです。

★ 持続可能な開発
★ 持続可能な国土計画
★ 気候変動に関する方針
★ 環境の質に関する政策目標
★ 環境と健康
★ 化学物質に関する方針
★ エコサイクルに関する方針
★ 水域および海域
★ 自然保全および生物多様性
★ 環境関連法
★ EUおよび国際協力

今回の組織改正により、スウェーデン政府の環境行政組織は「環境省」と、「環境保護庁」をはじめとする「住宅・建設・計画庁」「化学物質検査院」「原子力検査院」「放射線防護庁」などの12の行政機関からなっています。これらの行政機関は、いずれも機能的にはこの省を代表する環境大臣の指示・監督を受けることのない独立機関ですが、所管事項につい環境省へ報告する義務を負っています。

「環境省」と「環境保護庁」の役割分担
日本や米国の視点で考えると、スウェーデンの環境行政組織のなかに、「環境省」と「環境保護庁」が共存していることは理解しがたいことかもしれませんが、両者にははっきりした役割分担があります。

環境省は、政治(内閣)主導型政府の構成メンバーとして、ほかの省と協力して所管事項である環境政策と持続可能な開発政策に携わるとともに、国会に対する責任を果たします。

環境保護庁は環境省に報告を義務づけられた12の行政機関の1つで、既存の法律の枠内で独自に、国会で承認された国の環境政策に沿って具体的な行動計画をつくり、実行に移すのが主な役割です。環境保護庁の考えは自治体に伝えられ、自治体は独自の立場で住民と協力しながら国の政策を実行に移します。

90年代後半以降、環境保護庁の所管事項のほとんどすべてが「エコサイクルの原則」に基づいた持続可能な社会の実現を加速する目的に向けられています。それぞれの部門が持続可能な社会の実現という「ジグソー・パズル」のピースを組み立てるように、環境に調和した「輸送システム、農林業、上下水道システム、製品製造の部門」で活動しています。

スウェーデンの環境省と日本の環境省の間には、所管事項に大きな相違があること、政府内の両省の位置づけの重要性にも大きな相違があることが、おわかりいただけるでしょうか。これらの相違は環境問題の重要性に対する両国の認識の相違と、それに基づく21世紀前半の国家ビジョンの相違によるものです。

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